Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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There is no nightmare that doesn't end.


第十八話 The LAST ESCAPE

ネットワークに放っていた不良AIを回収し、ファイルの吸い出しを中断して廊下に出ると、シェリーをおんぶしたクレアとレオンにアネットが肩を貸されて出て来ており、既に全員が集まっていた。

 

「何事なの?!」

 

ジルが食い気味に、私に向かって言ってくる。

なんとなく、私が犯人ではないかと思っているらしい。

私のせいではあるのだが、一応否定しておく。

バレていなければ、罪には問えないのだ。

 

ここで口論をしているような時間は無いので、皆んなある程度は準備を済ましていた事もあり、すぐに中央のエレベーターに向かって移動を開始する。

施設全体が小刻みに振動しており、高い天井からは剥離した内装や細かい金属パーツやらの破片なんかがパラパラと落下して来ていた。

頭上を落下物から守りながら、急いでエレベーターのセキュリティロックを解除して開け、大人数で窮屈だがなんとか全員で乗り込む。

全面ガラス張りで耐久性に不安が残っているが、下に着くまでに破れないことを祈るしかない。

 

途中、自爆の為に臨界状態になって暴走しているリアクターの前を通り過ぎたのだが、アンブレラの秘密研究所内にある技術は外の技術に比べて10年も20年も進んでいる気がする。

かなり大型のリアクターをレトロなコンピュータで制御し切れるとは思えないし、外の街ではブラウン管が主流のところをここでは薄型液晶モニターを使っているのだ。

あまりにもアンバランスすぎる。

 

不思議な事もあるものだと考えていたら、エレベーターが下に到着したので急いで降りる。

そこにはまたケーブルカー乗り場があり、NESTに来た時と同じタイプのものが停まっていたのだが、乗り込もうとした矢先にケーブルの一本が断裂して、解放された凄まじい張力がケーブルを刃物のように変え、金属製のケーブルカーの車体を縦に引き裂いてしまった。

幸い、まだ誰も車内に乗り込んで無かったので怪我人が出なかったが、下に行く手段が目の前で無くなってしまう。

 

「こっちに階段がある!」

 

ここの研究所を知り尽くしたアネットが指差す方向には扉があり、急いで全員がそちらに向かう。

振動で扉が歪み開かないので、ゴリラアームで無理矢理こじ開けた。

中はチラホラ火が出ており、早く通り過ぎないと通路ごと燃えて通れなくなりそうだ。

炎を避けながら進み、奥の小部屋の床にあった非常口と書かれたハッチを開くと、自動的にハシゴが展開されて下の部屋に繋がる。

シェリーは私が背負いハシゴを降りると、大量のモニターとコンソールがある中央制御室のような場所に出た。

大型モニターには『WARNING』の文字がドデカく点滅しており、いつ爆発してもおかしく無さそうだ。

 

EXITの非常灯を頼りに進んでいくと、先ほど死ぬかと思ったケーブルカーのシャフトの脇に出ることが出来た。

その少し先に扉があったので、これもこじ開けて進む。

ここも既に火が回っていたので、カーネイジGUTSを片手に私が先頭に立って進んで行くと、床には植物のツタのような物に寄生されたゾンビが火だるまになってのたうち回っていたり、扉を開けると燃えたままのゾンビがのしかかって来たりと、かなり危険な状態だった。

それらをカーネイジGUTSでバラバラに引き裂き蹴散らしながら、小型の作業用エレベーターやハシゴを使ってどんどんと下に向かって進んで行く。

 

地下の秘密研究所とは言っても、これだけ大きい施設を維持管理するのにはやはり人手が沢山必要だったようで、点検用の通路だと思われるこの道をいく先いく先で、業者が着るような反射板の付いた蛍光ベストを着たゾンビに大量に遭遇する。

いくらカーネイジGUTSの散弾が強力で、3人ほど縦に並んでいても後ろまで貫通してバラバラに出来るとは言え、連射性能はそこまで高く無いので正直大変だ。

捌ききれなくなるほどでは無いが、確実に時間を取られてしまう。

 

途中で何かの液体かガスが入った大型ボンベに、人間の胴体ほどの太さがある植物の根が絡み付いており、それが意思を持っているかのようにブンブンと振り回してくるので、タンクに引火しませんようにと祈りながらCHAR 焼夷グレネードを投げつけて、太い根っこを燃やしてから通り抜けた。

鍵の掛かっているドアを再びゴリラアームでこじ開けた時に、爆発まで残り10分のアナウンスが流れる。

 

