人間不信の元ヒーロー少女が助けた女の子に絆される話   作:96963

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アルミオシオンの医術師が楽しすぎて遅れたので初登場です


悪夢

 ──────お前のせいだ。

 

 ──────お前がいるから、襲われる。

 

 ──────私達を助けたいって言うなら…………早く死んでくれ。

 

『ここに来る前に街を軽く見てみたが…………散々な言われようだなぁ、◾️◾️◾️◾️殿?』

 

「だま、れ…………!」

 

 目の前に対峙するは、馬の様な化け物に乗った…………いや、化け物と融合したかの様な見た目の盾を持つ四足の赤い騎士。

 黙示録の統括者の一人、赤の騎士レッドライダーだ。

 人々を扇動し、私への憎悪を植え付けた、最悪の敵。

 前は取り逃がしたけど、今日こそ滅ぼす…………! 

 そして、皆を元に、戻す…………! 

 

「お前が皆を操ったせい、だろ…………!」

 

『おいおい、責任転嫁は困るなぁ? 俺はただ、少し後押ししてやっただけだぜ? 誰しも心の中に燻らせてる、不信って奴をな! それがお前への憎悪に膨らんだのは、この世界の人間の自主性によるものさ。つまり、俺が何かする前からお前は嫌われてたってワケ。ハハ、傑作だな!』

 

「…………何言って、るんだ…………結局、お前が関係してるんじゃないか…………!」

 

『だーかーら、俺はちょっと背中を押しただけだっつの。お前の言う様に人間の頭の中に直接手を入れて憎悪を植え付けるなんて、とてもとても俺には出来ない芸当ですよ?』

 

「…………」

 

 あくまでも皆のせい、と人を嘲るふざけた態度しか取らないレッドライダーに、頭が絶対零度に冷えていく。

 燃え盛る様な、憎悪の炎で。

 自然と、口が閉じた。

 

『おぉ? ついに認めたかぁ? お前がただ、嫌われてるだけだって! それなら話は早い、嫌われ者は早く世界から退場した方が世のためだぜ、ヒーローさん!』

 

「…………黙れ」

 

『あん?』

 

「…………もういい。お前はここで滅ぼす。リナリア!」

 

『了解です! システム起動!』

 

『Fallen!』

 

「その汚い口、二度と開けなくしてやる」

 

『Liberate.Awaking THE FALLEN!』

 

『はあ、野蛮な女だなぁ。反論できないからって暴力に訴えるのは、良くないぜ?』

 

「滅べ」

 

 相も変わらずふざけたことしか言わないレッドライダーの口目掛けて殴り掛かる。

 

『おっと! お前のパンチは痛いからな、また退散させてもらうぜ! 次に会うときは無いだろうけどな! 何せ、お優しいヒーロー様は世界のためにくたばって…………ガ…………っ⁉︎』

 

「逃す訳無いだろ」

 

 それを避けてそのまま退却しようとしたレッドライダーだが、そうは問屋がおろさない。

 退却出来ない事に驚いたレッドライダーの隙を突いて、思いっきり殴り抜く。

 

『対策してないと思いました? ざーんねん! 私とお母様が手を組めば、一度戦った相手の解析なんて余裕なんですよね!』

 

 お前の撤退能力はリナリアの集めたデータにより解析済みだ。

 既に、スノードロップによるジャミングフィールドが展開されている。

 

「だから滅べ」

 

『…………チッ。さっきまでの辛そうな顔は演技かよ。人を嵌めるなんて、それでもヒーローかよ! 俺はただ楽しみたいだけなのに、面倒な事してくれるなァ!』

 

 それを受けて今までの様にふざけた態度ではいられないと悟ったのか、レッドライダーが左腕にマウントした盾から赤黒い刃を生やす。

 そして、いつの間にか盾に生えていたグリップを右手で握り、盾ごと刃を引き抜いた。

 赤黒い刀身からぼたぼたと変な液体が垂れてるし、切り付けられたら変な病気になりそうだ。

 

『そぉら行くぜぇ!』

 

 その何か汚い感じの剣を、レッドライダーが振りかぶってくる。

 不味いな。

 体勢的にちょっと避けれそうに無い。

 こいつ四足だから下手に避けても追撃してきそうだし。

 …………なら、避けずに行くか。

 

