Good Luck , Raccoon City 【第一部完結】   作:持麻呂

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The heroine won't die so easily...


間話2 Rescue Operation

私はあの日、ゴミ捨て場でVと出会った時のことを死ぬまで忘れないだろう。

 

1997年の5月、まだ夜は少し肌寒いような日だった。

私はS.T.A.R.S.*1の同僚であるクリスと、署内の割り当てに従って市内パトロールに出動していた。

たとえ特殊部隊といえども、市内のことを把握して市民達との理解を支持を得られなければならないと、当時のRPD署長であったブライアン・アイアンズの主張のもと、特殊部隊スターズ所属の隊員達は交通機動課とともに市内のパトロールをしていたのだ。

 

今となっては、アイアンズはスターズが署内にずっと居ると、賄賂で買った美術品の出所やその賄賂の出所などを探られるのではないかと思っていたのかもしれない。

ともかく、そう言うもっともらしい理由*2を真に受けて、真面目に市内をパトロールしている時に、たまたま歩道にいたカップルに呼び止められて、言われた場所に行ってみることになった。

 

呼び止められた場所はラクーンシティの中心街から外れたところで、本来ならそこは私達が割り当てられたパトロールの範囲ではなく、クリスがあまりに事件が起きない事につまらないとか言い出して、ハンドルを握っていることをいい事に勝手に向かい出した先でのことで、正直頭を抱えたくなったのは言うまでもない。

何かしらの案件や事件に関与した場合、事後に報告書を提出しなければならないから、この場合勝手に持ち場から離れて範囲外をパトロールしたことを越権行為と捉えられかねないからだ。

今でこそクリスは部隊を率いたりする立場になっているので、昔ほど脳筋ではなくなっているものの、当時のクリスは脳みそまで筋肉でも詰まっているのではないかと言うほど書類仕事が好きでは無かった*3ので、いつも年下の私に押し付けてきて今思い出しても嫌になる。

 

私は後々のことを考えて嫌な気持ちになりながらも言われた場所にパトカーで向かい、じゃんけん(Rock, Paper, Scissors)で負けた私が様子を見に行く事になった。

車から降りる前に、クリスが賭けをしようと言い出して、賭けに負けたほうがBar Jackで奢るというもの。

本当なら警察が賭け事なんて良くないから、いつもなら断るのだけど、その時は後々書かされるであろう始末書のことでヤケクソになっていたから、売り言葉に買い言葉で買ってしまった。

ちなみに、その時私は酔っ払いに賭けている。

クリスは薬中に賭けて、結局結果はドローだった訳だけど…

 

雑居ビルとアパートメントの間にある薄暗い路地に入っていくと、そこにあったゴミ捨て場にたくさんのゴミ袋に埋もれるような形で大の字に寝っ転がっていた女性が居て、パッと見た感じはレイプされてヤリ捨てられた性被害者か、次点で薬物をやってラリった薬中のどちらかにしか見えず、酔っ払いには…まあ見えなくもないけど、今回の賭けは負けかとガッカリした記憶がある。

 

軽く声を掛ける程度では全然起きず、声を掛け続けながら顔を軽く叩くとようやく目を覚ましたのだけど、話し掛けたのにポーッとしているし、虚空に向かって話し掛けるし話もどうにも噛み合わない。

もう完全に薬物中毒者のそれにしか見えなかったので、とりあえずパトカーに乗せて警察署で詳しく取り調べをしようとして、手を引っ張った。

まさか、あんなに重たいなんて…

 

手を持って引っ張ったところでようやくこちらをちゃんと認識してくれたからよかったけど、そうじゃ無かったらどうやって移動させればという話になったので、余計に頭が痛くなるところだ。

それからなんとか自分で歩いてもらってパトカーに乗せたは良いものの、クリスのバカのせいで賭けの内容を聞かれてしまって、ボソリと汚職警官って言われたのが1番の屈辱だろう。

