Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】 作:持麻呂
クレアと予期せぬ再会を果たしたのはいいのだが、なんでよりによってこんな時に来てしまったんだ。
一先ずメインホールに留まっていても仕方がないので、2人を引き連れて署長室に向かう。
若い警察官は、私の後ろを着いてきながら誰も居らず静まり返っている警察署を怪訝に思っており、早足で私の横に並ぶ。
「その、なんでこんなに誰も居ないんだ?」
「そりゃ、みんな避難した後だからだよ。街にいたんだから、ヘリコプターの音とか聞かなかったかい?」
「いや、俺たちは街にさっき来たばかりなんだ」
「さっき来た?検問があった筈だけど、突破して来たの?」
「あぁ、RPDだって言えば通してくれた」
「なにそれ…その時に、ここが今ゾンビパンデミックになってるって聞かなかった訳?」
「聞いていたら来てない!…それに、ちょっと色々あって、昨日深酒をし過ぎて大遅刻したんだ。本当は、今日の朝から配属だったのに」
「あぁ、ここ数日はRPDもそれどころじゃなかったから、誰もアンタに電話しなかったわけね。それはお気の毒」
「ハハ…泣けるぜ」
確か人事課はフィリップだったはず。
彼除いてみんな死んじゃったし、電話も不通になっちゃったから、この彼に教えるのは余計に無理だ。
ちょっと可愛い感じだから、少しだけ可哀想に思えてくる。
「クレアはなんでラクーンシティに?」
「兄さんと連絡が急に取れなくなって、それで心配になって見に来たの」
「はぁ?アイツ、クレアに行き先教えていかなかったわけ?今ヨーロッパに行ってるわよ」
「ヨ、ヨーロッパ?そんなぁ…」
クレアの足から力が抜けそうになったところを隣に移動していた若い警察官が支える。
ここに来るまでの間に信頼関係でも出来たのか、クレアも体を預けている。
なんかちょっと良い雰囲気な気がする。
クリスが見たらどう思うだろうか。
「そう言えば、アンタの名前は?私はV」
「俺はレオン・ケネディだ。よろしく」
クレアをレオンが支えたまま、署長室の前まで行き軽くノックをする。
それから扉を開けると、扉から離れた位置にジルとシェリーがソファーを盾にするようにしゃがんでいた。
「お帰りなさい。さっき足音が聞こえたから、隠れてたのよ」
「…足音?私たちの他に誰か居るってこと?」
「たぶん。でも、あの触手の男みたいな大柄で体重のある足音ではなかったわ」
「クレアやレオンみたいに、迷い込んできたのか或いは…」
「え?いまクレアって言った?」
ジルが私の後ろを覗き込むような仕草をする。
そこには、もう自分の足で立っているクレアの姿があり、それを見たジルがびっくりして立ち上がった。
「クレア!どうしてこんな時に来ちゃったの!?」
「ジル…兄さんが電話に出なくて、それで…」
「なんてこと……あのバカ…」
まぁ誰だってそう言う反応になるだろう。
こちらの頭も痛くなってくるような話だ。
まさかの公務員にあるまじき報連相の欠如によって、可愛い妹がゾンビだらけの街に来る羽目になったわけなのだから、帰国次第自己批判をしてほしい。
さて、ここで人数が5人に増えたので、ほんの少しやれることは多くなったのだが、問題はこの後どうするかということなのだ。
最終的にはこの街からの脱出が目的であるとはいえ、その脱出手段をどう調達しようか。
一番いいのは、誰か知り合いが空域制限を突破してヘリで迎えにきてくれることなのだが、まあ期待薄だろう。
とりあえず、なんでも良いからまだ使えそうな脱出手段がないか、スターズオフィスにある無線機で先に脱出できた組に相談してみようということになった。
先ほどジルが我々以外の足音を聞いたらしいので、その第三者に気付かれないようになるべく足音を立てないで歩いていく。
スターズオフィスの前の廊下に着いた時に、どこから入り込んだのか1体のリッカーが床を歩いていたので、ゆっくりと足音を立てずに後ろまで歩いて行き、拳を窄めて思いっきり剥き出しの脳みそに貫手を突き込んでから引きちぎった。
小脳や脳幹を丸ごと引きちぎったので、ビクビクと痙攣してから静かになる。
