こんにちは、羊肉ジョージです。前回投稿からとてつもなく日が経ってますね。仕事終わりにコツコツ書こうと思ってましたがそう上手く行かないようです。小説書くってむずいですね。これからもこんな感じで不定期で更新していくかと思います。
ひとまず上がったので投稿です。感想等頂けますとものすごく嬉しいです。
それでは、どうぞ。
さて、俺の入院からはや1週間が過ぎ、被身子もガーデンに馴染んできたなと思う今日この頃。4月に入って日も進み、桜が散り始める様子が伺える。たがその桜が散る様がどうにも自分と重なり妙な気分になる。まぁ彼らは儚く散っていくが、あいにく俺の散り様には儚さというものは皆無だ。
それもこれも俺が言い出したから。いや俺にも原因はあると思うが一番の原因は間違いなくあの鬼教官だ。まだ暑い季節には程遠いと言うのに俺の体からは滝のように汗が流れ出てる。1週間前まで入院してた人間にやらせることじゃない。一体誰に訴えればいいのか。そんなことを思いながらガーデンの裏庭に五体投地しているとズカズカと聞こえる教官の足音。
「骸ぉ!何寝てるのよ!さぁさっさと立ちなさい!次はランニング10kmよ!」
「ぎぶ、ギブだ姐さん。もう死ぬ。朝から5時間ぶっ続けじゃないか。」
「死なないし死んだら生き返らせるから大丈夫よ。」
「大丈夫なわけねぇだろ」
誰かこの鬼教官を止めてくれ。たしかに鍛えてくれと言ったのは俺だ。でもここまでとは聞いていない。嘘でしょ?ヒーローって皆こんなことしてんの?そりゃオールマイトあんなムキムキなるよ。そりゃエンデヴァーあんなデカくなるよ。
休みなのをいいことに朝からランニングと筋トレが目白押しだ。もうかれこれ30kmは走ってる気がする。姐さんは俺をフルマラソンの選手にしたいのか知らないが、これ以上走ったら足がねじ切れる気しかしない。
「この程度で何へこたれてるのよ。私があんたくらいの時は師匠にしごかれて何度も三途の川に行ってたわよ。」
遠い目をした姐さんが呟く。何度も三途の川に行くことある?姐さんの師匠って何者?とか気になることは山ほどあるが1度聞いたら同じメニューをやらされそうな気がするのであえて口には出さない。そう考えると俺のメニューはまだまだ優しいものなのかと納得しそうになり、いやいやおかしいのはあっちだと思考を正す。
「全く、あんたから鍛えてくれって言ったんでしょうが。この程度でへこたれてるんじゃないわよ。」
「流石に、ここまできついとは、いやまじで。」
「情けないわねー」
「世間一般でいえば絶対俺の方が正常だから。」
いやほんとに、だから物足りなそうにステップを踏まないで欲しい。ジャブを打つな。なんでジャブで空気を叩いた音が鳴る。俺と同じメニュー一緒にやってたよねこの人。なぜそんな元気が有り余ってるのか。ガーデンと兼業してヒーロー復帰したらいいんじゃなかろうか。多分この人ならできる気がする。
「ていうか骸あんた、急に鍛えたいってどうしたのよ。あっ、もしかしてヒーローなっちゃうつもりー?」
五体投地に没頭していると、そんな俺の様子を見かねて休憩を認めてたのか、俺の隣に腰を下ろした姐さんが尋ねてくる。ヒーロー、ヒーローねぇ……
「そういう訳じゃないよ。」
「あら、そうなの?」
「なんというか、病院で考えてたんだけど。被身子を助けに行った時、もっといいやり方があったんじゃないかって。結局、個性使ってぶっ倒れちゃったからさ。」
「ふーん、そう聞くと、ヒーロー目指してるみたいに聞こえるわよ?」
「あくまで自衛だよ自衛。見ず知らずの人を片っ端から助けるとか、そんなお人好しじゃないよ俺は。」
そう言っても姐さんは何が面白いのかニヤニヤ笑ってるだけだ。一体俺に何を期待しているというのか。今だっていざって時に個性を使いたくないから鍛えてるのであって、率先して戦いに行きたいわけじゃない。個性を使いたくないヒーローとか流石にヒーロー失格だ。
