子供を作るには『錬金』するといいらしい   作:御魚天国

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第一章∶子作りは錬金の始まり
錬金術はそんなに万能じゃないですケド


「ねぇ、私と子供を作ろう……」

「何言っちゃってんの!?」

 

 

 魔法学園、2年生の教室、その片隅にて。

 一人の少女が俺に向けて、突然そんなことを言い放った。

 

 彼女の名前はアルシュ・ヘルゼメイト。

 輝くような銀髪と、幼気ながらも儚く凛々しい顔立ち、そして天才と呼ばれるほどの才能で、学園内で一、二の人気を争うような、アイドル生徒だ。

 

 そんな彼女からたった今、凄まじいことを言われてしまった。

 

 ちなみに俺は、そんな彼女の隣の席ってだけ。

 彼女とは特に親交もなければ、なんなら近づいたことすらない。

 話しかけようとすると、クラス内の親衛隊から凄まじい睨みが飛んでくるからな。

 

 なんならたまに、妨害魔法や攻撃魔法が飛んで来ることもある。

 全部、彼女に気づかれないようにやるから、たちが悪い。

 

 まぁ、そんなことは置いといて。

 それよりも彼女に言われたことの意味を考えねばならない。

 

 

「こ、こど、子供!?」

「うん……子供。男の人となら、作れる、でしょ?」

「い、いやぁ……まぁ……そう、なんだけども……」

 

 

 あまりにも突然のこと過ぎて、頭の処理が追いついてこない。

 しかし『子どもを作りたい』というのだけは、俺の聞き間違いではないようだ。

 

 ……特に交友がないとはいえ、他人の願いを無碍に断るのも気が引ける。

 いや、別にね、そういう下心があるわけじゃないよ。

 確かにそういう行為に興味はあるけど、あるけども。

 だからと言って今すぐそういうことしたいとか、やってみたいとか、そんなことは全くなくって。

 ほら、隣の席だから、そんな彼女の願いを適当に断るのは気が引けるというか。

 

 

 

 まぁ、つまり。

 断るのはよくないよね、って話。

 

 うん。

 

 

「わ、わかった。協力するぞ」

「……やった。ありがとう」

「そ、それで……い、いつから?」

「いつからって……今から……?」

「い、今ぁ!? ここでか!?」

「……材料持ってくれば、できるし」

「いやいやいや! 流石に場所は──ん? 材料?」

 

 

 なんだか、話が変わってきたぞ。

 

 材料……材料……まぁ、確かに材料はいるだろう。

 いるだろうけども、持ってくるものではない。

 

 材料と言う話なら、ここに揃ってるわけだし。

 

 そんな話はともかくと、俺は取り敢えず聞いてみる。

 

 

「あの、材料って?」

「……錬金術なんだから、材料、いる」

「…………錬、金、術?」

 

 

 どうにも、俺は早とちりしてしまったらしい。

 なんだか、すごく、恥ずかしくなってきた。

 

 いやだってさ! 錬金術ってさ! 人間の製造なんて確立されてない新技術だぞ! 

 

 ……そう考えると、なんか変な話だな。

 

 この世界で錬金術は金属を生み出す技術。

 錬金術から金属を生み出し、金属から魔法を、金属から仕組みを作り、そうやって世界は回っている。

 

 故に。

 錬金術は万物を生み出す術ではなく、『物』を生み出すのではなく、金属から物を生み出すだけの、手助けの手段でしかない。

 

 彼女が天才と言われていようが、幾ら何でも人を生み出すのは無理ってもんだ。

 

 

「ひ、人を生み出すって、どうやってやるんだ?」

「この本に書いてあった」

 

 

 そう言うと彼女はおもむろに、カバンから一冊の本を取り出す。

 タイトルは……『賢者タイムのススメ』。

 なんか妙に艶めかしい女と、ローブを着た厳つい男のイラストが書かれた……エロ本だった。

 

 つい数日前、俺のバカ友達に見せられた本だったから、その本のことはよく知っている。

 

 自称賢者の男が弟子の女となんやかんやして、子どもを作るっていうエロ小説だ。

 なんとかさんの新作らしい。

 

 

「……それ、アルシュさんの本?」

「ううん、お姉ちゃんの……好きに持っていってって、言われたから……持ってきた」

「ああ、お姉さんの本なのね……」

「ここに、人の作り方、書いてある、らしいから……試して、みたい」

 

 

 らしいって、読んでないんかい。

 恐らく、裏表紙に書かれてるあらすじから勘違いしちゃったのだろう。

 

 普通するか? そんな勘違い。

 天才少女が、幾ら何でも無知過ぎるだろ。

 

 

「……だから、作ろ?」

「…………」

 

 

 俺は少し目を瞑って深呼吸したあとに、ゆっくりと口を開く。

 

 

「わかった。ちょっと……勉強しようか」

「?」

 

 

 俺は自分の欲望を押し殺し、取り敢えず彼女に真実を告げることを選んだ。

 それが最良であると信じて。

 

 ……なお、この選択を後悔することになるとは、このときの俺は知る由もなかったのだった。

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