多分一生忘れない…

父のようにはならず、真面目な警察官になるって誓ったのに、安易に賭けなんて乗らなければよかったと今でも思う。

 

警察署に連れてきてからは、色々と大変だった。

持ち物検査に薬物検査、アルコール検査なんかをして、全部薬物やアルコールの反応は無いし、調書をとっても支離滅裂なことを言い出して訳がわからないし、ただの精神疾患を患ってる人だと思えばそうでもないし、本当になんであんな場所で寝ていたのかもわからない。

本人だって寝ていた前の記憶が無いとか言って来るので、何かしらの事件に巻き込まれて一時的に記憶喪失になっている可能性も否定できないから、簡単に外に放り出すこともできず、とりあえず保護することになった。

ハッキリ言って記憶喪失というのも怪しかったけど、本人がそう言い張るし実際に身分を確認できないから仕方ない。

 

元々、このラクーンシティは孤児や精神疾患、DV被害者に寛容で、彼等のためにわざわざシェルターや病院、孤児院も作って無料で提供しているので、そちらに案内することにした。

この時はまだ、アンブレラがなんでこれらの施設を無料で提供していたのか知らなかったが、まさか人体実験の被験者にするために集めていたなんて思いもしなかった。

知っていたら、Vをアンブレラの保護シェルターなんかにおくらなかったのに…

ラクーン事件後、アンブレラ訴訟の際に公開された資料に幾つもの実験映像があって、その中にVが私に紹介してきた同室の子連れ女性の姿もあり、それを見た時は人目があろうと関係なく吐き戻してしまった。

みんなは、私がグロテスクでショックなものを見たせいだと思っていたけど、それは違う。

 

私はあの時、Vから『色々と境遇が大変そうだから、警察官としても気にかけて欲しい』って言われたのに、私は直接頼まれた人すら助けられなかったのだ。

Vにそのことを謝ると、自分だって知った時は既に手遅れだったから、私が気に病む必要はないと言われたけど、どうしても私はそう思えない。

今でもたまに夢に出てきて、手を繋いだ子供と一緒に血塗れで恨めしそうな顔で私をじっと見て来る。

私は今でも、その足元に跪いて謝ることしか出来ない。

彼女たちはもう、悲しんだり怒ったりすることさえ出来ないのに…

 

ともあれ、私はVとそうやって出会い、何故か仕事の面倒まで見るような仲になっていて、気付いたら仕事の愚痴やクリスのこと、ウェスカーの悪口なんかまで相談したりしていた。

Vは人の心にスルリと入り込むのが上手いと思う。

面倒見が良くて案外姉御肌だし、歳も7つ離れていたから無意識に甘えていたのかもしれない。

それでも不思議なことが沢山あって、まずはモノを出したり消したりする手品がとても上手い。

普通はそんなところにそんなモノ入らないと思うのだが、どういうわけか出たり消したりするのだから手品としか形容するしかない。

魔法なんて存在しないのだから。

 

他には、クリスなんて片手で捻れるほど腕力が強かったり、建物の2階まで簡単に跳躍してしまったり、反射神経も抜群な上、コンピュータのハッキングや射撃の腕前も一流。

後々知ったことだけど、爆発物の使用や処理、運転もお手のもので、むしろ何が出来ないのか知りたいぐらいだ。

 

なんでいまだにバーテンダーをしたり、気が向いたら寒村で1年くらい世捨て人の真似事をしたりするのか理解に苦しむ。

大体は行った先の寒村で大事件やバイオハザードが起きて、毎回それになんかしらの形で巻き込まれるので、それはそれで可哀想だとは思う。

 

それに口ではなんだかんだ言っていても義理堅く、ラクーン事件の時はもっと早く避難出来たはずなのに、Jackのマスターやロバートが避難しないので最後まで避難しなかったし、ネメシスT型に掴まれた私を見捨てることなく、一切躊躇しないでバスから飛び降りてくれた。

