Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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Dealing with idiots is a pain...


第二十一話 Official Residence

3D切削機にセットされた《TG-01》が、ATC*1によって適切なエンドミルをスピンドル*2に取り付けて、マシンアームが高速回転するエンドミルを使って素早く一枚の金属板を切削して、鈍色に光る鷲のエンブレムを作成していく。

ものの数秒で仕事を終えた3D切削機が、電子音を立てて動作終了を告げた。

かなり精巧な作りをしているエンブレムで、ここでエンブレムが作れなかったら本物を探すしか無いから、どれほどの時間を浪費してしまうか分からない。

我々は運が良いと思おう。

 

早速、先ほどと同じように金属製品を持ったまま、2人で金属探知機を交互に解除して戻り、どこからやって来たのか再び姿を現しているゾンビの頭をぶち抜きながら、公邸に進むための大門まで帰って来た。

本当にちゃんと嵌まるのか、少しドキドキしながら鷲のエンブレムを窪みに押し当てると、ピッタリと嵌ってカチリとロックが解除される音がする。

閂兼錠前が自動で横にスライドし、大門を開閉できるようになった。

これで先に進める。

 

爆発物で破壊工作でもされたのか、半壊して大穴が空いているので気をつけながら橋を通り抜け、崖上にある公邸に向けて設置されている非常階段を昇って向かう。

 

公邸の石畳の庭には、武装集団との戦闘で死傷したであろう戦闘員が並べて寝かされており、殆どの上には血の滲む布が掛けられている。

掛けられていない死体には、軍用犬が群がってその死肉を貪り食っていた。

柔らかい腹を食い破って、中のはらわたを貪っているらしい。

 

「…ここで何が起こっているの?」

 

「さぁて、私にも分からないわ。襲撃して来た連中の顔も見てないし」

 

「そう……ッ!来るわ!」

 

クレアが鋭く警告を発する。

こちらに気付いた軍用犬が、ヨダレと血を口から撒き散らしながら唸りながらこちらに向かって走って来た。

サイレンサーが付いたユニティで犬の頭を吹き飛ばす傍ら、クレアが盛大に銃声を鳴らす。

別の場所からも、銃声を聞いて犬がどんどん駆け寄ってくる。

身体がところどころ欠損している連中もいるので、軍用犬のほとんどはゾンビ犬に変異していると見た方がいいだろう。

クレアにたくさん向かわれても困るので、音が小さいユニティではなくヌエに切り替え、こちらも大きい銃声を鳴らしながら前に出る。

正確に頭に当てれば、いくらタフなゾンビ犬といえども一撃で頭を粉砕されて沈む。

 

私の脇をすり抜けて行こうとする躾の悪い犬には、横から音速の蹴りを叩き込んで肉片に変える。

私の後ろからもクレアがどんどんM93Rを撃ち込み、前線の負担を軽減してくれるので有り難い。

次から次にやってくるので、ヌエからエラッタに持ち替えて大体50匹くらい倒したところで漸く波が止まった。

ここは軍用犬の調教施設だか繁殖飼育施設も併設されていたのか、普通の軍事訓練施設に比べたらあまりにも頭数が多い気がする。

 

私が排除したゾンビ犬は、ほとんど頭の上半分が吹き飛んでいるので確実に死んでいるが、クレアが倒した分は分からないので、死んだ犬の頭を1匹1匹踏み潰して確殺する。

ちなみに、クレアは丁寧に頭を粉砕する私の姿を見てドン引きしていたが、こういう丁寧な仕事が後で自分に返ってくるのだ。

 

コンバットブーツに犬の脳漿をベットリと付けながら、アシュフォード公邸の中へと進んでいく。

私はクレアに合流する少し前まで、公邸の中で情報収集を続けていたので真新しさは感じないが、クレアは大きい洋館に少し圧倒されたようだ。

しかし、先ほど来た時は情報収集を優先したのでちゃんと見ていなかったが、改めてよくよく見るとエントランス中央にある大きい肖像画や壁紙と言ったものが少し禿げていたり、階段の段差が少し欠けていたりと、どこかボロい印象を受けた。

この島では所長として全能を振るっているようだが、アシュフォード家自体は凋落気味なのかもしれない。

 

