Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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Other people's secrets aren't always sweet...


第二十三話 The Ashford Family Secret

アレクシアの部屋に入れないので、大人しく鍵の一つになりそうなオルゴールディスクを探すことにした。

しれっと高そうな白磁の壺を所持品に仕舞いつつ、廊下に戻りあと2つある扉を1つずつ開けて中を確認する。

1つ目の部屋は、かつてここに勤めていたであろう家宰の部屋らしく、アルフレッドは家宰が居なくなった後も律儀に掃除でもしていたのか、ここの部屋はアルフレッドの部屋と同じくらい綺麗に掃き清められてチリひとつ落ちておらず、残っている家具のベッドやデスク、ワードローブも整頓されていて、今だに誰かが住んで使っているような気さえしてくる。

もしかしたら、アルフレッドにとって共に暮らしていた家宰はとても大事な人物だったのかも知れない。

 

整っているものをわざとぐちゃぐちゃにする趣味は無いので、ワードローブやデスクの引き出しを開けたりしても、床に中身をぶちまけたりはしない。

ワードローブには執事服が4着ほど入っており、その中の1着の胸元から金の装飾が施された鍵が見つかったので回収する。

デスクの引き出しからは、ハンドガンの弾が1箱と古いリボルバーであるエンフィールド No.2 Mk.Ⅰが出て来た。

ハンドガンの弾は.380Enfieldなので、今持っている銃とは互換性が無く、元の有ったようにして戻す。

正直、このリボルバーを使うくらいだったらM93Rを使った方が普通に強い。

この部屋にはそれ以上のものは見つからなかったので、もう1つの部屋に行きそちらも同様に調べる。

 

こちらの部屋はほかの部屋と比べても広く、誰かの執務室だったのであろうか、公邸のアルフレッドの執務室のように大きめのデスクと沢山の書籍、そして純白の燭台を持っている男性の肖像画が飾られていた。

ここは何故か掃除がほとんどされておらず、本棚の本も一部がカビていたりデスクや応接用のソファの上も埃だらけで、ほとんど手入れがされていないのが直ぐにわかる。

 

肖像画の下には金メッキされたネームプレートが嵌め込まれており、そこには六代目当主アレクサンダー・アシュフォードと刻まれていた。

 

「あのアルフレッドの父親なの?」

 

クレアが隣で同じように肖像画を見上げながら、その描かれている顔をマジマジとみてそう言う。

 

「その…息子にしては似てない気が」

 

「ふぅん、確かに言われてみたらそうかも知れないわね」

 

実はアルフレッドとアレクシアの2人は養子だった、なんてこともあるかも知れない。

何か情報になるようなものがないか、埃まみれのデスクの引き出しを開けてみると、1冊の日記帳が出て来たので開いて読んでみる。

内容はアンブレラでの研究に対する愚痴であるとか、進歩があったとかの事しか書かれておらず、詳しい研究の内容までは流石に記載がなかった。

しかし読み進めていくと、興味深いことが多々かいてある。

どうも彼の父親と違って、アレクサンダーはウィルス研究に対しての才能が無かったと言うことは分かった。

本人もそれに対してかなり苦悩しており、他人からよく比べられたりしていても本人が1番才能が無いことを理解しているで、行き場のない怒りだけが募っていく様が日記には赤裸々に綴られている。

さらに読み進めると、本人はゲノム工学に対する造詣が深く、アンブレラのウィルス研究や薬品開発重視に偏重している現場において、自分は社の方針とそぐわないのでこれ以上の栄達は望めないだろうとも書いてあった。

父親であった五代目当主のエドワード・アシュフォードが築き上げた栄光に影を差し、自分の代で徐々に凋落していくのを見て、彼は自分の代わりに次代に託そうと考えたようだ。

彼の専門分野であるゲノム工学の知識を活かして、アシュフォード家の霊廟から初代当主ベロニカ・アシュフォードのDNAを採取し、それを優れた研究と知能によって解き明かした『知能を司るDNA因子』をゲノム編集によって操作し、偉大な初代よりも更に優秀でカリスマのある子供を作り出した。

本来であればクローンに相当するので、必ず女性であったベロニカと同じ女性しか産まれてこないはずだが、男女の双子が誕生したようだ。

兄として産まれたアルフレッドも常人に比べるとかなり知能指数が高いようだが、妹のアレクシアに比べると数段劣ってしまうらしい。

 

