Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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The world might be smaller than I thought...


第二十話 An Unexpected Reunion

「どちらにせよ、もうこの収容所はダメね。隣の棟も同じ構造なら、中はゾンビで溢れているでしょうから独房の方を探してみましょうか」

 

『どこも手遅れな気がするけどな』

 

独房がある棟は二つ隣なので、そちらに屋根伝いに向かう。

ちょうど、負傷した兵士が腹部を庇いながらゾンビ犬を撃ち殺し、独房のある棟の中に入っていくところだった。

背中側も出血していたので、ゾンビの咬傷ではなく銃創のようだ。

バタンと扉が閉まり、ゾンビ達も向きを変えて銃声の鳴る方へと向かっていく。

 

耳の感度を上げて、中の様子に耳を澄ましてみると、牢屋の扉を開けるような金属音がした後に話し声が聞こえてきた。

男と女の声だが、片方は先程腹を庇っていた兵隊の男だろう。

怒ったり怒鳴ったりしているわけではなく、比較的穏やかに話しているので会話の内容までは聞き取れない。

外のやり取りが煩過ぎるというのが一番大きいだろう。

それでも、銃声の大半は落ち着いてしまったので、決着が付きつつあるのかもしれない。

 

話終わったのか、部屋の中を歩き回る音がしてからカチャリとドアノブを回して入り口の扉が開く。

そこから出てきたのは、ポニーテールにバイカーが着るような赤いライダースジャケットを身に纏った女。

どこかで見たことのあるような後ろ姿に、思わず屋根の上から声を掛けた。

 

「……クレア?」

 

「えっ?」

 

パッと振り返ったその女は、クレアだった。

真後ろから声を掛けられたことに反応して振り返ったので、屋根の上にいる私に気づいていないようだ。

 

「上よ、屋根の上」

 

「っ…誰?!」

 

「おっと」

 

顔の上半分を覆うようなヘルメットをしていることを忘れていたので、脱ぎ去って素顔を晒すとクレアがびっくりして声を上げた。

 

「V!なんでここに!?」

 

「それはこっちのセリフでしょ。アナタ、ヨーロッパにクリスを探しに行ったんじゃない?なんでアンブレラに捕まってたのよ」

 

屋根の上から飛び降りて、クレアの後ろに迫っていたゾンビの頭の上に着地して体重で踏み砕く。

 

「…ゾンビ!ここもT-ウィルスでバイオハザードが?」

 

「誰かさんが撒き散らしたみたいよ。それで、なんでここに?」

 

クレアから聞き出すと、なんとクリスの足跡を辿って行ったらフランスでぷっつりと辿れなくなってしまったので、兄のことだからアンブレラに突っ込んでいって捕まったのではないかと思ったらしい。

それで、単独パリにあるアンブレラ支社に潜入したら見つかって捕まってしまったらしい。

何というか、兄妹ってここまで似るものなのだろうか。

クリスに比べたら、クレアの方が全然マシなのだが…

それにしても、よくその場で殺されなかったものだ。

運が良いとしか言い様が無い。

 

「全く、随分と無茶するわねぇ…」

 

「それより、どうしてVはここに?」

 

「私はジルから依頼されたのよ。*1それで、アンブレラの悪事の証拠収集の為に潜入してたってわけ。そしたら急にどこかの連中がこの島に襲撃仕掛けてきて、ドンパチ始まっちゃったからこちらに逃げてきたってわけ」

 

「…Vって、バーテンダーやる前はなんの仕事してたの?」

 

「いろいろよ」

 

「いろいろ…」

 

ともあれ、クレアと合流したので情報収集はここら辺で切り上げて、彼女を無事に家に帰すことを優先しよう。

どうやって一気にT-ウィルスの汚染を広めたのか分からないが、囚人のほとんどがゾンビになっているらしく、ナイフ一本しか持ってないクレアに代わってサイレンサーをつけたユニティで始末しながら進もうとした。

 

次の瞬間、すごい音と共に目の前の壁がぶち破られて、貨物トラックの運転席がグシャグシャになりながら飛び込んできた。

慌ててクレアを掴んで飛び退く。

どこかのバカがトラックの中で変異して、操縦不能になって突っ込んできたらしいが、トラックからは燃料が漏れ出していていつ引火してもおかしくない。

中でゾンビに変異したバカがまぐれでドアを開けた瞬間、着ている服から静電気が飛び散ったのかボワッと火が付いた。

軽油だったなら、外は寒いし静電気程度では引火しなかったのだが、ガソリンで動くタイプのトラックだったらしい。

辺りが輻射熱で炙られて、一気に40度近くまで気温が上昇した。

すぐに離れたいのだが、トラックの開いたドアからジュラルミンケースが転がり落ちたのを見たので、クレアには先に進むよう言ってからサンデヴィスタンで拾ってきて、そのままその場から逃げ出す。