時間が無いことに焦りを感じ、FOXに真後ろに着いてもらって一緒に通路を掃討しにかかる。

ゾンビ同士が共食いしたのか、リッカーも床を這い回ったりしていたので、鉛玉の暴風でまとめて引き裂きながら前進し続けると、遂に黄色いディーゼル機関車が停車しているターンテーブルに辿り着いた。

怪我人のアネットやエイダ、シェリーをディーゼル機関車の中に残して制御室の中に入ると、制御盤には何かを嵌め込むような穴が二つ空いており、穴の上には大型バッテリー挿入口と書いてあったのだが近くに見つからない。

仕方ないので、穴二つに両腕を差し込んでバッテリーに溜め込んでいる電流を流して無理矢理起動させる。

それから、後ろをついて来ていたFOXに制御盤のレバーを引かせると、ターンテーブルがゆっくりと降下し始めた。

両腕を穴から引き抜くと、制御盤の電源は再び落ちるがシステムは既に稼働しているので、ターンテーブルの降下が止まることはなく、急いでFOXと一緒に降下を始めたターンテーブルに飛び乗る。

上手く着地出来たので、私は怪我をすることがなかったが、FOXには少し高かったのか膝を摩って痛みを逃していた。

よく見ると、いつの間に回収したのかミニガンを背負っていたので、それで自重が増加して膝を痛めたらしい。

何をやっているのだか…

 

ギャリギャリと耳障りな金属音を鳴らしながら、ターンテーブルが降下している。

どれだけ敷設されている線路まで深いのか分からないが、各々下に降りきるまでに装備の再点検をしていた。

既に残り時間は5分を切っており、早く線路に接続されないものかと思っていると、急にグシャッと何かが潰れるような水っぽい音がする。

ディーゼル機関車から出てターンテーブルの上を見ると、ゾンビが上から落ちて来たらしく全身の骨が砕けてペシャンコになってしまっていた。

一体ならまだ良かったのだけれども、それが何体も落ちてくるとなっては話は変わってくる。

ディーゼル機関車の外にいたFOXやジルが慌てた様子で車内に避難して、間一髪でゾンビの投身自殺に巻き込まれずに済む。

もう上のプラットフォームを見上げても、真っ暗で見えないくらいの高さになっているので、そんなところから落ちて来たゾンビにぶつかってしまったらひとたまりもないだろう。

もしぶつかってしまったとしたら、お互いにグシャッグシャのペシャンコになるのは請け合いだ。

 

落ちて来たゾンビの中には、先ほどの通路で燃えてのたうち回っていた植物寄生ゾンビも混じっており、そいつらは植物の根が補強材の役割を果たしているのかペシャンコにはならず、数秒後には何事も無かったかのようにこちらに向かってくるではないか。

幸い、この状況になった原因のファイル群にあったBOWの項目に、プラント43と呼ばれる植物に寄生された人間の事が記載されていて、イビーと呼称されていたそれの弱点のことも併記されていたので、排除することが容易だった。

ただ、最初から燃えていたりするのは勘弁願いたい。

今のところは車体にぶち当たっては無いのだが、もし万が一燃えているイビーが車体天板をぶち破って入って来た場合、ディーゼル機関車の名前の通り軽油を積んでいるので、引火爆発なんてことにでもなられたら困るのだ。

全く信じない神に祈りながら、時折落ちてくるイビーを排除しつつ永遠にも感じられる数分を過ごし、漸く残り時間が4分のところで線路に到着した。

しかし、すぐに出発することはなく、進行方向後ろ側から3両程の車両が連結されてからの出発となる。

これがまた焦ったいのだが、連結されないと進行方向の隔壁が解放されなかったので、仕方なくディーゼル機関車の主機を入れて待ち、解放されたらすぐに全力運転にして走り出す。

全員が後ろの車両を確認しにいくことはなく、ディーゼル機関車の中に固まっていたのだが、研究所の自爆まで残り3分というところで車両が大きく揺れて、速度も少し減速してしまった。

 

「今度は何なの!?」

 

ジルが、ディーゼル機関車の運転席からこちらに向かって叫ぶ。

 

「分からない。私が見てくるわ」

 

「…手伝おう」

 

私が確認しにいくことを告げると、FOXもついて来てくれるという。

大変助かるが、早速手に入れたミニガンを構えていたので、単に使ってみたいだけなのかもしれない。

 

