Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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It's good to have many friends. Even if they're not human...

本日二話めの投稿になります。


第二話 Hallo,Big Friend

ラクーンシティに根を下ろしてから、早くも半年が経った。

現在は1998年1月1日ーー

市内では、新年を祝う声があちらこちらで聞こえて来る。

チャイナタウンやカブキのジャパンタウンのように、正月や旧正月をド派手に祝う習慣は新合衆国人であろうと旧合衆国人であろうと無い。

簡単に挨拶して仲間内で酒を飲んでおしまいだ。

新年早々あんなに爆竹を打ち鳴らしたり、ハツモウデだかでブッダに祈りに行く民族は、たぶんアジア人くらいしか居ないんじゃなかろうか。

 

現実逃避はここら辺にしておいて、新年は3日までKENDOは休みだがBarであるJackは掻き入れ時なので、絶賛昼間から営業中だ。

警察署が近いこともあるのか、非番の警察官やその家族やらも真昼間から酒を飲んで管を巻いている。

店自体はそんなに大きい箱では無いので、座席も本来であればカウンター周りにしかないのだが、今日は仮設のテーブルと椅子をいくつか出して、無理矢理座席数を確保している。

マスターが表通りなんかにも座席を作ってしまったものだから、本当に頭大丈夫かと思った。

バーテンダーがマスターと私しか居らず、ウェイターもキャサリンという18歳の大学生1人しか居ないため、ビールやカクテルにおつまみや軽食といった注文があっちこっちから飛んでくると、完全にてんてこ舞いになってしまうのだ。

コックなんてものも居ないので、完全にキャパシティを超えてしまっている。

サンデヴィスタンを使えば捌き切れるかもしれないが、生憎ここでそんなものを使えば超人扱いで大混乱を巻き起こすだけなので、使えるわけもない。

 

ヒィヒィ言いながらやっとピークを過ぎたころ、バックヤードでマスターとキャサリンがグッタリとして休んでいるので、私1人でカウンターに立っていた。

目の前には、ほろ酔い状態で頬を薄っすらと赤く染めているジルが、妹のクレアを連れたマッチョマン警官のクリスに愚痴を吐き出している。

人がどんな理由でゴミ捨て場にひっくり返っていたのかで賭け事をしていた彼だが、本当は人が良く面倒見も良いクリスは苦笑いしながらジルの愚痴に頷きながら、律儀に付き合っていて偉い。

願うことならば、私に飛び火しないことを祈りながら、更に酔っぱらわせてさっさと酔い潰れてしまえと、ジルの目の前にレディキラーとして有名な『ホワイトルシアン』をさりげなく提供する。

 

「ほらこれ、私の奢りよ、ジル」

 

「あら、気が利くじゃない!有り難く頂戴するわね」

 

アルコールで認知機能が低下しているのか、目の前の酒がどんなものかも気付かずに、ゴクゴクとロックグラスに入ったホワイトルシアンを飲み干していく。

もちろん、中身がどんな代物か外見で理解したクリスは、その飲みっぷりに戦慄している。

 

「おいおい、マジか!V、ジルになんてものを飲ますんだよ」

 

「あら、そろそろ女子の愚痴を聞くのも面倒臭くなる時期かと思って。ちょうど良かったでしょ?」

 

甘くて飲みやすいが、度数が25度を超えているソレを一気に飲み干したジルは、完全に顔が真っ赤になっており、目がポーッとしている。

 

「ほら、今ならお持ち帰り自由よ」

 

「お、おい、なんてことを言ってるんだよ!」

 

口の端から少し酒を溢して、前髪を少し食べてしまっているジルの色気が凄く、クリスが取り乱しながらもジルの綺麗な唇と豊かな胸を見て、生唾を飲み込んだ。

 

「……兄さん」

 

その隣から、冷え切って温度を失ったクレアの声を聞いて、クリスが慌てて背筋を伸ばす。

この兄妹、どうやら力関係は逆転しているようだ。

 

そうこうしている間に、ジルは酔い潰れてカウンターに突っ伏して寝てしまった。

カウンターから毛布を取り出して、肩にかけておいてあげる。

その様子を見ながら、クリスが声を細めながらカウンター越しにこちらに顔を寄せて来るので、私も周りの目を気にしながら少し屈み耳を近付けた。

 

「V、この前言っていた例の件、詳しく調べたらだいぶ埃が出てきたぜ。アイアンズの野郎、前からかなり臭かったが、今回調べて出た証拠から見るに黒は確定だな」

 

