宝塚記念優勝から三週間後——高嶺厩舎の会議室は異様な緊張に包まれていた。
テーブルにはフランスのロンシャン競馬場の資料と、**凱旋門賞(Prix de l'Arc de Triomphe・GⅠ・芝2400m)**のエントリー書類が広げられている。世界最高峰のレース。10月第1日曜日、雨の影響を受けやすい重馬場で、欧州古馬の頂点を決める伝統の一戦だ。
神崎隆一馬主が興奮気味に言った。
「ドバイに続いて、凱旋門賞だ! ブライトウィンドは世界一の素質がある。欧州の強豪を倒せば、歴史に名を刻める。零くん、どうだ?」
高嶺鉄平調教師は腕を組んで慎重だった。
「距離は2400mとブライトウィンドの適性範囲内だが、ロンシャンの長い直線と、欧州馬特有の持続力は脅威だ。雨が降れば馬場が重くなり、気性難のブライトウィンドにはリスクが高い……」
零は資料を見つめながら、静かに言った。
「俺は……挑戦したいです。春にも、世界の最高峰で走る姿を見せたい。ヴァン・デル・ベルク騎手も、凱旋門賞に参戦するみたいですし」
ちょうどその時、零のスマホにメッセージが届いた。
**ヴァン・デル・ベルク**:Congratulations on Takarazuka. See you in Paris. I will beat you at Arc.(宝塚おめでとう。パリで会おう。凱旋門で君を倒す)
零は小さく笑った。新たなライバルが、明確に火花を散らしてきた。
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TiNgS寮では、春がメンバーと一緒に凱旋門賞の動画を見ていた。
杏夏が目を輝かせた。
「春、ブライトウィンドくんが凱旋門賞!? フランスだよ!? 私たちも応援に行きたい!」
理王が珍しく興奮気味に。
「ロンシャン2400m……欧州の超一流馬が集まるレースだ。雨が降ったらタフになる。零くん、覚悟決めてるみたいだな」
春は三つ編みを指で巻きながら、決意を込めて言った。
「春ちゃんにお任せあれ! 零くんとブライトウィンドくんが世界最高峰に挑むなら、春も全力で応援するよ。事務所にも『TiNgSとして欧州遠征応援企画』を提案してみる!」
その夜、春と零はビデオ通話で長く話した。
「零くん、凱旋門賞……すごいね。ロンシャンの長い直線、春も調べてみたよ。雨が多いって聞いたけど……ブライトウィンドくん、大丈夫かな?」
零は優しく微笑んだ。
「大丈夫だ。ブライトウィンドはドバイの砂も克服した。お前が日本で待っててくれるなら、どんな馬場でも走れる。凱旋門賞……俺たちの夢の頂点にしたい」
春は画面越しに頰を赤らめた。
「春も、零くんの凱旋門優勝を、絶対に見届けたい。杏夏ちゃんたちと一緒に、フランスに行けるように頑張るね!」
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高嶺厩舎では、本格的な凱旋門賞遠征プロジェクトが始動した。
- 9月中旬にフランスへ輸送
- 現地で2週間調整
- ヴァン・デル・ベルク騎乗のシャドウブレイズをはじめ、欧州の3歳女王馬・古馬チャンピオンが強敵
- 雨予報が出れば重馬場対策としてブリンカー強化と脚元ケア
神崎馬主はスポンサーを増やし、TiNgSとのコラボ企画「春風プロジェクト」も始動。春の新曲「Arc de Lumière(凱旋門の光)」が制作されることになった。
零は毎朝、ブライトウィンドに跨がりながら心に誓った。
「春……お前と俺の風を、ロンシャンの空に届ける」
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Xでは再びトレンドが沸騰していた。
**#ブライトウィンド凱旋門賞**
**#春零凱旋門**
**#TiNgS欧州応援**
【ファン】「春ちゃんの新曲が凱旋門テーマ!? 零くんと春ちゃんの夢が世界に広がってる……尊い」
【ファン】「ヴァン・デル・ベルク vs 風間零、国際対決熱すぎる!」
【競馬ファン】「日本馬が凱旋門勝ったら歴史的快挙だ。ブライトウィンド、がんばれ!」
春は自宅で新曲の歌詞を書きながら、零にメッセージを送った。
**春**:零くん、春の新曲、凱旋門のために書いたよ。
「どんな坂も、どんな雨も、君の風が照らす光」——って。
春ちゃんにお任せあれ! フランスでも、春の明るい風を届けるね!
零は返信した。
**零**:ありがとう、春。
お前がいるから、俺もブライトウィンドも、凱旋門の頂点を目指せる。
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こうして、ブライトウィンドと零の新たな挑戦——**凱旋門賞**への道が、本格的に動き始めた。
日本とフランス、二つの国を繋ぐ「明るい風」が、秋のロンシャンに吹き荒れようとしていた。
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