Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】 作:持麻呂
FOXを連れてジル達と合流するべく、電源が復旧してロックを解除出来るようになった廊下を駆け抜けて、道中のリッカーやなり損ない、ゾンビを肉塊に変えながら橋まで到達した。
紫色の体液を浴びたレオンをエイダが介抱しており、その奥に3人が倒れている。
レオンはアネットから受けた銃傷以外は特に怪我をしておらず、ただ体液を浴びただけのようなので大丈夫そうだ。
まずは手前のジルを確認すると、肩に骨のような硬いもので出来た棘が刺さっていて、その棘自体も紫色の粘液で覆われており、明らかに高汚染されているのが分かる。
そこまで時間が経っていないはずだが、既に変異が始まっており、苦痛に歪んでいるジルの顔にドス黒い血管が浮き上がっていた。
このままだと、ジルはゾンビに変異してしまうだろう。
幸い、ラクーン総合病院のリンダからパクってきたワクチンがあるので、棘を慎重に引き抜いてからジルに注射する。
紫色に発光している怪しげだが効能の確かなワクチンが体内に注入されて行くに連れて、ジルの顔に浮き出ていた血管も消えていく。
苦悶の表情も若干穏やかになった。
それからシェリーに駆け寄って様子を見ると、何かを撃ち込まれた腹部を中心に、G変異体の表皮のようなボコボコとした血管のような物が浮き出ていて、それが脈動しながら少しずつシェリーの正常な組織を侵蝕しているようだ。
何かウィルスだけじゃ無い気がする。
早くG-ウィルスのワクチンを投与しないといけないだろう。
他に誰も居ないならバウンスバックを使っても良いだろうが、FOXやエイダの目がある。
クレアは背中を強く打って気絶しているだけに見えるが、頭を強く打ってないといいのだが…
一応顔を軽く叩くと、呻き声を出すので今のところ脳に異常は出ていない。
「レオン!クレアとジルをエイダと2人で宿直室に連れて行って!FOXはこの場で警戒!」
「わ、分かった!エイダ、手伝ってくれ!」
「…仕方ないわね」
ジルとクレアを引きずって行く2人を守るように、FOXがマルティニ・ヘンリーライフルを構えて警戒している。
貸し出したヌエもすぐ抜きやすいように、ホルスターには軽く差しているようだ。
私は息の荒いシェリーを背負って、先程は行けなかったセキュリティレベルⅢの橋を展開させる。
この先にきっと、G-ウィルスのワクチンがあるに違いない。
「助けてあげるわよ。必ずね」
シェリーが背中で小さく頷いたような気がした。
レベルⅢの橋の先の扉を開けて中に入ると、真っ暗だった廊下に自動で照明が点灯する。
入ってすぐの床に、大型獣の爪のような鋭利な物で切り裂かれて死んでいるUSSの死体が転がっており、足元にはビデオテープが落ちていた。
とりあえず拾って先に進むと、その先の部屋は真っ暗で壁には電圧の変調装置のような機械が埋まっている。
なんでこんな意味不明な作りをしているのか分からないが、このギミックをクリアしないと隔壁のロックが解除されないので、仕方なく変調装置を壁から取り外して摘みを回す。
「クソッ、こんな意味不明なことをしている場合じゃないのに」
『バウンスバックじゃ治んねえのかよ』
「駄目ね。体内に何か埋め込まれているのが悪さをしているから、ナノマシンだと異物までは排除できない。イタチごっこになって、ナノマシンの活動限界が来ておしまいよ」
『厄介なバケモノを作り出したな。バーキンって野郎は』
「本当よね。挙句に自分の娘をこんな風にしちゃうんだから!」
変調装置に表示されている通りに摘みを回して、電圧の周波数のようなものを揃える。
それを壁の配電盤のような装置に嵌め込むことによって、部屋の電源が入り照明が点灯して、隔壁の認証装置も起動する。
変調装置の隣にビデオデッキが有ったが、今見ても仕方がないのでスルーして先を急いだ。
MRIのような医療装置の前を通り過ぎて、その先の広い空間もダッシュで駆け抜ける。
最後の扉は何故か電気が通電していないようで、ロックが解除出来なかった。
