「それで?あいさつっていう事ですけど、何が目的ですか?」
「なに、話がしたいんですよ、ローネ副市長」
銃を床に置いてレヴィが話を始める。深くソファに腰を下ろしたレヴィは、まるで自分の部屋であるように振舞っている。
「教団の犬も随分と傲慢な態度を取りますね。魔女というのは、話をするときはかくも傲慢な態度をとるものなんですか?」
「私はもう魔女じゃありませんよ、ローネ副市長。魔女の道を捨てた、ただのアウトローです」
レヴィの言葉を聞いてローネが大きくため息を吐く。あきれ返ったローネは首を振ると、そのまま椅子に腰を下ろした。
「そんなのはどうでもいいです。……それで、話をしましょうか。何が目的でここまで来たんですか?モナティアムにアレだけの混乱を招いておいて、どういうつもりなんでしょうか?」
「ぶどうジュースカルテルというものがモナティアムで私たちの代わりに密売行為をしているそうじゃないですか。鎮圧班の代わりに始末してあげても良いですよ?」
「……はあ?」
レヴィの思わぬ提案にローネが顔を顰める。そんなローネの様子を気にも留めず、レヴィは続ける。
「私たちはまたモナティアムで商売をしたい。けど、それにはぶどうジュースカルテルが邪魔だと思っています。モナティアムも、非合法で活動するカルテルが邪魔と思っていますよね?私もあなたも、カルテルを排除したいと思っている……。違いますか?」
レヴィの言葉にローネが黙り込む。ローネは、何を言うべきか分かっていた。しかし、この提案を受け入れて良いものか結論が出せなかった。
「私はどこにカルテルが潜んでいるか、ある程度見当がついています。教団もカルテルも同じような活動をしていますからね。どこに隠れていようと、必ず見つけ出して、叩き潰す……。やってやりますとも、ローネ副市長」
そう言って、レヴィは席を立った。
「良い返事を待ってますよ、副市長。それと……」
レヴィが副市長室の窓際に立ち、ビルの一つを指さした。
「手始めに、あのビルにいるカルテルの拠点を一つ潰しましょうか。私たちがいかに本気かを見せてあげますよ」
☆☆☆☆
ぶどうジュースカルテルが占拠しているというビルの前に来たレヴィとタイダー。カルテルが占拠しているとあって、人気はなく、妙な緊張感が辺りを支配している。
周囲の空気も重く、じめっと沈んでいる。
スノーキーが先行してビルに乗り込んでいるはずだが、何の反応もない。レヴィは怪しみながらも、銃を構えてビルの中に入って行った。
「───────っ!!!───────っ!!!」
ビルの中から悲鳴が聞こえる。タイダーはその破滅的な金切り声を聞いて、身を震わせた。
「スノーキー……。ちゃんと仕事をしてるみたいね」
声のする方へ歩みを進めていく。悲鳴はより大きくなっていき、昂るレヴィとは対照的に、タイダーの恐怖は大きくなっていった。
「うああああああああああああっ!!!!ああああああああああああああああッ!!!!もうやめてくれええええええええええええっ!!!!」
「スノーキー!!」
「うん?ようやく来たか、レヴィ」
部屋の影からフェドーラを被った魔女が出てくる。スノーキーの手には安物のペンチが握られていて、妙な液体でべっとりと汚れている。
痛みと恐怖に支配されたカルテルのエルフがレヴィを見た。エルフは、目の前に現れたかつてのギャングスターを見て、恐怖から絶叫した。
「チィッ!」
絶叫するエルフの脚にダガーが刺される。エルフは急に刺された痛みに声を詰まらせ、黙ってしまった。
「私らがいなくなった途端、急に調子に乗っちゃって……。モナティアムの支配者が誰か忘れてしまったみたいだね?」
「ぁ……ぁぁぁ……」
レヴィはエルフを縛る拘束を切って、解放させた。エルフは震える手足を懸命に動かして、這うように部屋を後にした。
「いいのか?逃がして」
「どうせアレには何にもできません。拠点に逃げて私たちの存在を知らしめるのもよし、のこのこ逃げ帰って始末されるのも良し、鎮圧班に保護されるのも良し……。いずれにせよ、アレは教団からの宣戦布告です。……さて、このビルに巣食うゴミムシどもを始末しましょうか……!」