『アレまともに触ったら駄目ですよマスター!』

 

「じゃあまともに触らなきゃ良い」

 

 私の意図を察したのか、リナリアが警告するがそもそも私はまともに受ける気はない。

 

『流石マスター! イカれてる!』

 

「リナリアもイカれてるけどね」

 

『Boost THE FALLEN 』

 

「それ、貰うね」

 

 バックルを叩いて、レッドライダーの大剣を掴む。

 次の瞬間。

 

『ハッ、何を言って…………⁉︎』

 

 レッドライダーの驚愕と共に、気持ち悪い刃が、私の掌に飲み込まれ始める。

 このまま飲み込んで返してやる。

 その瞬間。

 

『…………なんてな』

 

 レッドライダーが、さっきまでの焦りが嘘の様にニヤリと笑った。

 

『っ⁉︎マスター、今すぐ吐いてください!』

 

「!」

 

『Reverse THE FALLEN 』

 

 レッドライダーのその顔と、リナリアの焦った声に何かまずいものを感じ、慌ててレッドライダーの刃を放出しようとする。

 しかし。

 

『遅えよ、バーカ!』

 

「が…………っ⁉︎」

 

 時は既に遅く。

 吸収したレッドライダーの刃の一部が、私の中で暴れ始めた。

 全身が痺れる様な痛みに覆われて、苦悶の声が漏れる。

 

『おらよ!』

 

『がふ…………っ』

 

『マスター!』

 

 更にレッドライダーに無防備な身体を蹴り飛ばされ、大きく吹き飛ばされる。

 

『何で…………あの程度の力…………マスターが飲み込めない筈が…………』

 

『おいおい、機械の癖に節穴かぁ? お前らが飲み込めると勘違いするくらいの力でコーティングした吸収容量以上の毒を、流し込んだけだってのに。今まで散々そこのヒーロー様が下級中級連中相手に見せてくれた能力、対策しない訳がないだろ? 黙示録の統括者たる俺達四騎士に…………既に見せた札の力押しが通じると思うなよ。ま、逃げられないのには驚いたけどな! それでも…………ここでお前を殺せば終わりだ』

 

『くっ…………マスター!』

 

「わか…………ってる」

 

 さっきまでのふざけた態度が一転、冷たく押し殺した様な態度になったレッドライダーに、リナリアと本能がうるさいくらいに警告してくる。

 

「ぐ…………っ」

 

 幸い、毒が暴れ出した直後に反射的に吐き出せた出来たおかげで、リナリアから伝わってくる私のバイタルに大きな異常はない。

 だけど…………毒が一瞬とはいえ回った事による痛み、疲労感はそのままで、立ち上がろうとした身体が傾ぐ。

 …………油断した。

 前戦った時は、逃げ足は早いけどそれ以外はそこまで、という印象だったのに…………本人の言う通り、面倒だから隠してたって事か。

 その油断で、手痛い一撃を貰うなんて…………なんて、無様なんだ。

 奴の言う通り、どうやら私は節穴だったらしい。

 …………でも。

 

「…………」

 

 それは、今倒れる理由にならない。

 目の前にいる、災厄たる悪に膝を折る理由にならない。

 私はこいつらを全て滅ぼさなければならない。

 痛みが何だ。疲労が何だ。

 ファンタズムシステムに異常はない。

 私の身体は、問題なく動く。

 ゲームで言えば、私のHPはほぼ満タン状態だ。

 なら問題ない。

 痛みや疲労なんて、無視しろ。

 無様を晒すな。

 この世界の為に、スノードロップの為に…………私の為に。

 目の前の災悪を…………滅ぼせ。

 その為に…………リスクを許容しろ。

 死ななければ、何とでもなる。

 

「…………滅べ」

 

『…………マスターの許可を確認。生命維持装置レベルを最低レベルに変更。リミッター解放、最終セーフティ以外の安全装置を全て解除します。…………どうかご武運を。マスターが望むなら、私はそれに従います』

 

 リナリアの声と共に、スノードロップがドライバーに設定したリミッターが、ドライバーと私が壊れないギリギリの部分まで解除され、出力が上昇する。

 

「…………っ」

 

