しょけいほうほうも、きめました。
人の心がないって罵ってくれて、いいよ。処刑方法はマジで自信がある。
『―――てな感じでぇ、今日はここらで終わろうかな~。じゃね~』
その言葉を最後に、スマホに映るココの映像は切れてしまった。……正直に言おう。あまり面白いと言える内容ではなかった。自分の話をするのは良い。だが、あまりにも―――話のパンチが弱い。
……ま、初回ならば十分だろう。何目線なんだって話にはなるが。
「……こういっちゃなんだけどさ、う、初々しい配信だったね……?」
「何を言わんとしているかはわかるけど、ココの前でそれ言っちゃダメだからね。バチギレて魔女化するかもしれないから」
俺たちがココの配信を見ていた間に、エマとシェリーはどこかへ行ってしまったようだ。……探索中の様だったから、おそらく図書館に行ったのだろう。あそこには、何もなかった……とは言えなくもない。俺が読めなかっただけで、あの資料は貴重な資料かもしれない。俺は訝しんだ。例えば、牢屋敷の歴史とかなんとか。
ココの配信が終わったことで、話すことがなくなってしまった俺とミリアの間に気まずい空気が流れる。……配信中に話が盛り上がったのはなぜだろうか? あれか? B級映画の少しチープな雰囲気が面白いとかそんな感じなのか?!
『……』沈黙が痛い。しびれを切らし、俺から話しかけることにする。
「……えっと、ミリア。私はもう行くけど、ミリアはどうする?」
「お、おじさんはまだここにいるよ。変に動くと、大変な気がするから……はぁ……」
む、疲労に気配! んじゃあ少しだけやっていこうかな、精神分析。
【ロール:精神分析 1d100・11%ロール中……65。失敗】
失敗か……どうなるんだ、これ。そして、俺の口が勝手に動き始める。
「ふふっ、そうかもね。このまま外に出たら―――殺されちゃうかも♡」
「ま、マーゴちゃんみたいなこと言わないでよ……本気で悩んでるんだから」
「ごめんごめん。それじゃ、私はもう出るから。じゃね~」
「あ、うんバイバイ、フリルちゃん」
そう言って、俺は娯楽室を出た。……今回はセクハラしなくてよかった。
―――ぶらぶらと牢屋敷を散策する。今度はどこへ行こうかと考えて廊下を歩いていると、二階のラウンジにはヒロとノアが何かを話していた。
「あれ? ヒロとノア……意外な組み合わせだ」
「ぴゃっ! ふ、フリルちゃんか~」
「ッ! フリルか……」
「だからなんでみんなそうやって驚くの? 私は人から気が付かれない魔法でも持っているのか?」
若干ショックを受けながら、俺は二人が何を話していたのかが気になって、内容を聞き出そうとする。
「で、何を話していたのかな?」
「ああ、それは―――」
「ヒロちゃんとね、のあがお絵描きできる場所を探してたんだよ~」
「……ああそうだ。ノアが牢屋をスプレーで真っ赤にしたんだ。これは正しくないと思って、今、ノアが芸術活動を行える場所を探している途中だ」
ほえー、ノアって絵、描けたのか。まあ見てくれはアーティストと言われればそう見えなくもない。……もしかして髪の至る所にある色彩豊かな場所って絵具とかそんな画材をこぼした、とかそんな感じなのか。
「どんな絵を描くの?」
「んーとね……こんな感じ!」
ノアはスプレーを取り出して床に絵を描き始める。
「あ、こら、ノア!」
「やっぱりどさくさに紛れていたのか……」
「え、えへへ……」
そんな誤魔化すような声を上げながら、ノアはスプレーの噴射を止める。……だが、そんな声とは裏腹に床にはアッと驚くような現代的なアートが浮かび上がっていた。しかも―――この絵、動くぞ!
「ノアの魔法は、【液体操作】。彼女が描いた絵は、一時的に動くんだ」
「ほえー……」
視界の端を見てみると、なにやら久々に見るメッセージウィンドウが浮かび上がっていた。
【ロール:知識 1d100・65%を使用しますか? Yes or No】
ん~まあイエスでいいんじゃないか?
【ロール:知識を実行中……80。失敗】
なんだよ何もわかんねぇじゃん。やっぱりこのメッセージウィンドウ……呼びにくいからキーパーにしよ。キーパーが勧めてくるロールは失敗しかしないんじゃないか? ……反応はないから自我は持っていないらしい。変に自我持たれると多分ダイスロールが今みたいに頻繁に発動できなくなるのではないだろうか? それだけは避けたい。
まあ、某転生したらの某大賢者みたいなナビゲート役なら良いんだけど、某正義之王みたいな奴なら終わりである。そんなときは俺の自我がなくなってしまう前に自爆するしかねぇ! 青銀乱残光!
だが、そんな嘆きもお構いなしに、キーパーは何の情報も出してくれない。
「……んー、中々うまいね」
「私だって、この才能を無駄にしたくはない。だが……やはり所かまわず落書きをするのは、正しくない行為だ。……ノア、片付けろ」
「むー……はぁい」
ヒロがそう言うと、ノアはもう一度スプレー缶を掲げた。何をする気かと思ったが……
「……!」
スルスルと、ノアが噴射したスプレーのインクが、スプレー缶に戻っていく。……なんだ、これ。
先ほどの動く絵と言い、このスプレーの現象と言い、魔法というのはこのような現象が起きるのか?!
