人間不信の元ヒーロー少女が助けた女の子に絆される話   作:96963

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なんかミスったので初投稿です。
薊と椿、再会



「海鮮の詰まったおにぎり食べたい」「私はマヨネーズとか唐揚げ入った感じのやつが食べたいですね」

「…………どういう事?」

 

 私の家の前にいるのは、間違いなくあの時の女の子だ。

 でも何で? 

 酷い事言って、突き放したのに。

 …………いや、そもそも。

 私の名前も住所も教えてない筈なのに、何でここが? 

 生身の私の情報って一応機密扱いだから処理班とはいえ多分ヒラのこの子が知れるレベルのものじゃない筈なんだけど。

 なのに、何で? 

 ぐわんぐわんと目が回るような空腹の中、回らない頭で考えるけど、答えは出ない。

 そして。

 

「…………」

 

 どうしようか迷ってる内に空腹の限界が来たのか、床にぶつかる固い音と共に、意識が暗い闇に落ちていった。

 

 

 ──────次に目覚めた時、視界には不安げな顔の女の子がいた。

 

「あ、起きました?」

 

「へ…………? っ⁉︎う、ぇ、っ゛⁉︎」

 

「だ、大丈夫ですか⁉︎」

 

 それにびっくりして飛び起きようとしたら、位置が悪かったのかベッドボードに頭をぶつけてしまった。

 痛い。

 というか何で私ベッドに寝てるの…………? 

 後この子誰…………? 

 脳に響くような鈍い痛みに顔を顰めながら、不可解な目覚めの状況に首を捻るが、答えは出ない。

 なので何となく女の子に視線を向けると。

 

「…………あ」

 

 さっきインターホンを押してた、あの子だと気づく。

 そして。

 

「ふ、不法侵入者…………⁉︎」

 

 いつの間にか部屋に侵入してきたこの子に焦り、さっきまでどうしようかと迷っていた事も忘れて恐怖に駆られる。

 

「はい⁉︎いや、違いますよ⁉︎確かに黙って入ったのは悪いと思ってますけど!」

 

 当然女の子は否定するけど、そんなの信じられる訳もない。

 だってここ、鍵がないとロビーにすら入れないし住民の許可がないとエレベーターも動かせないマンションだよ? 

 当然私はそんなの渡した覚えも出した覚えも無いし。

 

「やっぱり不法侵入…………!」

 

 つまり、黙って入ったと言ってるこの子は何かしらの技術でハッキングして入ったに違いない…………! 

 私もよく処理班のギア使う時やるし! 

 …………いや、アレなんですよ。

 私って実は変身し続けた影響なのかちょっと人間やめてるとこがあってですね? 

 だから…………その、処理班の皆様が使ってるのは私と規格が合わなくて使うと一回で砂にしちゃうから使えない様に私のデータが仕様上無いんですよね? 

 だけど人間やめた影響か…………私っていつの間にか機械類に生身であれこれ弄れるようになってたんですよね? 

 そのおかげで、ギアをクラッキングして無理矢理私のデータを登録させて使う事が出来る様になっちゃってて…………まあそれやると私の規格が合ってないせいで無理矢理使われたギアが耐えきれずこの前みたいに砂になるんだけど。

 そしてただ壊すんじゃなくて砂にして修理も出来なくするからもれなくスノードロップの説教もついてくる。

 …………ああクソ、私が100%悪いけどこの間スノードロップに詰められたの思い出した…………

 私が悪い分何も反論できなくて苦しくなる感じだから、思い出すだけでキツい。

 …………昔使ってたギアなら、私専用に作られてたから壊れないんだけど。

 アレも酷使してボロボロになったのを機に隠居してスノードロップに返したから、普段は持ってなくて。

 そんで今の私が戦うのって基本私の道にあいつらがいた時だから、偶発的な戦いしか無くて。

 それで…………取りに行くのが面倒くさくて、そこら辺の処理班から借りたのを何本も壊して…………はいどう考えても私が悪いです…………スノードロップが正しいです…………

 と、女の子がハッキングしたという理由の正当化をしようとしてたら思わぬダメージを受けていた時。

 

「だーかーらー、違いますって! スノードロップさんに頼まれて来たんですよ! 出なかったら勝手に入ってとも言われてます!」

 

「スノードロップゥ?」

 

 その当人の口から、ちょうど今反省の念を向けていたスノードロップの名前が出てきた。

 …………まあ、確かにスノードロップはこの部屋の鍵どころかこのマンション持ってるレベルだからこの子の言うことに一応の説明つくけれど。

 どうしてスノードロップがこの子に? 

 いやこの前確かに言いすぎたって話したけども。

 この子なんて言ってないし、スノードロップもこの子と多分接点とか無いよね…………? 