拾ったジュラルミンケースには、メタルインダストリーと言う会社の社名とロゴマークが刻み込まれていて、今は中身を確認する暇がないのでそのまま所持品に仕舞い込んだ。

 

逃げ出した先は門を挟んだ隣の収容所区画だが、門を潜って閉じたすぐ後に、燃料タンクの中のガソリンにまで引火したのか、ドカンと衝撃波が壁越しに伝わってきた。

空には黒煙が上がっているので、しばらくあのエリアには戻れないだろう。

 

足元に這い寄ってきていたゾンビの頭を踏み砕いてから、先に行かしたクレアを追う。

しかし、面倒なことになった。

あの爆発音で、この辺りのゾンビはみんなこちらに向かってくるかもしれない。

早くここから離れた方が良いだろう。

すぐ先で重機関銃の音もするので、クレアが心配だ。

 

とにかく数が多いゾンビを蹴りやユニティでわざわざ始末しながら進み*2、クレアとの合流を急ぐ。

少し遅くなったが、合流した先では拾ったであろうM93Rを持ったクレアと、17〜18歳くらいの青年になりかけの少年が話をしていた。

さっきの重機関銃の射撃音は、どうやら彼がゾンビを掃討する為に使っていたものからのようだ。

そこの先にある通路には、50口径で人体を引き裂かれたゾンビの死体が積み重なっている。

どれも人体パーツがバラバラになっているので、その弾の強力さが目に見えてわかる。

 

「あれ?まだ他のやつも居たのかよ」

 

「V!生き残りが居たわ。スティーブよ」

 

なんだかお調子者のような気配を感じる少年で、なぜかソワソワし始めた。

 

「よろしく、Vよ」

 

「お、おう。よろしく頼むぜ」

 

チラチラとコチラを見てくるので、何かと思ったらヘルメットを被り直していたのを思い出し、ヘルメットを脱いで素顔を晒した。

緑色に光る6つのレンズが不気味だったのか、私の顔を見てホッとした感じを出したが、すぐに取り繕うように背伸びをする。

 

「…そうだ!聞いたんだけど、ここには空港があるらしいぜ。そいつを見つけりゃ、こんな所ともおさらば出来るぜ」

 

空港というので、滑走路のある方の空を見上げると、はっきりと黒煙が幾つも立ち昇っているのがみえた。

 

「滑走路は襲撃を受けてそうだから、多分使えないんじゃないかしら」

 

すると、スティーブは首を捻って聞き返してくる。

 

「滑走路?そんなものまであったのかよ。俺が聞いたのは、水上機の空港があるらしいんだ」

 

「なるほど、水上機の空港…ねぇ」

 

私がいた2077年には、水上機なんて機種はもはや存在していなかったから、言葉としては聞いたことあるが見たことはない。

なので少し興味がある。

 

「俺はこの島からさっさと出ていきたいからな!クレア、さっきは間違って撃っちまって悪かった。じゃあな」

 

「あ、ちょっと!」

 

1人で行こうとするスティーブをクレアが呼び止めた。

するとスティーブは振り向いて、芝居掛かったように人差し指を立てて左右に振る。

 

「だめだぜ、着いてきちゃ。女は足手纏いだからな」

 

「は?」

『あん?』

 

スティーブが、キザったらしくそんなことを宣う。

乳臭いガキのくせに。

クレアは開いた口が閉じなそうだ。

 

じゃあな!と手を挙げて、門を開けて出て行ってしまった。

 

『なんだってんだ、あの栄養失調のキュウリみてぇなガキは』

 

『なんか、デリカシーやコンプライアンスがない感じが、ジョニーそっくりね』

 

『おいおい、俺はあんな乳臭ぇガキじゃねぇし、大体俺の方がもっとクールでダンディじゃねぇか』

 

『そう言うことを言ってるんじゃなくて、性格とかのことでしょ。女の〜とか言っちゃうところがさ』

 

『はん、大体事実のことしか言ってねえよ』

 

ジョニーが拗ねて、頭の中に引っ込んでしまった。

そう言うところである。

 

さて、ここから公邸に進むには大門を越えて橋を渡るのだが、私と違ってクレアは鍵を開けずに門を飛び越えられないので、馬鹿正直に鍵を開けるしかない。

流石に鉄骨のような太い金属で施錠されている門を無理矢理ゴリラアームでこじ開けたら、それこそ人間ではない扱いになってしまう*3

よくよく門のギミックを見てみると、鷲のようなものが掘り込んであるので、なんかそれっぽいエンブレムだかを嵌め込むと解錠されるようだ。

 

