原作を鑑賞しようとする室町時代の術師 vs 原作に干渉させてこようとする世界 作:祝いの王
投稿遅れてすいません…伏黒甚爾のキャラがわからなすぎて困ってました。
口調や展開に違和感があったら教えてくれると嬉しいです。
俺が転生して16年目。俺は高校生になった。
去年、俺を育ててくれた老夫婦が亡くなってしまったので、俺は今度こそ一人になってしまった。
二人寄り添って眠るように亡くなったので、きっと幸せな終わりだっただろう。どうかあの二人が天国で楽しく暮らしていることを願う。
でもそれはそれとして寂しい…。俺の家族になってくれる人募集中です。家族になろうよ。
さて、天涯孤独の身になった俺は、小さな喫茶店でバイトをしながら二人が残してくれた遺産で暮らしている。俺が働く喫茶店はあまり目立たない位置にあるので、客が少なくて仕事が楽だし給料もなかなか良いので最高のバイトだと思う。
「悟、足を組んで座るのはやめなよ。行儀が悪い」
「あー?別に良いだろ、どうせ客なんて来てねえんだし」
遡ること3ヶ月前。この喫茶店でバイトをし始めた俺は、自分で思っていた以上に楽な仕事と高い給料を前にとんでもなく浮かれていた。
故に、気づくことができなかったのだ。見覚えがある白髪が窓の外を通ったのも、男性にしては珍しいお団子ヘアーのヤンキーが店を覗いていたのも。
気づいた時にはもう遅く、俺は既に入店していた二人を席まで案内する羽目になった。バイト初日に渡されたオシャレな制服は汗でべちょべちょになった。クソがよ。
だが、それだけならまだなんとかなった。本当の悪夢はここからだ。
なんと、彼らは一週間に一回ほどのペースでこの店に来るようになったのだ。ふざけんなよマジで。
唯一の幸運は、五条悟が俺を忘れていた事だ。覚えてたら呪力だけで気づかれてるだろうから、多分忘れてるんだと思う。
しかし、俺の呪力量がバレると確実にまずいことになる。なんと俺の呪力は両面宿儺の三分の二くらいの量らしい*1ので、これがバレると呪術界行きが確定になってしまう。力ずくで逃げる選択肢もあるっちゃあるが、それをすると呪詛師として指名手配をくらうのでそれは最終手段だ。
店を出て行く最強コンビを見て俺はため息をついた。
「どうしたもんかなぁ…」
「…悟、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」
「何が?」
「あの店に通ってる理由だよ。わざわざ高専から通ってるんだから、何か理由があるんだろう?」
高専への帰り道の途中、夏油の問いかけを受けた五条は少し困ったように頭を掻いた。
「あー……。…オマエ、絶対バカにすんなよ?」
「するわけないだろ。それともバカにされるような理由なのか?」
「…………あの店員いるだろ。黒髪の」
「ああ、いつも注文を受けてくれる子のことだろう?彼女になにかあるのかい?」
「なんつーか…なんか見覚えあるんだよあいつ。それが気になって…」
夏油が凍りつく。見ず知らずの人に既視感を感じて、その人を勝手に追いかける。それはまるで……
「……ストーカー…?」
「違えよ!!んなわけねえだろ!!!!」
静かに五条から離れた夏油が『心底ドン引きしてます』と言わんばかりの顔で口を開く。
五条が必死になって否定するが、夏油は五条から距離を取ったままだ。よく見ると肩が震えているので、本気で言っているわけでは無いようだが。
「冗談だよ。でも、ちょっと気になるね」
好奇心を隠そうともしない夏油が楽しげに話す。五条に隠れているがコイツも十分クズなので、人の悩みは楽しんで聞くタイプなのだ。
…しかし、このままでは彼らが答えにたどり着くことはほぼ無いだろう。
先程の会話を思い出していただきたい。
「ああ、いつも注文を受けてくれる子のことだろう?彼女になにかあるのかい?」
そう、夏油は芥のことを『彼女』と呼んだし、五条もそれを否定しなかった。つまり……
この二人、芥のことを女性だと勘違いしているのだ。
彼らが勘違いをした理由はいくつかある。まず、単純に芥が小柄*2で女顔であることだ。ただでさえ体格のデカい二人から見れば、小さな女子に見えても仕方がない。
更に、芥が働く喫茶店の制服が、ユニセックスなデザインであること、そして芥が前髪を伸ばして目を隠していたことも拍車をかけた。
結果、最強コンビは見事に芥のことを女性だと思い込んだのである!
