澆季末世の都   作:Newest

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※途中からグロ注意です。


一夜の喧騒編
正義の意味


「…んじゃ、今回も金を払ってもらおうか。」

…まただ。

「はぁ…ほらよ。いつも通り公務執行妨害やら、強盗罪で…100万くらいか?」

「何言ってる?お前カーチェイス中に電柱に当たって倒しただろ?器物破損だ。電柱の設置工事費も含めて大体200万ちょいだ。」

「おぉマジかぁ。」

「…まあお前ら【BGQ】には屁でもない金額だろうがな。」

署長はため息混じりにそう語る。

「まあそうだなぁ。だがボスに迷惑かけるつもりもないんで。俺が自己負担することになるな。」

「…ねぇ、ひとつ聞きたいんだけど?」

「ん?どうしたそこの嬢ちゃん?」

「あなたのとこのボスって、どうしてそこまで慕われてるの?」

…前もそうだった。

BGQの半グレ達は必ず【ボス】のことを口にする。

ある人はボスの偉大さを宗教のように語るり

ある人はボスの面汚しをしないようにと、BGQを脱退する。

ある人は別の犯罪者に、ボスのためにBGQに入らないかと勧誘する。

ボスは何者で、どうしてそこまで神格化されてるのか。

「…所詮ただの犯罪者に過ぎないくせに。」

 

「…あ゛?」

 

その時目の前の犯罪者は鉄格子をガンガンと揺らし、こちらを睨む。

「ふざけんじゃねぇ!!ボスをバカにするな!!」

「落ち着かないともう一度公務執行妨害で請求するぞ!」

署長がスタンガンを向ける。

「ボスはなぁ!お前らみたいな国家やら政府の犬じゃねぇんだよ!

あの人は!あのお方はぁ!信念があるんだよ!お前らが犯罪者で一括りしていい人じゃねぇんだよ!口慎めクソガキが!!」

署長はスタンガンを発砲した。

目の前の犯罪者の体が小刻みに揺れる。

やがて白目を向いて気絶した。

「…キッモ。」

「咲さん。BGQの構成員に対してボスを侮辱するのはやめといた方がいい。カルト的だが…構成員は本気で慕っている。刺激すると報復を受けかねない。」

「でも、どうして犯罪者の癖に偉そうな立場にいるのか理解できなくて…」

「…その気持ちはわからなくもない。」

「なら、どうして」

「犯罪者にも犯罪者なりの想いがある。

それは決して許されることではない。だが、こいつも、辛い環境下で生きていたに違いないさ…」

…辛い環境…

 

だったら、人を殺してもいいわけ?

 

…ボスとかどうとか知ったことないけど。

「…絶対に捕まえてみせる。」

この都市の平和のために。

 


 

「…いやぁ、いい朝だ。」

デートから2日後。

いつも通りポストを開いた。

そこにはたくさんの手紙が入っていた。

1枚1枚、丁寧に見る。

「…嬉しいなぁ。」

やり方はあれだが、この子達のためになってると考えると、胸が温まる。

何せ、この世の富豪とやらはクソ野郎しかいないからな。

全員がそうだとは言わないが、あまりにもクズが多すぎる。

…だからこそ、っていうと言い訳でしかないがな。

 

ピンポーン。

 

「…ん?」

こんな朝っぱらから誰だ?

「…はーい?」

 

「よう、海斗さん。」

「…またあんたか。

新(あらた)さん。前の勧誘は断ったはずだが?それともまた遊びに連れてくのか?」

「いや、今日は個別の用事だ。

少しドライブでもしながら話をしようじゃないか。」

 