俺が不服そうにしていると「続きやるわよ」と言って鬼教官が立ち上がる。どうやら休憩は終わりらしい。ということは次のメニューはランニングか、やりたくね。そんな事を思いながら渋々立ち上がると背後からガチャりとドアを開けた音が聞こえる。
「頑張ってる骸君に差し入れなのです〜」
「兄さん!生きてる?!」
「あぁうん、生きてる生きてる。ありがとう被身子、墨」
そういえばお昼の時間だったなと思いながらしれっと座る。姐さんを見れば若干呆れたような目を向けられたが、頷いてくれたのでガッツポーズ。流石に昼飯抜きでは無いらしい。「じゃあ午後はもっとキツくても良さそうね」とか呟いているが聞こえないフリをしておこう。
「……50キロくらい走らせても大丈夫かしら」
聞こえないフリをしておこう。
被身子と墨が持ってきたバスケットの中を見てみれば具材いっぱいのサンドイッチといくつかのフルーツが並んでいる。きっと俺の午前中はこの為にあったのだろう。適当に手に取ると姐さんが欲しそうに手を出している。やっぱり昼飯は食べたいんじゃないか。姐さんに渡して俺も一緒に食う。
『いただきます』
「ん、これ美味いな」
「墨あなた腕上げた?凄い美味しいじゃないこれ。」
いやほんとに、ただのサンドイッチだと思ったら思ったより美味い。レタス、トマト、ハム、チーズが挟まってるシンプルな物だが、だからこそと言うべきかそこらに売ってる物とは違うと分かる。何が違うんだ……このマヨネーズソースか?なんだ?
姐さんと一緒にうんうん唸っていると、嬉しそうにしている墨が「被身子さんと一緒に作ったの!」と教えてくれた。被身子も嬉しそうに墨の頭を撫でている。本当に仲良くなったようで何よりだ。まだ知り合って1週間しか経ってない癖に。髪色も顔つきも違うが、こうしてみると既に姉妹に見えてくる。
「2人ともすっかり仲良くなったな、良かったよほんと」
「んふふっ、墨ちゃんカァイイもんね〜!あ、もちろん骸くんもカッコイイよ今日も!」
「あ、ありがとう被身子」
面と向かって恥ずかしげもなくそんな事を言う被身子に対してこっちの顔が赤くなる。被身子はもう家族だ、だとしてもやっぱり美少女に変わりない訳で、年頃の男の子には刺激が強すぎる。顔を赤くした俺をニヤニヤ見ている姐さんの顔に拳を突き出せばペシりと叩き落とされた。おのれヒーロー。
「骸兄さん……へー、ふーん」
墨までもニヤニヤ笑っている。なんなんだ一体。くそ、俺が何をしたというのか。どうも居心地が悪くなったのでサンドイッチを食べることで誤魔化す。黙々と食べているとあっという間に無くなった。あまりに美味しすぎて姐さんの分も食べてしまったが、心の広い大人なので許してくれるだろう。
「80キロにしようかしら」
許してくれるだろう。
空になったバスケットを持って墨と被身子が立ち上がる。どうかしたのかと聞いてみると、被身子の服を買いに行くのだという。まぁあの制服しか持ってなかったからな被身子。中々考え無しに家出してきたらしいので、今までは墨の服を借りていたのだ。不意に下着のサイズが合わないと言われた時はどうしたものかと思ったが、まぁ、いい機会だろう。
だが何故か被身子の顔が若干暗い。1週間程度の関わりしか無いが、何となくふとそう思った。まるで何かを恐れているようなそんな暗さがある。
「……被身子、大丈夫か?」
「っ大丈夫なのです、急にどうしたの?私はなんともないよ骸君!」
「そうか、なら良かったけど……なんかあったら言えよ、俺も墨も姐さんも皆、被身子の味方だからさ」
「っ……!ありがとうねぇ、骸君っ」
そう言うと2人はガーデンの中に戻って行く。やっぱり被身子も何が不安なことがあるのか。家出してきたなんて簡単に言っていたが、やはり思うところがあるのだろう。俺が力になれればいいんだか、家族の事情にそう易々と首を突っ込む事などできない現状がどうにも歯がゆい。
