あともう少しですがお付き合いください。
放課後、学校の近くにある少し背伸びした雰囲気のカフェ。
アンティークな家具と、甘いキャラメルの香りに包まれて、私たちは一番奥のボックス席に座っていた。
「お姉ちゃん、口の横にクリームついてる」
「あら…取ってくれる、綾香?」
愛歌お姉ちゃんが、いたずらっぽく目を細めて顔を寄せてくる。
私は躊躇わなかった。ハンカチを使うなんて選択肢は最初からない。
お姉ちゃんの柔らかい頬に手を添えて、そのまま、吐息が触れ合う距離まで顔を近づける。
唇が重なる。それは、家族としての挨拶にしてはあまりに長く、湿り気を帯びた、深い恋人の口づけ。
「…んっ、…ふふ、ごちそうさま、綾香」
「もう…お姉ちゃん、わざとでしょ」
とろけるような熱い沈黙が、二人の間に流れた。その時だった。
「…えっ? 沙条さん…?」
背後から聞こえた、聞き覚えのある声。
振り向くと、そこにはクラスメイトの女の子が二人、目を見開いて立ち尽くしていた。
トレイに乗せたアイスティーが、彼女たちの震えに合わせてカチャカチャと音を立てている。
「え、あ…今、その、キス…してた…よね?」
「双子、だよね…? 仲が良いってレベルじゃ…」
教室内での仲良し姉妹という建前が、一瞬で音を立てて崩れ去る。
お姉ちゃんは、困ったように首を傾げながらも、どこか楽しそうに私を見つめている。
全知を失っても、彼女は愛されているという事実にだけは、この上ない悦びを感じているようだった。
一瞬、どう言い訳をしようかと考えた。
暗示で記憶を消す?
それとも、ただの冗談だと笑い飛ばす?
けれど、お姉ちゃんの潤んだ瞳と、絡め合った指先の熱を感じた瞬間、どうでもよくなった。
私は眼鏡を指先でクイ、と押し上げると、当主としての冷徹さと、恋人としての傲慢さを混ぜ合わせたような微笑を浮かべた。
「…そうだよ。何かおかしいかな?」
「え…っ!?」
「私たち、恋人同士なの。お姉ちゃんは私のものだし、私はお姉ちゃんのもの。血がつながっているとか、そんなの…私たちを縛る理由にはならないわ」
私の堂々とした宣言に、クラスメイトたちは絶句している。
「だって、女の子同士で、しかも姉妹で…」なんて言葉が聞こえてきそうだけれど、今の私には、そんな世間の常識は何の力も持たない。
私は見せつけるように、お姉ちゃんの肩を抱き寄せ、より深く密着した。
「隠すつもりもなかったけれど、わざわざ言いふらすことでもないでしょう? …ただ、これで分かったよね。お姉ちゃんに気安く触れていいのは、世界で私だけなんだってこと」
愛歌お姉ちゃんは、私の独占欲に満ちた言葉が嬉しくてたまらないらしく、幸せそうに私の胸に顔を埋める。
「ふふ…困ったわね、綾香。そんなに恐い顔をしたら、お友達が逃げ出してしまうわ」
「いいよ。お姉ちゃんには、私がいれば十分でしょ?」
「ええ、もちろん。…愛してるわ、私の小さな騎士様」
唖然とするクラスメイトたちを置き去りにして、私たちはまた二人だけの世界に閉じ籠もる。
明日から学校でどんな噂が広まろうと、構わない。
全知を捨て、運命を殺し、父を屠って手に入れたこの関係を、今さら誰に恥じることがあるだろう。
「…さあ、お姉ちゃん。冷めないうちにケーキ、食べちゃおう」
「そうね、綾香。…次は、あっちのチョコ味をあーんして?」
カフェの喧騒も、他人の視線も、すべては私たちの恋を彩るBGMに過ぎない。
夕暮れ時のカフェで、私たちは隠すことのない異常な愛を、より一層深く、甘く、噛み締めていた。
