「ダァァァクソ?!なんでこうなるんだよ?!」
「さっさと止まれこのクソガキャァ!」
「止まったら俺の事殺すだろうがアンタ!!」
「何言ってんだガキ!ちょっと心臓止めて内臓抜き取るだけだろうが!」
「それを殺すって言うんだよ?!」
「アハハ!楽しいですねぇ!」
「君(お前)はなんで笑ってんだ!!」
時は少々、いやかなり遡る。
あぁそうだ、この物語を読み始める皆の為に、先に言っておこう。
これは俺が1人の少女を護る、最高のヒーローになるまでの物語だ。
――――――――――――――――――――――――――
「どうしよう……」
決して学力が足りなくて悩んでいるとかではない。今まで周りに馬鹿にされないように勉強はしっかりとやってきたし、大体の高校には入れる。だからこそ、取れる手段が多すぎるが故に、悩まずにはいられない。贅沢な悩みだとは思っているが、これに関しては答えが出ない。
無論『ヒーロー』に憧れがない訳ではない。彼もまた、『ヒーロー』に助けられたことがある故に。だがしかし、それになりたいかと言われたらまた別だ。自分の個性ではどうやっても発動に痛みがあるし、臆病な自分が誰かを守れると思えない。
ヒーロー。個性を活かして事件や災害から人々を救ける人間のこと。各地で“個性”による犯罪が爆発的に増加し、国が法律の改正にもたつく中、自らの意志と“個性”で犯罪に立ち向かう人間とその行動が支持を集め、公的な職務として認められた。勇気と力を持つ、選ばれた人間がなれる職業。俺には無理だよなぁ。
そんなことを考えて机に突っ伏していると、部屋の音からトテトテという歩き音がいくつか聞こえる。どうやら晩飯の時間らしい。
「骸兄ちゃん!ご飯だよ!」
「呼びに来てくれたのか、ありがとう、湊、結、蛍。」
骸に名前を呼ばれた子供たちは嬉しそうに笑う。すぐ行くから、先に席に着いておいでと伝えれば、「ハーイ!」と元気よく返事をして走り去っていく。その様子を微笑ましそうに見たあと、進路希望届けを恨めしそうに見て、机にしまう。
「……飯食ったら考えよ」
骸は一旦現実から逃避する事を決めた。
骸が席に着くと、子供たちは既に座っていた。そして、先程の3人以外にも、10人の子供たちと4人の大人がそれぞれ席に着いている。骸が席に着いたのを見て皆口を揃えて「頂きます!」と料理に手をつける。
孤児院『ガーデン』
それが骸が暮らす孤児院の名前である。元々はお金持ちの園庭だったからその名前がつけられたとか。赤子の時にここに捨てられており、15年間過ごしてきた。現在は骸が保護されている子供の中で最年長である。
ガーデンには色んな事情の子供たちが暮らしている。例えば俺のような親に捨てられた子供。あとは、個性が強すぎて、親が面倒を見切れなくなった子供だ。幸い、このパターンの子供たちの親は愛情も持っていて、毎週差し入れを持ってきてくれる。一時期俺がグレてた時期は、愛情があるなら預けるなとも思ったが、夜泣きで家の窓ガラスを全部割った子が入ってきた時はさすがに同情した。
「ご馳走様でした」
そうしてご飯を食べ終えて談笑の時間に移る。18時に晩御飯を食べて、その後19時30分までは皆で今日何があったか話すのだ。ロビーのソファーに座っといると次々と構ってちゃんたちが俺の元へやってくる。
「骸にい遊ぼぉ!」
「兄ちゃんは俺と遊ぶの!」
「ねぇねぇ!今日ね!学校でアケミちゃんがね!」
「もうみんな!兄さんが困ってるでしょ!」
「あはは!ほら1人ずつだよ、俺は逃げない逃げない。」
「そうやって兄さんが甘やかすから!」
ぷくっと頬を膨らませるこの子は水彩 墨。鳥獣戯画の個性を持つ女の子だ。俺の1個下で今のガーデンの長女である。右目が隠れる程の長さの黒いショートカットを揺らして、弟たちに説教している姿をよく見る。長女としての自覚というか、自分がしっかりしないと!という雰囲気を感じて微笑ましい。一歳しか変わらないのだが、彼女の方が俺より断然立派だ。