ちなみに、芥本人は一ミリもこの誤解に気づいていない。
熱を持った空気。時たま響く怒号。それを気に留めることなく前を見つめる周囲。ここにいる全員が、自分の持つ何かを賭けた勝負を行なっている。
そう、俺は今、競馬場に来ていた。
理由はストレス発散である。何のストレスかって?最強コンビの来店頻度の増加と夏油傑が最近店に来るたびに俺にひっつけてくる蝿頭へのストレスだよ。
恐らく蝿頭越しに監視されているのだが、祓ったらバレるので祓えない。つまり、蝿頭が俺を監視している間は、絶対に迂闊な行動ができなくなるのだ。
毎日の様に来店する最強コンビに胃を痛める日々だったが、店主の都合で喫茶店が一週間ほど休みになったので、こうして気兼ねなく遊ぶことができている。『墨染』も装備しているので誰かに見つかることもない。
さて、次のレースは…あの馬が勝ちそうだな。まあ俺は未成年だから金を賭けることはできないんだけど。
俺なら勝つ馬は簡単に見分けることができる。大体勝つのは魂が元気な馬だ。まあ偶に魂は元気なのに体がついてきてない奴はいるが。
「チッ…あークソ。当たんねえ…。…なあアンタ、次はどの馬が勝つと思う?」
レースが終わった時、後ろの奴が唐突に話しかけてきた。今は機嫌がいいからちょっと教えてあげようか。
「次に勝つのは二番だと思うよ。調子良さそうだし」
「へえ、それならソイツに賭けてみるか」
…なんか随分良い声してんな後ろの奴。好奇心のままに後ろを振り返って…予想外すぎる人物を見て、思わず言葉が漏れた。
「………伏黒甚爾…!?」
「…どっかで会ったことあったか?悪いが男の顔覚えんのは苦手でな」
なんでいるんだよ!?!?いや解釈一致ではあるけど!!
混乱でフリーズしていると、ガッチリと肩を組まれる。
「ちょっとあっちでお話ししようぜ」
終わった……。
「……つまり、お前は呪術界に知り合いが居て、ソイツから俺の話を聞いた事があったってことか」
「ハイ……」
俺の全力の弁明の結果、すごい怪訝そうな顔はされているがとりあえず初手敵対は避けられた。
八割どころか十割ウソだが、これ以降は伏黒甚爾と関わる機会なんてないだろうから問題ない。
「本当に敵対する意思はこれっぽっちもないのでどうか見逃してくれませんか…」
「ああ?人に頼み事するなら素顔で話すのが礼儀だろ?まずはその呪具外せよ」
キッショ、何で (呪具を使ってるのが) わかるんだよ。
…いやマジで何でわかった?これ認識阻害の呪具だぞ…?フィジギフ特有の第六感的なアレか?怖すぎるだろ。
バレた以上誤魔化しようがないので素直に外すと、伏黒甚爾がポカンとした顔になる。
「……お前女だったのか?」
「違えよ」
キレそう。殴って良いか?
「……まあいい。それよりお前、明日ヒマか?」
「へ?何言って「ヒマだよな?」……ハイ」
「よし、じゃあ明日の十三時にここ集合な」
…は???
「お前を見逃すかどうかはレースの結果で決める。精々頑張ってどの馬が勝つか考えとけよ」
………は????
え、俺明日も伏黒甚爾と会わなきゃいけないの?
小ネタ:芥くんの見た目は室町時代から変わってません。小柄な理由は、幼少期の栄養失調のせいで体があまり成長しなかったからです。