 いや処理班のシステムとかよく知らないけど。

 でも流石にボスとヒラの子が直接会うことってそんな無いでしょ。

 やっぱり不法侵入者が良い感じに言い訳を並べてるのでは…………と思考が猜疑心に固まり始めた頃。

 

「ああもう、埒があきません! とりあえずこれ、スノードロップさんからの預かりものです!」

 

「へ?」

 

 ずい、と女の子が箱を差し出してきた。

 何だろなと思って受け取ると、ずっしりと重い感じ。

 軽くハッキングの要領で探ってみても機械類が入ってる感覚は無いから爆弾ぽくはない。

 ふーむ、何だろ。

 

「開けて良い?」

 

「どうぞ、それは薊さんのものですから」

 

 気になって聞いてみると、名も知らぬ女の子がしれっと私の名前を言ってきた。

 教えた覚えないんだけどなあ。

 スノードロップの機密管理をこの世界の人が突破出来るとは思えないし。

 …………だとすると、本当にスノードロップが教えたのかな? 

 まあこれ開けて確かめればいいか。

 そう思って、蓋を取ると。

 

「…………え」

 

 私の好物ばかり詰まった、中身たっぷりご飯セットがそこにはあった。

 そして蓋の裏には、私しか知らないスノードロップのサイン付き封筒が。

 

「…………ごめんなさい」

 

 それを見た瞬間、私は敗北を悟った。

 こうも明確な証拠を見せられては、認めざるを得ない。

 彼女がスノードロップの使者だと言うことを。

 

「…………い、いえ! 私も怪しかったですから…………」

 

 気落ちした私を宥める様に、女の子が首を振る。

 その時。

 

 ぐぅぅぅぅぅぅ…………! 

 

「…………あ」

 

 めっちゃデカい音が鳴った。

 震源地は当然、私のお腹だ。

 そういや何も食べてないの忘れてた…………

 …………恥ずい。

 

「…………あー、その、実は他にも話があるんですけど…………その、食べてからにします?」

 

 更に追い討ちをかける様に、気を遣った様な声で女の子が提案してくる。

 それに一瞬恥ずかしかったりそもそも女の子がいるのが少し気まずいとかの理由で反発したくなるが、空腹状態で餌を出されてこれ以上我慢できる気がしない。

 だから。

 

「…………はい」

 

 私は更なる敗北感と恥ずかしさを覚えながら、その提案にこくりと頷いたのだった。

 空腹には勝てない。

 

 

 

 

 どうやら女の子の分も作ってたらしいスノードロップお手製ご飯を、一緒に囲んで空腹も満たされた頃。

 

「それで、話って何なの?」

 

 私は女の子が言っていた、もう一個の話について聞く事にした。

 …………ついでに、さっき見せた醜態に関しては私の記憶から消しとく事にする。

 後正直今気まずさと恥ずかしさで顔をあんまり見たくない女の子が目の前にいるのも、スノードロップがこの子を送ってきたという事実で一旦飲み込む。

 

「はい。えっと、スノードロップさんからは薊さん宛の食事ともう一つ、これを預かっていまして…………」

 

「これは…………」

 

 果たして、女の子が差し出したのは…………今はもう懐かしい、私の剣型ギアだった。

 前返した時はかなり使い潰したから、相当ボロボロになってたんだけど、ピカピカになってる。

 どうやら、スノードロップが完全に整備したらしい。

 女の子に離れるように言ってから軽く振ってみるけど、違和感は全く無い。

 当時のままの使い心地だ。

 これなら、戦ってスノードロップに大目玉を食らうことも無いだろうけど…………何で今更これを? 

 結構前に修理終わったって連絡きた覚えがあるんだけど。

 …………はい、あそこ行くのが嫌で逃げてました。

 人が沢山いるとことか行きたくなさ過ぎる。

 それにスノードロップからも特に何も言われなかったし今日みたいに送ったりしてこなかったし…………

 閑話休題。

 

「スノードロップはこれについて何か言ってた?」

 

「いえ、特には…………この私用のギアと、薊さんのギアを渡してきただけですね」

 

 女の子にギアを寄越した理由を聞いてみるも、芳しく無い結果に終わる。

 う〜ん、何で? 

 と、軽く素振りしながら考えていた時。

 

「…………お?」

 

 ヒラヒラと、ギアから四角いのが落ちてきた。

 拾ってみると、スノードロップのサインが書かれた封筒があった。

 裏返すと、『蓋の裏の封筒を開けてから読むこと!』と書いてある。

 そういえば蓋の裏にあったスノードロップ印の封筒でこの子がスノードロップの使者だと認めたんだった。

 なので、まず蓋の裏にあった封筒の中身を読んでみる事にする。

 

 えーと…………『数日前お説教したぶりですね薊。どうせ貴女の事だから自己嫌悪で碌に食べていないと思って色々作っておきました。お腹いっぱい食べなさい。後貴女が砂にしたギアの本数が3桁に突入しました』

 

 え、そんなに壊してたっけ? 

