Good Luck , Raccoon City 【第一部完結】   作:持麻呂

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The pain of losing one's hometown is irreplaceable.


間話1 Concentration Camp

まずは、私たちがラクーンシティから脱出した後の話をしようと思う。

 

 

1998年9月30日

 

まだ夜が明ける前、脱出した後にエライ目にあった反動から全員でボーッとしていると、どこからかヘリコプターがやって来てエイダがそれに乗って去っていった。

去り際に、わざとクレアに見せつけるようにレオンにキスして、さらに鼻で笑ってからヘリコプターに乗ったので、クレアの視線が一瞬で氷点下まで落ち込む。

どこか妖艶な大人の余裕を感じさせるエイダと、若さと元気さと銃まで使える女子大生のクレアとの間で激しいスパークが飛び知ったのを幻視した気がする。

板挟みになっていたレオンが少し哀れだった。

頑張れレオン、どちらを選んでも苦労するに違いない。

ちなみに、いつの間にかポケットに入っていたはずの緑の試験管が消えており、ヘリコプターに乗って去っていくエイダが振る手の中にそれが収まっていたので、知らない間にスリ取られたようだ。

どうにも身体の大半をクロームやインプラントに置き換えると感触が分かりづらくなるので、

今回は一本取られたと思っておく。

どうせ取られたとしても、中身はG-ウィルスでは無いので大した影響はないからだ。*1

 

その次に去っていったのは、USS隊員のFOXだった。

彼はその職業の性質上、政府機関に拘束されたりするわけにはいかないので、無線でUSS本部に連絡を取ってヘリコプターを呼び出しそれに乗って去っていったのだ。

彼と共に戦ったのは短い時間だったが、それにしては中々濃い時間で、いいコンビだったんじゃ無いかと思う。

私は特にUSSに対して含むところはそこまででも無いので、アンブレラが倒産して行き場に困ったら連絡して欲しいと、20桁の番号を書いた紙を渡してある。

民間でもそこそこ普及し始めたデジタル通信式の携帯電話の回線をハックして、直接私のホロコールに繋がるようにしてあるのだ。

通信会社のサーバーに潜り込んで、自分の情報をチョチョイと書き込むだけだったので簡単なお仕事だ。

おまけに料金も掛からない。

 

FOXはその紙を素直に受け取ってから、一応アンブレラの研究員であるアネットに一緒に行くかどうかを聞いていた。

アネットがそれを拒否しても、特になにか言うこともなく頷いてからディーゼル機関車を離れて行った。

散々アンブレラの闇を見て来てたからだろうか、仮に着いて戻って行ったとしても、夫がやらかした事はアンブレラでもかなり問題になっていただろうし、責任をとってトカゲの尻尾に使われるか実験体にされるか…

どちらにせよ、碌でも無い事にしかならない事をなんとなく察していたからだろう。

それもあってか、わざわざディーゼル機関車からかなり離れたところでフレアを焚いて、そこからヘリコプターに乗ったのだから。

 

それから暫くして、どこから通報を受けたのか分からないが、陸軍のAPCやIFVが軍用トラックを引き連れてこちらに来るのが見えたので、私は捕まって尋問されたり身体検査をされると面倒な事になると思い一旦隠れて、みんなが拘束された後に光学迷彩で姿を消してから軍用トラックの下に張り付き一緒に移動する事にした。

案外トラックの下は見つからないもので、ゴリラアームも脚も生身では無いから疲れ知らずだし、十数キロ離れている隔離施設まで移動した程度は大した労力にもならない。

そのまま仮設の隔離施設兼基地に入り込み、トラックが止まったところで光学迷彩を使い検疫を突破して、収容所にしれっと紛れ込む事に成功する。

ジル達も追々ここに来るだろうから、私はここで待っていればいいだろう。

 

素晴らしいことに、10,000人近い生存者を防疫隔離する収容所は何箇所も有ったらしいのだが、ちょうど私たちが連れて来られたところに地上経路でラクーンシティを脱出したRPDの連中も収容されていて、私の姿を見るや否やみんな集まって来てしまってちょっとした騒ぎになってしまう。

私は勝手に忍び込んだので、見つかると都合が非常に悪い。

すぐにみんなを宥めて、ジルが無事なこととクリスの妹も一緒に脱出したこと、あとはレオンという名前の大遅刻の結果ラクーンシティに来てしまった新米RPDも一緒な事を伝える。