きっとあの時、Vがバスから飛び降りて助けてくれなかったら、私は今ここに居なかったに違いない。

それに、ネメシスにウィルスを感染させられた時もVがワクチンを打ってくれなかったら、ゾンビになるか死体を晒してラクーンシティと一緒に消滅していただろう。

 

ラクーン事件の後もどこから入手して来たのか、アンブレラの最高機密文書や実験データなどを手に入れてくれたので裁判に役立てたし、裁判中もアンブレラの秘密基地や研究所を見つけたので、手伝って欲しいと言えば『報酬次第では良いわよ』なんて言いながらも手伝ってくれた。

その…キッチリ代金は要求されたけど…私の身体とか要求された時はその、どうしようかと…

 

今でもVとの関係は続いている。

私が助けを請えば、彼女は必ず助けに来てくれるだろう。

もしかしたら、探しに来てくれるかもしれない。

私はその微かな希望の光に縋りながら、ウェスカーによって行われる実験を必死に耐え続けた。

 

 

 

 

2006年某月

 

 

最近、ジルと連絡が取れない。

BSAAでジルとタッグを組んでいるクリスも中々連絡が付かないので、少し気になっている。

まぁ、彼らもバイオテロ対策で忙しいのは知っているので、その内気付いた時に連絡が来るだろう。

 

それから数ヶ月経って2007年も半ばを過ぎたが、一向に2人からの連絡が来ない。

報連相が出来ないクリスはともかく、マメな性格のジルからも一切来ないなんてやはり普通ではない。

こちらから動いてみるべきかと思っていたら、バイトしているBarにクリスがやって来たのだが、どうにも様子がおかしい。

髪の毛はボサボサで少し白髪が混じっているし、目の下の隈も酷い。

髭も毎回剃っていないのか、無精髭も生えている状態だし、それにジルを伴っていないのだ。

 

ジルはどうしたと聞いても俯くだけで一向に口を割らないので、どういうことなのか聞き出すために胸ぐらを掴んでバックヤードに引き摺り込み締め上げる。

そこでようやく口を開いたと思ったら、ジルが死んだとか言い始めた。

一瞬このゴリラが何を言ったのか理解出来なかったので、もう一度言わせるとやっぱりジルが死んだと言ってくる。

詳しく話を聞き出すと、数ヶ月前にジルと一緒にオズウェル・E・スペンサーを逮捕するべく彼の屋敷に潜入したらしい。

そこで、クリスたちは宿敵であるウェスカーに再び遭遇して戦闘になり、トドメを刺されそうになったクリスを守るため、ジルはウェスカーに飛びついてヤツを道連れに崖から転落してしまったらしい。

崖はかなり深いらしく、あそこから落ちたらまず助からないと言って、クリスは悔し涙を浮かべながら私を振り解いた。

結局、スペンサーはウェスカーに殺害されており逮捕に至らず、ジルの遺体も回収出来ず仕舞いだそうだ。

 

このままだとクリスをぶん殴りそうだったので、スペンサー邸の場所を無理矢理聞き出して私が直接行って、崖下からジルの亡骸を回収して来ることにした。

流石に、ずっと野晒しのままは可哀想だ。

この世界に来てから、一番最初に親切にしてくれたのはジルだし、おかげでこの時代に馴染むのも容易だったわけだし。

 

そういうことで、早速Barを暇乞いしてヨーロッパに向かう。

寂れた辺境に佇む古びた洋館がスペンサー邸で、中に入るとかなりあっちこっちが荒らされていた。

スペンサーが殺害された後、BSAAが近年のバイオテロやBOW売買の証拠を掴むために家宅捜索した跡のようだ。

家具やらがひっくり返っている。

来る前にクリスから聞いた話では、その時点でも屋敷内には数々の侵入者を拒む仕掛けが施されており、隊員に死傷者が複数名出たらしい。

相変わらず、偏屈でキチガイのジジイっぷりは変わらないようだ。

裁判で散々やり合った時も、大体そんな感じだった。

 

