原作を鑑賞しようとする室町時代の術師 vs 原作に干渉させてこようとする世界   作:祝いの王

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邂逅

老夫婦に拾われてから7年が経ち、俺は小学五年生になった。

家の場所は東北地方で、実は室町時代に活動してたのと同じ場所だ。

今の俺は、小学生生活…というか子供としての生活を満喫している。室町時代ではネグレクトと虐待のアンハッピーセットを食らっていたので、子供としての生活を楽しめたことがなかったのだ。誕生日を祝われた日には泣きそうになった。

そんなこんなで、転生した俺は楽しく生活している訳だ。

 


 

俺は原作開始の十数年前くらい…つまり、虎杖悠仁と同年代くらいに転生したいと思っていた。しかし、正直なところ期待はしていなかった。なぜなら、転生する年代を指定することはできないからだ。最悪の場合は江戸時代に転生することも覚悟していた。

しかし、この転生時期ガチャにおいて、俺は一番の当たりであり、一番のハズレを引いたのだ。

 

今世の俺は1989年生まれ。つまりは、さしす組と同年代だ。

嬉しいけど嬉しくない…。心が二つある〜!

この立場は、うまく行けば特等席から原作を鑑賞できるようになるが、やらかすと取り返しのつかないレベルまで原作に介入してしまう可能性がある。普通なら『救済』なんてことを目指すのかもしれないが、正直できる気がしない。俺が余計なことをしたら原作より状態が悪化しそうだ。

具体的に言うと羂索が原作開始前から暴れ出しそう。*1

なので、できるだけ原作キャラとの関わりは無くしたいのだが…。

この年代に生まれたんなら、あれだけは見逃せない!

 

今の俺は京都にいる。理由は老夫婦の結婚記念日の旅行について来たからだ。実は人生初の京都である。前世でも前々世でも行ったことがない。それはさておき、俺が京都に来た理由は一つ。

呪術界の均衡を変えた最強の術師、五条悟の幼少期を見に行くこと。

観光中に五条家らしき豪邸は見つけたので、うまく行けば五条悟(ショタ)を見ることが出来るだろう。

 

「ちょっとトイレ行ってくる!」

「いってらっしゃい。人混みに気をつけるんだよ。」

 

適当な言い訳でじいちゃんばあちゃんの元から離れる。俺は一人で行動することが多いため、簡単に送り出してくれた。予め目をつけていた大きな呪力を感じる豪邸に走る。早くしなきゃジジババに怪しまれてしまう。豪邸の表札を確認すると、きちんと『五条』と記されていた。確定だ。

 

五条家の近くの家の屋根に登る。本当はもっと近くで見たいのだが、近づくと気配でバレるのは伏黒甚爾によって実証されているので、遠目から見てみる。室町時代に持ってた呪具があったら、多分近くで見れてたんだけどなあ…。

幸い視力はいいので、すぐに庭に立っている五条悟らしき白髪ショタの後ろ姿を発見した。

 

…遠目からでもわかる、圧倒的な存在感。呪力量が多いわけではないのに、見ただけで本能が警告を飛ばしてくる様な異様さを感じる。

これは絶対に勝てないな…。いやまあ戦うつもりもないんだけどね?

にしても顔がいいな…。今の時点で超絶整った顔面に、白い肌と髪の毛。それだけでも妖精の様な美しさがある。

それに加えて、六眼の美しい青が……待てよ?

俺は、五条悟の()()姿()を見てたよな??何でこっち向いてんの……?

背筋に冷や汗が伝う。確実に目が合っている。

それを認識した瞬間、俺は全速力で逃げだした。

 

じいちゃんばあちゃんの所に戻ってきた俺は、大量の汗をかきながら先ほどのことを思い返していた。あれは確実に目が合ってたな…。本当にやめて欲しい。下手なホラゲーよりも心臓に悪かった。

まあでも、流石に幼少期に一瞬見ただけのやつを覚えることはないだろう。伏黒甚爾のことも覚えてなかったし。だから大丈夫だ、多分。

俺はそこで考えるのをやめた。

 


 

今、俺は真夜中の山を歩いている。先日の五条悟に発見された件を反省して、昔使っていた呪具を取り戻しに来たのだ。

たしか、ここの山の祠に隠した筈なんだよな…。

山奥にある祠を目指して歩いていると、子供の泣き声が聞こえてきた。えっなに…?呪霊?怖いんだけど。

怯えながら泣き声の聞こえる方へ向かってみる。泣き声にある程度近づいた時、唐突に周りの景色が変化した。周囲は森の中からボロボロの神社のようなものに変わり、鳥居が三つほど立っていて、空には月が二つ浮かんでいる。

 

……これ生得領域内じゃないか…?呪力なんて一欠片も感じなかったぞ…?川みたいな境界を越えたわけでもないし…。うわっ白骨死体の山だ。

泣き声は未だに聞こえ続けている。ってことは呪霊が出してる声ではなさそうだ。呪霊の声なら領域内に入った時点で役割を終えて聞こえなくなってる筈だし。ひとまず、周りを警戒しながら声の出所へ向かう。

五分ほど歩くと、鳥居の陰で泣いている同い年くらいの少女を見つけた。…魂は人間のものだし、呪霊の擬態ではない様だ。

 

「ねえ君、大丈夫?」

「ヒッ…!」

 

俺が声をかけると、少女が引き攣った声を出す。……めちゃくちゃ怯えられた。背後から話しかけたのは不味かったか…?