それはそれで騒ぎになったが、スターズの面々はクリスの報連相の欠如に頭を抱えたり、マービンや署長代理が顔を青くしたりして*2更に騒ぎになりそうだったので、こちらも思わず頭を抱えそうになったのは言うまでも無い。

 

ワクチンを打ったとはいえ、高濃度のT-ウィルス汚染に晒されたジルやG-変異体に胚とやらを植え付けられたシェリー、そしてアンブレラの研究員であるアネットは別室送りになったらしく、こちら側には合流出来なかったが、レオンとクレアは暫くして検査に問題が見つからなかったので、化学防護服姿の軍人に連れられてこちら側にやって来たので、無事に合流することができた。

急に私の姿が見えなくなって、連れて来られた先に既に居るのを見てレオンとクレアはびっくりしていたのはご愛嬌だ。

 

「V!急に居なくなっちゃうから、シェリーが泣いていたわ」

 

クレアがぷんぷんと、いかにも私怒っていますと言わんばかりの態度で詰め寄ってくる。

実際、一緒に逃げ出した面々には何も言わずに姿を消したので、ちょっと負い目はある。

政府に、私がどういう存在なのかを知られるわけにはいかなかったとしてもだ。

仮にバレたとしても、今の時代に本気を出した私を捕まえられる存在なんて、居るはずがないのだが…

だとしてもバレないに越した事はない。

 

「あとで顔を見に行ってフォローしておくって。ほら、クレアなら分かるでしょ?私は検査されると面倒な事になるのよ」

 

検査云々のところは小声で話す。

クレアは私のリアルスキンの下がどうなっているのか知っている、数少ない現代人の1人だ。

実際に目で見ているので、口で言うよりも理解は示し易いだろう。

 

「それは……そうだけど」

 

「クレアしか知らないんだから、頼むわよ?その代わり、何かあった時に助けてあげるから」

 

「……はぁ、分かった」

 

クレアを無理矢理納得させたので、蒸し返される前に話題を切り替えてクリスの話をする。

具体的には、奴がノコノコと合衆国に戻って来た時にどうしてくれるかと言う話だ。

そもそも、アイツがきちんと電話なり手紙なりをクレアにしてから欧州に行けば良いものを、それを怠ったばっかりに女子大生の妹が死ぬかもしれない目に遭っているわけで…

いや、クレアならきっと私が居なくても助かってそうではあるが、それにしたって本来ならば経験しなくても良い地獄だ。

奴にとっては妹かもしれないが、私にしたって可愛い妹分なのわけで、マジで許せない。

 

「クレアが許したとしても私は許せないから、アイツが帰って来たらぶっ飛ばすわね。先に言っておく」

 

クレアが血相を変える。

 

「やめて!Vが殴ったら、兄さん死んじゃうわ!」

 

「大丈夫よ。アイツは類人猿か何かだから、そのくらいじゃ死なないに決まってる」

 

きっと奴は今の筋肉に満足しないで、もっとゴリラみたいになって行くだろうから平気よ平気。

今の時点でも、あのタイラントに殴られたってへっちゃらそうではある。

普通の人間なら、殴られたところが陥没して即死しそうではあるが…

そう言う意味では、クレアも中々に頑丈そうな気がする。

あの触手獣と合体したG-変異体にぶっ飛ばされて、背中を思いっきりぶつけていたのに、気絶だけで済んでいるのだから。

…遺伝子の不思議を見た。

あの兄にしてこの妹なのか…?

 

そのあとは、レオンとクレアの恋愛事情についておちょくったりして、わざとあの惨劇を忘れんが為にわちゃわちゃとした感じにしながら今を生きている事をお互いに喜んだ。

 

日中はそんな感じで、RPDやスターズの面々と話したりして時間を過ごし、夜になってからジルやシェリーが隔離されている建屋に忍び込むことにした。

日中は、光学迷彩を使って姿を消せるとしても露見のリスクが高いので、少しでも暗闇を味方につけたほうがやり易い。

 

専用の隔離施設は、40ft*3コンテナを改造したものを連結させて作ったような形をしており、窓がなく入り口も1箇所しかない。

入り口の前には2人の兵隊が小銃を持って立っており、その入り口の向かい側には重機関銃陣地が睨みを利かせていた。

相当な念の入れようである。

 

少し離れたところから観察していると、一定の間隔で化学防護服の連中が出たり入ったりを繰り返している。

夜なので防護服の中の顔までは確認出来ないが、耳の収音機能を上げて聴き耳を立てると、博士や教授と言う単語が聞こえるので、どうやら軍人だけではなく研究者も混じっているらしい。