そんなこんなで談笑の時間もあと僅かになると、冷蔵庫を見ていた女性が思い出したかのように声を上げた。
「あっ」
「どうした?恵姐さん」
恵姐さんと呼ばれた女性が困ったように頭を搔く。彼女はこの孤児院で働いてる人の1人で俺にとっては姐のような人だ。元々ヒーローをやっていたらしく、腕っ節が立つらしい。赤茶色の髪をポニーテールにしており、まさに姉御という雰囲気の人だ。
「牛乳切らしちゃってたー、ちょっとコンビニ行ってくるわ」
「あ、じゃあ俺行くよ。今週のジャンプ買ってないし」
ジャンプは毎週読まないとね。
「本当!じゃあはいこれ!お小遣いね!子供たちは見ておくから!」
「ありがとう、行ってきます」
行ってらっしゃーいと言う皆の声を聞きながら家を出る。コンビニならすぐそこだし、すぐ帰れるだろう。外に出ると辺りは暗くなっており、閑静な住宅街では人独り歩いていない。まだ春先ということもあってか、夜は少し肌寒い。上にもう一枚着てくれば良かったかなぁと思いながら足を進める。
こうやって暗い夜道を1人で歩いていると、どうにも自分の事を考えてしまう。もちろん考え事の対象はさっき机の中にしまった進路希望の用紙についてだ。これまで何も考えないで生きてきたせいでどうもいい答えが出ない。兄さんや姐さんたちに聞いても自分の信じた道を進めと言われるだけで、直接的な答えは教えてくれない。
現在の個性社会において、中学からの進路は大きく5つに別れている。
最も人気なのがヒーロー科。雄英高校のヒーロー科なんて最大倍率300倍らしい。どんな数字だ。次が普通科、ここを選ぶ人が最も多い。そりゃそうだろう。ヒーロー科の倍率がおかしいのは天下の雄英高校だけじゃない。ヒーロー科に入れなかった者達や一般職に着きたい人はここに行く。そしてサポート科と経営科。最後に就職か。
初めはガーデンに就職しようかとも思ったのだが、院長に「社会を知りなさい」と断られた。至極真っ当なことを言っているので、特に反論せず終わったが。そうなると進学になる訳だが、さぁ困った行きたいところがない。やはりヒーローか?ヒーロー飽和時代と言っても敵がいる限り需要があるし……でも個性使いたくないんだよなぁ。
夢があればいいんだが、生憎今まで生きてきて夢と言えるようなものを抱いたことはない。俺はあの孤児院で、今を生きるのに必死なのだ。そんな何十年先のことなんて考えてられない。
そうなると普通科の方がいいのかなぁ、ヒーローなんないなら大学行っといた方がいいって聞くしなぁ。
うんうんと悩みながら歩いているといつの間にか路地裏に入っていた。考え事に夢中で寄り道していたらしい。早く牛乳を買って帰らないと心配される。そんなことを考えて路地裏を出ようとしたが、妙な違和感を覚え路地裏の先を見る。なんだ?何がある?
路地裏の先は街灯が届かず、多少月明かりに照らされるのみで、よく見えない。それなのに何故か、俺は足を止めれない。一体先に何があるというのか、薮をつつけば蛇が出ると言うが、今この時代に薮をつつけば出てくるものなど決まっている。理性がこれ以上進むなと叫んでいる。全身の毛が逆立ち、本能が警鐘を鳴らしているのがわかる。
だが、俺の足が止まることはない。そうして先へと進むと、何が妙なものを踏んだ感触がある。ベシャリ、と嫌な音を立てながら。背中を嫌な汗が伝うのがわかる。ゆっくりと、慎重に目線を足元に向けるとそこには赤黒い水たまりが浮かんでいる。
「血――――ッ!?」
叫びが飛び出しそうになるが、咄嗟に口を手で押さえる。ここで何があった?!どうしよう、どうすればいい!?あぁそうだ、ヒーローを呼ばないと、そう思ってスマホを取り出そうとし、家に置いてきたことに気が付く。
何やってんだ俺は!
