人間不信の元ヒーロー少女が助けた女の子に絆される話   作:96963

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明日アギト見てコナン見てレイドやる予定なので初投稿です
前回の続きです。
初変身まで回想で書くつもりが長くなる予感がしたので分割しました。
今回は出会ったその後まで続きます。


インターミッション:提案

 ──────起きたら、目の前に女の子の顔があった。

 

「あ、起きました?」

 

「のわあっ⁉︎」

 

「あいたっ⁉︎」

 

 それに驚いて跳ね起きると、ごちん、という鈍い音と共に私をのき込んでいた女の子の頭にぶつかる。

 次いで、ジンジンとした痛みが追いついてくる。

 

「な、なに…………?」

 

「いやそれはこっちのセリフですよ…………いきなり倒れたからびっくりしたんですからね」

 

 痛みに呻きながらこの状況への困惑を漏らすと、私を覗き込んでいた女の子…………薊が、不満そうな声を上げる。

 その言葉と、直前の記憶で何があったのかを大体察する。

 寝不足で変なテンションだった私は、どうやら薊の言動に血が昇って寝落ちしてしまってたらしい。

 その割に頭がさっきの衝突事故以外で痛くないのは、薊の姿勢や覗き込まれていた事から考えるに、膝枕でもされていたのだろう。

 つまり…………状況を纏めると、私は推定一般人の女の子に詰め寄った挙句気絶して膝枕された上にヘッドバットまでかましたしまったらしい。

 

「…………ご、ごめんなさい…………」

 

 それに気づくと、何だか凄く気まずくなってしまい、耐えきれなくなった口から謝罪が溢れてくる。

 寝落ちして少し冷静になったのか、さっきまでの私の行動が見るに耐えないくらい恥ずかしくなってきた。

 

「別に謝罪なんかいいですよ。…………わざとではないですけど、私が貴女にとってまずい事をしたっていうのは何となくわかりましたから。それよりも、ええと…………貴女の調子は大丈夫ですか?」

 

 しかし薊は私の醜態を気にした様子もなく、むしろ私を心配してきた。

 薊のその様子に更に気まずくなるけど、薊の言葉にそういえば名前を教えてなかったと思い出す。

 

「…………大丈夫よ、ありがとう。それと、自己紹介が遅れたわね。私はスノードロップ。…………まあ、わかってると思うけど、この施設の職員よ」

 

 私一人しかいないけど。

 まあそれは飲み込んでおく。

 言う必要ないし。

 

「スノー、ドロップ…………」

 

「…………? 難しい顔してるみたいだけど、どうしたの? 私の名前、何か変?」

 

 すると、薊が何やら妙な顔をし始めた。

 まあ私ってこの世界の人から見れば異世界人だし、こちら基準だと変な名前かもしれないけど。

 …………あれ、でもこっちの世界ってスノードロップって花があった様な。

 少なくとも目の前の薊の様に、花の名前をつけるのは割と一般的な筈だった様な。

 度々相手する日本政府の使者にも、花の名前の人いたし。

 

「あ、いえ…………その、何だか懐かしい気持ちになっちゃって…………えっと、初対面、ですよね?」

 

「? ええ、貴女とは初対面だと思うけど…………」

 

 少なくとも、私は目の前の少女と出会った記憶なんてない。

 この世界でも…………かつての世界でも。

 そもそも、かつての世界の知り合いなんて全員死んでいる。

 あの世界の人達は、大半が黙示録の手で滅び、僅かに残った生き残りも…………私を異世界に送るために行った、黙示録拠点への突撃で全員死んだ。

 だから、この子が私の知り合いという事はあり得ない。

 なのに、懐かしいって…………どういう事なんだろうか。

 他人の空似って事? 

