世界樹教団、マフィアになる   作:韓非子

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第52話「最後の戦い2」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!なんだアレは!?!?」

 

 ダダダダダッ!

 

 パワーアーマーを纏った教主が、警備隊や魔女の攻撃をものともせず、単騎で敵を蹴散らしている。その姿は戦車そのもののようであり、敵に恐怖を植え付けていた。

 

 その前線の狂乱に一人立ち向かう魔女が一人いた。魔女の女王、ベリータである。

 

「怯むなっ!全力で迎え撃てっ!数ではわらわたちが圧倒している!全火力を集中して奴を打ち倒すのだ!」

 

 ベリータは教主の存在が分からなかった。ただ、たった一人で魔女と警備隊の連合軍を蹴散らしている謎のロボットがいるとベリータは思っていた。まさか、それが教主だとは露とも思わなかった。

 

 ガトリングレーザーを構えた教主がベリータたちのいる方へ向き直る。敵を認めて銃身をスピンアップさせた教主は、目標目がけてレーザーを乱射させた。

 

「だ、だめです!ベリータ様!攻撃が激しすぎて太刀打ちできません……!!」

「ぐっ……!化け物か、あいつは……!あんなものを用意するだなんて、いったいどうやって……!」

 

 ツーショットと爆発のモジュールを組み込んだ教主のガトリングレーザーは、ただでさえ攻撃の激しいヘビーガンの威力を根底から底上げしていた。

 

『教主から各戦闘員へ。宮殿の入り口は私が守っている。各戦闘員は前線を後退させつつ守備体勢を取れ』

 

 攻撃の手を緩めた教主が指令を出す。ベリータはその隙を逃さなかった。

 

「奴が攻撃の手を緩めた!一斉攻撃だ!」

 

 再び魔女たちの攻撃が始まる。しかし、教主にはまるで効果がなかった。

 

「馬鹿な奴らめ」

 

 ガトリングレーザーから猛烈な弾幕が放たれる。魔女たちの攻撃をものともせず、一方的に弾幕をばら撒く教主に、魔女たちは手も足も出なかった。

 

「くそぉ……!何か良い手はないのか……!」

 

 ベリータは膠着する戦闘にイライラを隠せないでいた。

 

 その時だった。教主の背後から、一つの黒い影が教主へ不意打ちを食らわせた。

 

 ガァンッ!!!

 

「あれは……」

 

 風に靡く金色の髪、風を裂く薄桃色の大きな翼、大きなスリットの入った純白のドレス。見覚えのあるような、馴染みのある妹に似た妖精の姿。

 

「エルフィン……!」

「ッ……!!!」

 

 背後から強烈な一撃を食らった教主は、何が起きたのか理解できなかった。

 

 パワーアーマーが火花を散らして地面を転がっていく。エルフィンの強烈な一撃が、教主のパワーアーマーに大きなダメージを与えた。

 

「お姉ちゃんに……手を出すなっ!!!」

「エルフィン!!!」

 

 妹からの思いがけない救援にベリータが驚きの声を漏らす。

 

 しかし、ベリータは今まで戦っていた相手の本当の姿を見て、言葉を失った。

 

「あ、あれは……!」

「教主……?」

 

 ヘルメットが外れた教主の顔が露わになる。

 

 見間違えるはずのない人間の素顔。その冷酷で鋭い瞳は、教主そのものだった。

 

「きょ、教主……」

「エルフィン、君か……。私の前に立ち塞がるつもりか」

 

 教主がガトリングレーザーを投げ捨て、エルフィンへと立ち直る。エルフィンは教主の放つその得にも言えぬ雰囲気に、ただたじろいでいる。

 

「ど、どうして……」

 

 エルフィンが言葉を漏らす。

 

「どうしてこんな事をするの、教主!!!!」

 

 心からの叫びとでもいうような言葉がエルフィンの口から飛び出る。しかし、教主はまるで動じなかった。

 

「理由なんてないさ」

「え……?」

 

 あまりにも簡素な言葉にエルフィンが言葉を失う。

 

「ただやりたいようにやる。それだけさ、エルフィン」

 

 外れたヘルメットを取り、教主は再び頭に被せた。ガトリングレーザーを再び手に持ち、教主はエルフィンに背を向けた。

 

「ジョアン!ここは君に任せた!適当に片付けておけ!」

 

 教主の呼びかけに応じ、ジョアンがエルフィンの前に現れる。その悲哀にも似た決意を見せるジョアンに、エルフィンは思わず顔を背けた。

 

「ジョアン……!やめてよ!どうして教主のそばに立つの!?ジョアンだってこんな事したくないでしょ!?」

「女王様……」

 

 エルフィンの言葉に心が揺らぐジョアン。しかし、決意を固めたジョアンを動かすには、エルフィンの言葉だけでは足りなかった。

 

 二人の間に沈黙が走る。

 

 やがて、ジョアンは覚悟を決めたようにエルフィンを睨んだ。

 

「っ……!」

 

 ジョアンが白い堕天使のような姿に変身する。エルフィンはその姿を認めると、すかさず戦闘態勢を取った。

 

「私は教主様の最も近いところで仕える従者だっ!!!私が仕えるのは世界樹などではないっ!!!女王様、あなたもだっ!!!」

「ジョアンっ……!」

 

 ジョアンの赤い光線がエルフィンを襲う。的確にエルフィンを狙ったジョアンの攻撃が、エルフィンの身体を傷つけていく。

 

「倒れろ!!!女王っ!!!」

 

 ジョアンの苛烈な攻撃がエルフィンを襲う。エルフィンは、かつて戦ったジョアンと今のジョアンの姿を重ねて、少しばかりの恐怖を感じた。

 

「エルフィンを援護しろっ!!クリムゾン・レイン!!!」

 

 ベリータと魔女の激しい弾幕がジョアンの弾幕とぶつかり合う。しかし、盲目ともいえるジョアンの信念を打ち砕くには、火力が足りなかった。

 

「生意気な奴ら……!消えろっ!!!」

 

 地面を抉るような激しい光線が魔女たちを襲う。エルフィンと同じく、世界樹の祝福を受けたジョアンの攻撃は、ただの魔女には過剰とも言えた。

 

 灰燼と化した妖精王国の街。魔女たちは崩れ落ちた建物の灰と煙の中でうずくまっている。ジョアンは上空から、ただその様子を眺めている。

 

 遠くから聞こえる悲鳴と怒号、曳光弾の軌跡。それをただ眺めるジョアン。一瞬の静寂がそこにある。

 

 そして、瞬きの間の一瞬に、煙の中から突如、エルフィンが飛び出して来た。

 

「ッ……!」

「ジョアン……!」

 

 エルフィンの拳がジョアンの顔面を捕らえる。

 

 反撃しなければ……。反撃しなければ……!ジョアンは一瞬の間に、ただその事だけを考えた。

 

 ジョアンの魔力がエルフィンの一点に集中する。ジョアンはエルフィンよりも素早く行動を移し、反撃した。

 

「きゃあああっ!!!」

 

 ジョアンの反撃を食らったエルフィンが落ちていく。無防備になったエルフィンをジョアンは逃さず追跡し、その首を掴んだ。

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