Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】 作:持麻呂
ぞぶりと貫手が触手野郎の背中に突き立つ。
ゴリラアームに搭載されている感触センサーが、怖気の走るような気色の悪い感触を伝えてくるのを我慢して、暴れ回る身体に密着しながら御目当ての物を触覚頼りに体の中を探り当てる。
人間に限らず、生物の大半は脳を始めとした神経の塊から発せられる、微弱な電気信号によって活動している。
神経回路は謂わば、とても繊細だがロスのとても少ない電気コードと似たような物である。
人間が感電すると死んでしまうのは、心臓を動かす電気信号よりも大きい電流によって活動を阻害され心室細動を起こしたり心停止したりするだけでなく、体内を高熱で焼かれるせいであったり、神経の塊に強い電流が流れることによって神経が焼き切れたりしてしまうからだ。
私が探り当てたのは、脳みそという神経塊に直通している最も太い神経。
脊髄を収めている脊椎だ。
急速に身体が大きくなっている中で、背骨も急速に発達していて棘突起が人体を突き抜けてしまっており、片手で掴むのが大変になっているが無理矢理握力で骨を砕きながら脊髄を掴む。
そこで、前もってゴリラアームに装着しておいたナックル*1が火を吹いた。
今回装着しているのはナックル・電気ダメージだ。
本来であれば殴りながら相手に電気ダメージを与えられるのだが、それを全てブラックマーケットのバッテリー*2に全て発生するはずの電気を溜めておいたので、それを一気に脊髄に対して解放した。
途轍もない電流が一気に体内で解放されて、激しく触手野郎の身体が痙攣して直ぐに硬直する。
同時に、人肉が焼けるような臭い匂いとオゾンのような臭いが漂って来た。
私もリアルスキンが強い絶縁体でなければ、密着している関係上一緒に感電していたであろう。
なぜそう言い切れるかというと、触手野郎の下敷きになっている目玉男も激しく感電して痙攣しており、右肩にある巨大な目玉が電流による熱で白濁して、今にも蕩けそうになっているからだ。
おめでとう、世界で1番食べたく無い目玉焼きNo. 1にランクインだぞ。
溜め込んだ電気を全て放出し終わると、骨格が四足歩行になり掛けてた触手野郎の成長がストップし、身体から生えていた触手も力無く地面に横たわる。
筋肉が硬直して、触手野郎自体はほんの数秒姿勢を保っていたが、そのままゆっくりと前のめりで崩れ落ちた。
全身の神経系が焼き切れただろうし、シナプスもズタズタで脳みそは熱で焼きプリンのようになってしまったはずだ。
もう復活はしないだろう。
目玉男も体のあちこちに突き刺さった触手と粘液が通電の補助になったのか、こちらも触手野郎の下敷きになりながらピクリとも動かなかった。
とりあえず死亡確認のために、目玉男の心臓がありそうな位置にエラッタを捩じ込んでおく。*3
ビクンと一度だけ身体が跳ねたが、たぶん脊髄反射のような物だろう。
気にせずグリグリと捻った後に引き抜いて、エラッタを所持品にしまう。
一瞬首も落とした方が良いかと思ったが、そこまでしなくても大丈夫に違いない。
一度閉めた隔壁をクイックハックで開ける。
ゆっくりと開いている間に、目玉男のことを観察する。
触手野郎はきっとアンブレラの造ったBOWに違いないが、この目玉男の姿は今まで現れたT-ウィルス系のBOWの姿とは少し系統がちがう。
それに、白衣の残骸のようなものをマシな方の左側に纏っているので、アンブレラの研究員なのは間違い無いだろう。
ポケットの一つが無事そうなので、何か持っていないかと弄るとリストバンド型の認証装置が見つかった。
それをスキャンしてみると、ここの施設全体のセキュリティ権限を持っているようで、持ち主の名前はウィリアム・バーキン。
どうやら、シェリーの父親だったモノのようだ。
エイダがアネットと邂逅したときに口走っていた、G-ウィルスという言葉も気になる。
もしかしたら、彼はそのG-ウィルスとやらに感染してしまったのかもしれない。
もしそうなら、アンブレラはT-ウィルスとはまた違う変異ウィルスを研究していたと言うことになるが、それの特性がこれなのだろうか。
それにしても、肩から新しい巨大目玉が生えてくるくらいなら、そう大したことなさそうな気がする。