 同時に、出力が上がった分私へのバックファイアが酷くなり、苦痛に声が漏れる。

 ドライバーへの負荷を軽減し、出力上昇にリソースを割ける様私の生命維持装置もかなりの部分を切ったから、余計に酷い苦痛だ。

 だけど。

 ──────かちり。

 それがどうした。

 頭のどこかで、撃鉄が起きる。

 そして撃鉄が私の中の何かを叩き、頭の中で爆発的な感情の奔流が巻き起こる。

 その瞬間、毒による痛みや疲労、反動による苦痛が、見えなくなっていった。

 言い換えれば、動くのに煩わしいものが、消えていった。

 …………スノードロップの自爆を止めようとした時、私は…………憎悪という酒に酔い続けたままで、醒める事はなかった。

 今回もきっと、それと同じだ。

 この憎悪という酒に酔ってさえしまえば、目の前の事以外どうでも良くなる。

 それ以外の全てを無視して、私は動き続ける。

 黙示録を滅ぼさなければならないという、私が原初より抱いてる…………憎悪によって。

 レッドライダーを滅ぼすまで、私は止まらない。

 

『へぇ…………無理矢理打ち消したか。流石…………意志力の塊なだけはあるなぁ!』

 

「滅べ」

 

 そんな私の様子を見て、何が面白いのかレッドライダーが笑う。

 だけどもうどうでも良い。

 とにかく滅べ。

 被弾を無視して、レッドライダーの胴体に潜り込む。

 そして。

 

『Finish Mode!』

 

『Boost 』『Boost 』『Boost 』『Boost 』

 

『OVER CHARGE THE FALLEN! SPIRAL OVER…………FINISH!』

 

『がぁっ⁉︎』

 

 螺旋状のエネルギーを纏った拳で、レッドライダーを殴り抜いた。

 さっきとは反対に、レッドライダーがゴロゴロと吹き飛ばされる。

 だけど、まだだ。

 この程度で、こいつが終わる訳が無い。

 自らを今まで倒してきた連中と別格と宣ったこいつが、今の私の全力の一撃程度で沈む? 

 あり得ない。

 それは、さっきの攻防からしても明らかだ。

 でも私はこいつを滅ぼさなければならない。

 だから。

 

 ──────まだ未完成だから、絶対に使わない様に。持ち出し厳禁だからね! いい⁉︎

 

「スノードロップ…………ごめんね」

 

『Hi-Drive』

 

『マスター⁉︎それはまだ!』

 

「いいからやって、リナリア!」

 

『…………了解しました』

 

 ()()()()()()()()()()

 取り出したのは、白黒入り混ざった陰陽に染められた、コアを装填するスペースの付いた角ばった大きな鍵、と言った感じのアイテムだ。

 これはスノードロップの研究室から無断で持ち出した、Hi-Driveブースター。

 その名の通り、現在スノードロップが開発中の、コアの能力を更に引き出すブースターアイテムだ。

 安全装置が未完成だからまだ開発中らしいけど…………幸いな事に、コアをブーストさせるシステム自体は完成している。

 だから、使える筈だ。

 その分激しくなるだろうバックファイアは…………気合いでゴリ押す。

 ドライバーのコア装填口を開き、ブースターをFallenのコアに突き刺す様に装填する。

 ドライバーがブースターユニットの接続を認識し、蓋を閉じる代わりにブースターユニットをロックする。

 

『Hi-Drive THE FALLEN…………Ready』

 

 これから行う事が危険だと教える様に、ドライバーが静かな声で聞いてくる。

 当然答えは決まってる。

 

「オーケー…………!」

 

 ドライバーの両サイドを叩き、ブースターシステムを起動する。

 

『Hi-Drive Boost!』

 

「ぐ…………っ」

 

 未完成のシステムを使った事によるものか、さっき以上の負荷が身体にのし掛かり、全身に紫電が走る。

 

「知った事か、そんなもの!」

 

 だけど、関係ない。

 全部振り切って、私はこいつを滅ぼす。

 その意思に突き動かされるまま、体勢を立て直したレッドライダーに殴り掛かる。

 次の瞬間。

 

『Recrystallization THE FALLEN ! Boost !』

 