 その謎に、さっきの気まずさも忘れて好奇心がまた顔を出す。

 

「そう、ですよね…………すみません、変な事言っちゃって…………」

 

「いや、まあ別にそれは良いんだけど…………初対面なのに懐かしいって、私の顔、誰かに似てたとかそういう感じ?」

 

「うーん…………何といえば良いんでしょうか…………」

 

「あ、いや言いにくい事なら別にいいんだけど」

 

 なので聞いてみると、薊が困った様な顔をしたので慌てて好奇心を引っ込める。

 さっきの流れを踏襲して、また醜態を晒す訳にはいかない。

 わざわざ人を傷つけたい訳じゃないし。

 平常心、平常心。

 

「いえ、そういう訳ではないんです。ただ…………どう言えば良いのか、わからなくて…………その、ちょっと変な説明になると思うんですけど、良いですか?」

 

 しかしどうやら、薊は質問自体に困ってる訳ではないらしい。

 何というか、説明が荒唐無稽だからどうしようと迷ってる、みたいな雰囲気だ。

 まあそれなら、好奇心に従っても問題ない気がする。

 頷いて、薊に続きを促す。

 

「えっと…………少なくとも、今の私もスノードロップさんと出会った記憶はありません。ただ…………その、私って、昔の記憶が何も無くて…………この不思議な懐かしさが、その無くなった記憶に関係してるんじゃないかと思ったんです。それで、スノードロップさんなら知ってるかなと思って」

 

 なるほど。

 薊の説明は、確かに変な説明だった。

 まあそれは良いとして、記憶喪失? 

 

「記憶がないって…………どれくらい記憶が無いの?」

 

「えっと…………私が見つかって孤児院に拾われたのが、8年前のこの時期だから…………大体生まれてから10年分くらいです」

 

「そう…………」

 

 10年分の記憶が無い、ね。

 軽い気持ちで聞いたら、思ったよりヘビーな背景が出てきてちょっと困る。

 当の本人がフラットな感じで言ってるからそこまで気にして無さそうなのが幸いだけど。

 にしても、8年前のこの時期、か。

 私がこっちに来たのも、丁度そのくらいだけど…………まあ関係無いわね。

 だって、薊はこっちに両親が…………ん? 

 

「ねえ、薊。ちょっと聞きたいんだけど」

 

「何でしょう?」

 

「今孤児院って言った?」

 

「え? ええ、はい。8年前、これだけ持って孤児院の近くで倒れてたのが私らしくて。聞いても記憶喪失で何もわからないから、孤児院にそのまま入ることになったんです。あ、薊って名前はこの裏にアザミって書いてるから付けられました」

 