「どう思う?ジョニー」
『あぁん?どうもこうも、これで終わりなんてことは無いんじゃねぇか?』
「あら、どうしてよ」
『2度あることは3度だってあんだろ。まぁ、勘だがな。それより、気付いてんだろ?』
「ふぅん……そうね」
そうやってジョニーと会話をして相手を油断させ、先程から覗き見している相手に向かってブルーファングをノーモーションで投げつける。
ゴリラアームの膂力で投げ付けられたブルーファングは、空を切り裂き向こう側の壁に突き立つ。
ガシャン!と途中で何かを破壊した音をさせていたので、相手の持ち物を何か壊せたようだ。
「覗きは感心しないわね」
そちらに向かって歩いて行き、パッと壁の向こう側を覗くとそこにはもう誰もいなかったが、代わりに地面にはビデオカメラと言うテープ式の映像記録装置の残骸が落ちていた。
ブルーファングが途中で破壊したのは、どうやら我々の戦闘を録画していたこのビデオカメラだったらしい。
バラバラになった残骸の中から、記録用の磁気テープのカセットを拾い上げる。
ビデオカメラが粉々になったので、奇跡的にガワが無事でも中身が無事か分からない。
だが、後々何かに使えるかもしれないと思い所持品に仕舞い込んだ。
また、ビデオカメラの破片に微かに血液が付着していたので、大きくはないが少しだけ手傷を負わせた可能性がある。
今から追いかけても良いが、ジョニーが2度あることは3度あると言っていたので、この2体のバケモノの死体をそのままに追い掛けるのも嫌だ。
それに怪我をしたレオンのこともあるので、CHAR焼夷グレネードを3つ取り出して重なり合うように倒れているバケモノ2体に投げ付けて燃やす。
こんなチンケな焼夷グレネードで燃え尽きるわけ無いが、気休めくらいにはなるだろう。
3つが一気に発火したので、有毒なガスやウィルスが巻き上げられそうと思い、さっさと隔壁を閉めてジル達を追いかけた。
もし万が一、殺した2体が復活した時のために再度隔壁を閉じながら進んでいくと、やっとジル達に追いついた。
どうやら私が居なかったので、その先の隔壁を開けられずに立ち往生していたようだ。
撃たれて気絶していたレオンも既に起き上がっていたが、傷がかなり痛むようで片側をクレアに支えられながらもう片方の腕で壁に寄り掛かって立っていた。
ジルは腕を組んだまま隔壁前で立っており、険しい顔をしながらイライラとしたように指先で二の腕をトントンと叩いている。
ピリピリとしたものを感じているのか、シェリーはジルの後ろからクレアとレオンの後ろに移動しており、2人に張り付くようにして隠れていた。
追いついた私の姿にいち早く気付いたのはシェリーで、あっ!と声を出したことでみんなが私に気付く。
「待たせたわね。草臥れたわ」
「よかった!凄い音がしていたから、心配していたのよ。V、貴女がやられてしまったら、私たちもここに閉じ込められてしまうところだったし…」
この隔壁は内側からはスイッチで開けられるが、外に奴ら2体がいた場合は開けるに開けられず、袋の鼠になってしまうところだったろう。
まぁ、あの程度なら万に一つもそんなことにはならないが。
「心配させたわね。さ、次に行きましょうか。とその前に」
所持品の中からジェット*4を取り出してレオンの腕に押し当て、中身を注射する。
「ウッ!…ふぅ、身体が軽くなった?」
ブルリとレオンが震えた後、少しして急に元気になった。
やっぱり中身は碌なものじゃなさそうだ。
一回の使用で中毒にはならないだろうが、連続して使用したらどうなるかは大体お察しである。
特別配合のスーパージェットを使用したソウル*5は、これよりもっとヤバそうなもの打ち込まれて、よくその後もピンピンしていたと思う。
撃たれた肩を回して、痛みが全然感じないのを不思議そうにしている。
「ちょっと、アレ違法薬物じゃないでしょうね…」
「いや?違法ではないよ」
そもそも、法律が追い付いてないから合法だ。
「そうなの…?なら良いけど」
レオンも元気?になったところで、推定最後の隔壁を解放する。
そこは廃棄物処理施設の制御室だったようで、ちょうどエイダが可動式の連絡橋から、アネットの操作する鉄塊によって弾かれたところだった。
エイダはギリギリ手摺りに捕まっていたが、その手摺りも連絡橋から外れてゴミ溜めへと落下して行く。
