Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】 作:持麻呂
どうにも釈然としない気持ちを抱えながら、警察署の裏門を通ってKENDOに向かう。
広場がヘリコプターの発着場として使われなくなった時に、裏通りにゾンビが入ってこないようにKENDOの扉を施錠していたので、ロバートから託された鍵を使って扉を開ける。
Bar Jackと同じで、もうこの店にも訪れることは無いだろうと思っていたのだが、案外早く戻って来てしまった。
銃や弾薬の大半が警察署に持ち出されてだいぶ寂しくなっている店内には、下水道工事現場か広場の方から来たゾンビが5体ほど入り込んでいたので、サイレンサー付きのユニティで脳天をぶち抜き静かにさせる。
あの優しく明るい親子との案外楽しかった日々を思い出して、その場所がゾンビに闊歩されていたことを考えると、柄にも無く感傷的な気分になってしまった。
全員店内に入ってから、再び入り口の鍵を閉める。
ほとんど店内の弾薬を持ち出したとは言っても、.357マグナム弾や.44マグナム弾、.454カスール弾に.50AE弾のように使える銃が限られていて高頻度に使わないであろう弾は持ち出していないので、それらはカスタムパーツなどと一緒にバックヤードに仕舞ったきりになっていた。
「じゃあ、すぐにカスタムしちゃいましょ。クレア、M649渡してちょうだい」
「はい」
あまり時間がないので、手早くカスタムしてしまおう。
箱に入ったM649の改造キットをバックヤードにあるラックから取り出して、ロバートが使用していたガンスミス用のテーブルに中身をあける。
M649自体は最初からステンレス製なので、.357マグナム弾の使用に耐えることができる。
ただし、シリンダーや銃身はそうでは無いので、ボアバレル*1やノンフルーテッドシリンダー*2、射撃の反動を受け止めやすくするラバーグリップに交換するだけなので、サンデヴィスタンを使用すれば20秒ほどで作業が完了する。
パパッと終わらせてバックヤードから出ると、レオンが隠しておいたデザートイーグルを見つけ出してポーズを決めていた。
警察官とは言え、新米警察官など軍事訓練を施された経験のある一般人とそう変わらないので、ソイツを使うにはちょっと荷が重いのではないかと思う。
.357モデルや.44モデルならまだ使い用があったのだが、.50AEなんて拳銃から撃つような弾じゃないし、反動が強過ぎて実用性がない。
的に当てるのだって大変なのだから。
レオン本人の見た目も良いので、カッコいいとシェリーに煽てられて調子に乗っているが、それにわざわざ水を刺すのもちょっと憚られる。
アホらしいが、そっと.50AEホローポイント弾の入った弾薬箱を2つバックヤードから取り出して、無言でカウンターに置いておく。
本当に持っていくかどうかは本人に任せるが、重いだけの鈍器にしかならないんじゃないかなと私は思う。
クレアに組み上がったM649を渡して、追加の.357マグナム弾も一緒に手渡す。
たまたまあったベトナム戦争時のM1956ピストルベルトとサスペンダー、フィールドパックがついた個人装具を装着させてあげた。
フィールドパックの中には、装填済みのスピードローダーが4個入っている。
すぐに使わない銃をここに入れておいてもいいだろう。
みんなそれぞれに、使いにくいので残していった高威力の銃を勝手に持ち出していたので、私も仲間外れ感を払拭するために、バックヤードから一丁の古い銃を持っていくことにした。
弾は少ないが、威力は折り紙付きだ。
その威力は、.454カスール弾に匹敵する。
いそいそとそれを所持品の中に仕舞ってから、KENDOと本当にさようならをした。
剥き出しの下水道にアクセスするために、フェンスにしがみついていたゾンビの脳天を撃ち抜いてからフェンスを開けて、慎重に足場を降りる。
ちなみに、滑落が怖いのでシェリーは私が背負っている。
頭の中にいるどこかのクズさんとは違って若いのにレオンは紳士的で、先に進んで段差の際にみんなに手を差し伸べていた。
『はぁ、顔もいいし気が利くわねぇ』
『良いか?若い男の親切には、下心が隠されてんだぜ』