登校中、私はずっと最悪の事態を想定して、眼鏡の奥で魔術回路をアイドリングさせていた。
「不潔」「気持ち悪い」…そんな言葉がお姉ちゃんに向けられたら、クラスごと暗示で塗り潰してやる。
そう決めていた。
けれど、教室の扉を開けた瞬間に待っていたのは、予想だにしなかった空気だった。
「あ、沙条さん、おはよう! …あのさ、昨日のことなんだけど!」
昨日カフェで遭遇したクラスメイトが、頬を赤らめて駆け寄ってきた。
私は咄嗟にお姉ちゃんを背中に隠したけれど、彼女の瞳に蔑みの色は微塵もなかった。
「…すごかったね、昨日の告白! なんだか、少女漫画のワンシーンみたいで…私、一晩中ドキドキしちゃった!」
「え…?」
拍子抜けする私を置いて、他の女子生徒たちも次々と集まってくる。
「双子で恋人同士なんて、なんていうか…究極の純愛って感じ!」
「二人ともすごく綺麗だから、全然アリだと思う」
「むしろ、男の子が入り込む余地なんてない方が、沙条さんたちらしいよね」
口々に、好意的な言葉が投げかけられる。
どうやら、閉ざされた女子校というコミュニティにおいて、私たちの関係は拒絶すべき禁忌ではなく、むしろ崇拝すべき美談として受け入れられたようだった。
「…ああ、女子校って、そういうものなんですね」
私は思わず、眼鏡を直しながら溜息を漏らした。
世間一般の倫理よりも、目の前の美しさやドラマチックな情愛が優先される場所。
かつてお父様が教えてくれた、どの魔術理論よりも理解しがたい、けれど今の私にとってはこれ以上なく好都合な理(ことわり)がそこにはあった。
「ふふ、良かったわね、綾香。みんなに祝福されるなんて」
お姉ちゃんは、最初からこうなることが分かっていたかのように、優雅に微笑んでクラスメイトたちの輪に溶け込んでいく。
全知を奪っても、その天性の魅力――人を惹きつけ、狂わせるカリスマ性だけは、お姉ちゃんの中に色濃く残っているのだ。
昼休み。
屋上の影で、私たちはまた二人きりになった。
「…みんな、あんなに好意的だとは思わなかった。少し、拍子抜けしちゃったな」
「あら、私は最初から怖くなかったわよ。だって、私を愛している綾香は、世界で一番強くて、一番かっこいいんですもの」
愛歌お姉ちゃんが、私の肩に頭を預けてくる。
クラスメイトが味方になったとしても、私のやるべきことは変わらない。
むしろ、周囲がこの関係を認めたことで、私たちはより一層、誰にも邪魔されない二人だけの聖域を強固にしていく。
「…お姉ちゃん、調子に乗らないでね。みんなが許しても、私が独占したいのは変わらないんだから」
「ええ。私も、綾香以外に触れられるのは絶対に嫌だわ」
私たちは、風に揺れる制服のスカートを重ね合わせながら、甘い沈黙に浸った。
魔術協会の老魔術師たちも、運命の王子様も、この穏やかな女子校の喧騒には届かない。
私は、お姉ちゃんから奪った全知の知識を使って、この平和な箱庭を永遠に固定する方法を考え始めた。
「ねえ、綾香。今日の帰りも、またあのカフェに行きましょう? …今度は、クラスの子たちに見せつけるためじゃなくて、私とあなた、二人だけのために」
「…うん、お姉ちゃん。大好きだよ」
お姉ちゃんを人間(おんなのこ)に堕とした代償。
それは、私自身もまた、彼女なしでは生きていけない依存という名の奈落へ落ちることだったけれど。
この春の陽光の下では、それさえも、至上の幸福にしか思えなかった。
日常を捨てさせるつもりはない。
お姉ちゃんが、朝の光に目を細め、友達と笑い合い、流行りのキーホルダーに心を躍らせる…そんな普通の女の子としての時間を奪うことは、私の本意じゃない。