一先ず、開いている扉から先に進んで、何かそれっぽいものが無いかを探すことにした。

クレアは拾ったM93Rがあるので、所持品から9mmパラベラム弾を100発ほど袋に入れて渡しておく。

これで多少のゾンビはなんとかなるだろう。

どうやら、ここで訓練されていた兵隊達はM93Rが支給されていたようなので、ゾンビの腰元を探るとホルスターに銃がそのまま挿さっていたり、銃本体は無くても予備マガジンが1本あったりするので、それを回収しながら戦うこともできそうだ。

 

ラクーンシティとは違って、囚人ゾンビ以外は皆戦闘員ばっかりというのもこの島ならではなのかもしれない。

果たして、それが良いか悪いかはまた別の話だ。

今は継戦能力が維持できるか、これが大事なのだから。

 

クレアを連れてゾンビを始末しながら隣の施設に行くと、入り口に空港で見るような金属探知機が設置してあり、その手前の箱に金属類を入れないと警備システムが作動するらしい。

試しに私が通ってみると、けたたましく警報が鳴って、窓には装甲シャッターが降りくるだけでなく、通路にも分厚い金属製の隔壁が降りてきて先に進めないようになった。

金属探知機の手前には警報解除のスイッチがあったので、2人いる強みを活かすことにする。

私が既に廊下に入っているので、クレアにそのまま警報器を解除してもらって私は向こう側の部屋に行く。

抜けた先にも同じように金属探知機があったので、潜り抜けると後ろで隔壁が降りた。

こちら側にも金属探知機の脇には警報解除のスイッチがあるので、それを押して隔壁を上げる。

 

既に隔壁の前にはクレアが来ていて、開いたらすぐにこちら側に入ってくる。

銃を携帯しているので、再び隔壁が降りるがすぐにボタンを押せば解決だ。

普段は警備兵などが配置についているのだろうが、彼らが居ない今なら、2人居れば金属製品持ち運び放題である。

 

金属探知機2つを通り抜けた先には、金属を加工する黎明期の3D切削機*4が設置してあり、これを使ってエンブレムを彫り出すのだろう。

ただ、これは彫り出したい物体のスキャンデータをセットして、材料も用意しなければならないようだ。

この機械はネットワークに接続されておらず、持ち運びできる情報保存端末*5からのみ設計図の情報を得る仕組みになっているようなので、それも一緒に見つけなければならないらしい。

 

付近にはグレネード弾や何に使うのか不明な物品があるくらいで、近くには3D切削機に使えそうなものは何も無い。

とりあえず扉があるので、隣の部屋に何かないかを探しに入る。

すると、カタカタとキーボードを叩く音がするので足音を忍ばせて棚の裏から近づく。

こちらに気付いていないようなので、棚の裏からチラ見すると先ほど別れたスティーブの背中だった。

溜息を吐くと、大袈裟なくらいにビクついて飛び上がる。

 

「うわっ!お、驚かせるなよ!」

 

あまりにも滑稽な姿に、クレアが吹き出した。

 

「わ、笑うなよ!…たく、心臓に悪いぜ」

 

そう言って、胸を撫で下ろしたスティーブが振り返って再びコンピュータを弄り始める。

 

「ん?クリス・レッドフィールド…」

 

「兄さんがどうかしたの?」

 

「そっか、あんたもレッドフィールドって言ってたっけ。…ふぅん、兄妹なんだ」

 

スティーブがなにか意味あり気にプラプラし出すので、その間に彼が捜査していたコンピュータの画面を覗き込む。

そこには、クリスの個人情報や行動経路、家族経歴や最近の目撃情報などが纏められていた。

クレアの情報も隣にあり、監視警戒対象と分類されているようだ。

ちなみに、クレアは確保という分類になっている。

 

「クレア、どうやらクリスが監視されているようね。貴女もずっと行動を監視されていたみたい。…わお、クレアのヘアヌード盗撮写真もあるわよ」

 

どうやって盗撮したのか、寮の部屋と思われる一室でクレアが生着替えをしている写真がアップロードされていた。

綺麗に手入れされたアンダーヘアが、それはもうバッチリと写っている。

 

「「えっ!?」」

 

『ほほう…若え女は、肌のハリが違えな』

 

『ジョニー、アンタ喧嘩売ってんなら、高値で買ってあげるわよ』

 

『ハハハ』

 

私の隣からコンピュータの画面を覗き込んだジョニーが、私の肩をポンと叩いて良い笑顔でそんな事を宣う。

ムカつくことに、腹を抱えて高笑いしながら引っ込んでしまう。

今からでもオメガブロッカー*6を飲んでやろうかしら。

 

スティーブがコンピュータに駆け寄ろうとするので、クレアがガシッと襟首を掴んで後ろに引っ張る。

 

「グエッ!」

 