「…また捕まったのか。」

「ああ。本当は俺が尻拭いをしようとしたが、本人に断られてな。はは。

…申し訳ないんだ。俺のせいだと言うのにさ。」

「…前から思ってたが、新さんはギャングだと言うのに優しすぎるな。」

「…」

「ああ、すみません。ギャングっていうのは」

「わかってる。偏見を持たれるのは仕方がない。もとより海斗さんはギャングが好きではないしな。」

「…まあはい。それで、用事というのは?」

「…海斗さんなりの正義について聞きたいことがあるんだ。」

「…はあ。だったら家で話した方が良かったのでは?」

「一応アジトに来てもらう。」

「え?結局勧誘しに?」

「違う。断じてそんな気はない。だが、アドバイスを貰いたい。

俺はそんなに尊敬される立場にいない。なのに、あいつらは俺のことをボスだと言って慕う。

…簡単に言えば親離れだ。

最終的には、BGQを解体するのに協力して欲しい。」

「…なるほど。それはちゃんと話を聞きたいですね。」

 

BGQのアジトに到着した。

「…でっか。豪邸ですね。」

「ああ。」

顔認証を済ませ、俺を招き入れてくれた。

 

…富里 新。

俺が知る限り、BGQの創設者で、BGQは「Bad guys quixotic(無謀な悪党たち)」の略らしい。

BGQ内では【ボス】として慕われていて、構成員は本名を話すことはない。

そして新さん自身は犯罪に関与せず、指示役の立場にいる。

…と、構成員の一人が3度目の勧誘しに来た時に教えてくれた。

 

1度目は新さん本人が勧誘しに来た。その時はあまりにもびっくりしたが。

顔は怖いけど優しいんだよなこの人。とてもギャングの創設者とは思えないくらいに。

 

中には構成員が何人かいた。

「ここにいるのは全員幹部だ。」

「お、噂の海斗さん?」

「洒落た服きてんなぁ。」

 

「訪問客だ。丁重に扱うように。」

 

幹部一同「Sir, yes sir.」

 

声が揃ってんなぁ。

「…部屋に案内しよう。」

「分かりました…」

 

ある部屋に入ると、そこはソファがふたつ置かれていた。

内装は白を基調としていて、清潔感がある。

応接室みたいなとこだろうか?

「…では本題に入ろう。

ここ最近BGQは石油発掘装置…オイルリグの占拠を目標に資金集めをしていた。」

「オイルリグ…なんのために?」

「簡潔にいえば金儲け…もっと深堀るとオイルリグの私有化だ。

ここ最近の石油の価値は上昇し続けている。早めに入手することができれば、BGQはさらに拡大できるようになる。そうしていずれは全国に拠点を構えようとしていたんだが…

Gracchusという別の地域に拠点を構えるギャングも狙っているという情報を手に入れたやつがやらかしてなぁ…Gracchusに喧嘩をふっかけたんだよ。」

「はぁ…」

Gracchus…名前は聞いたことないな…てかそいつは何をしてんだよ…

「どうやらそいつはGracchusに所属をしていた経験があったらしくてな…元からGracchusのボス…穴山って奴のやり方を嫌っていたらしい。

多分今回の件で吹っ切れたんだろうな…そいつは直前にBGQを辞めて、単独で行ったんだ。

そして…そいつは殺された。」

「…」

自業自得…って言うと怒られるか。

「そして、それを知った俺は逆上しちまったんだ…

ボスの穴山に電話をかけて、こう言った。

俺の仲間に手を出した以上、敵対する他ない…と。」

「…なるほど。」

「そして…2週間後、オイルリグで抗争を起こすことになった。」

「…いや。何してんすか新さん。」

優しすぎるが故か。

そういう人ほど怒った時は判断がつかなくなってしまう。

「今さっきいたあいつらはむしろ嬉々として参加しようとしているが…俺はとんでもないことをしちまったんだ…自首しようにももう遅い。

俺は今からでもBGQを解散させて、責任を取る必要がある。

あいつらをこれ以上巻き込みたくないんだ。

だが…あいつらの忠誠心は底知れない。

何せ、俺にGPSをつけるくらいだからな。おかげでいつも監視されてるような気分さ。」

「えぇ…」

それは忠誠心なのか…?