3両追加されたうちの一番手前の車両は無人だったのだが、その隣の車両には白衣を着た研究員だったゾンビがそこそこ乗っており、それはFOXが一瞬で掃射して片付けた。

だが、ゾンビが数十人乗っていた程度で車両が揺れるほどでは無い。

実際、2両目に乗っていたゾンビたちを片付けても車列全体が揺れている。

問題はどうやら最後尾の3両目にあるらしい。

慎重にしている時間もないので、さっさと行こうとしたら急に3両目に繋がる扉が、何者かによってバラバラに破られてしまう。

 

すぐに背後に下がりながら、FOXが現れた巨大生物に向けてミニガンを発射する。

ブーンと景気良く弾をばら撒くのは良いが、巨大生物はあまり効いた様子もなく胴体の前面の大半部分である巨大な口で、金属製の車体と死んでいる研究員ゾンビを食い始めた。

ジリジリとこちらに向かって来ているヤツの頭を見ると、どうみても鉄骨や瓦礫に押し潰されたはずのバーキン博士だ。

ほとんどGに体を奪われて、最後にはバーキン博士の頭部も吸収されて居なくなったものだと思って居たのだが、なんとG-変異体の頭の横から顔の表面だけが現れていた。

他にも、途中で捕食したのか大量の手足が見えている体の表面の彼方此方から無差別に生えており、意味もなくジタバタと蠢いている。

どうやって車両に取り付いたのか分からないが、ここに来るまでにかなりの数のゾンビを捕食して来たのは間違いない。

 

そして取り込んだであろう触手野郎の触手も使っており、それを何本か伸ばして少しずつ車体を食べながら前に進んでくる。

FOXがミニガンを構えて大量の鉛玉をぶち込んでも、怯みはするがあまり効いているとは思えない。

身体の中心にある鋭い歯が並んだ口に、無機物だろうが有機物であろうが、何でもかんでも放り込んで捕食しては体積を増やしているようだ。

こんなもの、果たして進化と呼べるのだろうか…

 

「FOX、先頭車両まで後退」

 

「…1人でどうするつもりだ?」

 

「とっておきを使うのよ。ほら、早く行って」

 

FOXに早くディーゼル機関車まで行くように急かし、彼が先頭車両に着くまでの間にCHAR焼夷グレネードを投げ続けて時間を稼ぐ。

施設の自爆まで残り2分。

 

『V!マジで何を使うつもりなんだ?』

 

「私もジョニーを見習おうと思って、良いものを持ってアラサカにカチ込んだのよね。結局使う場面無かったけど」

 

『おいお前…まさかとは思うが』

 

「ほらこれ、素敵でしょ?かなり小型だから、威力はアラサカタワー3個分を更地にするくらいしか出ないけどね」

 

所持品から取り出したのは、ピンク色の女児が持っていそうな可愛らしいリュックサック。

表面には、SAMURAIのステッカーとデフォルメされたジョニーのアップリケが貼り付けられている。

ジョニーのアップリケは、私のハンドメイドなので非売品だ。

リュックサックの中には、私がミリテクから秘密裏に入手した低出力小型熱核兵器が入っている。

ジョニーには内緒で接触していたのだが、ミリテク側も50年前のように私が1人でアラサカに突っ込むと聞いて、私がこれを起爆させてもさせなくてもどっちに転ぼうが、アラサカに打撃を与えられるとして調達してくれた。

敢えて低出力なのは、シティセンター丸ごと吹っ飛ばして広大なホットスポットを作り出したく無かったのと、ヘイウッド*1やワトソン*2まで被害が及ぶことを恐れたからだ。

もし《神輿》まで辿り着けずに、半ばで死ぬような事があれば起爆させてやろうと思っては居たが、流石に恩になった人のところまでは被害を及ばしたくはない。

自己中心的で結構。

サイバーパンクなんてやる奴は、大体そんなものだ。

 

『ハッ、とことんバカだなお前』

 

「でも、悪くは無いでしょ?」

 

『…そうだな。ほら、さっさと使えよ。自爆まで時間が無え』

 

「そうね。コイツの爆発からも逃げ切らないといけないし」

 

リュックサックの中の熱核兵器を遠隔でセットする。

タイマーは、施設自爆の時間とほぼ同時だ。

身体の中から浄化の炎で焼かれてしまえば、細胞一片たりとも残らないだろう。

これでTHE END、しつこいストーカーとも永遠にさよならできる。

 

L-69ズオ BA XING CHONGを片手でぶっ放して、顔面に無数にある歯を根こそぎ吹き飛ばしてから、中心ぽっかりと空いている口に目掛けてリュックサックを放り込む。