後ろを振り返って、誰も見ていないことを確認してから、床にシェリーをゆっくりと降ろす。
この扉は無理矢理こじ開けるしか無さそうだ。
思いっきり扉の合わせ目に貫手を叩き込み、ひしゃげさせて指が入るほどの隙間を作り出した。
それから、扉の縁を掴んで両腕に力を込める。
前腕部のパーツが展開してゴリラアームのパワーが全開になり、扉が変形しながらも少しずつ開いて行く。
聞き分けが悪い扉なので、最後は縁がグシャグシャになりながらも20秒ほど掛けて、人間が2人やっと通れるくらいの隙間を開けた。
「ナイトシティの扉はもっと素直なのに」
『比べる扉が悪すぎんだろ』
やっとの思いで中に入ると、埃などを落とす風とシャワーの廊下を経由して研究室内に入る。
研究室の壁には、趣味の悪いことに透明のカプセルに入ったG-ウィルス感染体の標本が幾つも飾られており、どの標本にも巨大化した目玉が生えていて、恨めしそうにこちらをじっと見つめてくる。
大変居心地が悪い。
恨むならアンブレラを恨んでくれ。
研究室の奥の突き当たりには、半円筒形の装置があって手前に何かを嵌め込むような穴が空いていた。
横の隙間から、中にワクチンと思わしき医療用バイアルの姿が見える。
これも無理矢理壊して開けようとも考えたのだが、何かの弾みに中身まで壊れてしまっては堪らないので、素直にギミックを解くしか無さそうだ。
何かを嵌め込む穴の両脇には、カドゥケウスの杖のように2匹の蛇が二重螺旋を描いて絡み合うような装飾が施されている。
何か鍵になるような物はないか…
一応バーキン博士のポケットから入手した認証装置を近付けてみるが、うんともすんとも言わないのでこれではない。
きちんと穴を確認してみると、1ドル硬貨より少し大きいサイズなので、なにかペンダントやロケット、カメオのようなものを嵌め込むのではなかろうかと推測する。
しかし、そんなものをここに来るまでに拾っていないし、見てもいない。
「ううぅ……」
苦しそうに身を捩りながら、シェリーが呻き声を上げる。
残されている時間も少ない。
一先ず時間だけでも稼げないかとバウンスバックを取り出したは良いが、もしG-ウィルスがナノマシンに対抗するように進化してしまったらと思うと、投与しようとする手が止まる。
一体どうしたら…
『おい、V!お前気付いてねぇのか?このガキ、ペンダント持ってんじゃねぇかよ!』
「…え?」
ジョニーがシェリーの脇にしゃがみ込んで、彼女の胸元を指差す。
ペンダントの姿は見えないが、首に金色のチェーンが掛かっているのを見つけてそれを手繰り寄せる。
スルスルとシェリーの胸元から、蛇の胴体のような模様が入った金色のペンダントが顔を出した。
「これ、借りるわよ」
シェリーの首からそっとペンダントを外して、窪みに嵌め込むと、ピッタリと嵌った。
それを90度回して図柄を揃えると、プシュッと音がして金属製のシールドが開き、医療用バイアルが取れるようになる。
手前の一つを掴んでラベルを見ると、しっかりと《DEVIL》と書いてあるのが読めたので、これがアネットが言っていた治療薬で間違いないらしい。
ワクチンは2個あるらしいので、もう一つもついでに貰っていく。
ふとワクチンのあったラックの下にも、2本ほど試験管が残されていることに気がついた。
これにはラベルがついていないが、ワクチンと一緒に仕舞われていた関係上、G-ウィルスとなにかしらの関連があるものだろう。
いや、もしかしたらG-ウィルスそのものかもしれない。
ともすれば、ここにこうやって置いておくのも良くない気がする。
脳裏に、私とバケモノ連中の戦闘を記録していた謎の人物のことがよぎった。
アレの正体も目的も分からないので、転ばぬ先の杖と言ったところだ。
試験管を含めて、そこにあるものを全て所持品に仕舞い込み、いざワクチンをシェリーに打ち込もうとしたら注射器が無いことに気付く。
少し前に、ジルにT-ウィルスのワクチンを打った時に使用した物しか持っていなかったようだ。
しまった、なんて初歩的なミス。
急いで戻って投与しなければ…!