 私の身体であり、私を覆う装甲でもある黒い鎧が、右腕から白く染まり始めた。

 すると、白く染まった部分の力が、まるで枷を外されたかの様に強化されている事に気づく。

 どうやら、未完成ながらもシステムは正常に作動したらしい。

 それに都合が良いと思いながら、思いっきりレッドライダーの胴体を殴り抜く。

 

「滅、べ!」

 

『な、に⁉︎』

 

 さっきの一撃より更に強化された一撃に驚いたのか、レッドライダーが困惑した顔を見せる。

 同時に、私の全身が完全に白く染まり、全身に右腕の様な力が漲る。

 

『ブースターシステム、稼働率100%です! でも負担が結構やばいので、早めに決めてください!』

 

「わかった」

 

 未完成のものを使ったせいか、はたまた私が無理を重ねているせいか、残された時間は少ないらしい。

 だから…………レッドライダーが怯んでるこの隙に、畳み掛ける。

 

「らぁっ!」

 

 まずレッドライダーの盾剣を蹴り飛ばし、手に取れない遠くまで追いやる。

 

「捕まえた」

 

『っ、てめ…………っ!』

 

 そして比較的人型を保っているレッドライダーの上半身を掴み、地面に叩きつける。

 

『が、は…………っ⁉︎』

 

「滅べ」

 

 その勢いのまま、更にストレートを叩き込む。

 しかし。

 

『パワーアップした様だが、舐めん、な、よ…………っ!』

 

 そのまま殴り続けるという訳にはいかなかった。

 更に拳を振り上げた私の隙を突いて、レッドライダーが私を弾き飛ばして起き上がる。

 一撃一撃がさっきの必殺攻撃より強くなってる筈なのに、まだ動けるなんて。

 予想以上のタフネスだ。

 だけど。

 

「…………これで終わり」

 

『あぁ?』

 

 底は見えた。

 今のあいつなら、次の攻撃で仕留め切れる。

 

『Finish Mode!』

 

『Boost 』『Boost 』『Boost 』『Boost 』

 

『OVER BOOST CHARGE THE HI-DRIVE FALLEN! HI-SPIRAL OVER…………FINISH!』

 

「…………っ、あ、ああああああっ!」

 

 尋常ではない負荷に苛まれる身体に、更に必殺攻撃による負荷をかけたせいか、無視出来ないレベルの苦痛が私を襲う。

 それを誤魔化す様に叫び、白く光る螺旋状のエネルギーを纏いながら、レッドライダーに突撃する。

 

『ちっ、流石にこれは不味い─────っ⁉︎』

 

 流石に軽視出来るレベルじゃなくなったのか、レッドライダーが対応しようと後退と防御の構えを同時に取るがもう遅い。

 

「まずは一撃!」

 

 最初の一撃が、下がろうとするレッドライダーの足よりも速く、レッドライダーに届く。

 その一撃は防ぎ、逸らそうとするレッドライダーの腕ごと奴の防御をぶち抜いて、大きく吹き飛ばす。

 

「まだだ!」

 

 その吹き飛ぶ速さよりも速く、レッドライダーの背後に回り、空中回し蹴りで叩き落とし、更に落下地点に回り込んで追撃を与える。

 

『っ、いい加減に────がぁっ⁉︎』

 

 一方的に殴られている事にレッドライダーが苛立った様な声で反撃しようとする。

 だから。

 

「そうだね、私もいい加減疲れてきた。…………だから」

 

 最初に殴った時の様に、反撃ごとぶち抜いてレッドライダーを空に殴り飛ばす。

 同時に私も跳躍して、身体中に螺旋を纏わせる。

 

「滅びろ」

 

『OVER BOOST CHARGE THE HI-DRIVE FALLEN! HI-SPIRAL OVER…………FINISH!』

 

 ここまで来たら負荷が多少増えても同じだ。

 更にブーストを掛け、二重螺旋を纏った右足をレッドライダーに叩き込む。

 

『…………ちっ。油断したツケが回ってきたか。良いぜ、認めてやる。お前の勝ちだ。だが…………これで終わりだなんて、思うなよ?』

 

 叩き込んだ瞬間、負けを悟ったのかレッドライダーが末期の言葉を吐き捨てる。

 わかってる。

 お前らは四人いる。

 お前一人を倒しても、黙示録は滅びない。

 だから。

 