クリスたちとウェスカーが殺し合ったと聞いたスペンサーの執務室に入ると、彼が使用していたであろう生命維持装置付きの車椅子がポツンと佇んでおり、その先のステンドグラスが割れていて風が吹き込んでくる。

 

そこから下を覗くと、谷底は真っ暗闇で何も見えない。

下から吹き上げてくる風に髪を揺らされながら、この下に落ちていったジルのことを思う。

ロックフォード島で再会したウェスカーから見るに、ここから落ちた程度で死ぬとはどうしても思えない。

直接谷底まで行って、確かめてみることにする。

スペンサー邸の適当な太い柱に持参した金属ワイヤーを引っ掛けて、割れ残っているステンドグラスを綺麗に排除したところから垂らし、ファストロープでスルスルと降下していく。

 

どんどんと暗くなるが、途中でケミカルライトを複数落として降下地点の位置を把握しているので恐怖心はない。

着地の手前でギュッとゴリラアームでワイヤーを締め上げ、降下速度を落とす。

谷底は真っ暗で、ケミカルライトの灯りで見える範囲しない見えないが、川などが流れていないようなので、もし遺体があるならば近くにあるはずだ。

所持品から大型ライトを取り出して点灯すると、谷底がパッと昼間のように明るくなる。

 

付近にはウェスカーやジルの遺体は見つからない。

谷底には虫やネズミのような小型動物の姿しか見えないので、肉は無くなっても骨くらいは残るはずだが、それが見つからないということは少なくとも1人は死んでいないという証左に他ならない。

この場合、生き残っているのはウェスカーだろうが…

とにかく、私が観測して死亡が確定していない時点では死んでないと判断して、谷底を隈無く捜索するとあちこちに血が飛び散った痕跡と、身体をぶつけたであろう壁面が崩れた箇所を発見した。

そのまま先に進んでいくと、上から垂らされたまま放置されているロープが見つかる。

そこそこ新しいものだ。

やはり、誰かが登り降りしたような形跡があるので、ウェスカーの生存はまず間違いないと見て良い。

 

降りて来た時に使ったワイヤーを登り、近所にある適当なネット回線を使ってウェスカーの居場所を探す。

ロックフォード島事件の後、まだ貧弱だったネットに不良AIを使ってウェスカーの痕跡を探した時、H.C.F.という別の巨大製薬企業*4の社内ネットワークに名前を見つけた。

当時は彼に含むところは少なく、私としては利害が一致するところもあったので、その時はわざわざ会いに行っても挨拶程度の警告で終わらせたのだが、まぁ野心とプライドの塊である彼がその程度のことでは止まらないだろうとは思っていたので、今回の出来事での驚き自体は少ない。

結局、あの時に殺しておけば良かったのだが、たらればを言っても仕方がない。

 

とりあえず以前と同じくH.C.F.の社内ネットワークに入り込み、1998年に比べたら格段に発達したがまだまだゴミみたいなICE*5を濡れティッシュのように引き裂いて、スタンドアローンのコンピュータも電波を発する電話回線やコピー機と言った周辺機器から侵食していって丸裸にしていく。

時代が進みネットやコンピュータが進歩、発展するにつれて、相対的に私の強みがより活かされるのはなんという皮肉だろうか。

H.C.F.のネットワーク保安担当部署が異変に気付いたときには時すでに遅く、H.C.F.の社内ネットワークは私のデーモンに全て支配されており、外部に繋がるネット回線を物理的に破壊しても電話回線や社屋にある衛星通信装置に勝手に接続して、すべての機器を破壊するまで情報を垂れ流すラジオになってしまった。

 

個人のコンピュータにある情報は大して価値が無いので、メインフレームやサブフレームをメインに漁っていくと、出るわ出るわBOWの開発や売買記録。

やはり、アルバート・ウェスカーの名前はあちこちに出て来ており、人事評価だか調査書のなかでウェスカーがH.C.F.を裏切り、トライセルに接近しつつあるとの記述を見つけた。

