Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】 作:持麻呂
「S.T.A.R.S.!!!!!」
と、絶叫をした身長250cmを越える筋肉モリモリマッチョマンの変態は、手に持ったスティンガーの発射機を放り捨てて、アパートの屋上から飛び降りた。
5階建てのアパートなので、人間ならいくら鍛えていようとも普通なら死んでいるはずなのだが、スーパーヒーロー着地をしてから何事も無かったように立ち上がる。
「絶対にまともな敵じゃない!」
パワーアサルトライフルのノワキを取り出して、全身を黒い布で巻いたような格好の変態大男に向けて発砲を開始する。
顔面を狙ったのだが、サスカッチ*1の腕と同じくらい太い左腕で防がれて、顔面まで到達しなかった。
そこそこ強力な弾なのだが、全身に巻き付けている黒い布のような素材はどうやらかなり高性能な防弾繊維のようで、表面でかなり威力を殺されて肉を貫通することが出来ないらしい。
私が即座に発砲を始めたので、その場に残っていた全員が銃を撃ち始める。
流石に肉の中の中まで食い込んではいかないが、全身に針を突き刺されるのが煩わしいと言った感じで、一際大きく咆哮を上げると一気に駆け出してきた。
巨体に見合わずかなり俊敏で、100メートルを一瞬で詰めて1人のUBCS隊員の頭を掴み上げる。
頭を握り潰されそうになり激痛で絶叫をするUBCSを助けるために、駆け出して思いっきり膝裏にローキックを叩き込んだ。
人型の構造上、膝裏を蹴られると力が入らない。
カクンと左膝の力が抜けて膝をついた。
「
ついている膝に足を掛けて身体に駆け上り、顎先を思いっきり蹴り飛ばす。
バキッと下顎が折れる音がして、頭を強烈に揺らされた大男がUBCSを手放した。
顔面を踏んで飛び下がり、地面に転がったUBCSの襟首を掴んで大きく後退する。
「生きてる?」
「た、助かった…」
強く顔を握られたためか、耳や鼻から血を流しているがとりあえず生きているらしい。
気絶しているのか、両膝をついたまま固まっているので今のうちに後退する。
急いで逃げ支度をするべきだろう。
「エドワード、逃げ支度だよ!戦車を回して!コイツは私が足止めする!!」
「了解!全員地下駐車場にはしれ!!」
UBCSとRPDが警察署の内部に駆け込んでいく。
「これを使え!!」
ミハイル隊長がグレネードランチャーを投げてよこした。
ダネルMGL、回転式の6発シリンダーを有する40mmグレネードランチャーである。
こっちに来てから映画でしか見たことがなかったが、これは使えそうだ。
有り難く使わせてもらう。
「V!私も手伝うわ!」
「俺も居るぜ」
ジルとカルロスも手伝ってくれるらしいので、1人サムライエッジと火力の低いジルにMGLを託す。
再起動したのか、折れた顎をガチリと嵌め込んで無理矢理直した大男は、スターズスターズと言いながらこちらに向き直った。
「S.T.A.R.S.!!!!!」
「しつこい男は嫌われるぜ」
ポンっと気が抜けるような音をさせて、カルロスがM4カービンの下に装着したグレネードランチャーから40mmグレネードが飛んでいき、大男の胴体表面で爆発を起こす。
「GRRRRAAAAAAAA!!!!!」
体液が飛び散り、当たった部分の肉が弾ける。
黒い防弾繊維は防弾だけでなく防爆使用なのか、直撃したところ以外はなんともなさそうだ。
防弾繊維の破れたところから見える色味の悪いその肉の下に、紫色の触手が紫色の体液を溢しながらのたうっているのが見えた。
めちゃくちゃ気色悪い。
『おいおい、今度は触手に寄生されたバケモンかよ!そう言うのは日本人のお家芸だろ!こんなところで出てくんじゃねぇよ!』
『ジョニーちょっと黙ってて!』
腕を引くような動作をして、パンチするように手のひらをこちらに向けて突き出してくる。
距離は少し離れているのだが、反射的に顔を背けると目の前を紫色の触手が槍のように伸びてきて、顔があったところを通り抜けた。
触手如きにフェイスプレートを貫けるとは思えないが、人体なら容易に貫通しそうなくらいの勢いがある。
ヌメヌメした粘液が滴っているので、アレが体内に入ったらワクチンも無効化してきそうだ。
腕から伸ばした触手を引っ込める前に、ブルーファングで触手を切りつけるが粘液で刃が滑ってしまう。