シェリーを再び背負い直し、宿直室に向かって走り始める。
研究室の外の広い空間を抜けて扉を潜ろうとした時に、突然天井を破壊して再び触手獣と分離して自由の身になったG-変異体が落下してきた。
「しつこいわね!!アンタさっきシャフトから落ちてたじゃないのよ!!」
バーキン博士の頭は完全になくなり、腕も背中から生やして6本になったG-変異体が、こちらに向かって歩いてくる。
このまま後ろに引き連れたまま、まだ万全ではないであろうジル達のもとに戻るわけにもいかない。
シェリーを扉の横に下ろしてG-変異体と向き直った時に、背後の扉が開いてアネットが飛び出してきた。
彼女はそのまま、信号弾発射器のようなカプセルシューターをG-変異体に向けて中身を撃ち出す。
カプセルが着弾と同時に弾けて、内容物を浴びたG-変異体が身体を掻きむしりながら倒れて、そのまま床をのたうち回る。
「ウィリアム!もうこれで終わらせるわ!」
カプセルシューターにリロードして、再度G-変異体に中身をぶち撒ける。
ジュワッと表皮が泡立ち、徐々に動きが緩慢となっていき、遂に動きを止めた。
中身はG-生物に対して特効がある薬品らしい。
そんな物があるなら、最初の時点で渡して欲しかった。
ウィリアム・バーキン博士の成れの果てにトドメを刺したアネットは、その場に座り込んだ。
最後に会った時に比べて衣服もだいぶボロボロになっているので、我々から逃げ延びた後にかなり苦労したようだ。
擦り傷も目立つ。
ここに辿り着くまでに、かなり苦労しただろう。
「アネット、シェリーがバーキン博士に何か植え付けられたらしい」
「…なんですって?ウィリアムが、シェリーに胚を植え付けたというの?」
「胚が何か知らないけど、《DEVIL》は手に入れたわ。早くこれでシェリーを治療して」
アネットの手の中に《DEVIL》を押し付けて、シェリーの元に連れていく。
だいぶ患部の症状が広がっているシェリーを見せて、あまり残された時間が無いことを確認したのか、アネットがシェリーを両手で抱き上げた。
アネットも流石に注射器を持ち歩いてはいないようで、ここで治療は出来ない。
「どこでなら治療出来るの?」
「宿直室なら、モニター機材もあるわ」
「分かった。早くいきましょ」
アネットを促して、この部屋を後にしようとした時に背後で何か動いた気配がした。
反射的にアネットの背中を押す。
突然後ろから押されたアネットが、通路の上から扉側につんのめりながらも辿り着き、こちらを勢いよく振り向いた。
私は巨大な腕に掴まれて身動きが取れない。
ググッと持ち上げられて手繰り寄せられた先には、先程薬液を浴びせ掛けられて沈黙したはずのG-変異体が再び変異して、巨大な口とその中に無数の目玉がある状態で復活した姿だった。
ギリギリと万力のような力で締め付けられるが、こっちは骨までチタンで出来ている。
この程度でやられるほど柔ではない。
「行け!早く!あとで追いつくわ!」
「ごめんなさい!」
扉の前にある端末をアネットが片手で操作すると、G-変異体と私が乗っている通路が下がり始める。
15mほど下がったが、体長が3mを超えていそうなG-変異体だったら容易に上に登れてしまうだろう。
アネットは下がっていく私を最後にもう一度見て、シェリーを抱えたまま走り去っていった。
「さて、バーキン博士?邪魔者は居なくなったわね。存分に殺してあげるわ」
ゴリラアームの出力を限界まで上げて、拳を内側から押し上げていく。
驚愕が伝わってくるG-変異体の手が緩んだ隙に、膝を出来た隙間に捩じ込んで無理矢理手の内から脱出した。
後方宙返りで着地してから、服に着いた粘液を手で払う。
「良い加減しつこ過ぎるわね」
「GGRRRRUUUUUUUU」
「馬鹿の一つ覚えみたいに、吠えて腕を振り回す事しかできないなんて、生物兵器が聞いて呆れる。口からレーザービームくらい撃ってみなさいよ。それが出来ないなら死ぬべきね」
『おい、めちゃくちゃなこと言ってんぞ』