ジルはだいぶ慣れてきたのか頭を押さえているくらいだが、レオンは明らかに引いているしクレアは目を閉じながらシェリーの目を手で覆っている。
酷いな、音を立てないのならこれが1番手っ取り早くて良いというのに。
そして、スターズオフィスの前に着いたので、扉を開けようとすると中から物音が聞こえた。
なにやら通信機を弄っているのか、ガチャガチャと機械を操作しているような音も聞こえてくる。
一体誰が何をしにきたのか…
まぁ、本人に直接聞けば良い。
ジルとレオンに私が先に入って対峙するので、突入した後に援護してくれと頼んでゆっくりとドアノブを回す。
スターズオフィスのドアの蝶番はよく油を差されているのか、軋みひとつ立てずに音も無くゆっくりと開いた。
通信機を触っていたのはどうやら女のようで、トレンチコートを着たボブカットの女がこちらに気付かずに操作をし続けている。
ユニティを抜いて、背中に銃口をゴリッと押し付けた。
「で、アンタ何者?」
「ッ!…驚いた、まだ生存者が居るなんて」
後ろからジルとレオンが突入してきて、こちらに拳銃を突き付ける。
「なるほど、1人じゃなかったのね」
「まぁね。それで、お宅は?」
「FBIよ。そっちを向いても?」
「FBI?たしか、連邦捜査官のだったかしら」
こちらに両手を上げたまま振り返ったFBIを名乗る女は、ゆっくりと懐からFBIの手帳を取り出した。
身分証の名前は、エイダ・ウォンと書いてある。
FBIのバッチも身分証も初めて見るので、それが本物かどうか私には判別付かない。
『アジア系か。そそるイイ女だが、こいつは危ない香りがプンプンするぜ』
『へぇ、ジョニーはそう見るんだ』
『女狐…いや雌豹って感じだ。下手打つと寝首を掻いてくるぜ、こう言う女はな。だが、こういうのをヒィヒィ言わせるのは楽しいぜ』
『最低ね。死んだら?』
『おいおい、忘れたのか?俺はもう死んでんだよ』
FBIのバッチと手帳を確認したジルとレオンはすぐに銃を下げて、こちらに近寄ってきた。
信頼するには少し早いと思うが、警察関係者にとっては我々よりもそのバッチの重みが違うのだろう。
2人が銃を下ろしたのに対して、私は政府機関なんぞは信用していないのですぐに銃を下さないのを見て、咳払いしてきた。
「もう良いかしら」
「いいえ、まだよ。アンタ今更この街で何をしているわけ?脱出出来なかったっていう言い訳は無しよ」
「…人を探しにきたのよ。私の捜査に必要な情報提供者なんだけど、ここに居るはずなのにどこにも見当たらない」
「へぇ、そいつの名前は?」
カチリとユニティのハンマーを起こす。
ダブルアクションなので、これでトリガーは更に軽くなった。
「V!もう良いんじゃない?」
私が連邦捜査官だったとしても本当に撃つのではないかと思い、ジルが私の手を掴んで下ろそうとするがびくともしない。
「ジル、黙ってて。ほら、早く言いなさい」
「……ベンよ。ベン・ベルドリッジ。ここの留置場にいるって連絡を受けたのに」
目的はベンか。
でも何処の誰が、ベンが留置場に入っていることをFBIにタレ込んだのか。
警察関係者にしか分からないはずなので、そこからのタレ込みは確かだろう。
まぁ、本人はもう居ないのでどうでも良いが。
「ベンならもうラクーンシティを脱出しているわよ」
「なんですって!?」
ジルがさっさとネタバラシしてしまったので、興が削がれてしまった。
構えていたユニティを下ろし、アホらしくなって来たので当初の予定通り通信機をつかおうとしたのだが、何故だか機械が応答しない。
このエイダとかいうFBIが壊したのだろうか。
軽く操作盤を手のひらで叩いてみるが、うんともすんとも言わなかった。
「…壊れてる。これは参ったわね」
「嘘でしょ?」
ジルもガチャガチャやるが、そもそも電源そのものが付いてない。
操作盤の下を覗き込んでみると、配線が纏めてぶった斬られており、中がめちゃくちゃにされてしまっていた。
なるほど、これなら操作したって意味がないわけだ。
基盤も壊れていそうなので、これでは修理は到底不可能だろう。
先に脱出したスターズやUBCSの仕業とは考えにくいし、これをやる意味が無いので、我々以外の誰かが破壊工作したことになるだろう。
だが、一体何のために?