『ジョニー、アンタは一年中下心塗れじゃない』
『何言ってんだV。男なんざ、幾つになっても股間で思考している生きモンだろうが。若けりゃワンチャンヤレるかしか考えてねぇよ』
『それはアンタだけでしょ』
『ハッ、どうだかな』
剥き出しの下水道に入ったので、皆が片手にライトを持って足元を照らしながら進む。
私はここに先住民がいることを知っているので、足にある振動感知センサーの感度を最大にする。
ヤツは地面にいる時は分かりやすいが、水中にいる時はかなり静かだ。
いきなりパクッとやられると、私もとても面倒なことになるので、用心するに越したことはない。
暫く歩いていくと、センサーに引っ掛かった。
こちらに向かって歩いてくるようだ。
幸い、ここはまだ鉄格子や分厚いベトンとレンガの壁で覆われていて、ドアも人間しか通れないサイズなので安全ではあるが、下水本道に出るとそうではない。
みんなも、こちらに近づいてくる足音に気がついたようで、足を止めた。
下水本道へと接続される扉の前を大きな体が通り過ぎる。
「ウソ……噂は本当だったの」
「紹介しよう。私の大きなお友達だよ。名前はジョニー」
『おい、ふざけんな』
「ジョニーって…V、アレの存在を知っていたの?」
「まぁね。何度かお世話にもなったよ」
「お世話ってどういう意味…」
ジルのツッコミを華麗にスルーして、巨大ワニが通り過ぎたところで扉を開ける。
彼の身体の大きさに対して、下水本道は一杯一杯なのでUターン出来ないのだ。
なので、いつも彼は下水道の中を周遊している。
「さ、通り過ぎた今なら安全よ。行きましょ」
扉を開けて行こうとするのだが、誰1人として付いてこようとしない。
なぜだ。
「ねぇ、ジルとか言ったわよね。彼女の言ってること信用できるのかしら」
「……ウソは、言ったことないわね。本当に一般人なのか分からないくらい優秀ですし」
「なんだかハッキリしないわね。仕方ない、ここしか道が無いんじゃ行くしかないわね」
行きましょうとレオンの腕を掴んで、エイダがレオンを先頭にするようにしながら進み始める。
何故か先頭に立たされてしまったレオンは、おっかなびっくりした様子で前に進み始めた。
クレアはエイダに引っ張られて行ったレオンを見て、少しムッとした顔をしてから後に続く。
「お先にどうぞ?おジル様」
「ちょっと、なんか卑猥に聞こえるから、おジルはやめて!」
ぷりぷりと怒り出すジルの背中を押して、後手に扉を閉める。
これから進む下水本道には、天井付近に点検作業用通路も併設されており、私がいつも死体を処理していた路地裏のマンホールから出る下水道とは違って、靴も汚れずに大変歩きやすい。
我々が歩く点検作業用通路まで上半身を逸らして食い付いて来る気は無いのか、ゴミだらけの汚水の中を巨大ワニは悠々と泳いで下を通過して行く。
だが、黄色く光る血走った目玉はしっかりとこちらを凝視しており、隙を見せたら金属製の通路ごと食い千切ろうとして来るに違いない。
襲ってこないのであれば、こちらからわざわざ攻撃する必要もないので、スルーして先を進み作業用エレベーターに乗り込む。
女5人に男1人なので、そこまで大きくないエレベーターは少し窮屈だ。
レオンはクレアとエイダにくっ付かれて少し顔を赤くしているが、誰かさんと違って両手を上に挙げてなるべく2人に触らないように気をつけている。
紳士ポイントが高い。
エイダはどうか知らないが、クレアは少しイタズラっぽそうな顔をしてレオンの胸板を突いている。
こんな時だが、年頃の女の子の顔をしている姿を見ると微笑ましい。
シェリーはエレベーターが下に降りて行くにつれて、血の気が引いて顔色がだんだんと青くなっているように見えるが、何か関係があるのだろうか。
バルブハンドルが付いた太いパイプや地下敷設ケーブルの配管が通っている部屋を通り抜けると、別のエリアに行くための廊下に出る。
そこには地面に倒れて死んでいるゾンビと、それを跪いて観察している白衣の女がいた。
「ウィリアムがやったみたいね…」
白衣の女が突然そんなことを言い始める。
私とレオンを押し除けて、エイダが銃を構えながら前に出た。
「アネット・バーキンよ。逃さないわ」
