Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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The Grim Reaper never comes when you're waiting for him...


第十七話 Good Riddance

MA70 HBの射撃音をバックミュージックとして、ジョニーが隣でChippin’Inを演奏し始める。

 

「最高のショータイムね!」

 

『盛り上がってるか!』

 

ジョニーの歌声に合わせて景気良く炸裂弾をブチかましていると、G-変異体の身体がブクブクと膨れ上がって一回り大きくなる。

炸裂弾に適合しようとしているのだろうか。

 

再生したり膨れ上がるのは良いが、その質量はいったいどこから補充しているのだろう。

不思議だ…

 

身近に投げつけるものが無くなったと悟ったG-変異体は、遂に壁から配管を引き千切り始め、リーチが長い分避けるのが難しくなって来た。

MA70 HBがそれなりに重たいので、反動制御をしながら高くジャンプは流石にやりづらい。

中々に巨体なので、遮蔽物になると思っていた制御盤も両腕で薙ぎ倒しながら、徐々に接近して来る。

こちらも追い詰められないように、顔面やポコポコ生えて来る目玉の群れに向けて撃ち続けながら、時折りサンデヴィスタンを使って背中側に回り込みながら戦う。

既に弾薬を600発ほど撃っているが、それでもまだ倒れない。

コイツの体力は、底なし沼になってしまったのだろうか…

 

「V!」

 

立ち位置を常に移動させながらG-変異体を撃ち続けていたら、気絶から回復したらしいクレアが顔を出した。

 

「援護するわ!」

 

手にはジルに渡したダネルMGLを持っていて、ジルは全て撃ち尽くしていたのだが、何処からか弾を補充して持って来たらしい。

 

「退いて!」

 

クレアの声に応えて、撃ちながらも更に距離を取る。

扉のある上から一方的に40mmグレネード弾を浴びせ掛けるが、爆発することはなく代わりに黄色味掛かった液体が周囲に飛び散って、付着した物から強烈な煙と泡を発生させた。

どうやら、中身は強酸性の液体らしい。

 

6発次々に強酸弾を撃ち込まれて、全身を強酸に灼かれてのたうち回る。

再生しても再生しても、表皮を溶かされ続けるので再生が追いつかないようだ。

クレアが上でMGLをリロードするので、私もL-69ズオ BA XING CHONGに持ち替えて、クレアが強酸弾を放ったのを確認してから爆裂スマート弾を撃つ。

わざと設定で着発から遅延にすることで、弾が肉にしっかりと食い込んでから爆発するので威力が上がる。

ごっそりと肉が剥がれ落ちたところに、更にクレアがその上から強酸をぶっ掛けるので、体積が少しずつ減って行く。

そうすると、さしものG-変異体も徐々に弱っていき動きも緩慢になって来た。

 

それでもまだ配管を手放さず、空いている手で瓦礫を掴んで上にいるクレアに向かって投げ付けたりするので、そろそろ奴にトドメをさせるほどの強攻撃を加えないと不味いのだが、ズオのスマート爆裂弾を何度もくらっても中々死なない奴を相手にすると、何が致命打になるのか分からなくなってくる。

頭を撃ちまくって吹き飛ばしても、生命の維持機能を頭に依存していないようで、全く効果が無いからタチが悪い。

何か使えるものがないかと思い、ふと上を見上げると奴が壊して入って来た天井の破壊痕が目に入った。

そこから、一本の重量鉄骨がギリギリのバランスでぶら下がっている。

これなら使えるかもしれない。

 

ズオを所持品にしまって、サスカッチのハンマーを取り出す。

強酸を浴びて悲鳴を上げているG-変異体に向かって駆け出すと、気付いたクレアが強酸弾を撃つのを控えて叫んだ。

 

「V!危険よ!!」

 

「合図を出したら、天井を撃って!」

 

それで伝わると良いが、G-変異体の攻撃を避けなければいけないので、悠長に説明する暇がない。

振るわれる剛腕を片手で殴りつけていなしつつ、サスカッチのハンマーを両手で持って思いっきり胸部を殴り付けた。

ドン!と大きな音が鳴って、G-変異体の胸部がベッコリと凹む。

巨大な口からは血を吐き出しながら、2撃目を喰らわないように一本の腕でガードをするが、そのままの勢いで体当たりしてたたらを踏ませる。

ガードが緩むと再び振りかぶってハンマーを叩き込み、徐々に鉄骨の下に押しやって行く。

飛び散る血肉と一緒に、まだ酸の成分が残っている液体も浴びるので、少しずつ服に穴が開きリアルスキンも斑ら模様になって黒い皮下アーマーが顔を覗かせてしまうが、ここで止まるわけにはいかない。

 