「ねぇ骸、あんた被身子ちゃんの事どう思ってる?」
「え、何、何もないってば、ただの家族だよ。」
「そういうことじゃなくてね……まぁいいわ。さっ!続きやるわよ!とりあえず90キロランニングね。」
「増えてねえか?!なんでだ一体!」
「私のサンドイッチ食べたじゃないあんた。」
「うっわ気にしてんのなやっぱ!食べ物の恨み怖ぇ!!」
「うるさいわね増やすわよ。」
「理不尽の鬼か」
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「おはよーってモリリンどうした!?」
「あ、あぁおはよう鳴っち、あぁ俺の足、俺の足とってくれるか?あれどこだっけかな持ってきたんだけどな」
「正気に戻れモリリン!あしたのジョーみたいに真っ白になってるから!」
そう言って鳴っちは俺に電撃をぶち込んでくる。あばばばば、っは!無くなったと思ってた足に感覚が戻り始めた!これが電気マッサージということか?!一家に1台欲しい、これがあれば姐さんブートキャンプにも耐えれる気がする。いやこれで心肺蘇生出来るわねとか言われかねない、やめておこう。
電撃のおかげで若干生気を取り戻した俺の目に入るのは金髪に稲妻のような黒メッシュが入った不良少年。まぁ今の時代珍しくもないので咎めるものは誰もいないが、個性黎明期前なら補導間違いなしだろう。その正体はまさしく俺の幼馴染で親友の上鳴電気君だ
「なになにどうした?なんで燃え尽きてんだよモリリン」
「いやぁ姐さんに鍛えてくれって言ったらランニング地獄でさ。知ってるか鳴っち、人間100キロ超えると足の感覚無くなっても走れんだぜ。」
「……ジョーク?」
残念ながらジョークでもなんでもないんだなこれが。結局気が済むことのなかった姐さんに100キロ以上走らされた。以上というのは100を超えてから数えるのをやめたからだ。まじで足が捻じ切れるかと思った。かの雄英高校の校訓はPlus ultra(更に向こうへ)と言うことだが俺はそれを身をもって体験したよ。まじでやってられん。
地獄の特訓メニューを上鳴に教えてやるとどんどん口が引き攣り始めた。そういえばこいつは純粋にヒーロー志望だったか。今度姐さんブートキャンプに招待してやろう。久しぶりに子供たちと会いたいだろうし。まぁ姐さんのしごきの後に子供たちとまともに喋れるかわからんがな。俺は無理だった。死体のようになった俺は気がついたら今日の朝だった。まさか日曜日まるまる寝過ごすとはな、そういえば起きた時体が綺麗でパジャマだったのは何故だろう。弟達が風呂に入れてくれたのかな?
そんな事を考えてると朝のホームルームが始まる。急いで自分の席に戻る上鳴を横目に疲労感に身を任せて机に突っ伏す。どーせ今日も進路がどうのこうの言われるのだ、あぁ耳が痛い。やりたいことのある奴らはモチベも上がるだろうが特に何も考えてない俺のような奴には怠いだけだ。
気が付けば三限まで終わっており、腹が減り始めた。寝てたわけではないだろうがどうも日常生活に支障をきたしている。帰りも足が痛くて立てないだろうから上鳴の肩を借りて帰ろう。てかどうやって登校したんだ俺。全く記憶がない、恐ろしいな。
ぼーっと窓の外を見てればふと被見子の顔が頭に浮かぶ。今は何してるだろうか。俺も墨も学校だし、暇してないだろうか。本当は昨日どこか出かけようかとも思ってたが、このザマだしな。帰る前にコンビニでアイスでも買っていこうか。
そんなことを考えてたら一日が終わった。午後の古文からの英語とかいう眠気誘発コンビには耐えれなかったよ……内申が下がりませんようにと上鳴と祈っていたら先生に鼻で笑われた。く、くそぅ俺も上鳴もテストの点は悪くないからな!上鳴も阿呆だけど!ちょっとアレだけど!