滑る上に適度に弾力があるせいで切りずらい。
とても厄介だ。
ジルとカルロスもM4とMGLで援護射撃してくれるが、40mmグレネード弾ならともかく5.56mm弾が効いてるとはとても思えない。
そして、40mmグレネード弾が命中した傷跡もグニグニしながらすぐに塞がっていっている。
生身のくせに治癒能力が高過ぎる。
ジルが6発目のグレネード弾を直撃させたところで、再生にエネルギーを使いすぎたのか再び膝をついた。
「V!コイツを使え!!」
「歯茎剥き出しでキモいのよ!」
半開きの口の中に、カルロスから投げ渡されたフラググレネードをピンを引き抜いて捩じ込んだ。
バンッ!と爆発して、奴の顔面から血液と肉が飛び散り、もうもうと煙が出る。
「…死んだかしら」
「BOWはしぶといわよ」
そこに警察署の地下駐車場から軽戦車を先頭にして、装甲護送バス2台が上がってきた。
バス1台でも乗り切れるのだが、万が一壊れた時に詰んでしまうので1台は戦略予備とし、わざわざ2台に分乗している。
「3人とも早く!」
ブラッドが装甲バスの扉を開けて、我々に向かって大きく手を振っている。
3人で装甲バスに向かって走るが、最後尾を走っていたジルがバスの乗り口に足を掛けた時に躓いてしまった。
違う、ジルの足に触手が絡みついているのだ。
その先を見ると、頭から煙を上げながら再生しているヤツの姿が。
「きゃぁぁぁ!!」
両腕でなんとかドアの縁にしがみついていたジルだが、思いっきり引っ張られてしまったせいで手が離れてしまう。
咄嗟に私とブラッドがその手を掴むが、凄い力で引っ張られているのでジルの胴体が空中に浮かぶ。
凄い力で引っ張られているので、私が掴んでいる金属製の手摺りが指の形に変形してしまう。
体が引っ張られる痛みでジルの顔が歪み、ほんの少し拮抗したあとボグンとジルの左肩が脱臼する音がした。
「ああぁぁぁっっ!!」
このままだとジルが深刻な怪我を負ってしまう。
護送バスを装甲化する際に、窓を鉄板で塞いでしまったせいで援護射撃を期待することができない。
「チッ」
「あっ、Vなにを!?」
ブラッドの手からジルの手を奪い取り、装甲バスから自ら降りる。
ジルの腕から胴体の方に自分の腕を巻き付けて、空いた片手にブーリャCOMRADE'S HAMMER*2を抜き、大男の胴体に向けて1発。
触手を殴りつけてもう1発を撃ち込んだ。
弾は即座に直撃し、胴体の防弾繊維を貫通して爆発を起こす。
体内で爆発すればよかったのだが、威力があり過ぎて向こう側まで貫通してから爆発したようだ。
だが、爆発の衝撃で触手が緩む。
その隙に、触手から強引にジルの身体を奪い返す。
激痛でジルが呻き声を上げながら顔を歪めた。
立て続けに上げた爆音で、周囲からゾンビの声が聞こえてくる。
このままだと、脱出経路もゾンビで埋まってしまい彼らが逃げれない。
そして、ジルの身体には触手の粘液がべっとりとこびり付いており、勿論中にはT-ウィルスが大量に含まれているはずだ。
このままブラッドに引き渡すと、バスの中を汚染して感染爆発が起きる可能性がある。
「ブラッド!!先に行って!!我々はコイツを始末して、別の経路で逃げるから!!」
「馬鹿なこと言うなって!!」
「ジルの身体が汚染されてる!バスには乗れない!いいから早く行けえええ!!」
カルロスがブラッドの襟首を掴み、ドアを強引に閉めた。
その後ろにいたタイレルもカルロスも、とても渋い表情をしていたが、私もジルもこんなところで死ぬつもりは毛頭無い。
軽戦車を先頭に、2台の装甲バスが発進していく。
前もって高速道路の入り口までの障害物は退かしており、側面はバリケードで固めてなるべくゾンビが入り込まないようになっているので、きっと彼らは高速まで辿り着けるだろう。
行き掛けの駄賃として、胴体に二つの大穴を開けられてダウンしている大男にむけて、軽戦車が増設した火炎放射器を浴びせている。
これでしばらくの時は稼げるかもしれない。
再起動する前にもう2発ほど倒れながら炎上している大男に向けてブーリャを叩き込む。
それから警察署の裏手に回ってジルを背負いながら柵をよじ登り、痕跡を残さないように壁を登攀して屋上から警察署の中に入った。
それから署長室に入り、来客用のソファーにジルを横たえさせて左肩を診察する。
どつやら引っ張られた脱臼だけで、骨には異常は無さそうだが靭帯が伸びてしまっているようだ。