「もしかして、彼女がアンブレラの研究員?」
ジルも拳銃を構えながら、エイダの横に並ぶ。
ジルにとっては、アンブレラの研究員というだけで犯罪者だ。
自分に銃が二丁も向けられているのに、アネットと呼ばれた研究員は余裕そうな雰囲気を隠さず立ち上がった。
「もう時間がない。早く処分しないと…」
「動かないで!RPDよ。色々と聞きたいことがあるわ」
「RPD?私はあなた達に用は無いわ」
ジルのことを鼻で笑った後に、徐に死んでいるゾンビに火をつける。
「私にはあるわ。G-ウィルスを出しなさい」
「それは無理ね」
アネットはそう言ってからこっちをチラリと見て驚愕した顔をしたあと、手前にいるジルとエイダに向けて突然銃撃を加えてパッと走り出した。
幸い、ジルとエイダに弾が当たることはなかったものの、流れ弾がこちらにも飛んできてクレアとシェリーに当たりそうだったので、手の平でキャッチする。
アネット・バーキン、とんでもない女だ。
追いかけて行ったジルとエイダが、曲がり角のところで銃撃を加えている。
「ママ………」
シェリーが小さくボソリと呟いた声を聞いて、思わず振り返る。
「シェリー、フルネームを教えてちょうだい?」
「…シェリー・バーキン」
消え入りそうな声で、シェリーがそう言ったのを聞き取った。
「そう。大丈夫よ。助けてあげられたら、お母さんも一緒に逃げましょうか」
「うん…」
「ちなみにお父さんは?」
「…分からない」
まあこの混乱だ。
母親が今に至るまで、これから行くであろう研究所や下水施設で生き延びていた方が奇跡みたいなものだろう。
父親は一緒に居なかったのを見るに、生存は絶望的と見た。
返事の代わりにシェリーの頭を撫でる。
シェリーから話を聞いている間に、レオンはエイダを庇ってアネットに撃たれるし、ジルはブチ切れて重厚な隔壁を破壊しようとするので、とりあえず宥めて後を追いかけることにする。
ジルが拳で隔壁を叩いて怒っている横で、エイダとクレアがレオンの手当てをした。
傷は致命傷を避けているようなので、その内起きるだろう。
そしてなんと、この世界でも既にモーターなどを遠隔で暴走させるような道具が開発されているようで、エイダがそれを使って空調ファンを破壊して先に行ってしまった。
流石にシェリーと撃たれたレオンをここに置き去りにして、我々もエイダのあとを追いかけるなんてことは出来ないので、アネットが逃げて行った隔壁をクイックハックして開く。
どうやらここにある装置の幾つかは、物理スイッチだけでなくリモコンを使っても開閉操作を行っていたらしいので、私のクイックハックも活躍できそうだ。
まだ気を失っているレオンを私が背負って、ジルを先頭に通路を進んでいく。
たまたま通路でアンブレラ製だが、広く使われている救急スプレーを拾ったので、それを追加でレオンにかけておいた。
本来なら、バウンスバックでも使用すればあっという間に完治するのだが、なるべくジルやエイダのような政府機関系の人間には使用したところを見せたくないというのが正直なところだ。
2人がいなければ、さっさと使っている。
アネットが用心深いのか、隔壁がいくつも閉まっているので到達までに時間が掛かってしまう。
こういう扉は大重量なので、閉まるのは早くても開くのは遅いのだ。
ようやく半分のところまで来れたと思っていたら、どこからかシェリーの名前を呼ぶ声が聞こえて来た気がした。
遠いところから絶叫しているような感じで、何か金属が擦れるような音と共に、徐々にこちらに近づいて来ているらしい。
「SHEEEEEERRRRRYYYYYYYYY!!!!!」
思わずジルと顔を見合わせる。
シェリーの名前を呼んでいるのは聞き間違えではなかった。
明らかに狂乱しているような男性の声で、とても正常な状態だとは思えない。
ジルとクレアに、シェリーを連れて先に行くように指示する。
どうせ碌でもないことになるのは目に見えているので、対処するところを見られてドン引きされるよりもサッサと前に進んでもらった方がいい。
「SHEEEEEERRRRRYYYYYYYYY!!!!!」
もう少しで声の主が現れそうなのだが、激しい金属音と破壊音を伴っており、なにやら誰かと争っているような雰囲気が感じられた。