とんでもないことが書いてあった。

まさか、養子どころか2人ともクローンというかデザイナーベイビーだったとは。

それは親のアレクサンダーと似ているはずがない。

日記の続きを読み進める。

 

最初こそ、アレクサンダーはアシュフォード家再興の光が見えたと歓喜していたらしいが、成長するにつれて徐々に見えてくるようになったアレクシアの狂気に気付き、少しずつ恐怖していくようになったと書いてある。

どうやら、アレクシアは頭脳と引き換えに倫理観を代理母の胎の中に置き忘れて来たらしく、幼少期より小動物を快楽のまま痛ぶり殺して苦しむ様を見るのが好きで、10歳で名門大学を主席卒業した後にアンブレラに迎え入れられた後は、なんの良心の呵責すら見せずに人体実験を繰り返し行うようになったらしい。

その時点でとんでもないクソガキなのだが、まだ続きがあった。

日記帳の最後の方には、アレクシアが自分を見る目が段々と虫や実験対象を見るような冷徹な光を帯びていることに気付いたらしいことが書いてあり、最後の締めにはそう遠くない日に自分も犠牲になるかもしれない。なので、私*1の計画を前倒しにすること、そして計画が破綻した際の保険を用意したこと、願わくばその保険が使われることがないことを祈る言葉で締められていた。

 

初代当主のクローンを作ってしまうように倫理観は相変わらずぶっ壊れているが、アンブレラの研究員にしては比較的まともな方*2なのかも知れない。

もしアレクサンダーの計画とやらが、ベロニカのクローンを作っての家門再興でないのだとしら、一体なにを指しているのか分からないが、どうせ碌でもないことに決まっている。

ラクーンシティのアンブレラ関連資料を散々みたので、私は詳しいのだ。

この日記も裁判の証拠品の一つになるかもしれないので、所持品に仕舞った。

 

この部屋も日記帳くらいしか見るものが無いが、デスクの引き出しの中に違和感を覚える。

上から見た深さと横から見た大きさとが一致しない。

完全に引き出しを取り出してから、ひっくり返して裏面を見ると小さな穴が空いている。

クリーニングロッドの先で穴を押すと、パコっと窪みに嵌っていた隠し蓋が外れた。

向きを元に戻して板を外すと、中には一本のブートキーが出てくる。

片面にはアンブレラの社章が刻まれており、もう片面にはアシュフォード家の家紋が刻印されている。

どこで使うのか分からないが、きっとその計画云々で使用することになるのかも知れないので所持品に仕舞った。

 

あとは特にこれと言ったものが無いので、後回しにした一階に向かう。

我々を始末するつもりのアレクシアがどこから来るか分からないので、常に警戒だけはしつつ襲ってくるコウモリを殴って撲殺し、デカい蜘蛛を巣ごとエラッタで燃やして階段を降りる。

ちょっと降りきって1階のメインロビーに着いた時に、ガチャリと扉が開いたのでエラッタを構えると、開いた扉からスティーブが後方を見ながら転がり込んできた。

危うく反射的に斬り捨てそうになったのを踏ん張って止る。

何事かと思っていると、そのままクレアに気付かずぶつかって2人が床に倒れ込んだ。

 

「ちょ、ちょっと!スティーブ、大丈夫なの?」

 

「うわぁ!?あ、あぁ……ハァ…良かった、ゾンビじゃ無くてクレアか」

 

「一体どうしたのよ。それと、ちょっと退いてもらえる?」

 

「ああ!わ、悪い!怪我はしてないか?」

 

慌てた様子でクレアの上から退いて立ち上がったスティーブが、クレアに手を差し出して助け起こす。

クレアもスティーブの手を掴んで立ち上がり、服についた埃を叩いて落とした。

 

「そうだ!そんな事より、早く別の場所に隠れた方がいいかもだぜ!」

 

そうスティーブが言いながら、観音開きの玄関ドアのノブに近くに落ちていた火かき棒らしき鉄棒を差し込む。

その上で内側から鍵をかけた。

それから数瞬後に扉が外からドンと押されて、鍵とつっかえ棒が軋む。

早く!とスティーブがクレアの腕を掴んで、これから探索に向かおうとしていた1階の廊下を走り、突き当たりの部屋に駆け込むので私も後に続く。

 

そっと扉を閉めて、耳を澄ますとバキッという音と共に、何かが数体私邸の中に入ってくる足音がした。

 

「アンタ、一体全体ナニに追われていたのよ」

 