「肩をはめるわよ。3つ数えて入れるわね」
「お、お願い…」
「行くわよ、1」
ポクンッ
「ウッ!」
人間、ここで来ないと思っている時の方が脱力しているので、こっちの方が綺麗にハマって痛くなりにくい。
騙して悪いけどね…
「3つ数えるんじゃッ、なかったのッ……!」
「そんなに痛くなかったでしょ。我慢して」
肩をはめただけでは伸びた靭帯は治らず、このままでは足手纏いなだけなので、マックスドク*3を咥えさせて吸引させる。
「…痛みが一瞬で消えたんだけど、中身なんなの?絶対マトモな品じゃ無いでしょう」
「中身は私も詳しくは知らないわ。すぐには身体に影響無いと思うけど…」
「そこは自信を持って言って欲しかったわ」
前もってワクチンも打たれていたので、バウンスバックは必要ないと判断した。
マックスドクでも肩は治るだろう。
本当に、中身は何が入っているのか謎だ。
痛みが消えて、腕をぐるりと一周させたジルにタオルと着替えを渡して、粘液に塗れた服を着替えさせる。
23歳のジルは、ナチュラルのくせにグッとくるプロポーションをしている。
胸も形が良い。
『ほほう、良い乳だな。尻もハリがあっていい。オルト*4よりも抱き心地が良さそうだぜ。おいV、正面に回り込めよ』
『アンタなにジルの裸覗いてんのよ。さっさと引っ込みなさい』
『おい、こんな裸は見てやらなきゃ失礼ってもんじゃねぇか。大体お前はいいのかよ』
『私は同性ですもの。別に良いのよ』
「……ねえV?その、あまりジロジロ見られると……」
「私のことは気にしないで、続けて」
「続けてって…スケベ」
『言われてんぞ』
『黙りなさい』
そんなことをしつつも、警察署の内外に仕掛けてある監視カメラの映像を見ている。
やはり肉体のダメージが大きく、更に炎を掛けられては堪らなかったようで、漸くノロノロと起き上がっては炎を身体に纏わり付かせながら路地裏に消えていった。
これで一先ずは安心だ。
所持品からニコーラ*5を取り出して、ジルと飲みながら一息吐く。
私が物を所持品から取り出すと、いつもジルや他の人が怪訝な表情を浮かべるのだがどうしてだろう。
まぁ、そんなことを気にしても仕方がない。
「不思議なフレーバーコーラね。カブト社…?日本のメーカーかしら」
「多分そうね。私のお気に入りよ」
「へぇ、今度探してみようかしらね」
そういえば朝から何も食べてないと思い、作り溜めしておいたサンドイッチを投げて渡す。
自分の分も取り出して、紙の包み紙を破りガブリと一口噛み付く。
瑞々しいレタスとトマト、香ばしいベーコンの旨味が味覚神経を直接刺激した。
シナプスがパチパチとスパークするような感覚になる。
隣を見ると、ジョニーもサンドイッチを美味そうに頬張っている。
やっぱり天然食材で出来た食べ物は美味すぎる。
フードキューブじゃ、こうはいかない。
こんなに安価で天然食品を得られるなんて、ナイトシティの住民が聞いたら絶対にサイバーサイコになって幻覚でも見たんだろって言われるに違いない。
毎日が最高の贅沢だ。
ふとジルを見ると、サンドイッチを見たまま不本意そうな顔をしていた。
「どうかした?もしかして嫌いだった?」
「……いえ、ちょっとサンドイッチに思うところがあっただけよ」
「…?なら良いけど」
頭を振ってから、ジルもサンドイッチに齧り付く。
2匹とも餌にありついたゾンビのように、無言でサンドイッチを口に詰め込む。
その後にニコーラで胃に流し込んだ。
その時、私たち以外だれも居ないはずの署長室から、グ〜っと腹の虫が鳴く音が響く。
思わずジルと顔を見合わせて、2人で銃を取り構えながら音の発生源を左右から挟み込んでいく。
音が聞こえたのは、アイアンズのデスクからだ。
視線を合わせて、頷いてからパッとデスクの裏側に回り込み銃を突きつける。
「きゃっ!」
そこに居たのは、子供用のセーラー服*6を着た金髪の少女だった。
すぐにユニティの射線を外す。
「あ、貴女!なんでこんなところにいるの!?もうヘリもバスも出て行ってしまったと言うのに!」
確かに、誰も用事が無いのでこの署長室には立ち寄らなかった。
まさかこんなところに女の子が隠れているなんて…
いつから隠れていたのか分からないが、あの大男に追われている今、この子は足手纏い筆頭だ。
「さて、どうしたものかしらね…」