けれど、この脆く甘い日常を守り抜くためには、私が誰よりも強くなる必要がある。
お姉ちゃんが神に戻る必要がないくらい、私がこの世界の理を支配しなければならないのだ。
そして何より、お姉ちゃんが生きていくための錨(いかり)が必要だった。
根源から切り離され、全知を失った彼女が、ふとした瞬間に空虚に飲み込まれないための、強い生きる目的。
「お姉ちゃん。…これ、やってみない?」
学校の帰り道、私は小さな彫金キットと、二つの無垢なシルバーのリングを買ってきた。
宝石店で完成品を買うのは簡単だけれど、今の私たちには、自分たちの手で形を作る過程が必要だと思ったから。
「あら、指輪を作るの? 私にできるかしら」
「大丈夫。お互いの分を、お互いで磨いて交換するんだよ。…お姉ちゃん、私のために作ってくれる?」
「…ええ。もちろん。あなたのためのものなら、心を込めて作るわ」
夕食の後、リビングのテーブルに道具を広げる。
それは、魔術的な儀式ですらなく、ただの工作だ。
けれど、そこにはどんな呪詛よりも強い想いが込められていく。
私はお姉ちゃんの細い指に合わせたリングを、丁寧に、丁寧に磨いていく。
ザラついていた銀の表面が、私の手によって鏡のように光り始める。
お姉ちゃんもまた、不慣れな手つきでヤスリを動かしていた。
全知を失った彼女の指先は、時折危なっかしくて、そのたびに私の胸がキュンと疼く。
お姉ちゃんが、私のために、手を汚して頑張ってる…
これがお姉ちゃんの生きる目的になればいい。
「綾香のために、何かをする」ということ。
「綾香に応えるために、ここに留まる」ということ。
仰々しい聖杯や、遥か遠い王子様なんていらない。
目の前にある銀の輪っかを綺麗にする…その小さな執着だけで、お姉ちゃんをこの世界に繋ぎ止めておきたい。
数時間後、ようやく二つのリングが完成した。
市販品のような完璧さはない。
少し歪で、あちこちに小さな傷が残っているけれど、それがかえって愛おしかった。
「…できたわ、綾香。あなたの指に、似合うかしら」
「お姉ちゃん、手、出して」
私は、お姉ちゃんの左手の中指に、私が磨いたリングを滑らせた。
そして、お姉ちゃんもまた、私の左手の中指に、銀の輪をはめてくれる。
「これで、お揃い。…ねえ、お姉ちゃん。これ、絶対に外さないでね。お守りなんだから」
「ええ。…これをしている間は、私、ずっとあなたのお姉ちゃんで、あなたの恋人でいられる気がするわ」
シルバーリングは、体温を吸ってすぐに温かくなった。
ただの銀の塊。
けれど、私がお姉ちゃんから吸い上げている情報のノイズを、このリングが受け止めるパスの起点になるように、私はこっそりと魔術的な固定を施した。
お姉ちゃんは、自分の指に光る銀色の輪を、うっとりと見つめている。
その顔を見ているだけで、私はどこまでも強くなれる気がした。
魔術協会が何だ。
世界の運命が何だ。
私は全知のバックアップを完全に手なずけ、どんな外敵からもこの人を守り抜く盾になる。
お姉ちゃんが望むなら、私は魔術師たちの王にだって、あるいは世界を敵に回す魔女にだってなってみせる。
「大好きだよ、お姉ちゃん。…明日も学校、一緒に行こうね」
「ええ、綾香。…ずっと、ずっと、一緒よ」
窓の外には、静かな夜が広がっている。
指先で感じる銀の冷たさと、繋いだ手の熱。
この矛盾こそが、私たちが選び取った新しい運命の形だった。
お姉ちゃんはもう、空っぽの神様じゃない。
私という生きる目的を指に纏った、一人の女の子なのだ。