スティーブがひっくり返って潰れたカエルのような声を出す横で、コンピュータに駆け寄ったクレアが私を押し退けて、写真を削除しに掛かった。

 

「ぜったいっにっ!!これを撮ったやつ、殺してやるんだから」

 

ドスの効いた声で、クレアがガンギマリの眼をしながら共通ファイルにあった写真を削除するために、デリートキーを人差し指でダンダンと叩く。

どれだけの力が入っているのか、指がボタンを砕いてキーボードを貫通しそうになっている。

 

「レオンに送ってあげたら、彼喜ぶんじゃない?」

 

「……V?」

 

「ごめんごめん!それよりも、クリスに教えてあげないといけないんじゃない?」

 

「…そ、そうよね。私からだと連絡に出ないから、政府機関に行ったレオンから連絡してもらいましょう!ここの場所も教えれば、もしかしたら助けに来てくれるかもしれないわ」

 

デリートキーが壊れたキーボードをカタカタやって、レオンにメールを送ったようだ。

ヘアヌードは削除してしまったから、一緒には送って居ないらしい。

勿体無い、アレを一緒に添付して送れば、レオンもイチコロだったかもしれないのに。

 

「ふん…いくら兄貴でも、ここまで来れるわけねぇだろ」

 

「そんな事ないわ。兄さんなら来てくれる。絶対に!」

 

「……ウソだ!」

 

ガンと壁を蹴ったと思えば、スティーブが部屋から走り去る。

一体どうしてしまったというのだろうか。

 

「…彼どうしたの?」

 

「さぁ?」

 

なんか出ていってしまったスティーブを追いかけるようなことはせず、コンピュータをいろいろ調べてみることにした。

エンブレムの設計図面が見つからないか探してみると、なんと素晴らしいことにデータは見つかったのだが、それを写す情報保存端末がない。

今はクレアと密着行動しているので、手のひらのケーブルを見られるわけにもいかないし、仕方ないので素直に机の周りを調べることにする。

 

コンピュータが置いてあるデスクの上には、クリップボードに挟まった書類が幾つかあり、それの下に無いか調べたりするが残念ながら見つからない。

そのクリップボードを脇にどかそうと思った時に、そこに書いてある文章に目が留まった。

《TG-01》という特殊な加工用金属の輸送計画書で、メタルインダストリー社が開発した金属探知機に検知されない金属をサンプルとして搬入するという内容だ。

そういえば、メタルインダストリーの刻印があるジュラルミンケースを少し前に回収したので、所持品から取り出して中身を確認する。

 

ケースのロックを解除すると、黒い長方形の情報保存端末と同じく黒い金属プレートが中に入っていた。

この金属プレートが《TG-01》らしい。

ちょうど良いタイミングで情報保存端末も手に入ったので、早速コンピュータに接続してエンブレムの設計図をダウンロードする。

中には《TG-01》の組成といった詳細が記載されたファイルも存在したので、もしかしたらこのジュラルミンケースを持ってきてた奴は、アンブレラ側の産業スパイだったのかもしれない。

 

ダウンロードが終わった情報保存端末を抜き取り、早速3D切削機に設計図をインストールして、ちょうど良い大きさに裁断されている《TG-01》をセッティングする。

 

「よし、これで先に進めそうね」

*1
正確には、ジルにやらせない為に自分から言い出した。

*2
クレアがゾンビに包囲されないようにするため

*3
ラクーンシティで隔壁をこじ開けていた時点で、既に手遅れな気がしないでもない

*4
作中正式名称、3Dオートデュプリケーター

*5
USBメモリのこと。

*6
通称青い薬。

遮断薬。ジョニーを頭から追い出すことが出来る。対に、擬似エンドトライジンという赤い薬も存在する。青い薬を飲めば今まで通りの生活を、赤い薬を飲めばそれまでの人生を捨てて真実の世界を知る。




高評価、お気に入り登録、ご感想ありがとうございます!!
更新の励みになっております!!
誤字脱字訂正も大変有り難いです!_:(´ཀ`」 ∠):

RE2で、本来なら1999年に発明されて2000年から普及が開始されたUSBメモリが存在し、スターズオフィスで使えるという過去を踏まえて、3Dオートデュプリケーターの仕様を少し変更してみました。
本来なら、スティーブと喧嘩した部屋の机の引き出しから鷲のエンブレムを手に入れて、次に消火器を入手してから引火したトラックの火を消してジュラルミンケースを回収し、そこからTG-01を入手してから3Dオートデュプリケーターを使って金属探知機に反応しないエンブレムを削り出すという流れになります。

なお、クレアの生着替えを盗撮したアンブレラ工作員は、後に草の根を掻き分けてでも探し出されて、クレアとクリスによって処刑されました。
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