「あらら。レオンはそこから下に回れるだろうから、エイダを回収して来て」
「分かった!」
救急スプレーと綺麗な包帯、RPDの無線機を投げ渡して、ゴミ溜めに通じていそうな扉からレオンを救援に向かわせる。
アネットは、まさかこのタイミングで我々が入ってくるとは思っていなかったのか、ジルに銃を突き付けられて下手に動けなくなっていた。
「もう逃げ場は無いわ。観念しなさい」
「ここに居たら、直にウィリアムが来てしまう。早く逃げた方が身のためよ」
ジルの銃口を見ながら、アネットが両手を挙げてこちらに向き直る。
「ああ、彼ならもう来ないわよ。気持ちの悪い触手野郎と一緒に、仲良くオネンネしてる」
「まさかウィリアムが……いえ、そんなはずない」
「身体の中から電気に焼かれたとしても?」
ウィルスで変異したと言っても、所詮は肉に依存した生物なのだから、身体の中から電流で焼かれたらまず助からない。
「G-ウィルスの真価を知らないからよ」
「さっきから言っているG-ウィルスについて教えなさい!」
ジルに銃を突き付けられたくらいでは動揺していないが、ジルやクレア、シェリーから見えない後ろの死角から私がユニティをシェリーに向ける仕草をすると、アネットは観念したように話し始めた。
「G-ウィルスは、私と夫のウィリアムが開発した、T-ウィルスを超える新しいウィルス兵器。その特徴は、ただひたすらに感染した生物を変異させ続けること」
「変異させ続けるって…最後はどうなるのよ」
「分からない」
「分からないですって?!」
「生物に突然変異を繰り返させて、外敵や環境に適応できるように進化し続けると言う特性は分かってる。だけど、その進化し続けた先はどうなる?もし研究所の設備で対処しきれなかったときは?我々は研究者だけど、自分達の身が危険に晒されるまでは実験を続けられない」
「自分勝手ね」
ジルが吐き捨てるように言う。
「そうね。でも、死んだら研究が続けられない。そうでしょう?」
アネットの言うことも一理ある。
ミイラ取りがミイラになっては、その先には続かないからだ。
それに、包丁を作る者は包丁を使う者のことまでは責任を持てない。
この使う者というのは、アンブレラ社のことだ。
まぁ、コイツらはBOWやウィルス研究の時点で黒を通り越してブラックホールなので、そのカルマは決して許されるものではないが…
「我々の研究は上層部から危険視されていた。当然の話ね…最終的にどこまで進化が行き着くのか誰にも分からない。ウィリアムが狂って、途中で被験体の処理をしないで実験を継続したら?研究段階の時点で、G-ウィルスの研究は凍結命令が出された。そんなものじゃ、夫のウィリアムは止まるような人間ではないから、娘を連れてアークレイ山地の研究所からここに来たわけだけど」
「洋館事件…」
「そうよ、スターズ隊員のジル・バレンタイン。あの山の中の研究所は、元々実験体や薬品、失敗作の処理や管理が杜撰だった。我々研究員だって、何度か施設管理者にそれを指摘したけど改善はされなかった。いつああなったとしても、不思議ではなかったわね」
「で、その次はこの街ってこと…!!冗談じゃないわ!!」
ジルが激昂して、拳銃を握ったままアネットに詰め寄り、彼女の顎下に銃口を突きつける。
かなりの力で押し付けられているのか、アネットの顔が痛みに歪んだ。
「この街のこれは事故よ。凍結命令を無視して完成したG-ウィルスを上層部は欲しがった。それで、夫のところに特殊部隊を派遣して来た。もちろん、夫は抵抗して蜂の巣よ」
「あぁ、合点がいったわ。それで彼は自分にG-ウィルスを打ったのね。取られるくらいならいっそと…」
「そうね。私が銃声を聞いて駆けつけた時には、彼は既に自分にG-ウィルスを投与した後だった。彼は理性を失う前に、私に娘をこの研究所から逃すように言って来たわ」
「なるほどね」
思わずシェリーの後頭部を見る。
だが、ここからシェリーを逃すように言ったのに、何故変異した彼はシェリーを求めて叫び続けながら徘徊しているのだろうか。
「アイアンズを頼って娘を送ったは良いものの、今月の初めには行方不明になってたんですってね。散々金の無心をして来たのに、肝心な時に役に立たないクズね」
「まさか…貴女の娘って、シェリー…?だから署長室に1人で…」