 

中に入り込むだけなら簡単だ。

照明の一部を破壊して気を逸らし、光学迷彩で防護服の連中に張り付いて一緒に入れば良い。

そうやって入ってからは、天井にリッカーの如く腕力と腹筋のみで張り付いて、防護服連中の巡回を交わしつつジルが収容されている個室を探す。

そもそも個室自体が少なかったので、ジルを含めシェリーやアネットも簡単に見つかった。

ちなみに、どうやらここには直近で捕らえて移送待ちなのか、簀巻きのリッカーや拘束されているハンターβなども隔離収容されているようだ。

3人ともBOW扱いに近い。

少なくとも、そのうち2人はウィルス感染していたので間違いはないのかもしれない。

 

しかし、よく考えるとジルもシェリーもワクチンを投与したので、ウィルスはすでに死滅しているはずなのでは?

それならなぜ…?

 

疑問を解決する為に、物陰に隠れて防護服達の話に聞き耳を立ててみたところ、ワクチンによってウィルスは死滅したのではなく変異性や増殖力、攻撃性を限り無く喪い、その結果宿主との共生関係の方面に舵を切ったのではないかとの事だった。

だから防疫検査では陽性反応が出たわけで、調べた結果そんな特異な状態なので調べ切るまで解放することもできないらしい。

少なくとも、殺して標本にするなんてことは考えていなさそうだ。

 

とりあえず拘束のキチンとした理由と、早急な命の危険は無さそうで安心したので、相変わらずコソコソと移動しつつジルの隔離部屋に移動して、扉越しにだが会話を試みた。

最初はびっくりしており、それから急にいなくなった事への非難がきて、そして最後に無事で良かったと安堵される。

流石の私も罪悪感を覚えたので、先程まで収集した情報を伝えることにした。

ジルが現在どういう状態に置かれていて、この先どうなりそうかということだ。

少なくとも、シェリーを含めて命を取られそうにないことと生きたまま実験台にされることも無いということを聞いて、今まで不安や緊張で張り詰めたものが切れたのだろう。

ヘナヘナとベッドの上に崩れ落ちた。

とりあえず安心させる為に宥めるだけ宥めすかしたあと、また顔を出すと伝えてシェリーに会いに行く。

 

シェリーはひょっこりと顔を出した私にジルと同じようにびっくりして、そのあと泣かれてしまった。

泣き声を聞きつけて誰か来られても困るので、先ほどと同じように宥めてすかして泣き止ませ、一緒に脱出したみんなは無事なことを伝える。

それから、しばらくしたらここから出られるからそれまでの辛抱だとも伝えた。

人間は、希望があればなんとか生きられる生き物だ。

先がずっとわからないと精神に悪いので、子供だから伝えないのではなく、子供だからこそある程度は嘘をついた上で教えておくべきなのだ。

知ってる人間と少し話したからか、不安が少しだけ解消してちょっとだけ元気になったので、食べ物の受け渡し口から無線式の小さいスイッチを渡す。

何か命の危険を感じた時には、迷い無く押すように言い含める。

押したら私が必ず助けに行くと言って。

ちなみにスイッチを押されると、すぐに私に通報と位置情報が入るようになっているので、その時はサンデヴィスタンを使って急いで駆けつけるという寸法だ。

何かしようとしている奴がいたら、その前にぶち殺す。

必ずここから出られると念押しして、スイッチを見つからないようにポケットの中に仕舞うように言ってから。次はアネットの様子を見に行く。

 

アネットは今回の地獄を作り出した研究者(重罪人)の1人として、身柄を完全に拘束されていた。

ジルとシェリーは、扉に覗き窓と受け渡し口があるだけで中は見えないので、プライバシーは一応守られているような隔離部屋だったが、こちらは一面がガラス張りのように透明になっており、中が完全に丸見えだ。

中にいるアネットも手錠をガッチリと掛けられていて、片足にも鎖付きの足輪が付けられている。

鎖の先はコンクリートの壁に埋め込まれているので、G-変異体かタイラントにでもならない限りは逃げ出すことは不可能だろう。

 