「こんなだから、俺一人じゃ説得は厳しいだろう…だから、海斗さんの手を借りたいんだ…」

…いや待て…

「俺に止められるほどの力なんて…」

「…最悪、俺一人で行かせるために、誘導をして欲しい。」

「…それでいいんですか?」

「ああ。もとより、俺はもう長くないだろう。

今に至るまで、どれだけ残酷なことをしたのか…わかっているつもりだ。

そろそろ贖罪の時だろう。」

「…」

「…そこでだ。まずは海斗さんなりの正義を教えて欲しい。

俺にとっての正義は、弱きを助け強きをくじく、だ。

俺は海斗さんのことをそこまで深く知ってるわけじゃない。

だが、海斗さんにも海斗さんなりの正義があるはずだ。

俺はそれに惹かれて勧誘しようとした。結局断られたがな。

だが、俺はどうしても知りたいんだ。ぜひ教えて欲しい。」

「…見直しました。てっきりあんたは、俺の実力を見越して勧誘しようとしたのかと。

新さん。あんたとの付き合いは決して長い訳では無いが…あんたは人をよく見ている。

初めの勧誘から、少しばかりの交友しか無かったが…良い人だと言うのは間違いない。

…どうしても分からないんだ。あんたみたいな良い人が、どうして犯罪に手を染めるのか。

質問に質問を返すのはご法度だが…どうして犯罪を犯したんだ。

そして、どうしてギャングを設立したんだ。

もしも、その理由が弱きを助け強きをくじく、だったら、他にも方法はあったはずだ。」

「…そうだな。話すと長くなる。

だが、知りたいのなら、教えるべきだな…」

 

…どれくらい前だろうか。

俺は裕福な家庭で生まれた。

親はとても優しかった。

俺はクソガキだったな。弱いものいじめをして、親が謝って。

親は尻拭いをいつもしてくれた。

親は俺に辛く当たる事は一切なかった。

一体どこまですれば叱られるのだろう。

そんな興味から、俺の素行はさらに悪くなって言った。

未成年だというのに、タバコを吸ったり、酒を飲んだり。

勉強はそこそこできた方だった。だが、その素行のせいか、退学をさせられた。

それでも親は怒ることはなかった。

…深夜、俺がトイレに行こうとした時、リビングで母親のすすり泣く声が聞こえた。

…その時俺は気づいた。

怒っていないだけで、心は傷ついていることに。

 

翌日、俺は公園で座り込んだ。

俺は、誰かを傷つけることしか出来ないと悟った。

死にたくなるほどの重圧。

いっその事、誰か殺してくれないかとさえ思った。

 

そんなことを夜中まで考え続けた。

ふと、寂しくなった。

俺もまだまだクソガキだった。親が恋しくなったそのとき、無我夢中で家に向かって走り始めた。

家に着いた時、明かりがついていた。

 

もしかしたら親が俺を待ってるかもしれない、と、俺は飛びいるようにドアを開けた。

 

そこには鮮血が飛び散っていた。

瞬間、奥の方で悲鳴が響いた。

母親の悲鳴だ。

「おかあ…さん?」

リビングのドアを恐る恐る開けた。

 

瞬間、血飛沫が顔を伝った。目の前の男は母の肉を包丁で裂き、母親は苦しみ、呻き、喘いだ。死ぬ直前までそれは続く。

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」

 

声にならない声を出した俺は、その男の顔面に向けて

近くにあった菜箸を持って

力ずくで

 

ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ

 

それ以降の記憶はあまりない

恐らく近くの人が警察に通報したのだろう

そうして俺は人を殺した罪で、何十年も牢屋にぶち込まれた

俺は警察を許せなかった

なぜあの男は、母親と父親の苦しみと同程度の苦しみを味わっていないのに

どうして俺はこんなに苦しまないといけないのか

この世界はあまりにも不平等すぎる

その考えが、俺の「復讐」の始まりだった

 