 100回も戦って…………あ、そういえばこの前みたいに瞬殺出来ない時はギアが倒すより先に壊れて変身が解けるから複数本砂にしてた。

 

『今までは貴女の出した損失と貴女が戦わなかった事で発生しうるだろう処理班の人命喪失を天秤にかけてお説教で済ましていましたが、砂にしたのが3桁となると話は別です。こんなに壊すならいい加減本部に顔くらい出せバカ娘。なので、罰として貴女のとこに送った処理班の女の子と一緒に生活してもらいます。今までが甘すぎました。これからは、その子にしっかりと監視してもらいますから。そうすれば、貴女も少しは反省するでしょう」

 

「…………はい⁉︎」

 

「どうしました?」

 

「え、いや…………」

 

 いや何て? 

 この子と一緒に暮らせって書いてる? 

 …………見直したけど、そう書いてる。

 

『貴女の部屋、私が泊まるための部屋がありますよね? 彼女には一旦それを使わせてください』

 

 確かに、スノードロップ用の客間はあるし、家族用マンションを一人で使ってるから空きはかなりあるけどさぁ。

 私が傷つけた、そしてこれからも近くにいたら傷つけかねない相手と、一緒に暮らせって? 

 何の冗談…………

 

『あ、これは命令なので。拒否したら給料カットです』

 

 冗談ではないみたい。

 

「えー…………」

 

 いきなりの無茶苦茶に、思わずスノードロップへの不満と困惑の声が出る。

 というかこの子も私で嫌な思いしただろうに一緒に暮らせって何考えてんの…………

 スノードロップの無茶ぶりに呆れながら、さっき落ちてきた方の封筒を開ける。

 

『追伸』

 

 いやさっきの封筒に書けば良いじゃん……

 

『いい機会なので貴女のギアを以前より耐久性を強化して送っておきました。貴女が砂にしたギアの戦闘データも組み込んで強化したのでこれからはそれを使ってください。くれぐれも現場から借りるという体で砂にしない様に。良いですね? もし現場のを砂にしたら給料カットです。そもそも貴女昔はともかく今は殆ど働いてないですしたまには私の言うことも聞いてください』

 

 すみませんでした…………

 現場に迷惑かけ続けて…………

 さっきの無茶ぶりから一転、正論にまた心がキツくなる。

 

「…………あの、大丈夫ですか?」

 

 スノードロップからの手紙を読んでころころ表情を変える私が気になったのか、心配そうに女の子が声をかけてくる。

 あ、この子も当事者なのに手紙の内容が衝撃的すぎて忘れてた。

 

「…………ごめん。ちょっと色々衝撃的で。それで、これを渡した後の事って何か聞いてる?」

 

「いえ、特には聞いてないですが…………」

 

「スノードロップゥ…………!」

 

「スノードロップさんがどうかしたのですか?」

 

 女の子の方に話通してないの⁉︎

 これ私が言わないといけないやつ⁉︎

 大丈夫それ⁉︎

 被害者と加害者の関係的に! 

 …………でも拒否したら給料カットなんだよね。

 貯金はそこそこあるとはいえ、おにぎり買うための糧が無くなるのは困る。

 …………腹括るしかないか。

 後、僅かな希望にかけてみよう。

 女の子が断るって可能性に。

 私じゃ無くて相手が断ったら、スノードロップも給料カットとは言うまい。

 なんか望み薄そうな気がするけど。

 ここに来たのはスノードロップに命令されたからなんだろうけど、私の家に来てから今のところ嫌な顔一つしてないし。

 あれ、私この子にまあまあ酷い態度だったよね? 

 まあとりあえず聞かないと始まらないや。

 

「…………あの、さ。今日から私と一緒に暮らしてって言ったら、どう思う?」

 

 なので仕方なく、本当に仕方なく、女の子に聞いてみる。

 

「えっと…………それは薊さんの家で、ということですか?」

 

「うん。…………その、スノードロップからの手紙に一緒に暮らせって書いてあってさ」

 

 そうしなきゃ私の給料カットという情報は伏せとく。

 この子に押し付ける事情でも無いしもし話して同情から受け入れられたらまた私が爆発しかねないし。

 そんな事になるくらいなら給料カットで良いよもう。

 まあそんな私の裏事情は置いといて。

 果たして、女の子の答えは。

 

「…………私はまあ、大丈夫ですけど。薊さんは良いんですか?」

 

