世界樹教団、マフィアになる   作:韓非子

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第31話「ローネ副市長、爆誕」

 ローネはミュートの助けを受け、万全な準備を整えた。市民に親しみやすいようにと髪をおろして、とんかつのアクセサリーを施したカチューシャを付けた姿は、見る者に和やかな気持ちを与えてくれる。

 

「へへへ、どうでしょうか?班長」

「良いんじゃないか?後は私と練習したように、市民の前でスピーチをするだけだ。しくじるなよ」

「はい!ミュート班長!」

 

 ミュートに見送られて、ローネが演説台の前に立つ。やや緊張した面持ちのローネが、意を決してマイクを手に持ち、演説を始めた。

 

「初めまして!今回副市長選に立候補したローネです!」

 

 元気のよい声が市庁舎の前に響く。市長室からその様子を見守っているエレナも、意外な奴が立候補したと驚いている。

 

「なんだ、ローネの奴も立候補したのか?」

「はい。諜報班長と一緒に選挙演説の練習をしている所も確認しています」

「ミュートの奴……。何か企んでいるんじゃないか?」

 

 他の候補者と違い、ミュートの意思……。ローネの胸の内を熱く語る、はっきりとした声が、エルフたちの胸に響いていく。

 

「今、私たちは立ち向かうべきです!変わるべきなんです!こうしてじっとしていては人間に良いようにされるだけなんです!母星にだって帰る事ができません!このままではいけないんです!」

 

 ローネの熱い演説に、エルフたちが騒めきたつ。ローネの演説と、市民の様子を見守るエレナは、そのただならぬ様子をただ見守っている。

 

「意外な奴が現れたな……。このままでは副市長ではなく市長になってしまいそうだな」

「そんな事は許されません!市長はエレナ様であってこその市長です!」

「ま、あたしだってそう易々と明け渡す気はないさ。副市長には副市長としての仕事を全うしてもらうだけだよ」

 

 演説は続く。ローネの演説は大成功し、得票率においても圧倒的な大差をつけ、選挙に大勝した。

 

 

☆☆☆☆

 

 

「やぁ、ローネ!歓迎するよ」

「よ、よろしくお願いします、エレナ市長……」

 

 市長室でエレナとローネがあいさつを交わす。二人はあいさつもそこそこに軽く雑談をかわすと、さっそく本題に入った。

 

「さっそくだが、あたしが副市長選を実施した理由は分かるか?」

「え?お仕事が忙しくなったとか、そんな理由かなって思ったんですけど……」

「まぁ、似たような理由さ。あたしもあの一件以来、少し調子が悪くてね。あたしの仕事を分担してくれるような、頼りになるヤツが欲しいって思ったんだよ。特に、あの人間を中心とした渉外業務なんかね」

 

 エレナが忌々し気に呟く。

 

「君もスパイとして諜報任務に当たってたんだろう?期待しているよ、ローネ副市長」

「は、はいぃ、エレナ市長」

 

 ローネが市長室を後にする。

 

 登庁初日とあって、簡単な業務だけをエレナから割り当てられたローネ。その業務を確認するために、アメリアに連れられて、ローネが割り当てられたという副市長室に向かった。

 

「ここがあなたの執務室です」

「はい、ありがとうござ……」

「当選おめでとう、エージェント・ローネ」

「ミュート班長……!」

 

 副市長室に入ると、ミュートが机に腰かけて待っていた。アメリアもびっくりしたのか、何をしているとミュートに怒鳴りつけた。

 

「エレナ市長様から割り当てられた部屋で何をしているんですか!ミュート諜報班長!」

「私の部下が当選したと聞いて、祝いに来ただけさ、アメリア」

「あなたには関係のない事です!出て行きなさい!」

 

 そう言い放つアメリアに、ローネが口を挟む。

 

「あの~、アメリアさん?実は、お願いがあるんですけど……」

「ローネ副市長?どうしたんですか?」

「実は……ミュート班長を秘書に任命したくて……」

「え……?」

「なっ……!」

 

 あまりにも予想外の提案にアメリアとミュートが、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして驚いている。特に、ミュートは自身がローネの下に入る事を理解し、その事に抵抗を感じているようだった。

 

「な、何を言ってるんだローネ……!お前は自分が何を言ってるのか理解しているのか……!?」

「えへへ、もちろんですよ、ミュート班長。今や私は副市長ですよ?エレナ市長と相談して、組閣するんです。特に渉外を行うんだったら、情報も大事になってくるでしょうし、諜報班や情報班も私が直接管轄するようになったら良いかなーって思いまして~」

 

 ふわふわとした笑顔で既に構想を練っていると言うローネ。二人はこの副市長は仕事ができると感じ取り、ローネの提案を受け入れることにした。

 

「ミュート班長も、いちいち遠くから私に指示を下すより、秘書として私を管理する方がやりやすいですよね?私も班長から助けを貰えるとすごく助かるんですけど~」

「……いいだろう。一度、私もお前のやり方に従ってみよう」

「えへへ、ありがとうございます」

 

 ローネが席に着き、パソコンのキーボードをたたき始める。二人はそれを驚いたように眺め、何か恐ろしいものを見ていると感じていた。

 

 やがて、アメリアはハッとしたように、我に返った。

 

「で、では、私も仕事がありますので!これで……」

 

 そう言って、アメリアは副市長室から出て行った。

 

「まずは、情報班と諜報班を統合して、情報管理局を設立します。これで諜報班が得た情報を情報班と共有しやすくなって、業務も効果的になるはずです。ミュート秘書官は秘書官と兼任して、情報管理局局長も兼任してもらいたいと思います」

「う、うむ」

「何か重要な情報を入手したら、逐一私に報告してください。いいですか?」

「わ、わかった」

「あとは……」

 

 ローネが顎に手を添えて何かを思案する。

 

「そうですね……。エレナさんが今までやってこなかった事……」

「……?」

 

 ミュートが怪訝そうな表情でローネを睨んでいる。ミュートは、ローネの恐ろしい潜在能力を目の当たりにして、脅威を感じている。

 

「私に考えがあります」

 

 ローネの進撃が始まる。

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