じゃあ走って大通に出てヒーローを呼びに!そう思って視線を上にあげると、目が慣れてきたのか、先程よりも遠くが見えた。見えてしまった。2mはあるであろう大男が、クリーム色の髪をお団子にまとめた女の子の首元にナイフを突き立てている姿を。
「――ッやっめろォォォォォォッ!!」
「アァ?!」
暗闇の中から急に飛び出してきた少年にナイフを叩き落とされた男は驚き目を見開く。突如現れた少年は左肩から血を吹き出しており、右手には骨の棒を握っている。まるで今まさに自分の腕から引っこ抜いたような風貌。
対する骸もまた、目の前の男への警戒心を強める。その身長も然る事乍ら、何より特徴的なのはその口に生えた牙。場所的に犬歯なのだろうが、発達が異常だ。普通でない見た目のものは現代において多いが、それが敵をやっているとなれば、最大限の警戒を向ける。
「何しに来やがったんだテメェはァ!」
男は骸に対して腕を振るい、右の頬に打ち付けると骸はその勢いのまま地面に頭から倒される。だが意識を失うことなく、恐怖と顔を殴られ狂った平衡感覚のせいでブルブル震える体にムチを打って骨の棒を支えに立ち上がった。
本来、骨守 骸は戦いを好む性格ではない、むしろ臆病である。加えて、個性制御の訓練もまともに受けていない戦闘経験もないただの中学生。このような場面は向いていない。だが、背後に座り込む少女を守るという行動原理が、彼の持つ潜在能力を120%引き出すに至る。
「
「テメェ、それは一体なんだ…?!」
骸の全身を骨の鎧が覆う。右手には骨で作った一振の剣。左手には盾。月光が反射し、骨の鎧が白銀に輝く。無意識下において、個性の限界を引き出した彼の姿はまさに骨の騎士。
「すごい……!」
「ッチィ……!」
少女と敵の正反対な反応に挟まれながら、鎧は身を蝕む痛みに耐える。鎧の個性は骨格兵装。自らの骨を体外へ形を変えて放出する能力である。故に、骨を体外へ放出する際は、骨が血肉を貫く激痛が襲う。それを全身で発動させたのだ。並の人間であれば、気絶すら許されない程の痛みによってその場に倒れ付しているであろう。
敵と骸は互いに動かない。方や、骨の鎧の重みと全身の激痛によって、方や、全く未知の力を発揮した少年を警戒して。骸の方については完全に自滅なのだが、後ろの少女を守るという点に置いては停滞した現在の状況が好ましくもある。
だが停滞は何時までも続かない。敵は体格と個性を活かした先手による一撃必殺を、骸はカウンターによる一撃必殺を。互いの思惑が交差し噛み合った結果、敵は骸に向かって距離を詰め、骸は敵に向かって盾を構える。
敵は骸の盾に対して大ぶりの右ストレート。それに反応して拳を砕こうと骸も盾を突き出し、迎撃の為に右手の剣を後ろに引く。
(殺ったッ!)
腕鞭。敵の個性が発動し、鞭のようにしなる左腕が骸のガラ空きの胴体を狙う。異常に発達した犬歯はただのブラフ。本命は腕を鞭のようにしならせる個性による一撃必殺の奇襲攻撃。このずる賢さこそが、この敵がこれまで生きてきた秘訣。鞭のようにしなり、果実程度なら容易に切断出来るその腕は骸の胴体へぶち当たる。
瞬間、骨が爆ぜた。
確かに骸は敵の行動を読み間違えた。最初の右ストレートの次はその勢いと犬歯を使った噛みつきを行うだろうと読んでいた。故に、無意識にあった左腕に対応は出来なかった。もはや食らうしかない状況だったが、痛みによって脳内麻薬がドバドバ出ていた骸が咄嗟にとった行動。
骨の鎧を破裂させながら解除することによる自爆攻撃である。
そんな異常としか言えない行動によって、骸は敵の思考の虚を着いた。敵はその勢いに押し出され壁へと吹き飛び、意識を手放した。そして骸もまた、全身からの失血による脱力感によって、地面に突っ伏した。
「……しんど……」
最後に残った少女だが、命の危機から一転、自分見守ってくれた血まみれの騎士の勇士を真近で感じ、そんな彼がどうにもかっこよかったものだから、まぁ、なんというか。
「ほぁぁ……!」
トリップしていた。
仕方ないだろう。もとより彼女は血まみれで立ち上がる勇者に対して、どうしようもない魅力を感じてしまうタチなのだ。そんな相手が自分を守るために命を賭して戦ってくれた。その事実がとてつもなく嬉しくて、全身を包む多幸感にその身を委ね、騎士の目覚めを近くで待ち続けた。その姿を見たものがいれば、まるで最愛の騎士の目覚めを待つ姫様のようだと形容したことだろう。
以上を察知してヒーローが駆けつけたのはその数分後であり、少女は事情聴取、骸は病院、敵は収容と三者三様の対応を取られた。なお少女からの証言は、「かっこよかった」「カァイイ」「名前知りたい」というもので、特になんの参考にもならなかったらしい。