 薊が胸のアザミを持ち上げながら、軽い調子で説明する。

 だけど。

 薊が何気ない調子で言ったそれは、私にとっては結構衝撃的だった。

 だってそれは…………薊が、私の世界の人間かもしれないと考えるには、十分な情報だったからだ。

 根拠はいくつかある。

 まず一つ。

 薊は、現状天涯孤独だ。

 孤児院に拾われたという情報から考えるに、少なくとも日本国内において、薊という存在に関係するものは発見できなかったと考えられる。

 つまり、薊はある日突然現れた存在と言っても同義だ。

 二つ目。

 私がこっちに来たのと同じタイミングで、薊が見つかった。

 そして、薊は見つかる前の記憶が無い。

 三つ目。

 薊は、私に謎の懐かしさを感じてる。

 無論、私はあっちの世界でも薊みたいな子と会った事はない。

 これでも記憶力は良い方だから、今まで出会った人は大体覚えてる。

 だから、私個人への懐かしさの可能性は、無い。

 だけど、薊が感じてるのが、『かつていた世界への懐かしさ』だとしたら、辻褄が合う。

 私は、かつての世界を懐かしんで、あの世界で使われていた香水とかシャンプーとかを再現して使ってるから。

 その匂いに無意識で気づいて、忘れた故郷への郷愁を感じてる可能性は、否定出来ない。

 そして四つ目。

 薊が、私の仕掛けた偽装迷彩と認識改変を突破した事だ。

 この仕掛けは、この世界の人では予め情報を知ってないと突破出来ない様になっている。

 なのに、薊が突破した、という事は…………身体の構造が、この世界の人とは異なっている可能性がある。

 私の作ったシステムは、この世界の人体構造に合わせているから。

 …………まあ、私が単にミスったとか、薊が超越的な直感とか幸運とかの持ち主だったとか、そういう可能性も考えられるのだけど。

 それは一旦置いとく。

 さて、結局私が何を言いたいのかというと…………薊は、私の転移に巻き込まれて、こっちに来た私の世界の人の可能性がある。

 勿論、この推測は大外れの可能性も全然ある。

 一つ一つは偶然で片付けられるものだから。

 だけど…………三つも四つも重なるなら、そこには何かしらの背景が存在する可能性がある。

 私は、その可能性を調べたい。

 好奇心と、そうであって欲しい、という願望が、心の底から湧き上がってくる。

 気づけば。

 

「ね、ねえ薊!」

 

「は、はい⁉︎」

 

「ちょっと、貴女の身体を調べさせてもらえない⁉︎」

 

 身体が勝手に薊の手を取って、とんでもない事を言い出していた。

 

「いやいきなり何言ってるんですか⁉︎」

 

「あ、ごめん。間違えた…………薊、貴女の身体を調べさせて!」

 

「全然変わって無いですよ⁉︎」

 

 ぎゃー、と言いながら薊が私の手を振り解こうとするので、負けじと私も薊の手を握る。

 しかし、その状況は長く続かなかった。

 何故なら。

 

「…………わかりました、わかりましたから! とりあえず何で私の身体を調べたいと思ったのか教えてください! それがわからないとはいともいいえとも言えないですよ!」

 

「あ、ご、ごめん…………」

 

 薊の言葉で、私がまた正気を失っている事に気づいてしまったからだ。

 吊られて、またやってしまった、と重く暗い気持ちになって、さっきまでのテンションが沈んでいく。

 何で私こんな醜態をこの子の前で何度も晒してるんだろう。

 

「…………はあ。なんかやりにくいですねー、もう。それで? どうして私の身体を調べようと思ったんですか?」

 

「あ、はい。えっと…………」

 

 沈んだ私に呆れたのか、薊が溜息を吐きながら続きを促す。

 それに反射的に答えようと、口を開いた時。

 私は、固まってしまった。

 

「…………どうしたんですか?」

 

 いや、だってさ。

 どうやって説明すれば良いんだこの子に? 

 よく考えたら私が異世界から来たのって、普通に機密事項だし。

 流石に一般人のこの子には教えちゃダメだろうし。

 でもそれを説明しないと多分信じてもらえないだろうし。

 どうしよう。

 うーん。

 思考を少し加速させながら、必死に上手い説明の仕方を考える。

 しかし。

 その甲斐虚しく、良い説明は私の中に思い浮かんでこなかった。

 なので。

 

「…………あの。これから話す事なんだけど…………その、色々と秘密な話が混じってるから、他の人には他言無用にして欲しいんだけど…………大丈夫かしら」

 

「…………まあ、この施設自体が明らかに秘密基地って感じですしね。多分秘密を漏らしたら大変な事になりそうですし、それくらいなら良いですよ」

 

「! ありがとう、薊!」

 

 仕方なく、素直にブチまける事にした。

 幸い、薊がその条件を飲んでくれたので良かった良かった。

 え? 薊が飲んでくれなかったら? 

 その時は…………どうしてたんだろう? 

