Pokémon Legends WonderLans 作:難聴系以下略
「ZAの…ZAの主人公!!?」
駅内に、寧々の声が鋭い破裂音となって響き渡った。
「えっ? えっ? な、なに……?」
突然叫ばれたセイカは目をぱちぱちさせるばかりで、さっぱりと言った様子だ。
「寧々?急に叫んでどうしたんだ、それに主人公とは…」
「ま、待って。間違いないの。服の感じ、バッグ、名前……全部…」
その呟きは微かに震えていた。まるで伝説ポケモンでも見つけたかのような驚きよう。
「主人公?セイカちゃんってそんなにすごい子だったの!?」
「……主人公? なんの話ですか?」
当の本人はぽかんと口を開けて首を傾けた。
「あっ、ご、ごめんなさい、急に叫んで…
(当たり前じゃん。セイカはこの世界がゲームの中だって知ってる訳でもないし…でも、なんで?なんでこんなピンポイントに…)」
その様子を後ろで見ていた類は、寧々に耳打ちした。
「…寧々。詳しく聞かせてくれるかい?」
「ん、類…それが─」
2人が何か話している中、司達はセイカに質問していた。
「先程シブヤがないとおっしゃいましたが_」
「司くん、せっかくお友達になれそうだし、もっとゆるーく話さない?セイカちゃんもそれで良いよね!」
「あっ、は…うん、全然良いよ。」
一瞬咳払いした後、司は再び口を開いた。
「さっきシブヤがないと言っていたが…それはつまり、シブヤという土地自体が無いということか?」
「うん。少なくとも私の知る限りだと…」
「そっか〜…そもそも帰る場所が無いんだ…」
えむは困ったような顔をした後、「あ、それとそれと〜!」と言い、再びセイカに顔を近づけた。
「さっき寧々ちゃんがセイカちゃんの事『主人公』って言ってたけどさ〜!もしかしてセイカちゃんってすっご〜い子なの!?」
「おい、落ちつけえむ!…すまんセイカ。えむはこういうやつなんだ。」
「全然元気いっぱいで可愛いし、気にしなくて良いよ…。で、私にそんな大した物はないよ?多分ね。」
─そうして三人がワチャワチャしてる間も、類は寧々から話を聞きながらセイカを観察していた。腕を組み、興味深そうに。
「なるほど…話が見えてきたよ。しかし、よく名前まで覚えていたね…」
「毎日一回ハZAノPV動画ヲ見テ、期待ニ胸ヲ膨ラマセテイマシタネ。」
少し耳を赤くして「ちょ、余計なこと言わないでよ…恥ずかしいから…」
先程よりは落ち着いたが、えむはまだまだ話したそうにうずうずしていた。
「そっかぁ。でもセイカちゃん、なんかこう…キラキラしてる感じ?主人公っぽい波動っていうのかな?」
「え〜…?でも、私は普─」
「普通では、ないよ。」
「え?」
類の言葉で、その場の空気が変わった。声のトーンで何かを察したのか、司達も話を聞く目で類を見ている。
「寧々が言った『主人公』という言い方では、驚かせてしまっても無理は無い。きっと『主人公みたいに目立つ存在』って意味だったんじゃないかい?」
「う、うん。ごめん、混乱させて…」
「なるほど…?突然主人公って言われてびっくりしたよ、そういう事か…でもちょっと嬉しいかも、そう言ってもらえて…」
「実際少し話しただけだが、セイカは真面目なのが伝わってきたからな。オーラというのは案外自然に出るのやも…」
「…寧々、これで良いかい?」
「うん。突然主人公だって言われてもただ混乱させるだけだし…二人には後で話そう。」
「あぁ、それが良いね。」
二人の会話はこれだけだったが、それで納得したのは長年の付き合い故か。
類は出口を向き直し、司達を手招きした。
「ひとまずこんなところかな。さぁ、外へ出ようか。」
「うんっ!ミアレシティ…だっけ?どんな所なんだろう!気になるなぁ…」
「うむ、旅路にハプニングはつきものだからな。オレはどんな事でも楽しんでみせる!」
「旅路って、ただ帰ろうとしてただけなんだけど…そうだね、せっかくの機会だからわたしも…」
「…ミアレ…ミアレガレットとかプリズムタワーとか、色んな事をしてみたいな。で、やっぱり─」
「カロスにしかいないポケモンに、沢山出会いたいな…!」
─そして、五人は門を潜った_
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駅の門を抜けた瞬間、視界が一気に開けた。
まるで世界が色を増したような――そんな錯覚すら覚える。
真っ直ぐのびた大通り、その両脇には古い石造りの建物が整然と並び、窓辺の花壇にも彩りがあってどこか上品だ。
左手の建物には、赤く光るラインが走っていた。
角度を変える度に反射して、まるで旅人を導く灯台のようだ。
私の知っている建物とは違う、吹き抜けのポケモンセンター。
右側には巨大な電光掲示板がそびえ立ち、
くるくると変わる映像が街にさらに鮮やかな色彩を足していた。
ポケモンのCM、食品の広告、見慣れない文字の羅列。
そこにいるだけで“別世界に来た”という実感が押し寄せる。
そして――正面。
街の中心を貫くようにそびえる、白銀の塔・プリズムタワー。
青空を切り裂くようにまっすぐ伸びるそのシルエットは、
遠近感すら狂いそうなほど巨大で、
ひと目見ただけで「ミアレの象徴」という言葉が脳裏によぎった。
太陽の光が反射して、塔の表面がゆっくりきらめく。
風が高層階にぶつかって小さな唸りを生み、
街全体が塔の存在と共鳴しているかのようだ。
「ここが…ミアレシティ…!」
その呟きは誰のものだったんだろう。いや、あるいは皆の声か。思わず足を止め、塔の頂きを見上げた。
雄大な景色。それを見て最初に声を上げたのは─えむちゃん、だったっけ。
「わーっ、すごいすごいすごーい!」
「おぉ…これは…言葉が出んな…」
「…とても綺麗だね。そしてあの塔…まるでかの有名なエッフェル塔のようだ。」
「うわ…こんな感じなんだ…!トレーラーで見た時も凄かったけど、生で見るのは全然違う…」
「…高い…」
天高く聳え立つ塔、プリズムタワー。私は暫くそれから目が離せなかった。
塔から視線を戻すと、みんながそれぞれ好きな方向を向いてはしゃいでいて─それと同時にふと、どこからか視線を感じた。何だろう?
