ゴルシンです! 今回も書けました!!! ではどうぞ!!(後 実写化ゴルカムの樺太編 ドラマ化決定おめでとう!)
激しい脱出劇から数日が経ち、湖の追手も完全に振り切った一同は、パヴァリアの警戒網から遠く離れた安全な隠れ家へと身を潜めていた。
杉本の驚異的な回復力は文字通り「不死身」であり、キャロルの錬金術によって完璧に繋ぎ合わされた心臓は、すでに何事もなかったかのように力強い鼓動を刻んでいる。
船のデッキに立った杉本は、澄み切った空気を胸いっぱいに吸い込み、包帯の上から胸をドンと叩いた。
佐一「うし! じゃあ旅に行くか!」
キャロル「.......正気か、お前は」
呆れたような声を上げて部屋から出てきたのは、本を片手にしたキャロルだった。いつもの傲然とした態度だが、杉本の元気な姿を見て、その瞳の奥には確かに安堵の色が浮かんでいる。
キャロル「心臓を撃ち抜かれてからまだ数日しか経っていないのだぞ。人間の肉体特性を考えれば、最低でも数ヶ月はベッドの上で這いつくばっているのが道理だ」
佐一「へへっ、心配してくれてありがとな、キャロルちゃん。だけど俺の身体は戦場仕込みだからよ。じっとしてる方がかえって調子狂っちまうんだ。それに、ここに長居しちゃパヴァリアの残党に居場所がバレるかもしれないだろ?」
キャロル「ふん、誰が心配など。私はただ、私の最高峰の術式が、お前の無茶で不具合を起こすのが不愉快なだけだ」
ぷいっと顔を背けるキャロルの横から、パタパタと足音を立ててエルフナインが顔を出した。
エルフナイン「でも、杉本さんの言う通りかもしれません。パヴァリアの残党はまだ僕たちを追っています。一箇所に留まるのは危険です。.......それに、僕たちの『次の目的』のためにも、移動を始めるべきです」
その言葉に、船内にいた仲間たちが続々と集まってくる。
サンジェルマン「ふむ。我々が次に向かうべきは、パヴァリアの本拠地が遺した『世界の異変』を調査する場所.......。あるいは、君の目的の場所、だったかね? 杉本」
佐一「そのために、まずは情報を集めながら北へ向かいたい」
カリオストロ「北ぉ? 寒いのヤダな〜、お肌が荒れちゃうじゃない」
カリオストロが髪をいじりながら文句を言うと、プレラーティが「でも、スギモトちゃんのサバイバル能力があれば、美味しいお肉が食べられるワケだ!」と目を輝かせる。
ミカ「ミカも、新しい土地に行くのはワクワクするゾ!」
ファラ「マスターが行かれる場所なら、どこへでもお供いたします」
ガリィ「ガリィちゃんも、サイチさんの『不死身の野生』がまた見られるなら、喜んでついて行きますよ〜!」
仲間たちの賑やかな声に、杉本はニカッと笑った。
佐一「よし、決まりだ! じゃあみんな、旅の支度を始めよう。まずは腹ごしらえに、俺が美味いもんを獲ってきてやるからな!」
キャロル「……勝手にするがいい。だが、私の足を引っ張るような真似だけは許さんぞ、杉本佐一」
口では冷たく突き放しながらも、キャロルは杉本の隣に並び、これから進む地平線を見つめた。
不死身の兵士と、世界最高峰の錬金術師たち。奇妙な絆で結ばれた一行の、新たなる旅が今、幕を開ける──
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
佐一「......よっと!」グイッ!
杉本達は 船の上で 釣りをしていた 今回の料理には 「とある魚」が必須なため サンジェルマン ガリィ ファラを連れて 釣り場に赴いていた。
サンジェルマン「ほう.......? サイチは そこまでの腕前を持つのか?」
佐一「まぁな でも ここまで 釣れるのは..........驚きだけど!」
杉本が力強く竿を引くと、バシャバシャと激しく水飛沫を上げて、丸々と太った大物――イトウがデッキへと跳ね上がった。
ガリィ「わあ! すごい大きさです、サイチさん! 湖の主みたいなお魚ですね!」
ガリィが目を輝かせながら、バタバタと跳ねる魚を覗き込む。
佐一「へへっ、こいつはイトウだ。北海道じゃお馴染みの川のバケモノだけど、こっちの冷たい水域にもやっぱいるもんだな。ファラ、頼む!」
ファラ「はい、サイチさん。お任せを!」
ファラは即座に動き、愛用の大剣.........ではなく、杉本から手渡されていた調理用の大包丁を抜いた。その無駄のない洗練された動きで、暴れるイトウの脳天を一突きにして瞬時に気絶させる。
サンジェルマン「見事な手際だね、ファラ。そしてサイチ、これが君の言う『とある魚』か。確かにこれほどの巨躯、一同の腹を満たすには十分すぎる」
佐一「ああ。だがな、サンジェルマン。このイトウって魚は、ただ焼いて食うだけでも美味いんだが、最高の食べ方があるんだ。.........これを作るには、どうしても生きた新鮮な状態が必要だったんだよ」
杉本は懐から、小刀と銃剣を取り出した。
佐一「よし、ガリィ、ファラ、サンジェルマンさんも手伝ってくれ。今からこの魚の頭と骨、それから身を少し使って、叩いて細かくするんだ」
ガリィ「叩く? お魚をですか?」
佐一「そうだ。こうやってな……「チタタㇷ゚ チタタㇷ゚」って言いながら包丁で細かく刻むんだよ。ほら、やってみろ」
トントントントン! と杉本がリズムよくイトウの頭を叩き始める。
ファラ「以前にやった物ですね お任せ下さい。」
以前からやっていたファラは 以前よりも早く「チタタㇷ゚、チチタタㇷ゚.........」と呟きながら骨を叩き潰していく。
サンジェルマン「ふむ、独自の文化を感じるね。チタタプ、チタタプ.........」
サンジェルマンも優雅に、しかし確実にリズムを刻む。
ガリィ「チタタプ! チタタプ! 楽しいですねこれ!」
ガリィも嬉々として参加し、船の上には奇妙な呪文と小気味よい包丁の音が響き渡った。
数分後、完全にペースト状になった
佐一「……ッ! ヒンナだぜ!やっぱりイトウのチタタプは最高にヒンナだぜ! 脂が乗ってて、川魚の臭みが全くねえ!.........ほら、みんなも食ってみろ!」
差し出された生の魚肉に、一瞬だけ顔を見合わせる錬金術師たち。しかし、杉本の弾けるような笑顔に促され、まずはサンジェルマンが口に含んだ。
サンジェルマン「.........! おお.........これは.........。生の魚を叩くだけで、これほど濃厚な旨味と、骨まで柔らかく溶けるような食感になるのか。.........