 閑話休題。

 では早速、薊を私の部屋に招待しよう。

 

「じゃあ薊、こっちに来てもらえる? 色々と説明しなきゃいけない事があるからさ」

 

「わかりました」

 

 施設の奥に引っ張る様に、薊の手を取る。

 さあ、可能性を探求しよう。

 

 

 

 

 

 

 というわけで。

 

「…………つまり、スノードロップさんは世界を渡り歩いては滅ぼす黙示録という組織に、故郷の世界を滅ぼされてこっちの世界に来た、と。それで、その黙示録とやらに対抗するための武器をここで開発していると」

 

「そういう事になるわね」

 

「なるほどなるほど…………」

 

 研究室に薊を連れ込んだ私は、薊に私の事情を一通り説明した。

 まあ簡単に信じられるとは思ってないけど。

 なので、これから色々と物証とか私が天才科学者である発明とか見せようと思う。

 と、色々と準備してる時。

 

「いやー、最初見た時はなんだろうこの人は、って思ったんですけど。そういう事なら色々と納得です! 黙示録、許せない組織ですね!」

 

「そうそう、簡単には信じられないわよね…………でも証拠が…………って今なんて言った?」

 

「え、いやその黙示録って組織許せないですよねって言ったんですけど」

 

「あれぇ⁉︎」

 

「? 私、何か変な事言いました?」

 

「いや変な事は言ってないけど…………! 普通信じる、こんな話⁉︎」

 

 色々用意してたのが無駄になったんだけど! 

 いや、信じてくれたのが嫌とか言ってるわけではなくてね? 

 

「まあ、確かに客観的に見たら荒唐無稽な話だとは思いましたけど…………スノードロップさんの言う黙示録って奴らの話聞いてたら、見たことも無いのになーんかイライラしてきちゃったんですよねー…………なので、話だけでこんなに心を動かすなら、それは本当の事なんだろうと思いまして」

 

「そ、そう…………」

 

 何か独特の感性してるわねこの子。

 ま、まあ信じてくれたのなら話は早いわ。

 これで本命を果たせる。

 

「じゃあ、私が貴女から見た異世界人だと理解してくれた事だし…………本題に入るわね」

 

 そう言って、薊にさっきの閃きについて教える。

 

「うーん、私がスノードロップさんと同じ世界出身の可能性がある、ですか…………」

 

 すると、さっきあっさり信じてたのは何だったのか、今度は薊が怪訝な顔を見せる。

 いやこっちの方が正しい反応だとは思うけど。

 まあ、とりあえず話を進めよう。

 

「ええ。それを確認するために、貴女の身体を調べさせて欲しいの。私の世界の人とこの世界の人では、ちょっと構造が違うから。この世界の技術力だと気づけないくらいの小さい差だけど」

 

「なるほど、だから身体を…………」

 

「ええ。…………それで、どう? 痛いとかそういうのはないし、身体に悪影響があるとかもないわ。ちょっとピッてやるだけだから。まあ私が頼んでる立場だから、断ってもらっても・いいけど…………」

 

「いえ、そういう事なら調べてください。…………勝手に入ってしまった罪滅ぼしもしたいので」

 

「…………それに関しては私も色々醜態を見せてしまったから、ノーカンでお願いしたいわ。代わりに、貴女のお願いを一つ聞くとかどうかしら。出来る範囲で。口止めも頼んでる事だし」

 

「そうですか? …………うーん、ならそれが終わった後ちょっと、相談に乗ってもらっていいですか?」

 

「そういえば、何か悩み事してたって言ってたわね。良いわよ、私に出来る事なら乗ってあげる」

 

「ありがとうございます! では、そういう事で」

 

「わかったわ。それじゃあ、始めるわね」

 

 お互いに合意が取れたので、棚からバーコードリーダーみたいなデバイスを取り出す。

 勿論バーコードリーダーではない。

 使い方は似てるけど。

 こっちの世界で言うCTやらMRIやら遺伝子検査やら医学的な検査を全部これでピッするだけで調べてくれる便利検査装置だ。

 薊がえっそれでやるの? みたいな顔してるけどこれが私流だからしょうがない。

 困惑顔の薊に眩しいから目瞑っといてと指示してピッ。

 はい終わり。

 