「どうしたもこうしたも無いわ。連れて行くしか無いでしょう。…私はジルよ、貴女の名前は?」
ジルがしゃがみ込んで女の子に手を差し出す。
恐る恐ると言った様子で、その女の子はジルの手を握ってデスクの下から出てきた。
「シェ、シェリー…です…」
「そう、シェリーって言うのね。お腹が空いているんでしょう?V、まだ食べ物持ってないかしら」
「ん?…あぁ、はいこれ」
所持品からサンドイッチを取り出して、ニコーラと一緒にシェリーに渡してあげる。
すると、私とサンドイッチを行ったり来たりと視線を彷徨わせた後に、紙を破ってハグハグと食べ始めた。
よっぽどお腹が減ってたようで、先程の私たちのように一心不乱にサンドイッチを貪っている。
シェリーがサンドイッチを貪っている間に、ジルとどうやってラクーンシティから脱出するかを話し合う。
「やっぱり、1台車を調達するしか無いわね」
「ジル、普通の自動車だと人間1人2人轢いただけで、あっという間に壊れるわよ」
「困ったわ…もう作った避難路にもゾンビが入り込んでいてもおかしくない」
「高速道路上もゾンビが湧いているでしょうし、まぁ大型車両じゃないと難しいでしょうね」
鉄道は既に線路と高圧線が寸断されているだろう。
路面電車はそもそもラクーンシティの外には繋がっていない。
困ったな…
再び強烈な爆発音と衝撃で警察署が揺れる。
「きゃぁぁ!!」
「何事なのッ!?」
「今度は何が爆発したのよ…」
またあの大男が何かしたんじゃなかろうか…
すると外から銃声が聞こえ、それは徐々にこちらに近づいてきているようだ。
まだ生存者がいたのか、はたまたタンクローリーを爆破したやつか…
警察署の外にある監視カメラを見ると、RPDの制服を着た警察官と若い女性がこちらに向かってくる。
その後ろから、数体のゾンビが迫っていて、それに向けて散発的に射撃を加えているようだ。
あの爆発音の後に、そんな銃声なんかを轟かしたらゾンビ以外も寄ってくる…
ゾンビの更に後ろから、リッカーが複数体走って来た。
警察署の門扉は脱出の際に閂をしていないので、いまならまだ開くだろう。
だが、リッカーの舌が伸びることを知らないはずだ。
「ジル、ちょっとメインホールまで行ってくる」
「えっ?…えぇ、分かったわ」
署長室の扉を音がしないように開き、出てすぐに光学迷彩を起動させてからサンデヴィスタンを使って一気にメインホールまで降りた。
そのまま玄関ホールの扉を開くと、ちょうど2人が門扉を閉じたところに間に合う。
2人は門を閉じた事で安堵しているが、柵門を閉じたところでリッカーはまだ攻撃できるのだ。
「2人とも屈みな」
ハッとこちらを振り返って、そのまま勢いよく屈んだ頭上を2本の槍舌が通り抜け、私の横の空間を穿つ。
それらが引っ込んでいく前に掴み取り、思いっきり引っ張る事で柵門にリッカー2体は顔面から激突し、柔らかい脳みそが鋼鉄製の柵に切り刻まれて飛び散った。
「さっ、早く入るといい」
「あ、あぁ…助かった」
若い警察官の方が、飛び散ったリッカーの脳みそをみて少し呆然としながら、息も絶え絶えに警察署の中に入る。
「V!会えて良かった!」
もう1人の若い女性は、誰かと思えばクレアではないか。
なんでまたこんな状態の街にいるのだ。
彼女は大学のために、別の街にいたはずなのに…
「話は後にしよう。早く中に入った方がいい」
どこで、誰が見ているか分からないのだから。
ネメシスさん、バチボコにされてもしぶといですね…
だが奴にはまだ第2第3の変身を残しています。
あれ?なんだか空にまたヘリコプターが飛んでいませんか?
それに、どこからか人の名前を呼ぶような声も聞こえてくるような…
でもきっと大丈夫!
諦めてはいけませんね。
どこからか見ている人が、助けてくれるかも知れませんよ!
それはそうと、Vさんが何やらゴリラアームに細工をしているようです。
とても怖いですね。
と言う事で、今回でストックが切れてしまったので、更新はスローペースになると思います。
なるべく育児の合間に書き続けていくと思うので、よろしければ最後までお付き合いください。
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前書きのセーブロード時のストーリーテキスト風怪英文書は
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