人混みに紛れていた違和感の正体は、すぐに形になって現れた。
「いかにも観光客ってやつ、いねぇかな……ん、そこにいる……おーい、そこの人達!」
少し離れた場所から、軽い調子の声が飛んでくる。
振り向くと、手を大きく振りながらこちらに向かってくる男の人がいた。
ラフな服装に、どこか慣れたような足取り。
人混みの中でも迷いなく進んでくる様子から、この街に慣れているのがなんとなく分かる。
「やっと見つけた!いや〜、助かった助かった」
距離が一気に詰まる。近い。ちょっと近い。
「えっと……あの、何か用ですか?」
思わずそう聞くと、その人はにっと笑った。
「あ、ごめんな。観光客っぽかったからさ。ちょっと頼みがあってね」そう言いながら、彼の足元で小さな影が三つ、ぴょこぴょこと動いた。
「ちこっ!」
「かぶっ!」
「ワニ!」
足元には、三匹のポケモン。
黄緑色の小さな体のチコリータ、元気そうに鼻を鳴らすポカブ、そして元気に跳ね回るワニノコ。
「わぁ……!」
思わず声が漏れる。どの子も、写真や映像で見るよりずっと生き生きしていて、目が離せない。
鳴き声に反応したのか、司さん達がこちらを向き─目の色を変えて近づいてきた。
「こっ、これは…ポケモンじゃないか!?」
「ひょえっ!?この子達がポケモン?皆可愛いな〜♪」
「チコリータ、ポカブ、ワニノコ…御三家?てことは、何かのイベント…?」
「おぉ、これが…チコリに恐竜の体を生やしたような子、豚のような子、二足歩行の鰐のような子…興味深いね…!」
「こいつらさ、ちょっとした撮影に協力してもらおうと思ってて。で、ついでに人手も欲しいな〜って。…所で、この人達も友達?」
「あ、はい。さっき知り合ったんですけどミアレの人ではないみたいですよ。後そこのロボットも。」
「コンニチハ。」「喋った…??」
暫くして、ポケモンに目を奪われていた司くんが顔を上げた。
「撮影と言っていたな。何か撮るのか?」
「あぁ。オレはガイって言うんだけど、ホテルZって所の関係者でさ。今ちょっと宣伝用の動画作ってんだよね。」
軽い口調だけど、どこか慣れている感じ。
「オレのカメラに向かって『ミアレに来たらホテルZ!』って言うだけで良いんだ、協力してくれないか?」
「なるほどな!つまりオレ達に出演依頼という訳か!」
司さんが一歩前に出る。その勢いに少し驚きつつも、男の人は楽しそうに笑った。
「お、ノリいいねぇ。助かる助かる。」
「ねぇねぇ!動画ってどんなの撮るの!?楽しそう!」
えむちゃんもすぐに食いつく。
「そんな大した物でもないぜ。あんた達の言葉を流した後に俺がホテルZの魅力を10分位喋るんだ、宣伝動画として最高だろ?」
…聞いてるだけだと何故か良く聞こえない。特に─
「10分喋る…?」
あっ、寧々ちゃんと同じ事思ってたみたい。
「…まぁ、喋り方と編集次第と言うしね。…で、僕達はさっきの言葉を言うだけで良いんだよね?ガイさん。」
「あぁ、勿論それでOK!できるよな!」
何だろう、圧を感じる。まぁ断る理由もないか…
「よし、じゃあこのまま撮影するぜ──」
─その時、電光掲示板から音が響いた。あれは…
『人とポケモンの更なる共存へ。』
「クエーサー社…?」
まだまだミアレには、知らない物が沢山ありそうだ。
1話4000字のペースで書いてますが、この調子だと本編終わらせるのにも100話位掛かりそうですね…努力します