声をかけると、ふっと顔を上げてこちらに気付く。

しかしすぐに顔を伏せて、小さい声でシェリーは無事かどうか聞いて来た。

無事と答えながら部屋の中を見渡すと、こちら側の死角に監視カメラが設置されていたことに気付いたので、そのまま声を潜めながらジルとシェリーがどうなりそうかを話す。

アネットとしても、ジルはともかく自分に言うことを聞かせるための枷に利用できるシェリーをどうこうされるとは思っていなかったので、でしょうねと言った。

合衆国政府はアンブレラをトカゲの尻尾切りに使って関与の事実を消し、その上で研究成果を掠め取れるとか思っていそうだ。

しかも、それをするのにアネットとシェリーのバーキン親子は都合が良い。

まさに鴨がネギを背負ってやって来たという状況に近い。

この国は、国防のためならなんだってする。

その時の倫理のぶっ飛びようは、東側の国家もおったまげるに違いない。

ほぼ間違いなく、政府は敵対国家やテロ組織に対して使用する為にT-ウィルスやらBOWをアネットに作らせるだろう。

 

まぁ、私が何もしなかったらの話だが。

少なくとも、今の政権は閣僚ごと2度と政治に関われないように社会的に抹殺する予定だし、私の安寧と折角できた居場所を破壊したアンブレラは必ず破滅させる。

それにはまず、ベン・ベルドリッチや他国のフリージャーナリストに接触して、情報のリークをしなければならない。

情報提供を約束した、アリッサ・アッシュクロフトも無事にラクーンシティから逃げ延びていれば良いが。

 

「アネット、アンタに何かあったときは、シェリーの面倒くらいは見てあげるわ」

 

「……お願い」

 

また動きが何かあったら教えにくると言って、隔離施設を後にした。

 

 

 

1998年10月1日

 

 

 

夜更けまで諜報活動や隔離施設に潜り込んだりしていたので、疲れもあってベッドでぐっすりと寝ていたら、突然UIがけたゝましく警報を鳴らした。

内蔵されているガイガーカウンターの数値が跳ね上がったのだ。

あまりのやかましさと驚愕に、思わず飛び起きる。

次の瞬間、収容所の寝床として使っている軍用テントが爆音と突風に晒され、私の入っていたテントが地面から吹き飛んでいってしまう。

 

収容されているみんなも腰を抜かしたりしながら外に這い出て来て、RPDが率先して混乱を鎮めに掛かるが、私はそんなことよりも収容所の外に見えた光景に唖然としてしまう。

 

『合衆国が、日本に引き続き2番目の核被爆国になった世紀の瞬間だな。正確には2発目だが』*4

 

ジョニーが呑気そうに、有刺鉄線の向こう側で立ち上るきのこ雲を見ながらそんなことを言う。

 

『かくも偉大なる大統領閣下は事態の収拾を図るため、自国での熱核兵器の使用を決断したのでありますってか?』

 

「やめてよ。冗談じゃないわ」

 

『なんだ?お前だってバケモン相手に使ったじゃねぇか』

 

私がトンネルで使ったような、オモチャみたいな熱核兵器とは訳が違う。

破壊力が数キロトンはある、本当の戦術核を使用したということなのだ。

私のはオモチャみたいなものだから、ノーカウントでいいだろう。

 

『おっとこりゃマズイぞ。親指から出ちまってる』

 

ジョニーが腕をまっすぐに伸ばして親指を立てている。*5

 

この日、ラクーンシティは地図から抹消された。

*1
この時は知る由もなかったが、あの緑の試験管の中身はT-ウィルスだったらしい。なんでそんなものが、ポンと宿直室のテーブルの上に無造作に置かれていたのかは不明だが、そんな杜撰な管理体制だから、アンブレラはあちこちの研究所でウィルス漏洩事故を起こしたのだろう。ある意味納得した。

*2
下手すると訴訟問題に発展するから

*3
40フィート。約12メートル

*4
核実験使用分はカウントされていない。

*5
Volt-boyで検索。きのこ雲が親指からはみ出していると、すぐに逃げたほうがいいと言うもの。ちなみに、デマであるので信じずに、核兵器が爆発したらすぐに地下やシェルターに逃げることをお勧めする




たくさんの高評価、お気に入り登録、ご感想ありがとうございます!!

そういえばラクーンシティが消滅する前日に脱出していたことを思い出したので、間話を使ってキチンと街は滅菌させました。
次はジル視点だかで見たVの話か何かを書いて、スペイン編(RE4)かなぁと思っています。(予定は未定)

それと、無事にジルとシェリー(とついでにV)は寿命を克服しました。
高濃度のウィルス汚染による謎パワーによって、外見と内臓の年齢が固定されます。
シェリーはずっと小学生では可哀想なので、謎の力が働き原作と同じように20代になったら姿が変わらなくなる仕様です。
もう一度言いますが、仕様です。

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