そこで、キーパーから宣告を受ける。こんなこと初めてだ。
【あなたは幾度もの不可思議に見舞われ、それに過去のトラウマが思い出させられる。
SANチェック 1d100・80% 1 or 1d3、実行中……55。成功。SAN値1減少。残り79】
そのとき、胸の奥、心臓あたりがちくり、と痛くなる。まるで、安全ピンの針で指を刺してしまった時のような、そんな痛みが走る。
これが、SAN値減少の痛み……! 1減少でこれなのだから、2以上減少したら、どんな痛みが走ってしまうのか……。
「……フリル、大丈夫か?」
「……! だい、丈夫だ。ごめん、心配かけて」
人から見ても顔色がかなり悪かったのか、ヒロは俺を身を案じる。スマホを取り出してインカメを起動すると、血色の良かった彫刻のような美貌は、青白く染まり、江戸時代の幽霊画のようになっている。
だが、俺はすぐにかぶりを振って正気を保つ。
「大丈夫? フリルちゃん……」
ノアも身を案じる。それに「ありがとう、大丈夫」と答えると、ノアは安堵したようにほおを緩める。
そんなやりとりをしていると、スマホからホーホー、とあの独特な通知音が鳴る。それは、ゴクチョーからのもので、夕食の時間を知らせるものであった。
「ん……夕食か。正直言って、やだなぁ。行きたくない。あんまし美味しくないもの」
「そんなことを言ってはいけない。たとえ料理がまずくとも、作った人に失礼だ」
そんなことを言って、俺たちは食堂へ向かっていた。
……食堂は、いつもどおりのレイアウトであった。奥にビュッフェカウンターがあり、皿が並んでいる。ビュッフェカウンターに乗っている料理はどれも見た目はグロテスクで、食欲はわかない。
どうにかして味だけでもよくできないか……?
そこでふと思い立つ。
幸運ロールに成功すれば、奇跡的に料理がおいしくなる、とかいう怪現象が起きる可能性があるんじゃないか?
そうと決まれば一回ロールしよう! 大丈夫、俺、幸運80ある幸運系美少女だから!
【ロール:幸運 1d100・80%実行中……39。成功】
よし! キーパーが、ロールが成功した旨を告げる。どんな内容なんだろうか?
ビュッフェカウンターの方に目線を向けると、先ほどまで並んでいた料理に加えて、この場には場違いなふっくらとしたパンが人数分用意されていた。
「おや? この食堂にはあまりおいしいと言えない料理しかないと思ったが、パンがあるじゃないか!」
ん? ああ、レイアか。
レイアは芝居がかった仕草で驚愕する。なんか胡散臭いな、こいつ。
「レイアか」
「ん? おお、フリル君。君も夕食を取りに来たのかい?」
「うん。歩き回ってお腹すいたからね。……しかも今日、ひどい目にあってな」
「ふむ、どうしたのかな? 私でよければ、話を聞くよ」
「ありがとう、レイア。それじゃあ、今日は一緒のテーブルで食べようか」
俺たちは各々の皿に料理を盛り付けて、テーブルに運ぶ。そして、席に着いた。
「それで? どんなことがあったんだい?」
「それがさ、前の食事の時にマーゴにタロット占いをしてもらったんだけど……それが初回無料で二回目から有料だったんだよね」
「なに?! それ、大丈夫だったのかい?」
「これが今日の酷い目でさ、マーゴに占い代って名目で牢の模様替えの手伝いをさせられて。そのときにおっもい木箱を持ち上げさせられて……なんでこんなところに来てまでデッドリフトしなきゃいけないんだって思った」
「ははっ、そんなことがあったんだね」
「あら、私の話をしているのかしら?」
「うぉあ!」
俺は突然現れたマーゴにびっくりして椅子から転げ落ちる。
「ふふっ、そんなに驚かなくてもいいじゃあないの」
「あんたやっぱジョジョラーだろ」
「なーにしてんの、フリルっち!」
「うぇあ!」
またしても唐突に表れたココに飛びつかれて、間抜けた声を上げる。
「ココ!」
「フリルっち、どうだったよあてぃしの配信! 元リスナーからして!」
「うん、いい。あれこそココって感じの配信だった」
そのとき、キーパーが告げる。
【沢渡ココの信用度が10上昇、残り82】
んんんんんんんんんんんんんんんんんんん???? 待て。俺は今、冷静さを欠こうとしている。
「ふっふ~ん! やっぱさすがフリルっち! 見る目がある~」
「ありがと」
そんなことを言いながら、俺たちは夕食を食べる。……味はあまり良いとは言えなかったが、パンがあるだけましだった。やっぱ毎回幸運ロールしようかな。
実はこっそりココの一人称を正していました。「あたし」ではなく「あてぃし」でしたね。
正しくない……やはり僕は魔女(?)……!(自己分析)