無数のレーザーと怒号が宮殿の中でこだまする。次々と飛来するドローンと、新たに乱入した鎮圧班たちを前に、いくら重装備に身を固めた教主と言えども攻めあぐねていた。
「クソッ!化け物かアイツは……!」
遮蔽物に隠れたカンナが悪態をつく。遮蔽物越しに感じるレーザーの熱が妙に気持ち悪い。激しいレーザーの弾幕に身動きが取れない隊員と教主の間に戦況は膠着して、互いに身動きが取れなかった。
「ふんッ!!!」
埒が明かないと睨んだ教主が遠距離攻撃を捨て、肉弾戦を仕掛ける。
硬い装甲に身を固めた鋼鉄の巨人が自分たち目がけて突進するのを見て、鎮圧班たちの間で恐怖が広がる。カンナも、地響きのような足音を響かせながら突進するその姿を見て、足がすくんで動けなくなっていた。
「カンナ」
「ひっ!!?」
どこからともなく、ミュートが姿を現した。カンナは、突如現れた思わぬエルフの登場にひどくうろたえた。
「カンナ、ついて来い。あの瓦礫の下にエルフィンが倒れている。救出するぞ」
「えっ!?あっ!ミュート局長!?」
ミュートはカンナの腕を引っ張って、射線を掻い潜りながら、エルフィンの倒れている瓦礫の元まで進んでいった。
「この下だ。いっしょに瓦礫をどかすぞ」
「は、はいっ!せーの……!」
ぐぐぐぐ……。
「だ、ダメです……!重すぎてビクともしません……!」
「くっ……。もっと人手がいるな……」
その時、二人の怪しい動きに気付いた教主が、二人に振り返った。
「っ……!!」
「何をしている?」
重い足音を響かせながら教主が近付いていく。カンナは恐怖を感じながらも、教主へ大砲を向けた。
バァンッ!
「くそっ……!」
次々と弾を発射するが、教主は意に介せず二人に近付いていく。もはやこの場所は守れないと判断した二人は、エルフィンの下から離脱しようとした。
その時だった。
バァンッ!!!
「ぐっ……!?」
「邪魔させないぞ……!教主……!」
「シオン……」
シオンが起き上がり、二人を助ける為に再びD-EXITを構えた。
鎮圧班と教主の戦いにシオンが加わり、戦況はいよいよ混迷を極めていく。シオンの魔弾で教主にダメージを与えられるようになった事で、鎮圧班たちは少し勢いを付けた。
しかし、シオンの魔弾は教主にダメージを与えてはいるが、教主を倒すにはいまいち有効打にはなりえなかった。
いたずらに時間だけが過ぎていく。教主を倒すにはシオンの魔弾だけでは足りない。ミュートもカンナも、そのことは良く分かっていた。何か、教主を倒すための力があれば……。自分たちにもう少し力があれば……。二人はもどかしく感じた。
だがその時、教主の背後にキラリと光るものが見えた。炎に照らされた白金の鎧が、もう一人のエルダインの存在を照らし出したのだ。
「はあああああっ!!!」
やがてその妖精は跳び下り、教主の背中目がけてハルバードを振り下ろした。
ハルバードがパワーアーマーの装甲を切り裂く。二人は、やっとやって来たネルの到来に歓喜した。
「司祭長殿……!」
「……ここは私に任せてください」
そう一言だけ呟き、ネルと教主が激しく衝突した。激しく鳴り響く剣戟に二人は圧倒され、呆然とその交わりを見ている。
だが、見とれている場合ではない。ネルが教主と戦っている間に、一刻も早くエルフィンを救い出さねばならない。
二人は焦っていた。シオンに撃たれても、ネルに斬られても教主の勢いはまるで落ちない。二人は、改めて教主というアボミネーションの存在に恐怖を感じた。
「鎮圧班っ!!集合せよっ!!この瓦礫を撤去するんだっ!!!」
カンナの呼びかけに応じて鎮圧班のメンバーが集まってくる。そして、瓦礫を取り囲み、力を合わせて動かし始めた。
岩がゴトゴトと重い音を立てて少しずつ動いていく。そしてカンナたちはひとつ、ふたつと岩をどかしていき、エルフィンを瓦礫の下から救い出していった。
「見えた……!」
瓦礫の隙間からエルフィンの姿が少しだけ見えた。ようやく見えたエルフィンの姿にカンナたちは胸をなでおろし、あと少しだと他のメンバーたちを鼓舞した。
「あと少しだ!みんな、もうひと踏ん張り頑張ってくれ!もう少しで、エルフィン女王を救い出せるんだ!!」
そして、ようやく最後の瓦礫を取り除き、エルフたちは瓦礫の山からエルフィンを救い出すことに成功した。カンナもようやく姿を露わにしたエルフィンを見て、安堵と安心感から気が緩み、気を失いそうになった。
「安心するのはまだ早いぞ、カンナ」
「ミュ、ミュート局長……」
遠のく意識を必死につなぎとめて踏ん張るカンナ。ミュートはそんなカンナの頬へ喝を入れ、目を覚まさせた。意識を失いかけたカンナだったが、ミュートにビンタされる事でどうにか意識を保った。
カンナがエルフィンに目をやると、激しい戦闘のせいか、果ては瓦礫の下で生き埋めになっていたせいか、エルフィンは気を失っていた。
ミュートがスタンガンを取り出す。カンナはそれを見て、何をする気なのかと恐る恐るミュートにたずねた。
「ど、どうするつもりなんですか?ミュート局長……?」
「あまりこういう事はしたくないが仕方がない。お前たち、少し離れておけ」
そう言ってミュートはスタンガンのスイッチを入れ、電極をエルフィンの体に当てた。
「ぎゃあっ!!?」
バチンと激しく炸裂する電撃と共に、エルフィンの身体がビクンと跳ねる。悲鳴と共にエルフィンの意識が強制的に目覚め、何が起きたのかと辺りを見回した。
「な、なに!!?なんなの!?」
「ようやく目を覚ましたか。お前を見つけるのに苦労したぞ、エルフィン女王」
「あ、あんたは!?」
「詳しい説明は後だ。さあ、せっかく助けてやったんだ。早く司祭長といっしょにあの偽りの教主を倒してこい」
ミュートがエルフィンの腕を引っ張り、立ち上がらせる。そして、教主と戦っているネルをエルフィンに見せつけた。
「ネル……!」
「教主を止められるのはお前たちだけだ。さあ、行って戦ってこい、妖精の女王」
「……うんっ!」
そう力強く頷いて、エルフィンは教主と戦うネルの元へと、一直線に飛び出して行った。