そこから、H.C.F.のネットワークを踏み台にしてトライセル社のネットワークを侵略。

こちらは複合企業(コングロマリット)だけあって、支社や部門がかなりの数に分かれているので、製薬部門と海運部門を重点的に攻撃する。

有ろうが無かろうが一緒なICEを強引にぶち抜き、バレても攻撃先はH.C.F.からのハッキング攻撃としかわからないので、最短で部門の全ネットワーク権限と操作権を掌握してウェスカーが関与していそうなところを探す。

 

海運部門から、怪しい積荷や薬品の仕入れをピックアップすると、製薬部門の一部署が浮上してくる。

新進気鋭の若手幹部、エクセラ・ギオネが牽引しているところだ。

そこが出している医薬品や陰で行っているBOWの研究開発が、かつてアンブレラをハックしたときに《U.M.F.-013》というスパコンから引き抜いた技術と類似する点が多い。

つまり、アンブレラの関係者が協力ないし参加している可能性があると言うことだ。

そこを攻撃して、コンピュータの中身を滅茶苦茶にしながらすべての情報を引き抜くと、ビンゴ!

ウェスカーの足跡を発見した。

 

この女はアフリカ支社の生物兵器研究開発主任らしいので、ここにジルが居ると当たりをつけて潜入することにする。

目的はジルを捜索発見し、彼女を回収して引き上げること。

ウェスカーにバッタリ出くわそうが、彼が邪魔立てしなければ無視するつもりだ。

ウェスカーを退治するのは、クリス達に任せる。

 

クリスに言うと勝手に突っ込んで行って面倒臭いことになりそうなので、奴には言うなと告げた上でレオンとクレアには行き先を告げておく。

そして単身アフリカに飛び*6、トライセルのアフリカ支社が所有する研究施設群に潜入した。

 

まだここにジルがいるかどうか分からないので、殺しは無しにしてサンデヴィスタンと光学迷彩を併用して、物陰から物陰へと移動しながら先に進んでいく。

工場も隣接されていて施設内が広大なので、1人で探すのは意外に骨が折れたが、ここのメインフレームにアクセスできるコンピュータを発見したら、そこから実験体がいる区画を割り出してそこを目掛けて進む。

強化脚関節や強化腱、ゴリラアームを駆使した立体的機動が物をいい、施設の屋上から屋上へと飛び移りながら前進して、屋上の排気口を破壊して内部に侵入する。

狭い配管の中をマップを頼りに這い回って、天井から目的地に到達した。

中の様子を天井の通気口から観察すると、ジルが入っているであろうポッドを見つける。

緑色掛かった半透明の液体に浸かっており、髪の色も茶髪から少し金髪に近い色になっているようだが、間違いなくジルだ。

全裸で口に酸素マスクのような物を装着させられて、謎の液体にぷかぷかと浮いている。

近くには研究員と思わしき白衣の男が1人いるので、通気口をこっそりと外して上から細いワイヤーロープを下ろしていく。

研究員はこちらに全く気付いていないので、そのままワイヤーロープを首に引っ掛けて巻き付け、通気用の配管まで引っ張り上げる。

上に辿り着くまでには、細いワイヤーロープが首に食い込んで研究員は絶命しているので、そのまま引き摺り込んで死体を隠す。

あとは床に降りて、適当にポチポチと制御盤のそれっぽいスイッチを押してジルをポッドから解放した。

 

全面のガラスが動いて、ザバァっと薬液ごとジルが前に放り出される。

地面にぶつかる前に抱き留めて、軽く顔を叩いて揺すぶってみるが反応は無い。

息はしているので、その場で色の黒い服を着せて連れ帰る支度をする。

ジルを持って来た背負子に座らせハーネスで固定してから、防弾繊維で出来たシートを上から被せる。

あとは、監視カメラをクイックハックして巡回警備や他の研究員の目を掻い潜りつつ、サンデヴィスタンで敷地内を駆け抜けた。

途中、若い女と談笑しながら歩いている金髪グラサンを見かけたが、光学迷彩を使いながらサンデヴィスタンで高速移動していたので、こちらを認識する前に通り過ぎている。

 