「はぁ、帰ろう。鳴っち肩貸してくれ。まじで足が棒だわ、こういう時に使うんだなこの慣用句。」
「ハハッ、覚えやすいわそれ。入試対策万全だな」
「入試まで1年切ってんのな……進路決まんねぇわ。鳴っちは雄英のヒーロー科だろ?よくやるよほんと。」
「やっぱ行くなら雄英っしょ!東の雄英!西の士傑!」
ヒーロー目指すのは大前提だと言わんばかりのセリフについ笑いが盛れる。よくやるよ本当に。子供の頃から困ってる人は助けようとするのがこいつだ。俺の知る中で最もヒーローらしい親友に何度助けられたことか。
孤児だからと言う理由で虐められた俺を『そんなダセェことすんなよ!』と庇ってくれたのは忘れられない。俺が女の子だったら間違いなく恋に落ちていた所だ。そういえばこいつ彼女いたことあんのか?モテそうなもんだが、実際クラスの女子からも好かれてそうだが一個人と付き合ってるのは見た事ない。チャラいし阿呆だからか?なるほど納得だな。
「……なんかモリリン失礼なこと考えてる?」
「気のせいだろ、お前なら行けるなって思ってたのさ。」
「あったり前よ!俺は天下の上鳴電気様だぜ?あ、俺のサインいる?練習してんだよね」
「前もそれ言って俺に渡してこなかったか?俺の部屋にめっちゃ試作品あんだけど?あれどうしたらいいの?」
「フッ10年後にはプレミアもんよ。」
じゃあ10年後にまとめて売っぱらってやろうとか思ってると目の前に見覚えのある黒髪ショートの女の子が歩いている。うちの中学の制服を来た彼女は俺たちの話し声が聞こえたのかふと立ち止まり、ゆっくりとこちらに振り向いた。
「兄さん!先輩!」
「おお!墨ちゃん久しぶり!ちょっと背ぇ伸びた?!」
「親戚のおじさんかお前は。墨、今日部活は?」
「しばらくお休みです。美術室のエアコンとか色々設備入れ替えるみたいで。」
「これでいっぱい家事手伝えます!」と握りこぶしを作り意気込む彼女に頬が緩む。さすが俺の妹だ、まさかこんなに立派に育つとは。小さい頃の姿を思い浮かべると涙が出そうになる。だがそんな万感の思いは俺の肩を支える親友のニヤケ面によって打ち砕かれた。
「墨ちゃんマジ天使……アイダァ?!」
「お前俺の妹に手ぇ出したらまじ処すから」
「イデデデ足踏まないでお義兄さん!」
「貴様にお義兄さんと呼ばれる筋合いは無いッ!」
「ふふっ、あははっ!」
阿呆なやり取りをしてたら墨に笑われた。無邪気に笑う墨に俺も上鳴も毒気を抜かれ、二人顔を見合わせて笑う。本当にいい子に育ったよこの子は。
3人でコンビニによってアイスを買い、ギャリギャリ君を食べながら帰ると何やら玄関が騒がしい。なんだと思いよく見ると警察官が2人、話してるのは恵姐さんだ。上鳴と墨と3人で顔を見合わせる。警察の人が来るのはさほど珍しくないが、何かあったのだろうか。
近付くのもどうかと思い、離れたところで様子を伺ってると警官二人がこちらに歩いてくる。どうやら話は終わったらしい。俺達に気付いた警官が会釈しながら挨拶してくるのでこっちも挨拶を返す。片方の細身で背が高い男に意識が向いた。疲れているのだろうか、パッと見で幽霊のようだという印象を受ける。
「あぁ、君たちはここの住人かな?」
会釈しながらすれ違った幽霊のような警官に背後からそう聞かれる。
「はい、そうですけど……あっ鳴っち、こいつは違います」
「俺はただの友達っす」
「そうかい、ひとつ聞きたい事があるんだけどね?『渡我被身子』と言う少女を知っているかい?」
「え?はい、知って……」
そこまで言いかけてふと玄関の方に目を向けると、姐さんが厳しい顔をして立っている。いつもの明るい姐さんではなく、その目は何かを訴えるように俺の事を見つめてくる。何かある。直感的にそう思い、すぐさま口から紡ぐ言葉を変える。
「……すみません、やっぱり知らないですね。何か捜査でもしてるんですか?」
「うん、少しね。あぁ知らないならいいんだ、知らないならね。それじゃあ僕たちはこれで失礼するよ。……また会おう。」
そう言って警官は離れていく。一体なんだったのかと突っ立ってるとこっちに姐さんが歩いてくる。先程の雰囲気はもうなく、いつもの感じの姐さんだ。にしても何があったのだろうか。あんな雰囲気の姐さんは見たことない。ぶっちゃけ凄い怖かった。ピリピリしてる時の姐さんは苦手だ。