「いい加減に、くたばりな!!」

 

ゴリラアームを限界駆動させて最後の振り下ろしをお見舞いする。

飛び上がって振り下ろされたサスカッチのハンマーは、気味の悪い頭部を胴体に減り込ませて肩まで砕き、更に腰骨を砕いて両膝を付かせる。

そこに思いっきり回し蹴りを叩き込んで、重量鉄骨の真下まで吹き飛ばした。

 

「クレア!!」

 

私の合図にMGLを天井に向けて放つと、いつの間にか弾を通常のグレネード弾に換えていたらしく、爆発と共に重量鉄骨が垂直に落下。

目玉がたくさん生えている胸部の真ん中に突き刺さり、その上から次々とコンクリートや鉄骨などの瓦礫が降り注いだ。

粉塵が舞い散り、一瞬視界が塞がれる。

数秒経ち、粉塵が床に落ちると瓦礫の山が出来上がっていて、床からはジワリと血が広がり出していた。

 

「清々した」

 

『上手にペシャンコに出来たな』

 

「これで死ななきゃ、とっておきを出すしかないわね…」

 

『おい、縁起でもねえこと言うなよ』

 

思わず溜息が出て、サスカッチのハンマーを床に下ろした。

頼むからもう出て来ないでくれ。

 

奇跡的に破壊から免れた昇降機に乗り込んで、クレアのところまで上がって行く。

酸によってボロボロの私の姿を見て、クレアが息を呑んだ。

 

「V…貴女っていったい」

 

「BOWじゃ無いのは確かよ。安心して」

 

首のポートにバウンスバックを打ち込んで、ダメージを受けたところを修復する。

穴だらけになった服までは元に戻らないが、リアルスキンは修復されて綺麗な状態に戻った。

 

「どういう原理なの…?」

 

「うーん、私が未来から来たって言ったら信じる?」

 

「えぇ?」

 

「冗談よ。行きましょ」

 

完全にはぐらかせたとは思っていないが、適当なことを言って煙に巻きシェリーのもとへ急ぐ。

受付まで戻ると、廊下の壁にFOXが寄り掛かって立っており、少し離れたところにジルが睨みを利かせるように眦を吊り上げて彼のことを監視していた。

UBCSの時と似たようなシチュエーションだが、USSの方がよりアングラでアンブレラの闇を担っている存在なので、ジルが余計に神経を尖らせているのは理解出来る。

まぁ、FOXも1人でこの街から脱出出来るとは思っていないはずなので、少なくともこの街から出るまでは大人しく言うことを聞くだろう。

 

「FOX、何か不審な人物を見掛けたりしていない?」

 

「……いや、特に不審な動きをしている人は見ていない」

 

「分かった。もし、ここに居る我々以外の人間を見たら、すぐに教えて欲しい」

 

「了解」

 

どうにも、ここに来てから突然主電源が落ちたり、触手野郎やバーキン博士が嫌なタイミングで現れたりと、碌でもないことばかり起きている。

それに、例のビデオテープの持ち主だって分かっていない。

考えたくはないが、何者かの介入も視野に入れておいた方がいいかもしれない。

 

「ちょっと、なんでまたアンブレラの人間を拾って来たのよ」

 

「たまたまよ、たまたま。進んだ先に1人で死んだフリしていたから、ちょうど戦闘力として数えられるし都合いいと思って」

 

「それにしたって、アンブレラの戦闘員だなんて」

 

「まあまあ、アンブレラって一口に言っても、カルロスたちのこともあるじゃない。それに射撃の腕は確かだったわよ」

 

「それはそうだけど…」

 

ジルはアンブレラと名の付くモノは袈裟まで憎いタチなので、いかにも黒尽くめで特殊任務に当たってますという出立ちのFOXは、仲間として見れないのかもしれない。

しかし、こんなところで仲間割れしてもらっても困るので、ここはひとつ私の顔に免じて納得してもらうように頼んだ。

両の手の平を合わせて頼むと、ため息を吐いて両肩を竦めて返事をしてくれる。

少なくとも、これで突然銃撃戦になることはないと安心しても良いだろう。

 

宿直室に入ると、シェリーがベッドに寝かされており、アネットがシェリーの片手を握ってベッドに俯いていた。

その隣にはクレアも付き添っている。

シェリーが私に気付き、ベッドに横たわったままこちらを見上げて微笑む。

 

「あら、だいぶ調子よさそうね」

 

「うん…ありがとう」

 

現状を聞くべくアネットの肩を軽く叩くと、ハッと顔を上げてベッド脇に置いてあった計器のモニターを見る。

そこに書いてある数字の羅列や棒グラフが何を意味しているのか分からないが、それを読み取ったアネットは大きくため息を吐いて床に座り込んだ。

 