「…………良いんだ」

 

 ある意味、予想通りの答えだった。

 そうであっては欲しくなかったけど。

 期待通りの結末にならなかった事に若干苦虫を噛み潰した様な気分になる。

 しかし。

 

「ええ、まあ。私、薊さんの事好きですし」

 

「はい?」

 

 次の瞬間、しれっと女の子の口から飛び出た言葉に意識が持ってかれた。

 

「いやほら、薊さんって可愛いじゃないですか。髪はボサボサですし、服は適当ですけど…………その奥に、磨けば光りそうなものを感じますし。だから、近くで見れるなら見ていたいです』

 

「えぇ…………」

 

 どうしよう。

 私と相性悪いだけで良い子だと思ってたんだけどもしかしたら変態かもしれない。

 だって私、年は食ってるけど外見は中学生かそこらくらいだし。

 それを可愛いって見た目大学生くらいの子に言われると、なんか身の危険を感じるというか。

 …………でも。

 

「…………」

 

 不思議と、この前この子に感じた激情みたいなものは湧いてこなかった。

 何でだろう。

 エゴ全開だからかな。

 …………正直、今の私はこうやってエゴを出された方が接しやすい。

 スノードロップに頭が上がらないのも、私が悪いって言うのに加えてスノードロップは基本こっちに色々ぶつけて来て相手しやすいってのがある。

 …………多分、それはスノードロップの気遣いだろう。

 意識したら私が気持ち悪くなるから、意識しない様にしてるけど。

 …………そういう意味だと、滅ぼすというエゴ全開の黙示録の方が大体の人より接しやすいという事になってしまうのだけど。

 皮肉だ。

 まあそれはそれとしてあいつらに慈悲など必要ないのできっちり殺すけど。

 閑話休題。

 さて、目の前のこの子が思惑はどうあれ私と暮らすのをある程度前向きに受け入れていて、私も今のこの子に対してはそれほど暴発しそうな感じはしない。

 そうなると、給料カットという裏事情がある以上断る理由がなくなってしまった。

 そして…………改めて女の子に視線を向けてみると、あの時コンビニで出会った時と同じで、美少女だという感想が出てくる。

 そんな子、しかも性格良さそうな子と一緒に暮らせるのは、メリットと言って良いのかもしれない。

 私はそもそも人といるのが苦手だから微妙な感じではあるけど、デメリットと言うほどマイナスというわけでもない。

 少なくとも、給料カットに比べたら小さい。

 だから。

 

「…………あの時はごめん。カッとなって、我慢出来なくて酷い態度取って。…………多分、これからもそういう事が起きるかもしれない。それでも良かったら、私と一緒に暮らして欲しい」

 

 この前の事を謝って、一緒に暮らして欲しいと頭を下げる事にした。

 給料の為に。

 

「ええ、わかってます。それでも良いから、私はここに来た…………いえ、貴女の提案を受け入れたんです」

 

「…………ありがとう」

 

 顔を上げると、女の子が私をまっすぐ見つめていた。

 その顔は温かく笑っていて、思わず私もこれからの生活への不安で強張る顔から緊張が抜ける。

 …………本当に良い子だな。

 さて、私はこれからどうなるのだろうか…………

 その答えは、未来の私だけが知る。

 そう思いながら、彼女に手を伸ばす。

 

「…………これから一緒に暮らすんだし、名前、教えてよ。私の名前はスノードロップから聞いてるみたいだけど」

 

「そう言えばそうでしたね。…………では改めて。私は音切椿。どうぞ、椿と呼んでください。周りの人もそう呼んでるので」

 

 私の問いかけに女の子が…………椿さんが答えて、手を握り返す。

 

「わかった。じゃあ私も改めて。私は柊薊。呼び方は好きな様に。よろしく、椿さん」

 

「はい、よろしくお願いします、薊さん」

 

 こうして、私達の変な共同生活が始まった。

 

 




補足
薊は実は成人してるので椿と年齢差がそこそこあります
椿は大学1〜2年くらい、薊は大学4年くらい
ただし外見年齢は完全に逆です
スノードロップさんは年齢不詳美少女です
ただ薊と同じで小さいです
後薊に対して割と辛辣なのは前話の目的悟られても困るのでカモフラージュです。
椿も前回の対応から何となくわかってるのでカモフラージュに自分の欲望を出してます。
後薊のクラッキングはガオガイガーのエヴォリュダーガイと似た様な物だと考えてください。
薊本人の認識はベルトの使用で変質したという認識です。
ついでに作中で薊のヒーロー名が無いのは人々から呼ばれた名前はあれど薊本人が人間不信になってるのでその名前を嫌ってるという背景があります。


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