これで先行脱出組に相談することも出来なくなったわけだが、よくよく考えるとこの街はアンブレラの為に整備拡張されて来た経緯がある。
T-ウィルスが流出した経緯は洋館事件が発端なのかもしれないが、この街の何処かにもアンブレラの研究施設があったっておかしくは無く、もしそこでもウィルス漏洩があったならば、水道水や街全体に急速に汚染が広がったのも説明が付く。
それにベンが教えてくれた通りなら、浄水場の更に地下に研究所があるかもしれない。
アンブレラの研究所なら、研究員の脱出手段1つや2つくらいあっても不思議ではない。
行ってみる価値はあるだろう。
「…ジル、ベンの言っていた事を覚えてる?」
「ベンの?ええっと……どのことかしら」
「浄水場の更に地下に、アンブレラの研究所があるかもしれないって話」
「確かに言っていたわね。でも、なんで研究所なんかに行く必要があるの?たぶん、外よりも危険なんじゃない?」
「いや、そこなら研究員の脱出手段が残っているんじゃないかと思って。こうしていたって、何も出来ないなら賭けても良いと思ったのよ」
ジルは納得がいったように頷く。
この街は既に死んでおり、軍隊によってゾンビや BOWの封じ込めも行われ始めている頃だろう。
私やナイトシティのコーポ連中だったら、ウィルスの漏洩が確認された時点で即座に熱核兵器をブチ込むのだが、それがまだ行われていないのは上層部が自国内に熱核兵器を使用することに踏ん切りがついていないだけだ。
いつ政府が決断してもおかしくはない。
ならば、なるべく早く可能性がある選択肢を選んで行動するしかない。
隣で大人しく聞いていたエイダも賛同し、この街に来たばかりの2人は私達に着いてくるほかなく、シェリーは子供なのでそもそも選択できない。
意思が半ば強制的に統一されたところで、どうやって浄水場に行くかという話になった。
スターズオフィスにあった街の地図をアルバートのものだったデスクの上に広げて、浄水場の位置を確認するとちょうど警察署裏通りの奥、つまりKENDOの更に先の方の地下にあるらしい。
場所がわかったのは良いが、次はどうやってそこに行くかという話になる。
もちろん、地上はゾンビやBOWがウヨウヨしており、更にはあの触手の大男も隠れ潜んでいるはずだ。
大変危険である。
となると、やはり下水道を通って浄水場に行くしかないことになるが、下水道にはヤツがいる。
ヤツにはそこそこお世話*1になったが、強い再生力を持つ触手の大男を相手にするよりはまだ倒しやすいに違いない。
「下水道を行くしかないか…」
「でも、どうやって下水道に入るつもり?」
エイダが腕を組んだまま問いかけてくる。
「いまKENDOの裏手で、下水道の更新工事をずっと続けていたんだ。そこからなら、足場も組んであって降りやすいし下水道も剥き出しだから、アクセスし易いはず」
「決定ね」
何故か仕切ってくるが、行かなきゃいけないことは変わりないので黙っておく。
沈黙は金とアラサカで習った。
面倒ごとはなるべく避けたい。
目標が決まったので、さっさと準備しなくてはいけない。
警戒しながら廊下に出る。
ジルが最後にスターズオフィスの扉を閉めた。
もうここに来ることは2度とないだろう。
きっと色々な思いもあったはずだが、私にはそれを推し量る事はできない。
KENDOへと移動する前に、なるべく残っている物資を持って行く為、まずはメインホールに全員で向かう。
廊下に転がっている脳みそだけを破壊されたリッカーを見て、エイダが興味深そうにしていたがそんな時間は無いので、さっさと移動する。
ちなみになんでこんなところにリッカーが居たのかというと、廊下の一番端の窓のところだけ打ちつけた板が地面に転がっており、誰かが板を外したところから侵入して来たようだ。
ガラスも床に散らばっている。
メインホールに残されていた僅かな弾薬をかき集めて、そばに置いてあったグリーンハーブやレッドハーブを調合して薬も作っておく。
私がやるよりも、ジルの調合は何倍も上手だったので、そちらは完全に任せる。
弾薬が集められていたテーブルの上にコルトSAAが置いてあって、それをクレアが手に取って興味深気に見ていた。
『ほう、なかなか良いエングレーブだな。これを施したやつは腕が相当良いぞ』
『所詮エングレーブはただのお飾り。何のタクティカルアドバンテージも無いわ。…だけどセンスは認める。ジャッキーなら喜んでたでしょうけどね』
『まったく、お前も素直じゃねえな』
「SAAはオススメしないわよ。リロードに隙がありすぎる。同じ45口径ならこっちを使った方が良いわ」
そう言ってクレアの手からSAAをそっと取り上げ、M1911を空いた手に乗せる。
M1911も大型拳銃なので、女子大生にはグリップが大きく握り難いかもしれないが、シングルアクションのリボルバーよりはマシかと思う。
「私もリボルバーを使って来たから、こっちの方が使い易いかなって思ったの」