ずっと走って逃げていたのか、声を顰めながらハァハァと口呼吸していたスティーブがこちらを向く。

手で鍵をそっと掛けるようにジェスチャーしてくるので、言われた通りに音が鳴らないように施錠する。

それから手近な椅子に腰掛けたスティーブが、息を整えてから口を開いた。

 

「あんたから銃を2挺貰った後に、あの邸から出て軍事施設の方を探索してたんだ。そしたら、急にスピーカーが入って知らない男からイチャモンつけられてさ。工作員がどうのって言って来たから知らないって答えたら、急に化け物をけしかけられたんだ。マジで死ぬかと思ったぜ」

 

「その化け物って、どんな見た目してた?」

 

「右腕だけ異様にデカくて、頭と肩が一つになってるみたいな感じだったぜ。あ、あと色は黄色かった」

 

右腕が発達していると言うところで、クレアと私は一瞬脳裏にバーキン博士の姿がチラつき、反応しかけたが後を聞いたら違うことが分かり、肩の力が抜ける。

こんな島でG生物とやり合うことになるのは御免である。

しかも、今は熱核兵器なんて持ってないから、殺し切れるかどうかもわからないので、そんな事になったら悪夢だ。

 

「Gじゃないなら殺せそうね」

 

「そのGってヤツがどんな化け物か知らねえけど、アイツら腕がスゲェ伸びてくるから気をつけてくれよ」

 

「分かった。それはそうと、渡したヌエは使わなかったの?」

 

アレなら、45口径ながらマグナムより少し上くらいの威力が出る。

まともに当たっていれば、リッカーやハンターも軽く殺せるので、タイラントのように防弾服着ているとか再生能力が非常に高いとかでなければ、普通のBOW程度は倒せると思うのだが…

 

「さては、カッコつけて2挺持ちしてたんでしょ。バカスカ撃って弾切れしたか、そもそも当たらなかったか。あるいは両方とか」

 

「うっ…」

 

「図星みたいね。プロだって中々やらないのにはちゃんと理由があるわけ、だから素人には無理よ。もしやるなら、もっと口径の小さいハンドガンかマシンピストルの方がいいわね。それまでは、両手でしっかりと持って撃つこと」

 

ゴツいが、ユニティやヌエよりも口径の小さいリバティを手渡す。

ヌエはそのまま貸しておくことにした。

 

外の廊下では、いまだに何体かのBOWが徘徊してスティーブを探している足音がしているので、面倒だがこちらから打って出ることにした。

そっちの方が手っ取り早い。

クレアとスティーブにいつでも戦えるようにだけ言ってから、そっと扉を開けて外に出る。

廊下の奥のメインロビーには、スティーブが言った通りに黄色い肌に右腕が異常に発達して首が発達した肩に埋もれて無くなっているBOWが徘徊してた。

どうも腕が伸びるらしいので、見た目のリーチに騙されてはいけない。

 

少しフラストレーションも溜まっていたところなので、武器では無く直接殴ってカタをつけてやる。

軽い足取りで奴らに向かって歩いて行くと、廊下の半分くらいきたところで急に背後からドンという物音がしてきた。

びっくりして振り返ると、私が出て来た部屋の扉がアレクシアの部屋を塞いでいたのと同じ隔壁が降りて来ていて、スティーブとクレアが閉じ込められてしまったようだ。

それから、どこにスピーカーが隠されていたのか分からないが、ブツッというスイッチが入る音と共にアレクシアの声が聞こえてくる。

 

『お兄様を煩わせる虫ケラめ。お前はそこに居るバンダースナッチに引き裂かれて死ぬだろう。だが安心するといい。お前の仲間たちもすぐ同じところに送ってやる』

 

そう言うだけ言って、再びブツッとスピーカーの音声が途切れた。

閉じた隔壁の向こうから、スティーブの悲鳴とクレアの怒鳴り声、そして連続する発砲音が聞こえてくる。

面白い。

さっさとコイツらを片付けて、2人と合流しなくては…

 

スピーカーの声を聞いたせいか、バンダースナッチと呼ばれたBOWが私の存在に気付き、発達した右腕を杖のように使いながら駆け出してくる。5メートルも離れたところで腕を振りかぶったので、射線上から逸れると振り被った腕が伸びて身体のあったところを拳が通過する。

これは驚いた。

想像よりもかなり伸びるらしい。

ただ、ナイトシティで相手にするような連中の方がビックリ箱なので、生身の腕が伸びるなんてすごいねとしか思わないが…

 

