艦これ ―神浜戦場記録―   作:56215

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崩落ー5

爆発音が響く。今ではテロリストの武器か演習場のペイント弾にしか使われない、旧式の炸薬砲。

 

「くそっ!動きが捉えられない!」

 

 俺、斬雲玲は暴れる機体を制御し、爆炎を回避しながら毒衝いた。演習用に配備された、一世代前の機体。63式人型可変戦闘歩兵、「火竜」。

 

 あまりにも変形速度が遅いことと、火力に重点を置きずぎたが故の機動性のなさから、棺桶と呼ばれる、日本軍の主力機だ。

 

「流石、別名戦死者製造機。棺桶のほうがまだマシだ…って!うぎゃ!痛い!」

 

 ヘルメットをかぶっているのにも関わらず叫び声を上げるのは後部座席に座っている砲手。整備班志望だったところを才能があるとか何とかで玲に搭乗員に変えられた可哀想な奴だ。

 

 『回避運動はもっと鋭角的にやるんだよぉ!そこ!』

 

 敵の機体、最新鋭機の「黒鳥」からの音声通信。もちろん声の主はあの男、斬雲だった。奴の突き出したブレードを紙一重で回避。お返しとばかりに機関砲をぶち込む。が、ひらりと回避され、空中に弾は消えた。

 

 「そっちが最新鋭機だからって…」

 『いつも自分の方が性能が上にゃならねえんだよ!ハンディマッチは日常だ!』

 

 衝撃。転倒を知らせるアラートが鳴り、後ろの砲手が一際大きな叫び声を上げる。

 回し蹴り。奴は回避のモーションの中に攻撃を織り交ぜている。だから、すぐに攻撃に移れる。 

 

 『こっからの逆転は無理だぞ坊主。さっさと機体を立たせて降りてこい。』 

 

 機体にライフルを突きつけながらの勧告。……確かに逆転は無理だろう。 

 

 「ならっ!」

 

 機体が備える全てのミサイルを同時発射。爆風で機体を無理やり移動させ、銃口を避けた。あとは大振りのブレードが使えない距離の格闘戦に持ち込めば…!

 機体のアラート表示を全てカット。スラスターを全開にして突っ込む。腕部パージ。

 

 『やるじゃないか!……なっ!?』

 

腕部をパージしたことにより、機体の重量バランスが大きく変化。放たれたペイント弾を回避する。体当たり。機体は一つの対物徹甲弾の様なスピードで突っ込む。この距離ならまだ…。

 

 『ほい、撃墜だ。詰めが甘かったな。』

 

 機体が真っ赤に染まる。至近距離からのペイント弾の打ち込み。そうだった。あの機体、今試作パイルバンカー積んでやがったんだ…。

  

  ―――  ―――  ――― 

 

 俺はあの後軍に志願。斬雲の元で試作兵器の試験と兼ねた訓練を行っていた。

 奴は俺が軍にはいることに反対した。1回は俺を営巣に閉じ込めてまで意見を変えさせようとしたほどだ。

 が、俺は奴の制止を無視し、見つからないように志願申請をしたのだ。志願の承認が来た時の奴の顔は、それはもう苦しそうだった。

 少し胸にささくれが走ったが、気のせいだろう。それはともかく、奴は3日部屋に籠もった後、俺の目を見た。厳しい表情で、哀しそうに言った。

 

 「こうなったお前は、もう俺には止められん。嫌なところが俺に似ちまったな」

 

 だから。

 

「俺の手で生き残れるだけの技術は教えてやる」

 

「生き残れ。それが軍に入るための約束だ」

   

   ―――  ―――  ―――

 

 

 「最後の接近する動きは確かに良かった。が、実戦では絶対にするな!」

 

 殴られた。痛い。仕方ないとは言え、命を軽く見る戦法を取るとこんなふうに殴られる。砲手も一緒に。何ともかわいそうなことではあるが軍は連隊責任を重視するためあきらめてもらうしかないだろう。

 

「今回で154回目の死亡だな。という訳で、演習場を陸戦装備で154周!おらいけ!」

 

 一番応えるのはやはりこれだ。とてつもない距離を走らされる上、敗北を身に刻みつけられる。…いや、生き残るためだ。生き残って、守るためだ。

 

「あの教官、絶対サディストだ…。ちくしょう…」

 

 砲手…長屋がぼやく。俺は軽く頷き、ひたすら走ることに専念した。心情とは別に。

 彼女…桜木は今どうしているのだろう。奴からの話はあの後聞いていない。今度聞いてみるとしよう。

 