「やっぱりそうだったでしょう?前に警察署が今の署長になってから、意味不明な改築をしまくっているってジルから聞いた時にピンと来たのよね」

 

「だが、これじゃあ奴を追い落とすには決定打に掛けるって言うのが現状だな。アイアンズの野郎はアンブレラとベッタリだ。アンブレラの連中を取り締まらない代わりに、連中はこの程度の汚職なら簡単に揉み消すだろうな。ついでに俺もこの世からオサラバになりそうだぜ」

 

確かに、面倒な秘密を持っている人間は、ついでに消されそうと言うのは間違いじゃないだろう。

いや、間違いなく消しに来る。

連中の城下町であるここでは、幾らでも情報工作出来るだろうし、警察のトップが連中とグルだから事件としても上がって来ない可能性がある。

今はこれ以上、彼を動かさない方がいいだろう。

 

「大丈夫、そのうちに新しい情報を仕入れて来るから、クリスは今は派手に動かないことね。あと、たとえスターズの隊員だろうとこの話はしない方がいい」

 

「…すまん、バリーにはもう話したあとだ」

 

「バリーなら大丈夫だとは思うけど、彼かなりの家族愛好家だから、特に娘さんを人質に取られたりしたら、多分葛藤しながらでも裏切るわよ。きっちりと口止めした上で今以上の情報は共有しないことね」

 

「確かに、考えたくもないがそうなった時が容易に想像つくな……。分かった、約束する」

 

苦い顔をしつつ頷いたクリスは、グラスに残ったビールを飲み干して、皿の上にあったサンドイッチの切れ端を口の中に放り込むと、クレアと一緒にテーブルの上で伸びているジルを抱えて帰っていった。

 

「V!兄さんがジルに変なことさせないように、私がしっかりと監視しておくから、安心して!」

 

去り際にクレアがそう言って出ていったので、隣のクリスがそれを聞いて躓いたのは流石に笑うしかない。

 

しかし、まだネットが発展していない時代だと、入り込んでしまえばセキュリティを突破するのは容易ではあるのだが、情報を集めるという時になった途端に難易度が急上昇する。

あのアンブレラとかいう連中、裏で何をやっているのか情報を引っこ抜こうとしたのだが、ほとんどの社内ネットワークはクローズドネットワークで構築されていて、支社間の通信も埋没された有線ケーブルによってのみ行われているらしいので、全くといって良いほど情報を得られていないのが現状だ。

特に、FAXと呼ばれる通信手段や紙を使った郵便と呼ばれる情報のやり取りが盛んに行われているので、それ系の諜報活動は完全に私の専門外である。

一応少数の広域ネットワークに接続されている情報端末に潜り込んでもみたのだが、そこからは大した情報は得られず、得られた中でも最大情報と言えば受付の訪問者リストくらいなものだった。

今度売り出される化粧品の性能情報など、ハッキリ言ってゴミみたいなもので、企業としての本当の姿を垣間見れるようなものでは決してない。

 

この街に来てからは、せっかく築き上げた人間関係や信頼を壊したく無いので、まだ一度も殺しをしていないが、このままではそうも言っていられなくなるかもしれない。

幸い、アンブレラ社はメガコーポなので末端の社員まで含めたら数万人規模の大企業だ。

中には人の風上にも置けないようなクズなんか、そこら辺に掃いて捨てるほど居る。

特にこのラクーンシティでは、アンブレラ社の城下町という性質上、社員がかなり幅を利かせており、何を勘違いしたのかやりたい放題やってしまう奴が一定数出てきてしまう。

警察も署長がかなり好き放題していて、アンブレラ社員は仮に逮捕されたとしても、かなりの割合で不起訴や即時釈放されたりしてしまうので、一部は警官に対してまで舐めた態度を取るようになっている。

署内では、汚職に塗れた警官ですらそういった連中とアイアンズ署長に対して鬱憤を溜めており、どうにかして舐め腐った不良アンブレラの木端社員を痛めつけて豚箱にぶち込んでやろうかという話がされていた。

 

そこで、私がちょっとした傭兵業に名乗り出たと言うわけだ。

これでもアフターライフで1番腕利きのサイバーパンクになった女なので、クロームやインプラントを持っていないナチュラルに遅れなんて取るわけがない。

仕事は簡単だ。

連中を軽くボコボコにして、自らの意思で警察署に出頭させて自らの罪を告白するように仕向ければ良い。

その時ついでに、その中で消えたとして困らない奴をピックアップしてバレないように始末し、顔と名前とIDを頂戴するのだ。

あとは光学迷彩と行動インプリントを使えば、アンブレラ社に入り放題って寸法。

そういうことで、ジルやクリス、バリーや警部補のマービンといった正義に燃える警察官達や裏工作は任せておけと私怨に塗れた汚職警官達から依頼されて、夜の闇に紛れながらヒューマンハントをするに至った。