まあ、いくら筋肉が発達していようと私のチタン骨を折ったりできるとは思えないが、さりとて汚い腕に掴まれたいとも思わないので大振りのテレフォンパンチを避ける。

そのままローキックを腕に比べるとかなり貧弱な膝に見舞って、そのまま蹴折り膝をつかせた。

頭というか顔面がちょうど良いところに来たところで、顔面目掛けて拳を突き入れると頭蓋骨が易々と砕けて、向こう側まで拳が突き抜けてしまった。

ベットリとT-ウィルスに塗れた脳漿が腕にこびり付く。

仲間がやられても全く気にした様子のない2体目がそのまま襲い掛かってくるので、顔面に腕が突き刺さった状態の死体を振り回して牽制し、腕を抜いてからバンダースナッチの死体を持ち上げて思いっきり投げつけてやる。

 

体重が150kgほどはあっただろうか。

BOWに驚愕するという感情があるか分からないが、自分と同じ大きさの巨体がぶっ飛んでくるのを見て固まっており、そのままそれなりの速度で飛んできた死体に衝突し、両方とも四肢がバラバラに砕け散った。

まるでトラックと正面衝突したかのような有様で、ぶつかったところが挫滅してグシャグシャになっている。

 

ナイトシティで敵対する住民は、大体がギャングで肉体を改造しまくっている奴らが多いので、生物兵器とはいえナチュラル同士をぶつけたことが無かったから、こんなふうになるとは思ってもいなかった。

しかし、所詮はT-ウィルスによって知能が虫ケラレベルに低下しているBOW。

最後の1体は、仲間がだいぶ酷い殺され方をしていても意に介さず、同じように突進して来て同じように腕を伸ばしてくるので、伸ばした腕を掴んで握りつぶし、思いっきり引き寄せて身体を蹴ることで腕を身体から引っこ抜いてやった。

貧弱な左腕とは違い、発達している右腕の方なので、色々と臓器も一緒になってオマケでついてくる。

腕と共に重要な臓器をもぎ取られては、いくらBOWとは言っても生き物なので生きていられる筈もなく、2、3歩ほどヨロヨロとよろめいては地面に崩れ落ちて血のシミを拡げるだけであった。

 

どこかにカメラでも仕込んであって、私の戦闘を観察しているのではと思いスキャンしたが、残念ながら古い有線の監視カメラはスキャンに引っ掛かり辛く、パッと見では分からない。

3体ともぶち殺したは良いが、当のアレクシアからはなにもアクションが無いので、閉まったままの隔壁に近付いて壁面を叩く。

耳を澄ましても向こう側からは物音が聞こえて来ないので、2人が無事なのかどうかも分からない状態だ。

隔壁の合わせ目はつるりとしていて指も掛からないので、強引に持ち上げることも出来ない。

思いっきりゴリラアームで殴り付けてみたが、変形したは良いが今度は上半分が変形した影響で戸袋に引っ掛かって持ち上がらなくなってしまった。

余計なことをしてしまったらしい。

 

無事に2人が別の場所に逃げ出せたと信じつつ、私も2人と合流するために行動する。

1階の廊下にあって入れる扉を開けて何かないか調べるが、植木鉢に入ったまま立ち枯れているグリーンハーブやハンドガンの弾、アンブレラ製の救急スプレーの空き缶くらいしか見つからないので、諦めて一度公邸の方に戻ることにした。

*1
アレクサンダー

*2
感覚が麻痺っているだけで、決してまともではない




高評価、お気に入り登録、ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字訂正も大変感謝しております!
ありがとうございます!

しれっと高価な調度品をパクるVであった。
ブートキーは9のARK内で使用したアレに形が似ていて、同じく物理キーになっております。
本来なら軍事訓練施設の地下で初戦闘となるバンダースナッチ君は、公邸をウロウロしていたスティーブを監視カメラで見つけたアルフレッドによって解き放たれ、スティーブを散々追い回したとかなんとか…
なお、ゴリラパンチには敵わない模様


アンケートへのご参加ありがとうございました!
200名を越える読者様方にご参加頂いた結果は、概ね30票差でスティーブの生存が優越するという結果になりました。
よって、多数決に則りコードベロニカ編はスティーブ生存ルートに舵を切らさせて頂きます。

それと、業務連絡ですが更新時間を10時ごろから12時ごろに変更します。
ご迷惑をお掛け致しますが、よろしくお願い致します。

今作でスティーブは

  • 生きる
  • 原作通りなんかしらで死ぬ
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