「コレが例のブツだ、バナ」
妖精王国の警備兵から密かに購入したマスケットをバナに差し出す。それを見たバナは驚きに目を丸くした。
「おお、これが噂の妖精王国の銃か!妖精王国も意外と乙なものを作るんだねぇ!」
目を輝かせて銃を手に取り観察するバナ。それを見た教主は、バナに似たような物を作れるかと訊ねた。
「君は腕の良いエンジニアと聞いているんだが、どうだ?これと似たような物を作れるか?」
「ああ、任せな!エルフの町で似たようなモノをよくいじってるからねぇ!」
聞けば、よく鎮圧班の銃をニコイチにして魔改造しているというバナ。それを聞いた教主は、大いに満足した。
「しかし、教主もエルフとのパスが厚いんだろう?エルフから銃を買えばいいんじゃないか?」
「私が欲しいの精密機械じゃなくて、信頼できる武器なんだ。頑丈で、簡素で、確実に動く銃がね。それにはこのマスケットが良いモデルになるという訳さ」
「ほう?なるほど……?」
目を輝かせて銃を撫でるバナ。バナはしばらく考えると、教主に提案をした。
「10日ほど時間をくれ。リバースエンジニアリングをしてコイツの仕組みを解析してみる。それを元に改良を加えつつ、新しく銃の設計をしてみよう」
「うん、任せた。楽しみにしているよ」
教主が去ろうとしたその時、バナが呼び止めた。
「おっと教主サン!例のモノを忘れてないかい?」
「ん?ああ、すまないね」
そういって、教主はウォッカの酒瓶を渡した。
「へへへ、これがなくちゃ始まらない」
そう笑いながら、バナはおもむろにキャップを空けると、瓶に口を付けた。
「おお……」
瓶の中身がグングンと減っていく。教主はいつもバナが見せる恐ろしいほどの飲みっぷりを見て、恐怖と畏敬の念を感じていた。
そうしてバナは瓶の中身を一気に飲み干すと、酒瓶を投げ捨て、怒号をあげた。
「さあ、お前ら、仕事だ!!!」
ハンマーで金床を乱暴に叩いて合図をする。ハンマーを持つと性格が変わるバナだが、酒が入る事で、より一層激しく変わってしまう。教主はこの時のバナを怒らせると怖いことが分かっているので、そそくさと工房を後にした。
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ある日、バナは夢を見た。そこには、教主と同じような手足の長い人間が立っていた。
「……? 教主……じゃない……?」
人間の手には、マスケットとは似ても似つかない、変わった形の銃が抱えられていた。
教主より掘りの深い白い顔、白髪の髪……。明らかに教主とは違う別の人間だった。
「Я дарую вам это」
「へ?」
バナの手元に銃が渡る。そして、その人間は静かに退くと、光となって消えていった。
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また、ある日バナは夢を見た。あの日と同じように、ウォッカを一気飲みして仕事をした日の夜である。
またも少し離れた所に、一人の人間が立っている。その人間は、妖精王国の警備兵のマスケットに似た銃を手に抱えている。
「Я дарую вам это」
あの日の人間が言ったような言葉を人間が放つ。そして、自身の身長に及ぶ程の巨大な銃がバナの手に渡った。
「あのぉ……」
そう言葉をかけるのも束の間、人間は光となって消えていった。徐々に白んでいく視界の中、バナは徐々に夢から覚めていった。
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「…………」
夢から覚めたバナの身体の上に、1丁の銃が横たわっている。夢の中で人間から授かった銃である。
作業台には先日の人間から授かった、分解された銃が置かれている。バラしては組み立て、またバラしては組み立てを繰り返した銃火器である。
バナはこの銃に非常に感心していた。設計に余裕があり、部品点数も少なく、一度慣れてしまえば目隠ししても解体、組み立てが容易であったからだ。
この時バナは分からなかった。バナが夢の中で授けられた銃とは、AK-47とモシン小銃であったことを。
バナは分解した銃を精密にスケッチし、設計図に書き落としていった。鋳型を作り流し込み、部品を削って、形を整えて、完成させていった。
そうして、約束の日がやって来た。
約束の日の朝、教主がバナの工房に顔を出した。
「やぁ、バナ。例のモノは出来たかい?」
「おお、教主。やぁやぁできたよぉ。これを見てくれ」
そこには、精密にコピーされたAK-47とモシン小銃がずらりと並んでいた。
「こ、これはいったい……?」
「へへへ。どうかなぁ?気に入ってくれると良いんだけど」
教主がおずおずと銃を手に取り、その重さを実感する。
丁寧に削りだされた鉄と木材、ガチャリと音を立てるコッキング機構。どこをどう見ても、それは完璧なライフルだった。
「これをいったい……どうやって……?」
「世界樹から天啓を受けたっていうのかな?夢の中に教主みたいな人間っぽいのが私に話しかけてきたんだよ。その銃を作れって。それで私は必死に分解してスケッチを取って作ったんだ。そうしたら……できちゃったんだねぇ」
そう言ってバナは得意げに鼻を鳴らした。
「まぁ、弾はまだできてないんだけどねぇ」
「うむ、そうか」
教主は満足そうに頷いた。バナはそれを見て誇らしい気分になる。
「お礼はまた酒で良いか?」
「ああ、それで頼むよ。とびっきりウマい酒でね」
「分かった。君には特に優先して卸すとしよう」
教主はサンプルに小銃と突撃銃を一丁ずつ持って帰った。
これらの銃は教団にとって最も強力な武器になる。教主はそう確信した。あとは弾の問題と、その量産体制を確保するだけだった。
後日、教主はバナに大量のウォッカを卸した。バナはそれを見て大変喜んだという。