「あ、そうだった…。ペアリング、そのままじゃ学校で目立っちゃうね」
リビングで自分の指に光る銀の輪を見つめながら、私はふと我に返った。
せっかく昨日、クラスメイトたちと公認の恋人みたいな良い雰囲気になれたのに、校則の厳しいミッションスクールで堂々と指輪を見せびらかして、先生に目をつけられるのは得策じゃない。
「せっかくお姉ちゃんが磨いてくれたのに、外したくないな…」
「私もよ、綾香。これ、ずっとつけていたいわ」
愛歌お姉ちゃんが少し寂しそうに眉を下げたので、私はすぐに眼鏡の奥で魔術式を組み立てました。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。…ちょっとだけ、おまじないをかけよう」
私はお姉ちゃんの手を取り、その銀の輪に指先で触れました。
私の得意な地の属性を応用した、強固な認識阻害の魔術。
普通の魔術師が使うような目立たなくさせる程度の術では無い。
お姉ちゃんから奪った全知の断片を使い、周囲の人間がその指輪を視界に入れても何もはめていないと脳が自動的に補完するように書き換える、完璧な隠蔽。
「…できた。これで、私とお姉ちゃん以外には、この指輪は見えないし、触れても気づかないよ」
「まあ…。触っても分からないなんて。ふふ、私たちの秘密が、また一つ増えたのね」
お姉ちゃんは不思議そうに指先を動かして、目には見えているはずの指輪を愛おしそうに撫でました。
これで、学校での平穏を乱すことなく、私たちは常に互いの愛の証を纏って過ごすことができます。
「さあ、行こう、お姉ちゃん。今日は移動教室があるから、遅れないようにしなきゃ」
「ええ。昨日のあのお菓子のお店、また帰りに寄れるかしら?」
「もちろん。何なら全種類買っちゃおうか」
私たちはまた、いつものように手をつないで家を出た。
学校へ向かう道すがら、お姉ちゃんが時折、自分の左手を光にかざして、私にだけ見える銀の輝きを確認しては、嬉しそうに微笑んでいる。
学校に着くと、昨日味方になってくれたクラスメイトたちが「沙条さん、おはよー!」と明るく声をかけてくれる。
彼女たちの目には、私たちの指に光る枷は見えていません。
けれど、私とお姉ちゃんの間にある、昨日よりもさらに深まった空気感だけは、無意識に感じ取っているようでした。
授業中、お姉ちゃんがペンを走らせるたびに、認識阻害のフィルター越しに銀の光がチラリと見えます。
それは、世界中の誰にも知られず、私たち二人だけで共有している共犯者の証。
お姉ちゃんが、ここにいる。私の磨いた指輪をつけて、私の声を聞いて、私のために笑ってる…
お姉ちゃんを普通の女の子として学校に通わせること。
それは、彼女の神性を奪った私の贖罪(しょくざい)でもあり、同時に、彼女を誰にも渡さないための最も贅沢な囲い込みでもありました。
お姉ちゃんが望むなら、私は何度でも、どんな方法を使ってでも、この穏やかな日々を固定し続けます。
「…ねえ、綾香」
休み時間、お姉ちゃんが私の耳元で囁きました。
「指輪、なんだか少し熱いわ。…あなたの愛してるっていう声が、ここから伝わってくるみたい」
「…私もだよ、お姉ちゃん」
誰にも見えない指輪を通じて、私たちのパスはより強固に、より熱く結ばれていく。
この静かな教室の喧騒のなかで、私たちは世界を欺きながら、永遠に続く日常の一歩を、また新しく踏み出していました。
学食の喧騒の中、私たちの周りにはいつの間にか賑やかな輪ができていた。
