シャインポスト 風にのって   作:陽HARU

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三つ編み眼鏡の彼女と、ヘルメットの彼

 

 

第1話 三つ編み眼鏡の彼女と、ヘルメットの彼

 

「春ちゃんにお任せあれ!」

 

いつものように、ブライテストの練習室で元気よく叫んだ青天国春は、鏡の前に立ってポーズを決めた。三つ編みに眼鏡の地味めな私服姿。TiNgSのメンバーとしてアイドル活動を頑張る毎日だけど、今日は少し違う。

 

心臓がドキドキしてる。

 

理由は、今日の夜に会う**彼**のこと。

 

名前は**風間 零(かざま れい)**。23歳の若手競馬騎手。JRA所属で、最近ようやく重賞でも上位に絡むようになってきた実力者だ。身長は春より少し高いくらいで、騎手らしい引き締まった体躯。笑うと意外と可愛い顔になるのに、馬に乗ると目が鋭くなって、まるで別人みたい。

 

二人が出会ったのは、半年くらい前。春が友人と遊びに行った競馬場で、零が落馬した後のケアをしているところを偶然見かけてしまったんだ。

 

「大丈夫ですか!? 春ちゃんが手当てしてあげますよ!」

 

眼鏡を直しながら慌てて駆け寄った春に、零は苦笑いしながら言った。

 

「……君、アイドルだろ? こんなところで泥だらけになっちゃダメだって」

 

それから、なぜか連絡先を交換して、こっそり付き合い始めた。

 

アイドルが彼氏を作るなんて、事務所にバレたら大問題。でも春は前向きだ。「春ちゃんにお任せあれ!」でなんとかなるって信じてる。

 

夜、都内の小さな公園のベンチで待ち合わせ。

 

零はいつものようにキャップを深く被り、マスクをして現れた。騎手は体重管理が命だから、夜遅くに外食はほとんどしない。でも今日は春のために、甘口カレーのテイクアウトを買ってきてくれた。

 

「遅くなってごめん。今日の調教が長引いて……」

 

「ううん! 零くんが無事でよかったよ。レース、見たよ! 3着だったね。すごいじゃん!」

 

春は眼鏡の奥の目をキラキラさせて笑う。零は照れくさそうに頭をかいた。

 

「まだまだだよ。お前みたいに、ステージでみんなを笑顔にできるわけじゃないから」

 

二人は並んでベンチに座り、カレーを分け合う。春は甘口を大好きで、零は少し辛めを好む。でも今日は春に合わせて甘口ばかり。

 

零の指には、今日のレースで擦れた絆創膏がまだ貼ってあった。騎手って、毎日命がけなんだ。馬のスピード、落馬の恐怖、減量の苦しさ……全部知ってる春は、零の手をそっと握った。

 

「零くんは、春のヒーローだよ。馬を走らせる姿、かっこいいもん」

 

零は少し黙ってから、春の三つ編みを優しく指でいじった。

 

「……お前がアイドルやってる姿、俺も大好きだ。テレビで観てるだけで、なんか元気出る。でも、俺みたいな地味な騎手と付き合ってて、大丈夫か? ファンにバレたら……」

 

「大丈夫! 春ちゃんにお任せあれ!」

 

春はいつもの口癖で笑った。でも、心の中では少し不安もあった。TiNgSはまだ「シャインポスト」を目指す途中で、メンバーみんなが頑張ってる。杏夏ちゃんや理王ちゃんに心配かけたくないし、過去のHY:RAINのトラウマも、まだ完全に消えたわけじゃない。

 

それでも、零と一緒にいると、素の自分でいられる気がした。

 

三つ編み眼鏡の文学少女みたいな春と、ヘルメットとブーツの騎手。世界が違う二人なのに、なぜかぴったり重なる。

 

「次のレース、勝ったら……デート、いい? ちょっと遠くの牧場とか」

 

零の言葉に、春は目を輝かせた。

 

「もちろん! 春、絶対応援に行くね! でも、零くんが落ちないように、気をつけて……」

 

零は小さく笑って、春の額に軽くキスをした。

 

「約束するよ。春のためにも、勝つ」

 

夜風が二人の間を優しく通り抜けた。

 

——春のスマホに、杏夏からメッセージが来ていた。

 

『春、今日の練習お疲れ! また何か隠してないよね? 心配だからねー』

 

春は慌てて画面をオフにした。

 

「ふふ……まだ内緒だよ、零くん」

 

こうして、二人の秘密の関係は続いていく。

 

 

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