――――――――――――――――――――――――
「知らない天井だ。」
目を覚ましたら病院だった、まる。何がどうなったのか全く思い出せない。何があった?なんで入院してんの俺?コンビニ行くだけでぶっ倒れたってこと?今まで15年生きてきたがまさか自分がそこまで虚弱だとは思ってなかった。
そんなことを考えながら起き上がったらベットの右側に誰かいる。ガーデンの誰かか?にしては見覚えがない。俺のベットに上半身を突っ伏し椅子に座りながら寝ている少女。まじで誰?ただどこかで見たような……
どうにも記憶が曖昧だ。何かが喉に突っかかったような感覚がある。ひとつずつ紐解こうとここに至るまでの軌跡を思い浮かべる。
お団子の女の子、路地裏、男、血、骨。
あぁ全部思い出した!そうだ俺はこの女の子を助けようとして、殴られたあとに全身から個性使って死ぬほど痛くて、最後に自爆して死ぬほど痛くて、死ぬほど痛い状態で倒れたから結局死ぬほど痛くて、、、ずっと死ぬほど痛いじゃねぇかッふざけんな嫌いだあの敵とこの個性。
そう思ってギリギリと歯ぎしりしてるとその音を鬱陶しそうに少女が起きる。「ふぁぁ」と欠伸をしながら起き上がり、二、三回パチパチと瞬きをし、ゆっくりと周囲を確認するように左右に首を振った時に俺と目が合う。
「あ〜、おはよう?」
「ッッッッッ?!?!?!」
すごい百面相しながら顔を両手で隠して部屋のドアの前までバックステップしてった。それもすごい速度で。ものすごい顔赤くなってるけど大丈夫だろうか。丁度病院だし診てもらった方がいいのではないか。
「……」
「……」
なんだこの状況……
少しばかり気まずい空気が流れてしまっているのを感じ取ってか、お団子頭の女の子が口を開く。
「あ、あの。大丈夫、です?」
「うん、俺って個性の影響で回復早いから。多分大丈夫だと思う。……ちょっと貧血がやばそうだけど、まぁ点滴入れてるし、すぐ良くなると思うよ。」
「そうですか!良かったのです!ウフフっ!」
笑顔になった女の子が近付いて来る。俺が助けようとした人がこの人であれば、どうやら上手くいったらしい。代わりに俺はこのザマだけど。
「自己紹介しましょう?私、トガです。渡我被身子です。よろしくねぇ骸君。」
「あれ、俺の名前?」
「そこに書いてました。」
そう言って渡我は骸の胸を指さす。骸が指の先に視線を移すと、手術服の胸の所にしっかり骨守 骸の文字が刻まれていた。
「なるほどね、よろしく渡我さん。俺は骨守 骸、骸でいいよ、その方が気楽だ。」
「じゃあ私も被身子でいいのです!」
「分かった。よろしく、被身子」
「ウフフ!よろしくねぇ!骸君!フフ」
楽しそうに笑う被身子、ここまでいい笑顔を見せられたとなっては、個性を使った甲斐があったというものだ。その後、被身子は俺に何があったのかを教えてくれた。と言っても、ぶっ倒れる所までは覚えていたからその後の話だ。どうやらあの後すぐにヒーローが駆けつけ、敵は捕まったらしい。だが問題は傷一つ無いくせに失血死しそうになってる俺。すぐさま病院に連れてこられて緊急輸血。からの緊急入院。そして結局3日ほど眠っていたようで……って
「3日?!」
「はい、ぐっすりでした。」
「……被身子ずっと居たの?」
「さすがにご飯とトイレとお風呂には行ってましたよ?」
「逆に言えばそれ以外はずっといたんだ……」
ちなみにだがそれも看護師に「彼が目覚めた時に貴方の方が倒れてたらどうするの?!」とこっぴどく叱られたからである。わざわざ被身子も言うこともないので、それがなかったら本当に丸々そばにいたという事実を骸は知らない。
だがそこまで感謝されるほど何かをしたという実感は無い。敵から助けた、と言ってもあの僅かな時間しか関わりは無いわけだし、実際今が初対面のようなものだ。俺は被身子の前に立ったはいいものの自爆しかしてないし。
「なんで被身子は俺の為にそこまでしてくれるんだ?」
そう聞くとヒミコはまた耳まで真っ赤にして顔を両手で隠す。何が言いにくいことでもあるのかと骸が首を傾げるとこれまた恥ずかしそうにヒミコは口を開く。
「わ、私、」
「?」
「骸君のことが、す「骸!起きた?!」です。」
スパァン!と病室のドアを開けて恵姐さんが乗り込んでくる。絶対大事なとこ聴き逃したんだけど。あぁヒミコがすごい拗ねた。ちっちゃい声で「骸君のバカ」って言ってる。姐さんのせいだ。俺じゃない。……俺じゃないよね?