「それで、私が命懸けで貴女に託したワクチンは、ちゃんと効果はあったのかしら?」

 

「え、えぇ…もう大丈夫。G-ウィルスは消えているわ」

 

「それは良かった」

 

どうやら、今までの逃避行で蓄積した極度の疲労と安堵で、腰が抜けてしまったらしい。

横で聞いているクレアがホッとした表情で、シェリーの頭を撫でる。

シェリーもくすぐったそうにしているが、とても嬉しそうだ。

 

部屋を出ようとすると、アネットが私のことを呼び止めて耳を貸すように言うので、しゃがみ込んで耳を近付ける。

 

「あのエイダとか言う女、アレは産業スパイよ。貴女達になんて言って近付いているか知らないけど、目的はG-ウィルスの確保に違いないわ」

 

「なるほどね…まぁなんとなく怪しいと感じてはいたけど、今は放っておいて平気よ。G-ウィルスはもうあの部屋には無いし、誰の手にも渡らない」

 

「それはどう言う意味…?」

 

曖昧に笑って立ち上がり、宿直室にあった液体の入っている試験管を適当に選んで手に取ってポケットにしまった。

緑色の試薬だかが入っていて、なんだかそれっぽい。

宿直室に放置されていたようなものなので、そんなに危険な物質では無いだろう。

 

困惑しているアネットを尻目に、もう少し休んだらここから脱出する手段を探すので準備をするように3人に言うと、アネットがポケットからセキュリティレベルⅣの認証タグを取り出した。

どうやら中央のエレベーターを降りると、脱出用のディーゼル機関車とやらのところに行けるらしい。

そこから更に下に降りることによって、自動で線路に接続されて郊外に脱出出来るらしい。

探す手間が省けたので助かる。

 

廊下に出て、ジルとFOXに脱出手段がわかったので準備をしてもらうように伝えた。

それから、レオンとエイダを探す。

2人はすぐに見つかり、受付の奥の警備室でエイダがコンピュータを操作していた。

レオンはその隣に立っており、エイダが何かコンピュータで作業をしているのを黙って見ている。

 

「お2人さん、そろそろ脱出するわよ」

 

私が声を掛けるとレオンがびっくりしたように振り向くが、思わずといったように腰のデザートイーグルに手が伸びている。

エイダはハンドガンを抜いており、私の頭を狙ってピッタリと構えた。

チラリと横からコンピュータを覗き込むと、先ほどG-変異体と死闘を繰り広げていた広間の監視カメラ映像が映っていた。

なるほど、アレを見てしまったらしい。

 

「貴女、本当に人間?」

 

エイダがそう聞いて来る。

レオンはエイダに味方をするかどうかで葛藤しているのか、ホルスターの銃を手に取るかどうかで躊躇っている。

 

「もちろん人間よ?BOWにでも見える?」

 

両手を挙げて、その場で1回転する。

 

「ええ、見えるわ。普通の人間は、目にも止まらない速度で動いたりは出来ない」

 

監視カメラの映像から、サンデヴィスタンを発動しているところを目撃されてしまったらしい。

これは面倒臭いことになった。

 

「それに、持ってきているんでしょう?G-ウィルスを」

 

そんなことになるだろうとは思っていたけど、こんなにすぐされるとは思ってもいなかった。

ポケットから、宿直室から持ってきた緑の試薬が入った試験管を取り出す。

 

「それを渡して」

 

「渡してどうするの?エイダ、アンタFBIじゃないんじゃない?」

 

「…え?」

 

指の背で試験管をコインのように回して見せる。

レオンが、エイダはFBIではないと聞いて動揺を隠せなくなる。

エイダは私が試験管を渡さないところを見て、こちらの足に撃とうとするが先にレオンがエイダに向けて銃を構えた。

 

「エイダ、どう言うことか説明してくれ。俺は君を撃ちたくない!」

 

「レオン……」

 

「アネットから聞いたわ。産業スパイだったんでしょ?だからG-ウィルスをあそこまで欲しがった」

 

エイダがもう一丁拳銃を取り出して、レオンの方にも銃を向ける。

 

「ずっと俺は騙されていたのか…」

 

レオンが、今にも血を吐きそうな声でエイダにそう言う。

 

「こんな結末になって残念」

 

「俺は君にとって…捨て駒だったんだな」

 

「これが私の仕事なの」

 

「俺だってそうだ!銃を捨てろ!」

 

なんだか面白い展開になって来たので、黙って2人のやり取りを聞いてみる。

レオンは自分の純情を踏み躙られたと思って怒っているが、私から見たらエイダも中々に甘い気がする。

 

「V、G-ウィルスを渡して!私にレオンを撃たせる気!」

 