「姐さん、さっきの人達なに?被見子の事聞かれて、俺は知らないって言ったけど。」
「……私にも分からないわね。さっ、骸を運んでくれてありがとうね上鳴君!良ければ夜ご飯食べていく?子供たちも喜ぶと思うわ。」
「マジっすか!?いただきます!」
「せ、先輩!頑張って私も作るので!」
「おっまじ!?ちょー楽しみだわ!」
「お!ウチ1番のシェフのやる気が出たみたいね。期待していいわよー上鳴君、本当に美味しいんだから。」
そういいながら3人は家に入っていく。にしても分からないって、あの感じでそんなわけないだろうに。鳴っちも墨もあの視線に気づかなかったのだろうか。
「……意味わかんね」
骸の呟きは誰にも拾われることなく、虚空に消える。小骨が喉に引っかかったような違和感を覚えながら、3人に続いて骸もまた家に入った。
――――――――――――――――――――――――――
「どうだったー?」
「まぁあそこにいるのは確実でしょうね。問題はどう連れ出すかですよ。あの赤髪の女、相当なやり手です。力ずくは無理でしょうね。」
「ふーん、僕とどっちが強いかな?」
「ッッ!」
「あぁごめんごめん、いい加減殺気くらい慣れなよ」
日が落ち、月が登った真夜中、街の喧騒から離れた路地裏の中で誰かが喋っている。片方は夕方ガーデンを訪れた警官であり、もう片方はどこか異様な雰囲気を纏った少年。警官は既に制服を脱ぎ、スーツ姿に身を包んでいるため、見ようによっては貴族のご子息とその執事のようだ。
「にしても良かったの?それ、友達なんでしょ?」
そう言って少年は壁際に縛られた状態で放置されている男を指さす。男の手足は縄で縛られ、口も縄で塞がれてる為、もごもごうねうねと、喋ることも出来ずに芋虫のように這いずっている。
「友達ではなく同僚です。仕方ないでしょう、まさか貴方様との繋がりがバレるとは思いませんでしたので。」
「うひゃーすごいね!どうやって知ったのかな?」
男は優秀な警察官であった。共に仕事をする中で積もる些細な違和感を決して見逃さず、注意深く観察しているうちに、同僚がナニカと関わりがあることを察した。だがしかし具体的に何と関わりがあるのかまでは気づいていなかった。それを確かめるために今日ここに来たのだ。
そしたらなんだ、なんなのだこの化け物は。
仮にも警官である男は数々の個性犯罪に立ち会ってきた。だがしかし、目の前の少年はそんなものとは、表の敵共とはレベルが違う。闇を濃縮したような黒いコートを身につける銀髪の少年。
こんなもの知らない、いや、知っていいはずがない。
『これはこの子の個性なのです。』不意に頭にその言葉がよぎった。あぁそうなのだろう。自分たち人間に与えられた力が、こんなものだとは。この程度で化け物になるには程遠い。本物の化け物というのは、こいつのような
「はいブチッとな☆」
「っぁっーーーーっぅーーっー!!!」
右腕を引きちぎられる痛みに声が漏れる。既に目からは涙が流れ、男の顔を恐怖と涙でぐしゃぐしゃにしていた。血が止まらない、死ぬ、足が動かない、死ぬ、あぁ寒い、死ぬ!こんなに腕は熱いのに、死ぬ!死にたくない!
男の目が閉じられる。最後に暴れたおかげで口元の縄が緩んだがもう手遅れ。大声を出す力は残されておらず、薄く開かれた目から見えた最後の景色は自分の腕から血を飲む少年の姿。
「……きゅ……け、き」
「ぷはっー飲んだ飲んだ。って今僕のこと吸血鬼って呼んだよねこれ!いやーわかる人にはわかるもんだねー」
少年は笑う。からからきゃはきゃはと、楽しそうに嗤う。まさか死にかけの人間が自分の正体に気づくとは。これだからやめられないのだと言わんばかりに少年は笑う。そして笑いを止めた少年の目にはもう既に事切れた男は映っておらず、今1番気になっている少女がいる方向へと目を移す。
「渡我被身子、君に神の御加護がありませんように。なんちゃって♪」
そう言って少年は闇に消えた。彼らがどこに消えたのかを知るものはおらず、その場には遺体がひとつ残された。まるで血を吸い尽くされたような遺体に成り果てていたが、何故かそれが報道されることはなく、なんの事件など起きていないかのようなニュースが、いつも通り流れていた。