「終わったから目を開けて良いわよー」

 

「えっもう終わったんですか? 流石異世界…………」

 

 感心顔の薊を他所に、薊の身体データを他の日本人と比較させる。

 その結果は。

 

「…………」

 

「スノードロップさん?」

 

 念のため、私のデータとも比較させる。

 …………しかし結果は、変わらない。

 薊が、この世界の人間であるという、結果は。

 

「…………結果が出たわ。薊。貴女は、この世界の人間よ」

 

 弾き出された結果を見て、思わず気持ちが暗くなる。

 わかってたじゃないか。

 お前の推測は、あくまで推測。

 当たっている保証なんて、無いって。

 …………だけど、辛い。

 同胞がいるかもしれないという希望が、こうやってあっさりと消えてしまうと。

 

「…………そうですか」

 

 薊が私の様子を察したのか、所在なげに視線を彷徨わせる。

 薊のその様子に、お前は何回この子に情けない姿を見せれば良いんだ? と、自分を苛む声が聞こえてくる。

 その時。

 

「…………あ、あの!」

 

 薊の声が、その幻聴をかき消した。

 

「…………どうしたの?」

 

「…………えっと、これで検査は終わったんですよね? なら、さっきの話、いいですか?」

 

 薊の方を向くと、さっきのお願いの話を薊が持ち出す。

 そうだった、そういう話だった。

 

「…………そうね。じゃあ、聞かせてもらいましょうか」

 

 なので、薊に続きを促す。

 何となくそれが落ち込む私への気遣いだと察しながらも、今の私は辛さから目を背けることしか出来なかった。

 

 

 

「その、ですね…………さっきも言った通り、私孤児院にいるんですけど…………今年で院を出る事になってて…………どこに就職するか迷ってるんですけど…………どうすれば良いですかね?」

 

 薊が私に溢したのは、結構ハードな人生相談だった。

 その内容に私の意識も切り替わり、さっきの事を一旦隅に置いて真面目に考える。

 

「薊。就職って言ってたけど…………進学の選択肢は無いの? 返済不要の奨学金とか、あると思うけど。高校の成績が悪いとか?」

 

「悪くは無いです。ただ…………仮に奨学金を貰っても、私じゃ維持できる気がしなくて。…………それに、早く独り立ちしたいんですよね」

 

「それはどうして?」

 

「…………さっきも言った通り、私は孤児です。その上、私は記録上は突然現れた人間です。さっきスノードロップさんが疑った様に。だから、不安なんです。私を示すものは、記憶がある時からずっと持ってる、このアザミと刻まれたペンダントだけですから。だから、早く独り立ちして…………私は私がいるという事実を、実感したいんです」

 

「…………そういう事」

 

 薊の主張は何となくわかった。

 というか、私と同じだ。

 私も…………世界が無くなって、ひとりぼっちになってしまったから。

 だから、私は求めてる。

 黙示録を滅ぼす最強のシステム、私の最高傑作…………ファンタズムドライバーを。

 世界が無くなっても、私が死んでも、確かにあの世界はあったと、私はここにいたのだと、証明するために。

 …………なるほど、どうやら私は出会ったばかりのこの少女にシンパシーを感じてるらしい。

 後、これまでの触れ合いで薊の人柄にそれなり以上に好意を抱いてる様だ。

 さてそうなると、このままアドバイスしてはいさよなら、は選びにくくなってきた。

 それなりに真面目なアドバイスは考えたけど。

 …………自分でも自覚してるけど、私はその場の感情と衝動に振り回される人間だ。

 科学者とか復讐者とか社会人とかそういう目線で考えると失格寄りの人間だ。

 何せ、さっきまで憎悪一択だったのにあっさりと目の前の少女に興味を持っていかれてる。

 だから、この選択も…………他の目線で見れば、失格なのだろう。

 だけど…………私としては、言わずにいられなかった。

 

