世界樹教団、マフィアになる   作:韓非子

31 / 31
第31話「ローネ副市長、爆誕」

 ローネはミュートの助けを受け、万全な準備を整えた。市民に親しみやすいようにと髪をおろして、とんかつのアクセサリーを施したカチューシャを付けた姿は、見る者に和やかな気持ちを与えてくれる。

 

「へへへ、どうでしょうか?班長」

「良いんじゃないか?後は私と練習したように、市民の前でスピーチをするだけだ。しくじるなよ」

「はい!ミュート班長!」

 

 ミュートに見送られて、ローネが演説台の前に立つ。やや緊張した面持ちのローネが、意を決してマイクを手に持ち、演説を始めた。

 

「初めまして!今回副市長選に立候補したローネです!」

 

 元気のよい声が市庁舎の前に響く。市長室からその様子を見守っているエレナも、意外な奴が立候補したと驚いている。

 

「なんだ、ローネの奴も立候補したのか?」

「はい。諜報班長と一緒に選挙演説の練習をしている所も確認しています」

「ミュートの奴……。何か企んでいるんじゃないか?」

 

 他の候補者と違い、ミュートの意思……。ローネの胸の内を熱く語る、はっきりとした声が、エルフたちの胸に響いていく。

 

「今、私たちは立ち向かうべきです!変わるべきなんです!こうしてじっとしていては人間に良いようにされるだけなんです!母星にだって帰る事ができません!このままではいけないんです!」

 

 ローネの熱い演説に、エルフたちが騒めきたつ。ローネの演説と、市民の様子を見守るエレナは、そのただならぬ様子をただ見守っている。

 

「意外な奴が現れたな……。このままでは副市長ではなく市長になってしまいそうだな」

「そんな事は許されません!市長はエレナ様であってこその市長です!」

「ま、あたしだってそう易々と明け渡す気はないさ。副市長には副市長としての仕事を全うしてもらうだけだよ」

 

 演説は続く。ローネの演説は大成功し、得票率においても圧倒的な大差をつけ、選挙に大勝した。

 

 

☆☆☆☆

 

 

「やぁ、ローネ!歓迎するよ」

「よ、よろしくお願いします、エレナ市長……」

 

 市長室でエレナとローネがあいさつを交わす。二人はあいさつもそこそこに軽く雑談をかわすと、さっそく本題に入った。

 

「さっそくだが、あたしが副市長選を実施した理由は分かるか?」

「え?お仕事が忙しくなったとか、そんな理由かなって思ったんですけど……」

「まぁ、似たような理由さ。あたしもあの一件以来、少し調子が悪くてね。あたしの仕事を分担してくれるような、頼りになるヤツが欲しいって思ったんだよ。特に、あの人間を中心とした渉外業務なんかね」

 

 エレナが忌々し気に呟く。

 

「君もスパイとして諜報任務に当たってたんだろう?期待しているよ、ローネ副市長」

「は、はいぃ、エレナ市長」

 

 ローネが市長室を後にする。

 

 登庁初日とあって、簡単な業務だけをエレナから割り当てられたローネ。その業務を確認するために、アメリアに連れられて、ローネが割り当てられたという副市長室に向かった。

 

「ここがあなたの執務室です」

「はい、ありがとうござ……」

「当選おめでとう、エージェント・ローネ」

「ミュート班長……!」

 

 副市長室に入ると、ミュートが机に腰かけて待っていた。アメリアもびっくりしたのか、何をしているとミュートに怒鳴りつけた。

 

「エレナ市長様から割り当てられた部屋で何をしているんですか!ミュート諜報班長!」

「私の部下が当選したと聞いて、祝いに来ただけさ、アメリア」

「あなたには関係のない事です!出て行きなさい!」

 

 そう言い放つアメリアに、ローネが口を挟む。

 

「あの~、アメリアさん?実は、お願いがあるんですけど……」

「ローネ副市長?どうしたんですか?」

「実は……ミュート班長を秘書に任命したくて……」

「え……?」

「なっ……!」

 

 あまりにも予想外の提案にアメリアとミュートが、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして驚いている。特に、ミュートは自身がローネの下に入る事を理解し、その事に抵抗を感じているようだった。

 

「な、何を言ってるんだローネ……!お前は自分が何を言ってるのか理解しているのか……!?」

「えへへ、もちろんですよ、ミュート班長。今や私は副市長ですよ?エレナ市長と相談して、組閣するんです。特に渉外を行うんだったら、情報も大事になってくるでしょうし、諜報班や情報班も私が直接管轄するようになったら良いかなーって思いまして~」

