Z戦士の虎杖悠仁 作:汚ねえ花火
「フッ、まさかナッパを倒すとは、予想外だったぞ?」
「仲間が死んだってのに、何故笑っていられるんだ!!!」
不敵な笑みを浮かべるベジータにヤムチャが激昂する。
「フンッ、貴様ら如きに殺されるサイヤ人の出来損ないなぞ不要だ」
「なっ!!!」
驚くヤムチャをよそに、悠仁は震えていた。
ベジータの言葉。
その中の『殺される』という単語が悠仁の頭の中を木霊していた。
悠仁は優しい。
それ故に、トドメを指したのは宿儺とはいえ、自身の手が血で汚れたことをようやく理解したのだ。
ラディッツの時は、トドメを自身が刺していなかったから、そして次なるサイヤ人の襲来に意識が向いていたからこそ、殺したということの理解がまだ浅かったのだろう。
殺した。
殺した。
その事実が悠仁の心を蝕む。
足元がふらつく。
それはおそらく疲労によるものではないだろう。
そんな悠仁の心の蝕みを止めたのは、宿儺であった。
『小僧。貴様よもや殺したことに罪悪感を抱いているのではあるまいな?』
「……ッ!!!」
『これは死闘だ。文字通りのな。そして、仕掛けてきたのは向こうであろう?何を気に病む?』
「それは……だって……」
言い淀む悠仁に宿儺は続ける。
『いい加減にしろよ?小僧。本気の死合には本気で答えることこそ戦う者としての当然の義務だ。殺さないなどというのは死合相手への最大級の侮辱と知れ。殺意には殺意を持って応えるのだ小僧』
「……………」
『まったく、しょうのない奴め。これでもダメならこう言おう。貴様は守ったのだ。孫悟飯を。貴様があの時俺に体を開け渡さなければ、孫悟飯は死んでいただろう』
「そうか……そうだな」
『さあ、前を向け小僧。まだ脅威は残っているのだ。先ほどのデカブツよりも強大な脅威がな』
「応!……ありがとな宿儺」
『フンッ』
心はまだ完全には治っていない。
けれど、宿儺の言葉は悠仁の瞳を前へと向かわせた。
そして悠仁は目視する。
巨大な気弾をこちらへと向けるベジータを。
その気弾に込められたエネルギーは、先ほどのナッパの最大威力のものよりなお多い。
着弾と同時に、悠仁含め、ベジータ以外の全ての者が消し飛ぶであろう威力が込められていると理解する。
「ヤバッ……!!!」
「さて、カカロットと貴様らが組んだとて、どうとでもなるが、着いた時には貴様らが死んでいたら、カカロットはどんな反応をするのか、それを見るために貴様らは殺しておこう」
気弾が放たれる。
悠仁の全身を包んで余りある気弾が。
(避けっ……………無理だ!!!)
『クハッ、……これほどか…』
自身が既に満身創痍なことも原因ではあるが、何よりも気弾が速すぎる。
既に宿儺の呪力も底を尽きた。
反転術式に頼ることも出来ない。
そう、今悠仁は死を見た。
その……瞬間。
気弾の前に降り立った何者かがその気弾を弾き飛ばした。
「何?」
困惑するベジータをよそに、悠仁はこれで助かったと確信する。
「師匠!!!」
ツンツンと尖った黒髪に山吹色の道着。
そして何より、希望溢れるその気。
孫悟空がそこにいた。
「よく、頑張ったな。あとはオラに任せとけ!!!」
悠仁の頬を涙が伝う。
安心感からか力が抜け、自然と倒れ込む悠仁をそっと悟空が支えた。
「本当によく頑張ったな」
そう言うと、悟空は腰に付けた小袋から緑色の豆を取り出し、悠仁に差し出した。
「仙豆だ。食え」
咀嚼し、飲み込むとともに傷がたちどころに治り、かつ、気もそして呪力さえも全回復を果たした。
「これ、貴重なものじゃ」
「ああ、最後の1粒だ。見たところ、おめえが1番重症だったからな。他のみんなはここから逃げることは出来そうだったけんど、おめえは無理そうだったから」
「逃げるって……!!!」
「
『足手纏いということか』
宿儺の呟きに悟空は答えない。
「分かった。けど、無茶はしないでくれよ師匠」
「そりゃ……ちょっと約束できねえな」
困ったように悟空は言う。
ベジータはそれほどまでの相手ということだ。
「さ、行ってくれ」
悟空に促された悠仁が未だ泣き崩れる悟飯に駆け寄る。
「行こう。悟飯。ここにいたら師匠の邪魔になっちまう」
「でも……でもピッコロさんが…」
その時、悟空がベジータに話しかける。
「場所を変えるぞ。ここじゃ本気で戦えねえ」
仲間の死体がある場所で本気など出せるわけがない。
それ故の提案。
それをベジータは
「良いだろう」
笑って受け入れる。
「ナメック星……あいつらが言っていたピッコロの故郷なら、ドラゴンボールがあるかも知れない。それで生き返ることも……できるかも知れない。だから、今は一旦離れよう。な、悟飯」
涙を流す悟飯を抱き抱え、悠仁はクリリンとヤムチャに声をかける。
「行こう」
2人も頷き、舞空術で空へと飛ぶ。
悠仁が飛び立つその直前、悟飯が声を上げる。
「お父さん!負けないでね!!!」
その声に悟空は
「ああ!!!」
精一杯笑った。
「さあ、移動するのだろう?」
「ああ、行こう」
悠仁たちが飛ぶ先とは逆方向に、悟空は飛んで行く。
「師匠……頑張ってくれよ」
悠仁にも、悟空の力の底は見えなかった。
しかしそれ以上にベジータの底が見えない。
今、未知数の力がぶつかろうとしていた。