「ジョニーは黙りなさい」
言葉を理解する脳みそなんてもう持ち合わせていなさそうではあるが、自分が侮辱されたと理解したのか、或いはまだバーキン博士の知能のカケラが残っていて、自分の最高傑作だと思っているG-ウィルスをバカにされたと思ったのか、シェリーを追うような素振りを見せずに私に向かって咆哮する。
「GOOOOWWWAAAAAAAAA!!!!!」
エラッタを抜き、G-変異体に向かって走り出す。
向こうもこちらに向かって6本もある腕を開きながら、拳を握り締めて走り出した。
私の上半身ほどもある拳が迫る瞬間、サンデヴィスタンを発動させて横にズレながら避け、エラッタをその腕に振り下ろして両断する。
そのまま背中側に回り込んで、右足を切り落とした。
一度サンデヴィスタンを止めて、右足を膝下から急に失って膝をついたG-変異体を後ろから蹴る。
直ぐに背中から生えている腕を振り回してくるので、しゃがみ込んで回避しもう一本腕を切り落とす。
既に最初に切り落とした腕と足からは煙を出しながら再生を始めており、10秒ほどでもとに戻るだろう。
呆れた再生能力だ。
「お前、もしかしてあの触手野郎食べたの?」
元々、殺したと思っても何度も変異を繰り返して復活してきていたので、再生能力自体は持っていたのだろうが、こんなに早く再生が出来るようになっているとなると合体していた触手野郎を取り込んだのではないかと推測する。
アイツも殺しても中々死ななかったし、変異をする特性も似ている。
まあ良い。
再生し続けるなら、こっちも削り続ければいつか追いつかなくなって死ぬだろう。
G-変異体が、近くにあったボンベを掴んで振り回すので、エラッタを下から当てて上に弾き飛ばす。
直ぐに逆の手を貫手のようにしてこちらに放って来るので、一歩横にズレて放たれた腕の上に乗った。
そのまま気持ちの悪い顔面に向かってブルーファングを投げつけながら、腕の上を走って頭を狙う。
ブルーファングが頭部の目玉2つに突き立ち、視界を塞いだ隙に首を狙うが他の目玉もキチンと機能しているのか、頭の目が無くても口から無数に生えている目玉がこちらを凝視しており、頭部を守るように今使える3本の腕を振るって来る。
それを腕の上から飛び降りることで回避して、一度距離をとった。
頭を切り落としたら或いはと思ったが、目玉が沢山あって死角が少なそうなので、接近戦はあまり得策ではないのかもしれない。
そうなると、ここは大口径マシンガンの出番だ。
首を切り落とせないなら、顔面を蜂の巣にしてやれば良い。
所持品からMA70 HB*1を取り出す。
ジャラリと、箱型弾倉の中の弾薬が擦れる音がした。
『コイツはご機嫌なロックンロールだぜ?』
「楽しみましょ?」
トリガーを引き絞ると、大口径の炸裂弾が次々にG-変異体の顔面で炸裂する。
火炎と破片が飛び散り、大きな口から歯と血が撒き散らされる。
ドンドンドンドンと聞き感触の良い銃声と共に、密集して生えている黄色い目玉も次々と破裂しては再生を繰り返す。
無数の炸裂弾を撃ち込まれて怯みながらも、設置してある機材を壁から剥がしてこちらに投げつけて来るので、気は抜けない。
弾倉内の100発などあっという間に射耗するので、ちょくちょくサンデヴィスタンを挟んで高速でリロードをしながら、絶え間なく弾丸を浴びせ続けた。
こっちの弾が撃ち尽くされるか、コイツの再生能力が尽きるかのチキンレースが始まった。
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更新の励みになっております!!
GWなので、明日も更新出来るかチャレンジ実施中です笑
NESTの描写をするために、わざわざps5版のre2を買い直し、無印2のプレイ動画を繰り返し見直しています。
自分で思っていたよりも、結構細部って忘れるものですね…
あと2、3話で完結すると思いますので、よかったら最後までお付き合いください。