急に矛先が私に戻って来た。

レオンがゆっくり移動して来て、私を守るように私の前に立ちはだかる。

しばらくの間睨み合いが続き、レオンが銃を下ろした。

 

「クソッ、撃ちたければ撃てよ!」

 

処理施設から分かれてここに来るまでに、2人の間にどんなロマンスがあったのか知らないが、きっとお互いを信頼するのには十分な時間と危険があったに違いない。

ため息を吐いて、一拍後にエイダも銃を下ろす。

 

「……ダメね。スパイ失格」

 

レオンとエイダがお互いを見つめあって、なんか変な雰囲気になってしまった。

とりあえず咳払いをして、試験管をポケットにしまう。

2人がサッと目を逸らしてから、こちらに視線を向けた。

 

「まだアンタが産業スパイなのは、他のメンバーには言ってない。G-ウィルスは諦めて、今は街から脱出することだけを考えてちょうだい」

 

2人とも頷いて警備室を出て行く。

その背中を呼び止める。

 

「ああ、ちょっと待って。2人とも監視カメラでは何も見なかった。いい?」

 

出来る限り感情を殺した表情を作って2人を見ると、レオンがぎこちなく頷くので手を振って出て行かせた。

レオンが口を割らなければ、エイダも自分からは言い出さないだろう。

下手をすれば、他のメンバーに自分のことを産業スパイだとバラされる危険があるのだから。

 

『青臭すぎんだろ。砂糖を吐きそうだぜ』

 

「あら、いいじゃない。青春って感じが初々しくて。レオンはこれからの人生、苦労しそうな気がするけど」

 

『吊り橋効果なんて碌でもねえぞ?破局率抜群だ』

 

 

 

2人が出て行った後に、エイダが操作していたコンピュータにジャックインする。

私の戦闘シーンが映っている映像を全て消去した。

どこから漏れるか分からないから、消しておいた方が無難だろう。

それと、先ほどまでは時間が無かったので、情報をここから吸い上げることにした。

 

価値のありそうな情報を選別するために、不良AIを研究所のネットワークに放つ。

次々とセキュリティレベルの高いファイルを抽出して、表面に上げてくるのでそれを閲覧しながらコピーしていく。

残念ながらG-ウィルス関連の研究ファイルは、研究室のスタンドアローン状態のコンピュータの中に保存されているらしく、ここからアクセスすることは出来なかったが、T-ウィルス関連やBOWの研究ファイルや実験データはここのメインフレームに保存されていたので、優先して中身を吸い出す。

それと、面白いものではアイアンズにバーキン博士がどれだけの賄賂を渡していたかの証拠や、G-ウィルスと明確に記載されていないものの、ここに所属していた研究員が行った孤児への投与実験の経過を記したファイルなどが出て来た。

もし外に出た時に、まだベンが生きていたら渡してやってもいいかもしれない。

 

アンブレラを4回は破産させられそうな情報を抜き取っていると、その中に《ARK》という単語が幾つも出てくるファイル群を見つけた。

どうやら、このラクーンシティの地下にはこの施設以外にも幾つかの秘密地下研究所があるらしく、そのうちの1つに《ARK》と呼ばれる研究所が存在するのだとか。

更に探って行くと、そこで研究されているものの詳細は分からないが、人間をマインドコントロールすることが出来る最強のウィルスを作っているのではないかと推察されていた。

ネタとして見たら面白いので、そのファイル群を抜き出すと急にコンピュータがブルースクリーンになる。

すぐに不良AIがコンピュータを復元させるが、一度ブルースクリーンになってしまったのが問題だった。

 

ブルースクリーンになると同時に、ビープ音と共に研究所自体が振動し始めた。

 

 

『警告、不正なデータファイルの漏洩を検出。………研究所内を再スキャン。………警告、レベルⅣウィルスの不正な持ち出しを検出。………警告、研究所内のセキュリティ装置の機能不全を確認。………施設封鎖を開始します。施設封鎖後、自己破壊コードを実行します。当該施設の研究員は、直ちに避難してください』

 

 

『おっと、これはやっちまったな』




高評価、ご感想、お気に入り登録ありがとうございます!!
誤字脱字訂正も大変助かっております!!


ご感想にて、もっと続けろや!レクイエムも書け!というご要望を頂きましたので、プロット作成のためにお時間は頂きますが、もう少し続けたいと思います…(以外に需要があって嬉しい)

クレアが撃ちまくっていた硫酸弾ですが、Vは硫酸で出来ていることを知らないので、敢えて強酸弾と表記しています。
誤表記ではありません。
ちなみに、大量に使用出来たのは復活したジル、クレアが頑張って作りまくったからです。

高評価お待ちしてます!!
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