公邸と名の付いている通り、ここはこの島の行政を司る庁舎なのでメインロビーには受付があり、そこには公邸の一部の部屋の鍵を遠隔で開けることが出来るコンピュータが設置されている。

クレアに一階の鍵が開いている部屋を探索してもらうよう指示を出し、その間にコンピュータにジャックインして解除できるロックを全て外す。

4桁の暗証番号など、ハナクソみたいなものだ。

 

クレアが開いている部屋から戻ってくると、片手にはジュラルミンケースを持っていた。

 

「そんなもの落ちていたの?」

 

「うん、ただ鍵が掛かっているから、中身は分からないわ」

 

「ちょっと貸して」

 

ジュラルミンケースを受け取ると、確かに簡単なものだが鍵がかかっている。

単純なものなので、これなら簡単に壊せそうだ。

クレアに背中を向けてから、ジュラルミンケースの鍵の部分に指先を無理矢理捩じ込んで、外側に力を加えるとバキッと軽い音がして鍵が壊れた。

中身を確認すると、ボウガンのダーツに取り付ける火薬のようなものが入っているようだ。

ぶっちゃけ、なにこれって感じである。

そのボウガン用火薬の箱を取ると、ポロッと一緒に何かが落ちた。

 

クレアが拾い上げると、手のひら大くらいの大きさの六角形をした石板のようなもので、真ん中に戦車のレリーフがされている。

意味ありげなこれも、きっとこの先のどこかのギミックで使用するためのものだろう。

クレアがそれを渡してくるので、所持品にしまい込む。

 

「アンブレラって、なんで仕掛けが好きなんでしょうねぇ」

 

「兄さんから聞いたわ。ラクーン市警察署も意味不明な配置の防犯装置や仕掛けがあったって。しかも、下手に触ると署長がすごい怒ったとか」

 

「アイアンズね。アイツはアンブレラから多額の賄賂をもらって、孤児院の子供も実験体としてアンブレラに売り払うようなクソだったのよ。そんで、そんなことして稼いだ金で美術品を買い漁って、警察署の無駄な仕掛けに再利用してた」

 

「なんて酷い…!しかも、急に行方不明になったって聞いたわ」

 

「あぁ、確かに消えて居なくなったわね……お陰で色々とやり易くなった」

 

「ヴィ、V…」

 

「さ、話は終わりよ。先に進みましょ」

 

下手なことを言って藪蛇にならないように話を打ち切り、一階のロックが外れた扉を開ける。

なにか勘付かれたかもしれないが、明言なんてしないし聞かれたとしても知らぬ存ぜぬを突き通すだけだ。

一生証拠なんで出やしないんだし、消滅した街での殺人なんて無効だろう。

 

扉を開けて進んだ先は廊下になっており、鍵の掛かっている扉が2つあった。

1つは銀の紋章が鍵穴にあり、もう1つは金の紋章が両開きの扉の真ん中に嵌め込まれている。

これも、何かその紋章の入った鍵を使うのだろう。

まぁ、あとで鍵は破壊して扉をこじ開ければいい。

 

その前に、鍵が開いている扉も1枚あったので、そちらを優先する。

中に入ると応接室のような感じではあるがスクリーンが垂れ下がっている部屋で、見栄を張るような高価そうな壺かあったり、大きい戦車の模型があったりした。

壁にはトンボとアリのオブジェが嵌め込まれていて、その下にスイッチが青く点滅している。

なにが起きるのか分からないが、怖いもの見たさに取り敢えず押してみると、天井にあったプロジェクターの電源が点いてスクリーンに映像が映し出される。

 

10歳くらいの美少年と美少女が、笑いながらトンボの羽をむしり取ってアリが飼育されている水槽に落とし、アリに群がられてもがいている姿を見ながら笑っていた。

幾ら綺麗な子供たちとは言え、こんな性格のひん曲がっていそうなガキは御免である。

お互いに向き合って笑っていたうちの1人である美少女が、こちらの方を向いてニヤリと笑う。

その視線にはとてつもない悪意と傲慢、増長が見え隠れしていて、とても子供のするような目付きだと思えない。

やはり、アンブレラに関わるような連中はどこか頭がおかしいようだ。

映像は短く、そこで終わってしまった。

 