ゾンビとでも格闘しているのかと思ったのだが、それにしては随分と肉体と肉体をぶつけ合わせるような、重い質感が感じられる音だ。
「GRRRRAAAAAAAA!!!!!」
シェリーを呼ぶ声とは別に、聞き覚えのある声も一緒に聞こえて来た。
思わず溜息が出る。
『随分としつこいストーカーだな。あんだけボコられたクセに、まだ追い掛けてくるなんてよ』
「冗談じゃないわよ。今度こそ徹底的に痛め付けるわ」
所持品からエラッタを取り出す。
薄暗い通路に、紅く光る刀身が浮かび上がった。
いくらあの触手野郎とはいってもタンパク質の塊なのは変わらないので、高温で焼き切ってしまえば変質して元には戻らないはず。
2度と追い掛けられないような身体にしてやる。
これ以上先に行かれないように、一度隔壁を閉じた。
それからよく分からない大型の装置の影に隠れて、ジッとこちらに向かってくる連中を待つ。
「S.T.A.R.S.!!!!!」
「SHEEEEEERRRRRYYYYYYYYY!!!!!」
デカい連中が掴み合い一塊になって、お互いのことを発達した丸太のような腕で殴り合いながら、目の前の通路に転がってきた。
端的に言って、地獄絵図だ。
いや、泥試合というか出来の悪いプロレスを見ているようかもしれない。
片っ方は上半身に纏っていた黒い防弾繊維が無くなり、ウネウネと紫色の触手をたくさん生やしている触手野郎で、もう片方は右腕が異常に発達しておりその右肩に巨大な目玉を生やした男。
目玉男がマウントを取り、右腕に比べるとだいぶ貧弱に見える左腕で地面に押さえつけ、右腕に持った太い鉄パイプでやたらめったらと触手野郎を連続でぶっ叩く。
触手野郎の方は、片腕で頭部への打撃を防ぎながら肩や腕から生えている触手で目玉男の身体を何度も突き刺す。
お互いに紫や赤色の血を撒き散らしながら、目の前の敵を殺そうと死に物狂いだ。
そこままどちらかがくたばるまで見ていてもいいのだが、目玉男も再生能力を持っているようなので、決着が付くまで時間が掛かりそうだ。
そこまで大人しく待っているつもりは無いので、エラッタを持ったまま暗がりからそっと近付く。
組み合って、今度は上になっていた触手野郎を背中から心臓目掛けて思いっきり貫く。
「UBOOOOOOWWWAAAAA!!!?!?!」
刀身の熱で貫かれたところの組織が、急速に焼灼されて嫌な匂いが立ち上った。
痛みで暴れ回る更に後ろから、グッと体重を掛けて下にいる目玉男も狙う。
残念ながら左手で掴まれてしまい、目玉男の身体は貫けなかったものの、手首を返して引くことで掴んでいる左指と左手首を巻き込み切断した。
そのまま前蹴りでエラッタを引き抜き、触手野郎の首を後ろから切り落とさんと狙うが、痙攣していた触手が刀身に絡み付いて来たせいで切断することが叶わなかった。
ビクビクと触手野郎の身体が痙攣したと思ったら、突然質量保存の法則を無視して身体が急速に大きくなっていく。
『コイツ、まだデカくなりやがるのか!?』
「なら!」
サンデヴィスタンを使って触手野郎の背中に駆け寄り、焼けて再生が追いついておらず、背中に空いたままになっている穴に貫手を放った。
高評価、お気に入り登録、ご感想、誤字脱字訂正ありがとうございます!!
評価バーが遂に5つになりました!
皆様のおかげです!
ありがとうございます!!(`_´)ゞ
引き続き、この小説をよろしくお願いしますm(_ _)m
なんとか書けましたので、更新になります。
ネメシス君とウィリアム君の夢の泥試合対決、ファイッ!!
決着は横入りにより試合持ち越しです。
レオンに少し気がありそうなクレアですが、それをクリスが見たらレオンの命が危険で危ない!
ちなみに、今作品におけるケビンを除くOBの主人公達は、全員J’s Barに居たところをゾンビに襲撃を受けており、タナトスを倒したりデイライトを作ろうとしたりと裏で奮闘しています。
高評価、ご感想お待ちしております!!
前書きのセーブロード時のストーリーテキスト風怪英文書は
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