 

 ふわふわとした笑顔で既に構想を練っていると言うローネ。二人はこの副市長は仕事ができると感じ取り、ローネの提案を受け入れることにした。

 

「ミュート班長も、いちいち遠くから私に指示を下すより、秘書として私を管理する方がやりやすいですよね?私も班長から助けを貰えるとすごく助かるんですけど~」

「……いいだろう。一度、私もお前のやり方に従ってみよう」

「えへへ、ありがとうございます」

 

 ローネが席に着き、パソコンのキーボードをたたき始める。二人はそれを驚いたように眺め、何か恐ろしいものを見ていると感じていた。

 

 やがて、アメリアはハッとしたように、我に返った。

 

「で、では、私も仕事がありますので!これで……」

 

 そう言って、アメリアは副市長室から出て行った。

 

「まずは、情報班と諜報班を統合して、情報管理局を設立します。これで諜報班が得た情報を情報班と共有しやすくなって、業務も効果的になるはずです。ミュート秘書官は秘書官と兼任して、情報管理局局長も兼任してもらいたいと思います」

「う、うむ」

「何か重要な情報を入手したら、逐一私に報告してください。いいですか?」

「わ、わかった」

「あとは……」

 

 ローネが顎に手を添えて何かを思案する。

 

「そうですね……。エレナさんが今までやってこなかった事……」

「……?」

 

 ミュートが怪訝そうな表情でローネを睨んでいる。ミュートは、ローネの恐ろしい潜在能力を目の当たりにして、脅威を感じている。

 

「私に考えがあります」

 

 ローネの進撃が始まる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

トリッカル お前が教主になるんだ(作者:アイド)(原作:トリッカル もちもちほっぺ大作戦)

色んなもちほっぺの話を、劇場で見れるストーリー風に仕上げていく。▼つまるところ都合の良い二次創作だな!


総合評価:41/評価:-.--/連載:27話/更新日時:2026年06月17日(水) 00:33 小説情報

だからこそ、歩み続けるしかない(作者:もちもちおもち)(原作:トリッカル・もちもちほっぺ大作戦 )

『エルフィン』になってしまった、『トリッカル』の存在しか知らない者が、色々と思い悩み、何度も失敗してしまうけど、それでも頑張る話▼※グローバル版の知識で作成しております。


総合評価:432/評価:8.81/連載:2話/更新日時:2026年06月15日(月) 02:46 小説情報

つぶやきギデオン(作者:赤銀)(原作:トリッカル・もちもちほっぺ大作戦 )

▼ギデオンがつぶやくだけ▼刊行用に表紙作成しました↓▼【挿絵表示】▼表紙カバー↓▼【挿絵表示】▼BOOTHの入荷完了しました。▼https://booth.pm/ja/items/8090929▼電子書籍用版は↓です。▼https://sekiginn.booth.pm/items/8165266▼書籍版の方は在庫抱えちゃったので、勿体無いけど少し経ったら処…


総合評価:287/評価:8.83/完結:29話/更新日時:2026年05月26日(火) 18:30 小説情報

エルフィン「きょーしゅー! 起きてー!」(作者:如月SQ)(原作:トリッカル・もちもちほっぺ大作戦)

「きょーしゅー! きょーしゅー!」▼「えへへへー! きょーしゅー!」▼「おめでとう! きょーしゅ!」▼「こっちだよ、きょーしゅ!」▼「朝だよ、起きてー!」▼「今日も良い天気だよー!」▼「もう、お寝坊さんなんだから!」▼「きょーしゅー! 起きてー!」


総合評価:2781/評価:9.08/完結:22話/更新日時:2026年04月16日(木) 12:00 小説情報

【トリッカル】エーリアス転生者総合スレ【もちもちほっぺ大作戦】(作者:lumi27)(原作:トリッカル・もちもちほっぺ大作戦)

気がついたらどこかの次元のエーリアスでもちほっぺになっていた転生者たちの記録▼この作品はフィクションでトリッカル・もちもちほっぺ大作戦の【同人作品】です。▼登場する人物や設定は全て架空のもので、実在のものとは一切関係ありません。▼この作品の登場キャラクターは全て人間換算で18歳以上です。▼ネタは某所を参考にしています。▼トリッカル・もちもちほっぺ大作戦はAn…


総合評価:1543/評価:8.81/連載:89話/更新日時:2026年06月16日(火) 00:15 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>