ガリィ「いいなー ガリィちゃんも 食べたかったですぅ.........」
ファラ「仕方がないですよ.........私たちは人形なのですから.........」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
キャロル「おい 何をしている.........って それは......」
そこに キャロルが現れる。その目付きは みんなで食べていた チタタㇷ゚に向いていた。
佐一「あっ! キャロルちゃん! ちょうど良かった チタタㇷ゚作ったから食べようぜ!」
佐一は屈託なく そのままイトウのチタタㇷ゚を キャロルに差し出した。 ちょうどその隣にいた エルフナインは そのチタタㇷ゚に 驚愕した。
エルフナイン「な.........なんですか!? その悪魔のような食べ物は!?」
佐一「そういえば エルフナインちゃんって チタタㇷ゚が始めてか.........だったら 一緒に食べ―――」
エルフナイン「え゛っ.........と.........ですね.........」
エルフナインが困惑していると キャロルは 即断で決めた。
キャロル「前に貰った脳みそのやつか ならば貰う。」
そうして パクリ とキャロルは チタタㇷ゚を口に入れた。
エルフナイン「マ、マスター!? 大丈夫ですか!? 未知の寄生虫や毒素のチェックは.......!」
エルフナインが慌ててキャロルの服の袖を引っ張るが、キャロルはそれを手で制し、静かに目を閉じて味わっている。冷たい北の湖で育ったイトウの、凝縮された上品な脂。細かく叩かれた骨から染み出す滋味深さ。それらが口内の熱で一体となり、滑らかに溶けていく。
キャロル「........ふん。相変わらずの味付け......だが 効率的に栄養と旨味を抽出するという点においては、評価せざるを得ないな」
佐一「だろ? ほら、キャロルちゃんも言ってみろ。『ヒンナ』ってな!」
キャロル「断る。私はお前の文化に染まったわけではない。単に、私の
ぷいっと横を向くキャロルだが、その耳がわずかに赤い。そして、その視線はしっかりと杉本の手元にある残りのチタタㇷ゚に注がれていた。
佐一「へへっ、素直じゃねえなあ。……お、エルフナインちゃん! ほら、マスターも美味いって太鼓判押してんだ、お前も一口いってみろって!」
杉本がにじり寄ると、エルフナインは「ひゃあっ!」と声を上げて後ろに飛び退いた。
エルフナイン「い、いえ! 僕は結構です! そもそも錬金術の観点から見ても、生魚の骨や頭をそのまま叩き潰して口にするなど、衛生管理の概念が崩壊しています! 僕はホムンクルスですが、精神的な拒絶反応が........!」
サンジェルマン「おや、食わず嫌いは良くないよ、エルフナイン。サイチの持ってきたこの文化は、自然の恵みを余すことなく取り込む、実に見事な『黄金錬成』の一種だ。ほら、一口食べれば世界が変わる」
エルフナイン「サンジェルマンさんまで!? あ、悪魔の囁きだ.......!」
涙目で首を激しく横に振るエルフナイン。その様子を、ガリィとファラが羨ましそうに見つめている。
ガリィ「いいなぁ、エルフナイン君は。オートスコアラー(私たち)には、その「ひんな」っていう素敵な感覚が味わえないのに......」
ファラ「ええ。マスターがそれほど満足されるお食事、一体どのような世界が広がっているのか、機能として定義できないのが口惜しいですね」
人形たちの
エルフナイン「うぅ.........わかりましたよ! 食べればいいんでしょう、食べれば! .......チ、チタタプ........」
佐一「声が小せえ! ほら、もっと元気よく!」
エルフナイン「チタタㇷ゚!!」
ヤケクソ気味に叫び、エルフナインは目を瞑ってチタタㇷ゚を口に放り込んだ。
一瞬の静寂。
エルフナインの脳内で、未知の味覚データが爆発的な速度で処理されていく。生臭さは一切なく、ただただ濃厚な魚の甘みと、小気味よい歯ごたえが舌の上で踊っていた。
エルフナイン「.......っ! .......あ、甘い.......? 美味しい.......です.......!」
佐一「 そうだろ! イトウのチタタㇷ゚は格別なんだよ!」
エルフナイン「これが......「ヒンナ」......。僕、なんだか体がポカポカしてきました......!」
驚きに目を輝かせるエルフナインを見て、杉本は満足げに胸を叩いた。その横では、キャロルが「次は
パヴァリアの脅威が未だ燻る過酷な旅路。しかし、叩き上げの兵士がもたらす異国の温かい食卓は、冷徹な錬金術師たちの心を、確かにほんのりと溶かしていくのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次回「日本 現着」!