正面からノーアラートで突破し、住民からパクったバイクのライトを壊し、夜の荒野を月明かりとキロシの暗視機能を頼りに駆け抜けてジブチにある米軍基地キャンプ・レモニエを目指した。

1000キロちょいの行程なので、何度も乗り物を変えて*7しながら、3日程かけてジブチに到着する。

本当なら、ジルにバウンスバックを投与すれば良いのだろうが、そうすると奇跡的なバランスで共生して、ジルの身体を強化しているT-ウィルスまで死滅させてしまいそうなので使用出来ないのだ。

3日間の逃避行では、ジルのバイタルをUIを通して監視し続けており、幸いだったのは意識が戻らなくてもバイタル自体は安定していたことである。

 

移動の最中に、合衆国のエージェントになっていたレオンのコネを使い倒し、キャンプ・レモニエの航空機を使って直接合衆国まで帰れる便を手配した。

ジルが私の予想通り生きていたことを知ったレオンは驚いていたが、すぐに手配してくれると言ってくれたので安心して任せる。

あと、クレアとシェリーには言ってもいいけど、BSAAと直情ゴリラ(クリス)には絶対に言うなとも伝える。

まだまだ情報を引っ張れるかもしれないのに、空爆で更地にでもされたら困るからだ。

ヤツならやりかねない…

 

ジルをなんとか合衆国に連れて帰ることに成功した後は、こっそりとレベッカを帰国させてジルの治療を行い、その最中に彼女から幾つものウィルスの完璧な抗体を得られたことから、ウェスカーはジルを使ってウィルス実験をしていたことが判明した。

その後無事にジルも意識が戻ったので、リハビリが終わったあたりで漸く熱血ゴリラ(クリス)に報告したら殴り掛かられた。

もちろんすぐに返り討ちにしてノックアウトしてやったが、ともあれそこで散々に抜き取ってやった情報とウェスカーの存在という人参をぶら下げてやると、飢えた馬のように飛び付いて彼の陰謀を破壊しに、アフリカへ即飛び立って行った。

相変わらず忙しいヤツだ。

 

それから、2009年にクリスはシェバという現地産の相棒と共に、遂に念願のウェスカーを打倒することに成功したらしい。

どうせなら、ロックフォード島事件の時にもっとボコっておけば良かった。

 

 

「ねえV?」

 

「どうかした?」

 

「助けに来てくれて、ありがとう」

 

「アンタらしくないわね、チーカ」

 

「その呼び方やめてよ。もうお嬢さんって歳じゃないし…。でも、Vなら必ず来てくれるって信じてた」

 

「あら、期待に応えられる女で良かったわね」

 

「だから、本当にありがとう」

 

ジルは私に向かって微笑んだ。

*1
以降スターズ

*2
実際に、当時はアイアンズの言っていることは一理あると思っていた。

*3
苦手で出来ないのではなく、好きではないからやらない。

*4
バイオ9でH.C.F.のロゴ入りのコンテナだかドラム缶があったので、この作品ではそう言う名前の会社と言う設定にします。

*5
ファイアウォールのこと。cyberpunk用語

*6
空港の保安検査は光学迷彩で突破

*7
パクったり現金で買ったり




沢山の高評価、お気に入り登録、ご感想ありがとうございます!!
誤字訂正、助かっております!

間話その2です。
少しだけ増量してます。
ジルの回想をつらつらと書いている内に、これ5の供養になるのでは?と思って、本編では書く予定のない5をチョロっと出しつつ絡めました。
だいぶ展開早めのサクサクですが、5はこれで勘弁してください!!

それと、4を書く前にコードベロニカを少し挟むかもしれません。
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