「…………じゃあ、薊。ウチで働かない? 給料高く出すし、衣食住も保証するよ?」

 

「……………………えっ?」

 

 それは、薊をここで雇う、という提案だった。

 

「…………いや提案は嬉しいですけど、ここって国の極秘施設ですよね? 私働こうにも無理じゃないですか?」

 

 薊が最もな事を言う。

 確かにそれはその通りだ。

 だが実現という点においては問題はない。

 

「そこは大丈夫よ。だって私、日本政府に色々貸してるし。薊一人雇う分には、全然無理言わせるよ。まあ後ほら、結局理由はわかんなかったけど、薊ってここの迷彩見破れるからさ。監視って意味でも多分許してくれるよ」

 

 私の方が力はある。

 好き勝手するためにたっぷり貸しを作って色々と恩恵を与えてるからね。

 それにそもそもここは私の意思で私以外立ち入り禁止を宣言している。

 だから、誰を雇うも雇わないも私の自由だ。

 

「…………」

 

 薊が、言われて見ればみたいな顔をするけど、すぐに難しい顔になる。

 

「…………何で、ですか?」

 

「ん?」

 

「何でいきなり、そんな提案を私にしたんですか」

 

「何で、と言われると…………そうだなあ、薊と私が少し似てるから?」

 

 そう言って、開発途中のファンタズムドライバーを指差す。

 

「アレは、黙示録を滅ぼす事で私の世界が在った事を、私がいた事を証明するために作っている兵器。アレが完成すれば、黙示録は遠くない未来に滅ぶ。そうすれば、消えた私の世界が在ったと、刻みつけられる」

 

 だから薊と私、ちょっと似てるでしょ? と問いかける。

 

「…………そう言われたら、そうですが」

 

「だよね? だからだよ。…………この短い出会いで薊もわかったと思うけど、私は感情と衝動で振り回される生き物だ。だから、シンパシーを感じたキミをアドバイスしてはいさよならって別れるのは嫌だなって思っただけ」

 

「…………私、何の役にも立ちませんよ?」

 

「んー、まあ私の技術について来れるこの世界の人はまだいないから、そういう意味では役に立たないけど。掃除とか身の回りの世話とか、やって欲しい事はあるし」

 

 今日も私の悪癖で醜態をめちゃくちゃ晒したからね! 

 

「…………」

 

 私の言葉に、薊が逡巡した顔を見せる。

 まあそれはそうだろう。

 ゆっくりと悩んで、決めれば良い。

 何なら後日でも良い。

 そう思って、薊を見つめてると。

 

「…………スノードロップさんの思いは、わかりました」

 

 覚悟を決めた様な顔で、薊が私を見る。

 そして。

 

「だから、私もその思いに応えます。…………お願いします、ここで働かせてください!」

 

 綺麗な姿勢で、私に頭を下げた。

 その姿は、私が見た柊薊という少女によく似合ってると思った。

 出会ったばかりで何言ってるんだという感じだけど。

 まあ、ともかく。

 これで契約は為された。

 

「良いよ。これからよろしくね、薊」

 

「…………はい。よろしくお願いします。スノードロップさん」

 

 こうして、孤独の研究所に一人、新しい住人が増えた。

 

 

 

 

 

 




スノードロップさんが提供した技術は小型核融合炉とかニューロリンカー的なデバイスの基礎理論とかそんな感じの奴です。
後スノードロップさんはノリで動くので割と復讐者としても科学者としても微妙な時があります
そして薊は孤児です。
回想でアザミのペンダントを付けてるのはそれだけがアイデンティティだからです。
現代においてアザミのペンダントは部屋の中に安置されてて普段は付けてません。
これは戦いの過程である程度アイデンティティを確立したからです。
代わりに別の意味で自分も他人も信じられなくなってますけど
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