「襲撃を受けるまで、誰かがサイコホラーでも観てたのかしらね」

 

「AVルーム*3としても使えそうだものね」

 

なんて動画を見た感想を話していたら、右側の戦車の模型を収めているケースが手前にズレてきて、その後ろ側に小部屋が現れた。

思わず顔を見合わせる。

 

現れた隠し部屋の中に入ると、よく手入れされたライフルがガンラックに架けられて綺麗に並んでおり、これの持ち主が几帳面で銃好きというのがよくわかる。

バリーとは話が合いそうだ。

一番奥の突き当たりの壁には、2丁のゴールドルガーが飾ってあるのだが、それは装飾の窪みにピッタリとめり込んでいて何かしないと取れそうにない。

まぁ、銃は今のところこと足りているので、こんな金ピカ拳銃なんて必要ない。

 

そしてその足元には、何故か操舵輪が転がっている。

こんなところで使うとは思えないが、少し気になるので拾い上げた。

 

「防犯のために取り外してるのかしら?」

 

「どうでしょうね?」

 

よくよく見てみると、センターハブの真ん中に空いている八角形の穴に、最近も取り付ける時に出来たであろう新しい擦り傷が付いているのが分かる。

そこそこ傷が付いているので、ある程度の頻度で使用しているのだろう。

 

「…持っていってみる?」

 

「持ち運ぶには、少し不便そうだけど……」

 

所持品に仕舞ってしまえば、特に不便さは感じないので持っていってみることにした。

もしかしたら、船で脱出することになるかもしれないからだ。

 

廊下に戻り、2階の部屋の探索をすることにした。

階段を上がってすぐ右手側の部屋に入ると、本が沢山あり書斎のような作りになっていて、小さいテーブルの上には赤い日記帳が一冊置いてある。

取り上げて軽く流し読みしてみると、どうやらアルフレッド・アシュフォードの側近の日記らしい。

それから読み取るに、アルフレッドは孤高の存在らしく誰も信用せず、時には側近さえも冷徹に処分出来るのでかなり恐れられているようだ。

 

日記を読んでいる間、パチパチと音がしたのでそちらを振り向くと、クレアが置いてあったタイプライターで何かを打ち込んでいる。

 

「何してるの?」

 

「…あっ、ごめんなさい!何故だか、こうしなきゃいけない気がして…」

 

「ふぅん、まぁ今時タイプライターも珍しいから、たまたま触ってみたくなったんじゃないかしら」

 

「そうなの、かしら…」

 

日記を流し読みし終えて、部屋を探索すると奥にゴールドルガーが嵌っていたところと同じ装飾が施された扉があった。

もちろん、見ての通りゴールドルガーを嵌め込まないと先には進めないようだ。

 

「鍵が掛かっているのね…下で見たゴールドルガーを取ってきましょう?」

 

「面倒臭いわねぇ…壊した方が早いんじゃない?」

 

「うーん、そうだけど…変な罠とかあったら困るわ」

 

十中八九そんなのは無いだろうが、ここに関しては解き方が分かっているのでゴールドルガーの回収に向かうことにした。

いざ書斎の扉を開けたところで、スティーブの悲鳴が聞こえてくる。

 

「うあぁぁぁぁぁ!!助けてくれぇぇ!!」

 

偉そうな口を叩いていたくせに、なんと情けない悲鳴なのだろうか。

呆れて溜め息しか出てこない。

正義感が強いクレアが早く助けなきゃ!と私の腕を引っ張るので、仕方なく悲鳴が聞こえてきた方向に向けて走り出した。

到着した先は、なんとゴールドルガーを取りに行こうと思っていた応接室で、スクリーンはいつの間にか上に上がっており、その後ろには制御盤があってスティーブがパニックを起こしている姿がモニターに映し出されている。

 

大変良いザマなので、もう少しこのままにしておいてやろうかと思ったのだが、ジョニー曰く栄養失調のきゅうり野郎なので少しでもサウナに長居したら、そのまま萎れて死んでしまうかもしれないので、仕方なく助けてやることにする。

