**ドバイワールドカップ当日**
メイダン競馬場(UAE・ドバイ)。夜のレースにもかかわらず、気温はまだ28℃。ダート2000m、直線400mの長い舞台。世界のトップホース12頭が集結し、総賞金1200万ドル(約18億円)の超一戦。ブライトウィンドは日本代表として単勝8番人気。
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日本時間は深夜2時。
春は自宅の暗い部屋で、ノートパソコンとスマホを並べてレース中継を待っていた。三つ編みを無造作にまとめ、眼鏡が涙で曇りそうになる。
**Xトレンド**(リアルタイム)
1位 #ドバイワールドカップ
2位 #ブライトウィンド
3位 #青天国春自粛
4位 #春零
【ファン投稿】
「春ちゃん自粛中なのに、ブライトウィンド応援してる……零騎手と春ちゃんが本当なら奇跡だよね」
「春ちゃん今、中継見てるかな……一緒に祈ろう」
「零くんがんばれ!! 春ちゃんの分まで!!」
杏夏と理王から同時LINE。
**杏夏**:春、私たちも今、寮で中継見てる。一緒に応援してるよ。
**理王**:バカ。泣くな。零が勝ったら、春の自粛も少しはマシになるかも。
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メイダン現地。
パドックで神崎馬主が緊張した面持ちでブライトウィンドを眺め、高嶺調教師が零に最後の言葉をかけた。
「零……砂のキックバックは想像以上だ。先行して粘る作戦で行け。気性が荒れたら無理に追うな。馬の命が第一だ」
零はヘルメットを被り、ブライトウィンドの首を強く撫でた。
「春……今、日本で待ってるよな。お前とみんなの想いを、砂漠に届ける」
ゲートイン。
ブライトウィンドはスタートで好発進。零は好位3〜4番手をキープした。ダートのキックバックが顔や体に激しく当たり、視界が悪い中でも零は冷静に手綱を操る。道中は平均ペース。世界の強豪たちが先行争いを演じる中、零はブライトウィンドの息を整えながら我慢した。
残り600m——直線へ。
零が馬の肩を叩いた瞬間、ブライトウィンドの気性が爆発した。砂に慣れきれず、急に外へ膨れ、零の体が大きく傾く。過去の落馬トラウマがフラッシュバック。
「くっ……! ブライトウィンド!!」
零は必死に体勢を立て直し、馬の首に体重を預けた。
「春が……見てくれてるぞ!! お前の明るい風を、砂漠に吹かせろ!!!」
残り400mの長い直線。
ブライトウィンドが再び集中。砂を蹴り上げながら、驚異的な末脚を発揮した。外から一気に伸び、先行するアメリカの強豪、欧州のチャンピオンを次々と交わしていく。
残り150mで先頭に並び、残り50mで半馬身リード!
「行けぇぇぇ!! ブライトウィンド!!!」
零の叫びが夜のメイダンに響き渡った。
**1着 ブライトウィンド(風間零騎乗)**
2着に1馬身差。世界の頂点に輝いた瞬間だった。
スタンドの観客がどよめき、日本人関係者が総立ちでガッツポーズ。
高嶺調教師は膝をついて泣き、神崎馬主は両手を天に掲げた。佐伯厩務員は「やったぞ……!」と叫びながら零に駆け寄った。
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日本時間。
春は画面の前で崩れ落ち、声を上げて泣いた。
「零くん……ブライトウィンドくん……やった……やったよ……!!」
杏夏と理王から即座にビデオ通話。
杏夏:「春! 優勝したよ!! 零くん、めっちゃかっこよかった!!」
理王:「お前、泣きすぎ。……でも、最高のレースだったな」
Xはさらに大炎上。
**#ブライトウィンド優勝** 世界トレンド1位
【ファン】「春ちゃん見て! 零騎手勝ったよ!!」
【ファン】「これで春ちゃんの自粛も解除されるといいね……春零カップル公認希望」
【ファン】「春ちゃんおめでとう!! 零くんも!!」
零は勝利インタビューで、汗と砂まみれの顔でマイクに向かった。
「ブライトウィンドは、みんなの想いでここまで来ました。日本で応援してくれている大切な人……特に、僕を支えてくれている人がいます。ありがとう。世界を取れて、本当に嬉しいです」
春は涙を拭きながら、零にメッセージを送った。
**春**:零くん……おめでとう!! 春、泣きすぎて眼鏡曇ってるよ……春ちゃんにお任せあれ! これで春も、絶対に這い上がるから。一緒に、夢を続けようね。
零は控室でスマホを見て、初めて笑顔を見せた。
「春……勝ったよ。お前のおかげだ」
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しかし、喜びも束の間。
日本では事務所から春に新たな連絡が入っていた。
「優勝おめでとう……だが、交際疑惑はまだ調査中。自粛は継続とする」
春の危機は完全には去っていない。
それでも、砂漠を越えた「明るい風」は、春の心に確かに新しい光を灯していた。