「…………すぐに全員滅ぼす」

 

 全員私が滅ぼす。

 黙示録という滅びを、私が滅ぼしてやる。

 その答えに、螺旋に身体を削り取られているレッドライダーが顔を歪める。

 その顔はまるで…………見当違いの答えを出してる人を嘲笑う様な…………意地の悪い、笑みの様だった。

 それに苛立ち、足に込める力を更に強くする。

 螺旋の勢いが強くなり、レッドライダーの身体が更に削れていく。

 そして。

 

『…………お前に祝福あれってな! はは、ははははははは!』

 

 そんな言葉を残して、レッドライダーが螺旋に消え去った。

 

 

 

 

 

 

『…………レッドライダーの撃破残滓を確認。撤退による消失ではなく、撃破による消滅が確定したと考えられます』

 

 戦闘終了後。

 周囲の状況を確認してレッドライダーが完全に撃破されたと、リナリアが判断する。

 

「…………そう」

 

 リナリアの太鼓判に、レッドライダーが消えたという事実を頭が受け入れて、意識が戦闘から切り替わる。

 その瞬間。

 

「…………っ!」

 

『マスター⁉︎っ、緊急解除します!』

 

 無視していた苦痛が私を遅い、地面に倒れ込む。

 慌てた様子のリナリアが変身を解除させるけど、苦痛はさほど変わらない。

 全身が痛い上に動悸が酷い。

 動いただけで激痛が走る上に、動かなくても身体の内側から殴られる様な痛みと動悸が思考を邪魔してくる。

 

『生命維持装置レベルマックスに変更! お母様!』

 

『大丈夫、薊⁉︎』

 

 レッドライダーが倒された余波でスノードロップの張ったジャミングが解除されたのか、心配そうなスノードロップの声が通信機越しに聞こえてくる。

 でも答える余裕はない。

 

『ああもう、ほんと無理して…………! 今すぐ回収しにいくから、待ってなさい!』

 

 スノードロップのその声にやらかしたなあ、と思いつつも、これでレッドライダーに操られた人が元に戻る、と喜びが胸から湧いてくる。

 その時。

 

「…………」

 

 倒れ込んで空を仰いでる私の視界に、誰かの顔が写った。

 その人の顔には、不思議な事に何も無かった。

 でも、なぜかわかった。

 その人が…………私が昔、助けた人であると。

 いつ助けたかは、忘れたけど。

 

「…………死んでください」

 

「…………ぇ」

 

 ─────その人が、レッドライダーに操られた人の様な、憎悪に歪んだ顔でどこからか取り出した拳銃を私に向ける。

 その行動に頭が真っ白になって、何も考えられなくなる。

 なんで。

 レッドライダーは倒したのに。

 なんで私に拳銃が向けられてるの。

 ぐるぐると、身体が動けない状況で疑問が頭の中を走り回る。

 何かを叫んでるリナリアの声も、聞こえないくらいに。

 そして。

 

「──────ぁ」

 

 パン、とさっきまでの戦闘に比べたら軽い音で。

 真っ黒な穴から吐き出された弾丸が、私を貫い──────

 

 

 

 

 

「──────っ⁉︎」

 

 意識のスイッチが切り替わり、現実に戻り、身体が飛び起きる。

 過去を模したリアルな悪夢に動揺して、息が荒くなって変な音が喉から漏れる。

 

「…………薊さん?」

 

「ひっ!」

 

 その状況で、誰かが声を掛けてくる。

 

「だ、だ、だれ…………っ⁉︎」

 

 さっきの悪夢も相まって、布団を抱える様に後ずさろうとするが、出来ない。

 何で、とパニックになりながら理由を探すと、手を暖かい何かが包んでいる事に気づく。

 その事実に更に恐慌としながら、反射的に声を掛けてきた誰かに視線を向ける。

 そこには。

 

「…………あの、どうしたんですか、薊さん?」

 

 昨日スノードロップに言いつけられて、一緒に住む事になった同居人…………椿さんの、姿があった。

 

 

 

 

 

 

 




新形態の姿は未完成状態なので今回の話ではそのまま真っ白になっただけのイメージです
いい名前が思いつかなかったので某リンク5モンスター参考に付けました。
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