メニューのカレーやパスタを囲みながら、お姉ちゃんは「このオムライス、卵がふわふわで魔法みたいね」なんて、全知を失ったからこそ言える純粋な感想を漏らして、クラスメイトたちを和ませている。
お姉ちゃんが、笑ってる。…私の知らない誰かと、楽しそうに。
お姉ちゃんを独占したい、私の知らない表情を誰にも見せたくない…そんな昏い独占欲が胸の奥でチリリと焼けるけれど、それ以上に「お姉ちゃんがこの世界に馴染んでいる」という事実に、私は確かな手応えを感じていた。
私が守りたかったのは、この、どこにでもある光景なのだ。
けれど、しばらくして私はある違和感に気づいた。
「ねえねえ、綾香さん! さっきの授業のノート、ここ見せてもらってもいいかな? 綾香さんの字、すごく綺麗で読みやすいんだもん」
「沙条さん! 今度の球技大会、何に出るか決めた? 綾香さんが一緒なら、絶対勝てると思うんだよね!」
…おかしい。
お姉ちゃんの方を向いていたはずのクラスメイトたちの視線が、なぜか次々と私の方へ流れてくる。
お姉ちゃんに話しかけていた子までもが、「ね、綾香さんはどう思う?」と、いちいち私に同意を求めてくるのだ。
「…え、あ、うん。球技大会は、お姉ちゃんと同じ種目にするつもりだけど…」
私が戸惑いながら答えると、彼女たちは「キャー! やっぱり!」「尊い…」と、なんだか顔を赤らめて盛り上がっている。
…なんで、私にばっかり話しかけてくるの?
私は戸惑い、無意識に眼鏡のブリッジを押し上げた。
レンズの奥で、全知のバックアップが残酷なまでに正確な答えを弾き出す。
原因は、私だ。
お姉ちゃんを守るために、私は無意識のうちに自分を磨きすぎていた。
魔術協会を脅し、地脈を操り、お姉ちゃんの全知を肩代わりして防壁となった私の魂は、以前のような地味で気弱な妹ではなくなっていたのだ。
今の私は、クラスメイトの目には「美しすぎる姉を完璧にエスコートし、圧倒的な余裕で世界を統べる、クールでミステリアスな少女」として映っている。
つまり…お姉ちゃんを守るための「騎士」としてのオーラが、皮肉にも彼女たちの憧れを私に向けてしまっているのだ。
「ふふ…綾香、大人気ね」
お姉ちゃんが、フォークを置いて私をじっと見つめていた。
その瞳は、クラスメイトたちに向けるものとは明らかに違う、深い熱を帯びている。
「お姉ちゃん…?」
「いいのよ。みんな、あなたの強さに気づき始めたのね。…でも、ダメよ。綾香のそのかっこいいところを知っているのは、私だけでいいのに」
お姉ちゃんは、テーブルの下で私の膝を指先でなぞった。
認識阻害をかけた指輪が、私の肌に微かな熱を伝える。
周りの子たちは「二人が見つめ合ってる!」「最高の供給…!」と勝手に悶えているけれど、私には分かっている。お姉ちゃんのこの視線は、独占欲に焼かれた女の顔だ。
お姉ちゃんを守るために強くなったのに、そのせいで注目を集めて、逆にお姉ちゃんを不安にさせちゃうなんて…
「…みんな。お姉ちゃんを放っておいて私にばっかり話しかけるのは、感心しないな」
私は少しだけ当主としてのトーンを混ぜて、冷たく、けれど甘く言い放った。
「私は、お姉ちゃんの声を聞くのに忙しいんだから」
その瞬間、クラスメイトたちの黄色い悲鳴が学食に響き渡る。
…どうやら、逆効果だったみたいだ。
お姉ちゃんを普通にする計画は順調だけれど、私が普通でい続けるのは、もう限界なのかもしれない。
「さ、お姉ちゃん。行こうか。…次は二人きりでお茶を飲もうね」
私はお姉ちゃんの手を引き、逃げるように学食を後にした。
背中に突き刺さる熱い視線を感じながら、私は守護者としての有名税に、少しだけ溜息をついた。