 

「…君を傷つける気はないから、安心して欲しいな。」

「……誰…?」

 

まだ怯えてはいるが、会話は成立しそうだな。錯乱なんてされてたらめんどくさかったが、これは大丈夫そうだ。

 

「俺は芥。探し物をしにきたんだけど…君はどうしてこんな所にいるの?」

「……家出したの。お母さんもお父さんも、私のこと信じてくれないから…。」

 

詳しく話を聞くと、両親に呪霊について相談したのに全然信じてくれなくて、カッとなって家出してしまったのだと言う。

めっちゃアグレッシブだなこの子…。ここ結構な山奥だぞ。

会話を続けようとすると、斜め後ろから枝を砕く様な音が聞こえた。振り向くと、白骨死体を踏み砕きながら大きな呪霊が現れる。

 

…………ん?アッ。

やべ、これ俺がやらかしてるな…。

 


 

特級呪具『墨染』。編笠の形をした呪具で、認識阻害の術式がこもっている。この呪具の恐ろしい点は、呪力さえも隠すことだ。この呪具をつけている時は、姿に違和感を抱けなくなるのに加えて、呪力で人を判別することが出来なくなる。特に、俺は特殊な呪力の性質を持っているのでこの呪具は重宝していた。いたのだが…。

多分目の前にいる呪霊は、その呪具を取り込んでいる。俺が生得領域に気づけなかったのも、ここまで接近されたのも、呪具の効果によって全ての呪力が隠蔽されていたからだろう。

いやぁ…流石に祠にそのままぶち込むのはやばかったか…。

目の前の呪霊は、ただの神様崩れの一級呪霊なのだが…。呪具の効果のせいで特級レベルの強さになってるな。

 

「繧√$縺ソ繧偵≠縺溘∴莠コ繧定ご縺ヲ」

 

呪霊がニヤニヤと嗤いながら何かを呟いている。勝ちを確信しているのだろう。実際、この呪霊を一人で祓える術師はあんまりと思う。しかし、残念なことに…。

 

「君、俺から離れないでね。」

 

俺との相性は最悪だ。

 

「…簡易領域。」

 

家から拝借してきた包丁を構えて、簡易領域を展開する。

 

俺の戦闘スタイルは簡易領域を使用して相手を切り刻むというものだ。そして、俺の簡易領域は魔改造の結果、もはや小規模な領域展開のようになっている。

俺が簡易領域を強化するために結んだ縛りは以下の通りだ。

 

一つ、今後、一切領域展開が使用できなくなる代わりに、簡易領域に必中効果を付与する。

二つ、簡易領域内の対象に攻撃を当てることが出来なかった場合、呪力が一定時間使用できなくなる代わりに、簡易領域の効果と範囲を底上げする。

三つ、呪詞を呟いている間は、両足を地面につけた状態ではなくても簡易領域を維持できる様になる。

 

つまり、俺が本気で戦うと、ブツブツとよくわからない言葉を呟きながら劣化版伏魔御厨子を展開して高速で迫ってくるやべー奴が誕生する。

それに術式効果や呪力特性も加わるので、対人戦だと結構クソ性能である。

 

「縺�◆縺�>縺溘>縺�◆縺�シ�シ�シ�」

 

不用心に俺の領域に踏み入った呪霊がフルオートで切り刻まれ、耳障りな叫び声を上げ…その後直ぐに、戸惑った様な表情になる。傷が塞がらないのに驚いているみたいだ。残念だが、その傷は治らない。()()()()()()なので。

 

「ここに置いといた俺も悪かったけど…これは俺の物だからね。返してもらうよ。」

 

呪霊の体に手を突っ込み、内部に収まった呪具を引き摺り出す。うわ、呪霊の体液でドロドロだ。後で洗わなきゃ…。

 

「縺九∴縺幢シ�シ�シ�」

「五月蝿い。」

 

懲りずに襲ってこようとする呪霊を包丁で細切れにする。呪霊は断末魔すら上げずに消滅した。……あっ、包丁溶けちゃった。呪力を込めすぎたか…。

 

「大丈夫?」

 

先程から黙ったままな少女に問いかける。見たところ、服はボロボロだけど傷はなさそうだ。こんなにボロボロの状態で傷がないのは奇跡だろう。……よく見るとこの子めっちゃ顔がいいな。泣きぼくろが素敵な位置にある。これは将来美人になりそうだ。

 

「………ッうん!大丈夫!」

 

ロード時間が終わったのか、少女が急に大きな声で返事を返してきた。元気そうだな。

 

「それはよかった。取り敢えず、君は家に帰りなよ。お父さんもお母さんも心配してると思うよ?家まで送ってあげるから。」

 

少女は少しイヤそうな顔をしたが、素直に頷いた。この子は両親と仲直り出来たらいいな。

途中にあった公園の公衆電話で少女の家に連絡を入れたりしながら一時間半くらい歩くと、少女の家に着いた。少女のスピードに合わせてたからもっと時間がかかると思っていたのだが、この子は結構歩くのが早かった。

 

「この辺でいいか。それじゃあ、気をつけて帰るんだよ?」

「うん、ありがとう!」

 

満面の笑みを浮かべた少女が言う。うんうん、やっぱり子供は笑顔が一番だ。

 

「あ、あの!」

 

背を向けたところで、少女に呼び止められた。

 

「また会える?」

「…うーん、縁があればまた会えるかもね。」

 

まあ、俺と会うのは中々困難だろうが。別に呪術界に関わるつもりもないしなあ。

念の為に、少女が家に入るのを見届けてから帰路につく。

…あ、結局あの子の名前聞いてなかったな。まあいいか。もう会うこともないだろうし。

*1
主人公は室町時代に羂索に目をつけられてるぞ!




泣きぼくろのある少女…一体何者なんだ…。

私は割と呪術にわかなので、公式設定と矛盾しているところや間違いがあったらこっそり教えてくれると嬉しいです。
見てくれてありがとうございました!
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