「あぁ、確かS&W M649だったっけ。クリスが買ってあげたのって」
初めてクレアと知り合ったのは、去年私がKENDOに就職が決まったばっかりの頃で、クリスが大学生になったクレアに護身用の為に銃を購入しに来たのだ。
その頃の私は、現在流通している銃の種類や名前なんて詳しく知らなかったので、ロバートの横で接客の勉強していた。
平和だったあの頃が懐かしい。
「そうよ。9mmを撃てるようにカスタムしたやつ」
「ふむふむ、そしたら自分が使い易い方を使うといいよ。M1911も緊急用で持っていたって良いだろうし」
「うん、せっかくだからそうする」
残っていた.45ACPをマガジンに詰めるのを手伝ってあげて、それから25発だけあった.45ロングコルト弾を箱に入れて手渡す。
「あぁ、確かKENDOにM649のカスタムパーツがあったから、それを使えば.357マグナム弾も撃てるようになる。寄ったついでにチョチョイとやってあげるわ」
「V、ありがとう!」
クレアがはにかむ。
それだけで、その空間が華やかになったような気分に感じる。
流石は華の大学生だ。
そうやって各々が必要なものを準備していると、唐突に警察署の玄関扉が開いた。
全員の視線がそこに集まる。
ガチャリとドアノブを捻って随分窮屈そうに入って来たのは、これまた身の丈260cmほどのトレンチコートを着込み、頭には黒い中折れ帽を被った大男だった。
なんだ、また大男かと思いつつもその挙手挙動に目を光らせる。
その大男は、頭をぐるりと巡らして我々の人数を確認しているようだ。
私とジルは先ほどの触手野郎のことがあったので、デカいというだけで警戒対象になる。
この大男も、例に漏れず人間の頭ほどはある拳と丸太のような腕に太い足。
そこから放たれるパンチやキックは、きっと必殺級の威力を秘めているに違いない。
少しの間、立ち止まって我々のことを見回した後に、ジルの後ろに隠れていたシェリーの姿を認めた瞬間、ピタリと動きを止めてからズンズンとシェリーに向けて歩き始める。
「おい!止まれ!」
咄嗟にレオンが進路上に銃を構えて立ち塞がるが、全く意に介さずにその太い腕でレオンを払いのけた。
「うわっ!!」
そこまで力を入れていなさそうだが、ドンっと音と共にレオンがぶっ飛んで床に転がる。
これでもう敵確定だ。
目的はシェリーのようだが、連れ去るつもりなのかこの場で殺すつもりなのか、どちらにせよ好きにさせるつもりはない。
レオンが殴り飛ばされた時点で、エイダとジルが銃を抜いて大男に連続で発砲する。
胴体にいくら撃っても、このトレンチコートも防弾仕様のようで貫通する様子は無く、すぐに頭を撃つが中折れ帽が吹き飛ぶだけでなかなか怯まない。
このままだとジルもぶっ飛ばされてしまうので、ブルーファングを大男の顔面に向けて投擲する。
流石に質量の大きい刃物は困るのか、左手で顔面を庇ったので、走り寄って速度と体重を乗せた掌底を無防備な胸の中心に向けて放つ。
グシャともメキョともつかない音が鳴り、大男は口から血をゴボリと溢してその場に倒れ伏した。
「えっ?死んだ?」
あの触手野郎のしぶとさに比べたら、あまりにも呆気なさすぎて拍子抜けしてしまった。
うつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。
掌底一発で大男を殺害したのを見て、ジル以外の全員がドン引きしてしまう。
シェリーなんか、怖がってジルとクレアの影に入って私と目線すら合わなくなってしまった。
「…早いところ移動しましょう?そいつもいつ復活するか分からないから」
ジルがこちらを気遣うように、早急な移動を提案した。
大男が復活するかもしれないのは、私とジルの2人しか知らない。
「Vもその、子供が見てるわ」
ちょっと待ってほしい。
これ私が悪いの?
高評価、ご感想、お気に入り登録ありがとうございます!!
気付いたら評価バーが赤4つになっておりました!
引き続き、この作品をよろしくお引き立て下さいませm(_ _)m
と言う事で、主要メンバーは大体これで固まりました。
あとはキャリーをされる人が1人2人合流するかもしれません。(未定)
ちなみに、VはドッグタウンでのFIAの一件があるので、FBIという組織をこれっぽっちも信用してません。
掌底一発でKOされてしまったタイラント君カワイソウ…
でも奴にはまだ一段階変身を残している…
RE2におけるクレアの初期銃はSLS60ですが、他のも含めて全てモデル元の実銃の名前にしてます。
理由はその方が書き易いし、読者の方も詳細を調べ易いからなので、そこは気にしないでいただけると幸いです。
モチベーションになりますので、高評価、ご感想、お気に入り登録お待ちしております!!
前書きのセーブロード時のストーリーテキスト風怪英文書は
-
読んでるしいる
-
読んでるけどいらない
-
読んでないけどいる
-
読んでないけどいらない