 今日も、こうして一日は過ぎていくのだ。

 

     ―――  ―――  ―――

 

 「時雨、出撃準備よし!行きます!」

 

 いつもの通り薬を打ち込んで巨大化。カタパルト員に合図を送り、時雨は夜の海に飛び出した。

 目の前を雪風が静かに航行している。夜の海は穏やかで、しかし底知れぬ恐怖を黒くたたえていた。 

 発光信号。偵察隊の隊長を務める高雄からの集結を知らせる合図である。

 偵察隊は四隻。時雨、雪風、川内、高雄。バランスが比較的悪い編成ではあるが、資源の関係と高速夜間強襲からの偵察を行う任務においてはマシな組み合わせとなった。

 

(少し心もとないけど、やるしかないよね…。)

 

時雨は今回の作戦を心の中で再確認した。

 

 (僕たちが、敵防衛ラインに突入する少し前に友軍による艦砲射撃と提督の機体の攻撃。これに敵が引き付けられた隙に一気に敵防衛線に突入。偵察を行う)

 

 考えれば考えるほど無茶な作戦だ。この数で挟撃を受けた場合などを考えると、

 

 (撃沈、大破を視野に入れた作戦…。)

 

 と、思わざるを得ない。しかし、やるしかないのだ。数は質でカバーするのが神浜のやり方。ならば全力で任務を遂行するしか無かった。

 

 「皆さん、準備はよろしいでしょうか。これより2000までは全軍通信管制を行います。各位は隊列を見失わないように。では、作戦を開始します!」

 

 高雄の号令。彼女たちは単縦陣で出撃する。その姿を神浜基地の総員が帽振れで見送った。

 時雨は、基地の明かりを見つめる。この光をもう一度見る。そう心に決めた。

 

 (出来ることなら、皆で…!)

 

 時雨は手を強く握る。目を閉じて提督の顔を思い出し、覚悟を決めた。

 

 (必ず、戻る。提督の元に!)

 

 目を開ける。暗い夜の海に、行くべき航路ははっきりと見えた。

    ―――  ―――  ―――

 

 深海棲艦。その最も浅いピケットライン。そこに配備されたイ級はいつも通りの警戒態勢で待機していた。

―閃光。爆発音。彼ら、または彼女らが、自身らが戦艦の艦砲射撃で沈んだと気づいたのは、地獄に堕ちてからである。 

 

 「二射、命中!続いて、二番、三番主砲、てぇー!」

 

 高らかに叫ぶのは長門型戦艦の長女、長門である。彼女は前線で隠れた黒鳥から送られた敵艦の位置データを元に射撃を行っていた。

 

「アンチジャミング赤外線レーザー通信、問題無し!諸元、入力お願いします!」

 随伴艦の吹雪から、座標が指定される。長門型の誇る41cm主砲が、再び火を吹いた。

 

 「ははっ、これぞ戦艦の役目!殴り合いはできずとも!」

 

 長門は高揚していた。当たり前だ。実戦ではめったに出来ない敵の航空機や反撃を気にしない砲撃。戦艦の役目を存分に発揮していた。と、懐の海中時計が、チーン、と甲高い音を立てる。それを聞くやいなや、長門は笑みを緊張のそれに変え、艤装を操作した。

 

 「閃光弾、装填!信管よし!てぇー!」

 

 一発のみ閃光弾を発射。偵察隊への合図と共に、敵の目を隊から逸らす。敵防衛ライン侵入のための、搦手。

 

 「さあ、もっと私に食らいついてこい!いくらでも相手をしてやろう!」

 

長門は笑顔で主砲を撃ち続けた。

 

     ―――  ―――  ―――

 

 「見えた…」

 

 夜空に光る閃光。陽動部隊の作戦が始まった。時雨達偵察隊の仕事の始まりである。今のうちに防衛ラインに突入、できるだけ中枢までいかなければならない。敵の数、配置、種類。できるだけ正確に伝えるほど、後の犠牲が減っていく。

 雪風を先頭として隊列は進んでいく。静かに、しかし大胆に。彼女らの進む先には、真っ暗な空と海が待ち受けていた。

 

 

     ―――  ―――  ―――

 

「彼女」は目を覚ました。どうやら前線で小競り合いが始まったらしい。敵もまた、懲りないことである。

 そこまで考えた後、彼女は笑った。凄惨な、しかし何処か妖艶な笑み。

 侵入した部隊がいる。

 彼女は荒ぶる尻尾をなだめ、敵を迎え撃つべく体を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

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