 

 

 

ところ変わって3月某日ーーー

小雨がシトシトと降っており、暦上は春であるがいまだに冬の気配が残っていて肌寒い。

FIAの工作員スーツは全て防弾繊維の上から特殊樹脂を染み込ませたもので出来ており、外側からは水を透過させずに全て表面を流れ落ちていく。

 

眼下の路地裏には、4人ほどの木端アンブレラ社員が小遣い稼ぎのつもりなのか、中年の男性を引き摺り込んで恐喝をしていた。

これが俗に言うオヤジ狩りというやつなのだろうか。

アンブレラ社員と一口に言っても、あのビルのオフィスでバリバリと働いているインテリから、製薬に勤しんでいる研究員、そこから出るであろう薬品廃棄物を処理するブルーカラーと様々いるので、もらっているサラリーも千差万別。

こうやってカツアゲしないと遊ぶ金も無い奴だっているだろう。

資本主義万歳。

 

『どんな時代だろうと、力の無い者は一方的に搾取される。合衆国万歳ってか?ま、やっこさんに同情なんてする心は、生憎と持ち合わせていないがな』

 

「ナイトシティで生活していれば、同情なんてものは3日も保たずに消え失せるわね。ホント同意するわ」

 

ジャンプさせられて、ポケットの中の1セント硬貨まで毟り取られた中年は、最後に顔面と腹を殴られて這う這うの体で路地裏から転がり逃げていった。

その無様な様子を見て、趣味の悪い事に4人のクズどもはゲラゲラと後ろ指を指しながら笑っている。

耳を澄ますと、次は若い女でも引き摺り込んで犯してやろうなんて会話まで始める始末だ。

本当に救いようもない。

 

『邪魔者も消えたところだし、そろそろ良いんじゃねぇか?』

 

「そうね」

 

トンっとアパートの屋上から飛び降りて、3階下の路地裏に着地する。

ドスっと着地の衝撃と音を振り向いた4人が、全身黒尽くめのスーツに覆面をしている私を見て仰天したような顔をしているので、反応できない速度でスプリントして本当に軽く拳を振るう。

ゴリラアームで普通に殴ってしまうと、ナチュラルの人間なんて簡単に砕けてしまうので、軽く拳で押すような感じで殴る。

それでも、押された勢いのまま空中を飛んでいき、強く背中を壁に叩きつけられて一瞬で行動不能になってしまうのだが…

どこかで見たカンフー映画のようで、中々に面白い。

 

こんな人数に任せたカツアゲをしているような連中に、腕に覚えのある奴なんているわけもなく、実質3秒も掛からずに4人とも地面で呻くだけになる。

こうなれば、拘束しなくても暫くは逃げれない。

連中の懐を弄って、財布からIDと社員証を回収して中身を確認する。

3人は清掃員やらコピー担当みたいな社内の地位も低いクズだったが、1人は薬品納入担当で中の下くらいの少し地位の高いクズがいた。

この中の下クズをグラップルで絞め落として、残りの3人を胸ぐらを掴み上げて軽く叩いて痛めつけ、最初の人相が分からなくなるくらいにボコボコにしていく。

脳に障害が残ったり死んだりしないように慎重にボコったので、ボクシングの試合でもそうそう見ないような、芸術的なボコられ顔になった。

その頃には、3人とも赦しを乞う言葉を吐くだけのラジオに成長したので、赦して欲しければこれから自分の足で警察に出頭し、今までの罪を全て警察署のロビーで告白しろと命令する。

もしこのまま直で警察署に行かずに逃げるようなことがあれば、たとえトイレに隠れていても必ず探し出して息の根を止めてやると脅しておく。

それから3人のケツを蹴り上げて表通りに叩き出すと、よろめいてあちこちに身体をぶつけながらラクーンシティ警察署に向かってヨロヨロと走り出した。

 

それを確認してから、気絶させた男を担ぎ上げてマンホールを外し下水道に入っていく。

この路地裏は少し曲がっているので、表通りからは見通しが悪くマンホールのある場所は人目につかない。

こういうやつを始末するにはもってこいだ。

 