「あんたもう!心配させて!」
そう言って姐さんが俺を抱え込む。頭が湿った感覚があるから泣いてるのか?そうだよな、心配させたよな。家族だもんな。でもそれはそれとして痛ってぇ!体がミシミシ言ってるぅ!?ストップだ姐さん!たんま!ギブ!頼む助けてヒミコ!
「骸君なんて知りません。」
なんでだ?!俺が何したってんだよ!あぁ頭の中でレフェリーがテンカウントしてる。そうか、俺病院で家族に絞め落とされるんだ……ぼやける視界の中でさらにこちらに近ずいて来る人影がひとつ。死神かと思ったが白衣を着ているため違うだろう。
「僕の患者を殺そうとしないでくれるかいお嬢さん。」
「あっと、ごめんね骸……」
「……いいよもう。ただ次からはもっと優しくして……」
「骸君やっぱりカァイイのです……!」
助かった、俺の事を助けてくれた医者の人に目を向ければ、「体は大丈夫みたいだね。」と返事をくれる。てか治るの早いとかヒミコに言っておきながら3日って、恥ずいな。と思ってると「まぁあの失血量だからね、むしろ3日で回復したことを褒めるべきだよ」と医者様が言う。それならそうか、ん今なんかおかしくなかった?この人何もんだ?
「僕はそんなにおかしな人じゃないよ?せいぜい天才外科医と言ったところさ。僕は心音 読。いい名前だろう?まさに名は体を表すと言ったところだね」
「やっぱ心読んでんだろあんた?!」
「相手の考えがうっすらわかる個性を持ってるだけだよ。さて、そこまで元気なら明日には退院出来そうだ。一応今日の夕方に精密検査やるから、またその時会おう。」
そういうとドクターは速攻で病室から出ていった。天才は癖のある人が多いと聞いたがそういう感じなのだろうか。昔ガーデンに居た兄さん達の中にもあんな感じの人がいた気がする。にしても明日には退院か。思ったより早く学校に行けそうだ。
学校といえば、目下最大の悩みの種を思い出した。進路どうしようか。被身子を助けるために個性を使ったが、やはり好んでやりたいことではない。俺自身荒事に向いていないんだろう。誰かが助けを待っていたら、せいぜいヒーローに連絡するのが関の山だ。
(でも、じゃあなんで俺はあの時飛び出したんだろう。スマホがなくてヒーローを呼べなかったから?だとしても少し走れば大通りだった……なのになんでわざわざ……?)
「……ろ、骸!聞いてる?」
「っあ、あぁごめん。考え事してて……何かあった?」
「私一回ガーデンに戻るから、明日迎えに来るけど、あんたは安静にしてなさいよ。」
「うん、分かった。あ、被身子はどうする?ずっとここにいたなら、親御さんも心配してるんじゃ……?」
そう聞くと一瞬被身子の表情が悲しそうに歪むが、すぐにさっきまでのような笑顔に戻る。長い付き合いのある関係だったなら分かるかもしれないというレベルの微細な表情を骸が察することはできない。
「私、家出してるのです。悪い子なのです。不良です。」
「……そりゃあまたなんで?」
「ん……内緒なのです。でも、いずれ話します。だから今は……」
「分かった、俺は被身子が話してくれるまで待つさ。姐さん。」
「事情があって、あなたもそれに納得してるのなら、私はうるさく言わないわ、被身子ちゃん。でも、今日はうちに来なさい。1人の大人として、こんな可愛い女の子を野宿させる訳にはいかないもの。」
「……いいんですかぁ?私は悪い子なのに……」
そう言って目を伏せる被身子に姐さんと揃ってサムズアップしてみせる。元からうちはそういう所なのだ。訳ありの女の子一人増えたところでなにか問題がある訳でもない。小さな子供たちも新しい家族が増えるのは大歓迎だろうし、確証は無いが被身子なら大丈夫なんじゃないかという気もする。
「それじゃあ、被身子ちゃんは私と一緒に1度家に戻りましょうか。ここにスマホ置いておくから、退院の時間分かったら連絡してね。」
「りょーかい」
「骸君また会おうね!!」
その夜、俺はドクターの診察を受け
「君、明日に退院ね」
「あ、ハイ」
無事、退院の許可が降りたのだった
誤字脱字、感想批評お待ちしてます。