ハッとジルがこちらを振り返った瞬間、アネットは隠し持っていた拳銃を抜いてジルの腕を後ろに捻りあげる。
これはまたなかなか、研究員にしては大した戦闘技能を持っているらしい。
まぁ驚くほどのことではないだろう。
ゾンビやバケモノと化した夫が徘徊するこの地下施設で、少なくとも数日間は1人で生き延びていたのだから、何かしらそういった技能を持っていたとしてもなんら不思議ではない。
これは完全にジルの不手際だ。
「そこを退きなさい。さもないと、バレンタインの命は無いわ」
「それは困ったわね。…これでお相子かしら」
シェリーの肩に手を置いて、後頭部ギリギリにユニティを構える。
シェリーには後ろを振り返らないように、振り返りそうになったら頭を掴んで前を向かせた。
「V!まだ子供よ!」
クレアが苦言を呈して来るが、本当に撃つ気なんて無いから無視する。
こちらは元コーポの諜報部だったのだ。
ポーカーフェイスでの脅しなど日常茶飯事。
サイバーパンクになってからも、それなりに活用する機会はあった。
さあ、アネットはどうする?
私個人としては、アネットがここで逃げ出そうとどうでも良い。
生きていようが死のうが、私としては関係のない話だ。
それに、T-ウィルスにはワクチンがあるが、G-ウィルスの感染にもワクチンが作れるのかどうかも聞き出さなくてはならない。
もっとも、ウィリアム・バーキンが究極のウィルスにはワクチンなんて必要ないとか言い出していなければの話ではあるが…
「アネット、G-ウィルスの対抗手段、つまりワクチンの作り方を教えてくれれば逃げても良い」
「…言うと思う?」
「必ず言うわね。それに、教えておいてくれたら、もしアイツがアレで死んでなかったとしても、また私が始末をしたって良い」
「………」
1秒、2秒と時間が過ぎて行く。
緊迫した空気の中、アネットがハァと息を短く吐き出した。
「この先から、アンブレラの地下研究所NESTに入れる。下層にある研究室に、シェリーのネックレスを嵌める装置があって、その中にG-ウィルスのワクチン《DEVIL》がある」
「
文字通り、バケモノの巣になっていそうだ。
とりあえず聞きたいことは聞けたので、こちらが先にシェリーの後頭部から銃を引く。
顎でアネットに、レオンがエイダを救援しに行った扉を指して、早く行くように指し示す。
アネットはこちらを警戒したまま扉の前まで行き、最後にジルをこちらに突き飛ばしてから走り去っていった。
シェリーは、逃げて行く母親に向かって手を伸ばしたが、伸ばし切る前に止めて弱々しく手を下ろした。
私は思いっきり突き飛ばされて転びそうになるジルを抱き留めながら、シェリーと話した母親もなるべく助けるという話の難易度に、先が思いやられそうになる。
まぁ、こればっかりはなるようにしかならないだろう。
高評価、ご感想、お気に入り登録ありがとうございます!!
更新の励みになっておりますm(_ _)m
誤字報告も助かっております!!
ゴリラアーム、ゴリラアームは全てを解決する!!
俺らはもちろん抵抗するで、拳で…を地で行く女、V!
今回もアッサリやられるネメシスとウィリアムに涙を禁じ得ません。
ところで、NE-αとGって実験途中である共通点があるんですよね。
経由地点と言った方が良いか…。
つまり、本来であれば(身体の)相性良さそうですよね()
原作でもリメイクでも、アネットはどうやって地下施設内で数日間生き延びていたんでしょうかね。
持ち物もカプセルシューターとハンドガンくらいしか持ってないのに…
戦闘力が1〜2ニコライくらいある説推してます。
前書きのセーブロード時のストーリーテキスト風怪英文書は
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読んでるしいる
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読んでるけどいらない
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読んでないけどいる
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読んでないけどいらない