汚物と物の腐った臭いをミックスした、世にも悍ましい酷い臭いのする下水道を適当に進み*1、雨で増水したせいか少し冠水して濡れている点検用通路の上に男を降ろす。

まだ気絶している男の顔面をスキャンして行動インプリントに記憶させ、所持品と衣服を剥ぎ取って仕舞い込む。

それから、男を叩き起こしてボイスのサンプルを録った後にゴリラアームで顔面を砕けば、身分不明の死体の一丁上がりだ。

 

『ひでぇな。ゴミ野郎とは言え、顔面まで砕くことはねえんじゃねぇか?下水に捨てときゃあ、すぐにグズグズになって誰か判らなくなんだろ』

 

ジョニーが、顔面を砕かれて神経反射で痙攣している男の横に座り込み、その顔の跡地を覗き込みながらそんなことを宣う。

 

「いつどこで何があるか分からないんだから、念には念を入れておいた方が無難じゃない」

 

『おっと、それは失念していた。流石、1人でアラサカにカチ込む女の言うことは一味違うな』

 

「ちょっと、その冗談はウケないわよ」

 

『これは失敬』

 

ジョニーが半笑いで頭の中に引っ込んだので、もう用はないと踵を返して帰ろうと歩き出したところ、後ろからバシャバシャと激しい水音が聞こえて思わず振り返る。

そこには、激しく波打つ汚水と波紋だけが残り、さっきまであった死体が影も形もない。

 

「……ジョニー、私の幻覚だと思う?」

 

『まさか、その線は無いだろ。どう考えても、状況証拠的に何かが死体を水の中に引き摺り込んだに決まってんだろ』

 

「何かって…何よ。さっきの男、70kgくらいあったわよ」

 

『キロじゃ分かんねえよ』

 

「あー、だいたい150ポンドくらいかしら」

 

くっ、こんなところでアラサカ時代の職業病が…ヤードポンド法なんて滅びてしまえば良いのに。

 

『そんだけ重たくて、下水道って言えば導き出される答えは1つだな』

 

「やけにすんなりと答えが導き出されるじゃ無い」

 

『当たり前だろうが、もう少し大衆の歴史に興味を持てよ。良いか?こう言うのは昔から相場が決まってんだ。答えはワニだ』

 

そうジョニーが言った瞬間、何かが水面からこちらに大きな口を開けて飛びかかって来た。

シナプス加速器が反応時間を引き延ばし、その間にサンデヴィスタンを使って大きく後方に距離を取る。

どこにそんな巨体が隠れていたんだと言うほどデカいバケモノは、バクンッと顎を空振りしたあと、狩りを失敗したと気付いて私を探すように大きく頭を振ってから、のそりのそりと水路に戻って鼻先と目玉を水面から出しながらこちらに向かって泳いできた。

 

「……ねぇ、私実物のワニって見たことないんだけど、あんな大きいの?」

 

『んな訳ねぇよ!ありゃバカデカ過ぎる!逃げろV!!』

 

光学迷彩を起動しながら、強化腱と強化脚関節の力を全力で発揮して全速力で通路を駆け抜ける。

水を伝わる振動と音で私を感知したのか、ワニのバケモノが後ろから地響きと激しい水音を立てながら迫って来ているのが分かった。

爆発物は下水道のような密閉空間だと危険なので、GASH対人グレネードを後手に投げつける。

空中で静止したソレは、回転しながら赤い対人レーザーを撒き散らす。

生身の人間なら人体をバラバラに焼き切れるほどの出力があるのだが、デカい図体とそれに見合った堅固な表皮によって阻まれ、肉の奥深くまでレーザーが届かない。

それでも表皮とそこに近い肉は灼いているらしいので、目玉を灼かれるのを嫌がったのか痛がっているのか、のたうち回って足を止めたので、その隙にハシゴを急いで登り切った。

マンホールの蓋を閉めてから、ほっと一息吐く。

 

「まさか、この街の地下にあんなバケモノが棲みついているなんて」

 

『概ね、どこかのバカがどこまで育つか知らないで飼って、飼いきれなくなって下水道に逃したんだろうが…普通はあれだけデカく成長なんてしないぜ。アンブレラの連中が、きちんと処理しないで薬品を下水に流してんじゃねぇか?』

 

「もしそれなら、本当に最悪ね。まぁ、製薬系のメガコーポならそのくらいは平気でしてそう。ナイトシティも似たような話はよく聞くし」

 

『ともあれ、アイツが証拠を物理的に処理してくれたんだから、結果オーライだな』

 

「ホントよ」

*1
あまりにも臭いので、気絶する前に鼻の嗅覚センサーをカットした




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