世界樹教団、マフィアになる   作:韓非子

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第5話「エレナと世界樹教団」

 今日も深夜の宴会場で、フリックルと教主は二人でお酒を飲んでいた。フリックルも深夜の宴会場の雰囲気に慣れてきたのか、談笑する顔に笑みがこぼれている。

 

 しかし、その雰囲気も突如破られることになった。

 

 バンッ!!!

 

「な、なんだ!?」

「やあやあ、ここが件の宴会場かい?」

「エレナっ!!?」

 

 扉を開けて、モナティアムの市長、エレナが突如乱入してきた。

 

 エレナは宴会場内を静かに見渡すと、ズカズカと教主の元に歩み寄っていく。そして、乱暴に席に着くと、不気味な笑みを浮かべながら教主に呟いた。

 

「ホット・アイス・アメリカーノ・エレナ・スペシャルを一つ、くれないかい?」

「は、はぁ?」

「いいから作るんだよっ!バックルームにウォッカがあるんだろう!?それとホットアイスアメリカーノをブレンドするんだよっ!」

「わ、分かったよ……!」

 

 慣れた手つきでホットアイスアメリカーノを淹れ、ウォッカを少量ブレンドする。そして、それをエレナの元に差し出した。

 

「ふゥん……。これが君の思うホット・アイス・アメリカーノ・エレナ・スペシャルかい……」

「君の注文通りに作っただけなんだがね……」

「まぁ、いいだろう。ちょっと飲んでみるとしようか」

 

 コーヒーカップを手にしたエレナはまずは香りを楽しむと、静かに口を付けた。

 

 コーヒーカップの中身がゆっくりと消えていく。ぐっぐっと、力強くエレナがエレナスペシャルを飲み干していく。

 

 やがて、すべて飲み干したエレナがカッとカップ容器をカウンターに置いた。そして、教主を睨んで叫んだ。

 

「ンンンンンンンッ!うまいっ!実に良いじゃないか、これは!気に入ったぞ、教主よ!」

「ほ、本当かい?」

「ああ!実に良いものだな、君の作る密造酒は!」

「そ、それはどうも……」

 

 そばで見ていたフリックルが静かに呟く。

 

「ところで、どうしてあなたがここにいるの?どこでコレを知ったのかしら?」

「なぁに。あたしは常に監視カメラで君たちの動向を監視している。レヴィという魔女が、モナティアムから砂糖や穀物を大量に発注した事もあってね、怪しいと思って追跡、監視してたんだよ。普通は砂糖しか注文しない妖精王国から、穀物まで発注しだしたら普通は怪しいと思うだろう?それがまさか、こんな愉快な事をしてたなんてねぇ!」

 

 呆れたようにフリックルがため息を吐く。その目はどこか軽蔑しているようにも見える。

 

「呆れた。あなたも所属する世界樹教団をカメラで監視するだなんて。どこまでゲスなのかしら」

「相手の弱点や弱みを知る為に工作活動をするのは情報戦の基本だろう?君たちの動向は一挙手一投足観察させてもらってるよ」

 

 エルフが平然ととんでもないことを言ってのける。フリックルと教主はそんなエルフを苦々しく見ている。

 

「はぁ、まったく……。司祭長にでも言いつけるつもりかい?それより、いつの間にそんな事をしたんだ?」

「君、ローネが我々のスパイっていう事を忘れたのかい?はっはっはっ、だとしたらお笑いだな!あの腑抜けた性格に騙されて、まんまとしてやられたって訳さ!」

「……ローネか。見た目は不器用そうなアイツでも、やることはしっかりとやってたんだな……?」

「そういうことさ。まー、最初はあたしもこの事実を元に君を傀儡にしてやろうと思ったんだがね、意外と面白そうだと思ったのさ。なのでな、教主……」

「……なんだ?」

「……あたしもこのビジネスに、参加しても良いかな?」

 

 エレナからの意外な提案に驚きを隠せない教主。フリックルもグラスを傾けながら、二人の事を黙って見守っている。

 

「安心するといい。ここの監視カメラと、教主の主な活動場所の監視カメラは全部外してやる。あたしにもリスクがある活動になるしな。あたしが密造酒ビジネスに関わってるとバレると、モナティアムでの支持率にも響いてしまう」

「……よくそんなリスクを背負ってまでこの活動に参加しようと思うわね」

「あたしにも息抜きは必要なのさ。それに、こういう酒はモナティアムの活性化にもつながる。税金をとれないのは残念だがね」

「モナティアムには酒税法はあるのかい?」

 

 ふと湧いた疑問を教主が口にする。さも当然とでもいうように、エレナは答える。

 

「もちろんさ。ちゃんと官公庁から認可を得た事業者じゃないと、ウチでは酒を造れない。君もモナティアムで酒を造りたいんなら、市民権を得て、税務署から許可を貰わないとね」

 

 クックックッと笑うエレナ。その様子を見て教主は答えた。

 

「別に君の所でやるつもりはないよ。私はただ密かに酒を造って、自分で飲みたいだけさ」

「おやおや、もったいないねぇ~。欲のない事だ。まあ、これからはあたしもここでお世話になるよ」

 

 ケラケラと笑いながら、エレナは追加でエレナスペシャルを頼み、じっくりと味わった。

 

「う~~ん、良いものだねぇ。では、また来るよ、教主」

 

 そう言って、エレナは宴会場を後にした。

 

 暴風のように現れ、去って行ったエレナ。宴会場にはフリックルと教主だけが残された。

 

「それで、どうするつもり?」

「ふゥむ……。参加したい、かぁ……」

「私は悪くない提案だと思うわよ?あの子、何もわかってないみたいだし、逆に利用してやるのも一つの手だと思うわ」

「そうだな。エレナのやつ、私たちが何をしているか分かっていないようだしな。少し灸をすえてやるのも良いかもしんな」

「ふふっ。悪い人ね、あなたも」

 

 二人の間で話が進んでいく。この先、教団がどうなっていくかは、この二人にしか分からない。

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