制御盤の真ん中には、ヒントであろう文言が書かれたプレートが固定されている。

それを見るに、どうやら対になっているものを選べば良いらしい。

銃の絵だけ2枚あるので、どう見てもこれしかないだろう。

CとEのスイッチを押すと、戦車の模型が入ったケースが移動して隠し部屋の扉が開き、スティーブが外に転がり出てきた。

開いた扉からはかなりの熱波が伝わってきて、全身に汗を掻いたスティーブが床で荒い息をはいている。

 

このまま熱中症で死なれても面倒なので、所持品からニコーラを出して渡してやると、奪い取るように受け取って一気に飲み干した。

全身びしょびしょになるほど汗を掻いていれば、かなり体内の水分が減っているだろう。

もう少しあの場に放置していたら、干涸びていたかもしれない。

惜しいことをした。

 

床にはこうなることになった元凶のゴールドルガーが転がっていたので、近付いて拾い上げる。

どうやらスティーブがこれを何も考えずに外したからこんな目に遭ったわけなのだが、私たちの時はピッタリと窪みに嵌っていたのに、どうやってスティーブは取り外したのだろうか。

疑問に思ってまだ熱気の籠っている隠し部屋の中を覗いてみると、飾ってあった勲章が床に散らばっており、それを隙間に差し込んで掻き出したようだ。

そんな無理に取り出したら、こうなるのも無理はない。

 

「あっ、それは俺が取ってきたやつだぜ!返してくれよ!」

 

ニコーラを飲んで少し元気になったのか、スティーブが私の持っているゴールドルガーを見て腕を伸ばして来るので、一歩下がってその範囲から逃れる。

クソッと言いながら立ち上がって取り返そうと飛びかかって来るので、怪我をしない程度に軽く蹴飛ばしてひっくり返した。

 

「ガキのアンタには大層なオモチャよ。適当にそこら辺のゾンビが持ってるM93Rで我慢しなさい」

 

「ふざけんな!俺が取ってきたんだから、俺のだろうが!」

 

「アンタねぇ、私たちが助けなかったら、今頃カラカラの干物になってるわけ。分かってる?」

 

ぐぬぬと、今時カートゥーンでも聞かなそうな歯軋りをして地団駄を踏むので、クレアが可哀想なものを見るような目で彼を見ている。

このままだと駄々を捏ねそうだったので、面倒だが仕方ないとヌエを1挺取り出す。

 

「ほら、厳つい銃よ?威力は折り紙付き、ゾンビなら1発で殺せるわ」

 

「マジかよ!でもこっちは2挺で、そっちは1挺はズルくねぇ?」

 

「なんだお前…ハァ、アンタみたいなマッチ棒が2挺持ちなんて出来るの?」

 

「なるとかなるって!」

 

なんともならない例を沢山知っているので、正直無理だと思う。

ジャッキーみたいなデカい図体か、腕をクロームにしたりインプラントを入れれば話は違うが…

クレクレ言い始めたので、ジョニーもウルセェからサッサと渡してやれと煩わしそうに言う始末。

渡さないで離れると、後ろをついて回ってずっと言ってきそうな雰囲気なので、仕方なくもう1挺手渡したはいいが、早速構えた腕がプルプルしている。

 

「諦めたら?」

 

「う、撃ってみなきゃ分かんねえぜ!」

 

「良い?私は忠告はしたわ。あとは好きにしなさい。弾は100発あげるから、無くなったら大人しくM93Rでも拾って使うことね」

 

アホガキに付き合っていると疲れるので、クレアを連れてメインロビーに戻った。

*1
自動工具交換装置のこと。プログラムされた工具をマガジンからスピンドルに付け替えることが出来る。

*2
ドリルやエンドミルと言った切削や掘削に使用する工具を取り付けて、高速回転させながら物体を加工する部分

*3
オーディオ・ビジュアルの略である。決してアダルトビデオではない(戒め)




高評価、お気に入り登録、ご感想いつもありがとうございます!!
更新の励みになります!
誤字脱字訂正も助かっております!

前々話で、アルフレッド・アシュフォードをアレックスと表記していた問題を訂正しました。

夏風邪っぽいものを拗らせたせいか、倦怠感がすごくて昨日更新出来ず、ご感想にもお返事出来なくてすみませんでした…
なにやら流行っているらしいので、皆さんも体調にはお気をつけてください…

あと気付いたのですが、2万文字書いてまだ公邸の中程ってマジ…?
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