「…それから俺は近くの半グレたちを招集して、BGQを設立した。

俺の理念は弱者を助けること。不良みたいに弱いものいじめをするのはご法度。それ以外は人殺し以外全てを許した。

この都市に来るまでは、ギャングらしい活動をしてこなかった。

この都市に新拠点を築こうと提案した幹部の一人の意見で、この都市にやってきた。

ここはあまりにも犯罪が横行している。

同時に警察は能無しだったさ。金さえあれば、大抵の事は許される。そんな狂った都市だ。

だが…だからこそ、この都市には守るべき人が多かった。

この現代社会で、貧富の差は付き物だ。富豪は貧民を見て見ぬふりをする。

警察もしかりだ。家もない、食べ物もない、そんな弱者は犯罪をしてでも生きるしかない。

警察は事情も聞かず、容赦なく金を取り上げる。昔から犯罪に手を染めた俺は、犯罪が当たり前だったんだろうな。それが許せなかった。

だから、初めこそは警察を滅ぼそうとした。

歳をとるうちに、その復讐心は薄れていったが。

今はそこまでの感情は無いが…正直警察は嫌いだ。

だがそれ以上に人殺しは大嫌いだ。だからあそこまで逆上したのかもな。

…今思えば、あの人殺しもなにかの事情があったかもしれない。

今更遅すぎるが…」

「…遅い?」

ドォン!!!

俺は台パンをした。

「…やっぱりあんたは優しすぎる…

あんたは死んじゃいけねぇ。というか死なせねぇ。」

「急に何を言うんだ海斗さん。

俺の話を聞いてわかっただろう?俺はどうしようもない人間だ。

だからこそ死んで詫びるしか」

「弱きを助け強きをくじくんだろ?

やりたいことは最後まで全うしろよ!

…別に、復讐を成し遂げろとは言わない。

確かに警察は理不尽なことをするかもしれない。汚職するやつだってこの都市にはいる。

あんたも不遇だったことはわかってる。

だが…あんたはそんな奴らとは違うだろ?

あんたはあんたなりの信念が、想いがある。

あんたのやり方は間違ってた。だが、人を助けようとするその心は何も間違えてない。

親を殺されて、あんたは寂しかっただろう?辛かっただろう?

…同じことだ。

あんたが居なくなったら、あんたを親のように慕う構成員も、同じ気持ちになるだろう!?」

「…!」

「…死ぬな新さん。

…Gracchusと言ったか?そいつらはどんなギャングだ?」

「…Gracchus…

死んでったあいついわく…なんでも武力で解決していたらしい。

それだけじゃない。拉致した女を売春婦にさせたり、子供を誘拐して売り払ったり…」

「…は?」

…そうか。

「…ありがとな教えてくれて。」

…クズどもの集まりか。

多分死んでった構成員も、楽に死ねた訳じゃなさそうだな。

ふーん?

「正義の欠けらも無い奴らってことか。」

「ああ。だからこそ俺一人で苦しむべきだ…」

「…多分、あんただけで終わらんぞ?」

「…え?」

「人を金稼ぎの道具に扱ってるヤツらが、その程度で終わるわけが無い。多分組織を解体しても、この都市に侵入して残忍な行為を行うだろう。」

「…嘘だろ…じゃあ…関係ない人たちも…酷い目に…」

…根拠は無い。

だが、話を聞く限り、それくらいの事は余裕でするだろう。

そんなことをしてるやつが捕まってないとなると、多分都市レベルでそのギャングがでかいか、警察が機能してないのかもしれない。

…これはもはやギャングの抗争所ではない。

早めに対処しないと、俺だけじゃなく、咲が危ない。

「…はぁ。」

やってくれたな、新さん。

「報酬金はたんまり貰おうか。」

俺は新さんに背を向けた。

「…待ってくれ、どこに行くんだ?」

「…一旦帰らせてもらう。」

俺は部屋を出た。

 

ドアを開けて出ると、そこには幹部たちが総出でいた。

「…いやぁ、聞き耳、しちゃいました。」

「…だったら、あんたらはどうするつもりだ?」

「…答えはとっくに決まってる。」

幹部の一人が前へ出る。

「殺られる前に叩き潰す!」

「ああ。血にまみれるのは僕たちだけでいい。」

「…そうと決まれば…」

俺の答えも決まった。

「計画を立てるぞ。」

微力ながらも、力になってやる。




この内容を1話に詰め込みました、投稿者です。
BGQ編の始まり始まり。
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