【実験】絶望的状況の奴隷にすべてを与えてみたら【完結】   作:畑渚

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第8話 召し上がれ

「ギャオオオオン!」

 

 巨体が、悲しそうな鳴き声を上げながら地面に倒れた。

 あっけないものだ。空の王者を撃ち落として、俺は辺りを見回す。

 

「っと、あったあった。薬草」

 

 この薬草は、ドラゴンの生息地にしか生えていない希少種だ。高値で取引がされ、高熱が出る病に聞く薬として重宝されている。

 

 もちろん俺がこの依頼を受けたのは、金のためではない。

 こういう危険度の高い依頼は冒険者ランクの維持のためにちょうどいいのだ。

 

 冒険者はその依頼達成度からランク分けがされている。俺はその中でも最上位のダイヤ級にあたるのだが、そのランクを維持するには、月ごとに計算される貢献ポイントを稼がなければいけない。

 

 こういう小さい依頼をちょこちょこ受けておけば、無事にランクが維持されるというわけだ。

 

 まあ、この薬草採取依頼はドラゴンの生息地に入るという都合上、誰も手に取らないような不人気クエストなのだが……。俺には都合が良いのでよく受けている。

 

「あとはこいつの尻尾か」

 

 テールスープときいて思い浮かぶのは、尻尾を輪切りにして盛り付けたあの形だ。

 しかしドラゴンの尻尾は、俺が両手で抱えなければいけないほどに太い。

 

 どうしたものか。

 

 俺はうちにあった鍋や皿を思い浮かべながら、あれこれと考える。

 

 そうか、別に1人用で輪切りを用意しなければいいんだ。

 

 テーブルの中心に、こぼれんばかりのドラゴンテールの輪切りを煮込んだスープを置くことを想像する。

 いけるな。これでいこう。

 

 大きい寸胴鍋と深皿が必要だが、これくらいなら創造魔法でちょちょいのちょいだな。

 

「じゃあ持って帰るか」

 

 切断魔法で、ちょうどよい大きさに尻尾を輪切りする。

 

 血抜きだなんだも魔法でできる。あとはすぐに飛んで帰れば、新鮮で極上のドラゴン肉を振る舞う準備ができる。

 

 街の門まで飛んで変えれば、門兵は出迎えてくれる。

 

「カインの旦那!お早いお帰りだこと」

 

「用はさっさと済ませるに限るからな」

 

「その荷物は……と聞くまでもないか」

 

「今回の用事だ」

 

「軽々といってくれるなぁ」

 

「早く下処理をしたい。通ってもいいか」

 

「はいはい、どうぞ」

 

 門から急いで家へと向かう。

 

 家の門をくぐって、そのまま庭に直行する。

 

「竈と鍋、それから……」

 

 創造魔法で必要なものをポンポンと作り上げていく。

 

 このときは収納のことを考えていなかったので後々後悔することになるが、それはまた別の話。

 

「道具はこれでいいか。じゃあまずは下茹でからだな」

 

 鍋の中に、魔法で水を入れていく。肉が十分に浸かるようにたっぷりとだ。

 

「火の精霊よ、我が呼びかけに応じ、小さき火種を以てして、目前の薪を燃やせ」

 

 市井でもよく使われる火をつける魔法で着火。燃え盛る薪を確認してから鍋を火にかける。

 

「あとは……待ち時間だな」

 

 しかし、暇な時間ではなかった。

 

 俺は、無限かのように出てくる灰汁との格闘を強いられたのである。

 

「くそっ、まだ出てきやがる」

 

 とってもとっても、すぐに肉を覆い隠すほどの灰汁が湧き出てくる。

 灰汁取り用のお玉でそれをすくっては捨て、すくっては捨てを繰り返した。

 

「はぁ……ようやくか」

 

 灰汁がでなくなったころ。すでに30分はそうしていたかもしれない。とにかく下処理が終わった。

 

 本格的な煮込みが、ここから始まる。

 

 そうだ、ついでに試してみるか

 

 創造するのは、肉が入る大きさの鍋。それも圧力鍋だ。

 うまく行けば時短できる上に、肉もより美味しく食べられるはずだ。

 

 出来上がった鍋に肉を移し、新しく水を適量加える。そして薬味となる野菜とにんにくを少々いれて……

 

 こんどこそ、待ち時間だな

 

 俺は台所に寄って、炭酸飲料を片手にテラス席に腰掛けた。

 

 

 そして数十分が経過した。

 

 

 鍋の圧力を解放し、恐る恐る蓋を取った。

 

 黄金色のスープ。脂身がプルプルの肉。臭みはないどころか、良い香りが胸いっぱいに広がる。

 

 成功だ。

 

 俺は器に盛り付けて、塩コショウで最後に味を整える。

 ハーブの葉を添えて、完成だ。

 

「おいロゼ!昼飯にするぞ!」

 

 俺は部屋にいるであろうロゼを、下の階から大声で呼んだのだった。

 

 

<=>

 

 

「ご、ご主人様?」

 

「なんだ」

 

「こ、これはいったい」

 

 椅子に腰掛けたロゼは、目の前の巨大な器を見つめてそういった。

 

「お前が求めたんだろう。オオトカゲのテールスープだ」

 

「い、いえ。それはそうなのですが」

 

「なんだ、違ったか?」

 

「違う……?」

 

「オオトカゲってドラゴンのことじゃないのか?」

 

「ど、ドラゴン……?」

 

「違ったのならすまない。処分しておくな」

 

「なっ!?ま、待ってください!合ってます!そうです!」

 

「なんだ、良かった」

 

 ロゼは何やら気が気でない様子だったが、覚悟を決めたのか、テールスープを取り皿に取った。

 

「い、いただきます」

 

「ああ、召し上がれ」

 

 ゴクリと喉のならして、ロゼはスープを飲み干す。

 

「……嘘」

 

「嘘みたいだろ?」

 

 俺はにやりと笑いながら、肉にフォークを突き刺した。

 

 嘘みたいなことだが実は……

 

 

 

 

 ドラゴンは美味い。

 

 それもかなり。

 

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