歯を全部吹き飛ばされたので、咀嚼することは出来ずにそのまま丸呑みするしかなく、これで無傷の熱核兵器が取り込まれたことになる。

口の中に消えていくリュックサックから、ジョニーのアップリケが中指を立てた姿がチラリと見えて、そのまま飲み込まれていった。

さらばジョニー。

 

あとはひたすらに顔面に向けてL-69ズオ BA XING CHONGの爆裂弾を撃ち続けながら下がり、車両の連結器をエラッタで溶断して切り離す。

こちら側は車列が軽くなって加速し、向こうは動力を失って徐々に引き離されていくが、諦めが悪く触手を伸ばしてこちらから離れまいとするので、またズオを叩き込む作業を続けた。

グングンと距離が開いていき、流石にもう触手も届かない距離まで進んだところで、遠目にG-変異体の身体に埋没したバーキン博士の顔が目に入る。

身体を爆裂弾で削られたせいでG-変異体の支配力が一時的に衰えたのか、バーキン博士の目には意思が宿っているように見え、私の姿をしっかりと見ながら口をパクパクと何かを訴えるように開いては閉じるを繰り返す。

それから彼は目を閉じて、一瞬後に閃光の中へと消えていった。

 

『シェリーを頼む、か』

 

施設の自爆と熱核兵器が起爆した。

爆風が到達する前に急いで車両の扉を閉めて、先頭車両へとサンデヴィスタンを使ってまで駆け出す。

核爆発の爆風に後ろから押されるようにして、ディーゼル機関車が激しく揺れながら加速し、まるで弾丸のようにトンネルの中を突き進む。

車内にはシェリーとクレアの悲鳴が響き、皆が身近の掴まれるものに掴まって振動に耐えるが、FOXが掴まっていた手すりが振動で外れて、バウンドしながら車体後方へと向かっていくのでなんとか捕まえ、ゴリラアームで車体に穴を開けて身体を固定し耐え忍んだ。

 

何秒ほどそうしていたのか分からないが、車内にパッと光が差し込んでくる。

遂に車両がトンネルから外へと飛び出したようだ。

運転席に座っているジルが急ブレーキを掛ける。

車輪がレールと擦れて金切り音を出しながら、急制動が掛かり慣性の法則によって前方へと吹っ飛ばされそうになった。

身体の軽いシェリーが飛ばされそうになり、アネットとクレアに掴まれてなんとか危機を逃れる。

もしそのまま吹っ飛んで、車内の金属部分にでもぶつかったら命を失うかもしれない。

 

重量のある先頭車両はともかく、空荷の後方2両は大きな音を立てて金属の破壊音をさせた後に静かになる。

どうやら、連結器が破壊されて脱線か何かしたらしい。

時間と共に車両がゆっくりと減速していき、遂には停車した。

全員があまりの緊張から解放されて、床や座席に崩れ落ちる。

 

怪我人はピンボールになったFOXしか居ないようだが、当の本人もヘルメットや防弾チョッキのお陰で命に関わるような怪我はしていないようだ。

全員が転がり出るようにディーゼル機関車から外に出ると、遠目に見えるトンネルの入り口から黒煙が立ち上っているのが見えた。

ラクーンシティからどれほど離れたところに居るのか知らないが、私たちはあの地獄から生きて逃げ出す事が出来たらしい。

まだ星の浮かぶ薄暗い空を眺めながら、酷く濃い数日間を忘れたいがために地面へと寝転がった。

もうしばらくは、ドンパチは勘弁願いたい。

 

私は今度こそスローライフを楽しむのだと、心に固く誓った。

*1
ナイトシティの地区の1つ。個人で所有できる自宅の1つがあったり、ジャッキーの実家であるエル・コヨーテ・コホがあったりする。

*2
ナイトシティの複数ある地区の1つ。Vの家があったり、恩人のヴィクターやミスティといった主要人物たちの店がある。




第一部、完!!

本当はここで本編は終わりのはずでしたが、ご要望により続くらしいです。
GWのお陰でなんとか連続更新中に、ラクーンシティからの脱出まで書く事が出来て良かったです。
しんどかった…

たぶん、他のナンバリング作品や外伝に行くにしても、数話ですが間話を挟むと思います。
レクイエムまで果たして書けるのか…

そんなわけで、ちょっといつ頃プロットが出来上がって書き始めるか分かりませんが、そんなに遠く無い未来でまたお会いしましょう。
ありがとうございました。

持麻呂 謹言
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