Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】 作:持麻呂
ピッタリとメリーゴーランドの中心軸に張り付いていると、段々と梯子を登ってくる音が近付いてくる。
クレアが何をしているの?と言わんばかりの表情をして、こちらを見ながら肩をすくめる仕草をするが、私もジェスチャーで気にするなと合図して会話を続けさせる。
スティーブもこちらをチラチラと見てくるが、空気を読んでなるべくこちらを見ないようにしながら会話を続け始める。
じっと待っていると、音もなくスッと中心軸の開閉部が開き
パッと横からシリンダーごとハンマーを掴み、そのまま腕を捻って絡め取り、無理矢理引き摺り出す。
ゴリラアームの膂力で梯子にしがみつく余裕すら与えず、なすがままにズルリと中心軸から出て来たのは、いつの間にかタクティカルな戦闘服に着替えていたアルフレッドだった。
ガッチリとゴリラアームに関節を巻き込まれて極められているので、かなりの激痛が走っているらしく顔を顰めて、もう片方の手で私の腕を殴ってくるが、そんな事じゃ外れるはずもない。
クイっと手首を返すと、アルフレッドの手からコルト・ドラグーンが落ちる。
「は、放せ…!!」
「
取り落としたコルト・ドラグーンをスティーブ達の方に蹴って遠ざけ、必ず腰にさしているユニティを抜き放って手の内で一回転させてからアルフレッドの眉間に押し付けた。
ゴリッと良い音が鳴り、アルフレッドが生唾を飲み込む。
「アンタの妹、アレクシアには随分と世話になったわ?私たちを始末すると豪語してたし、実際バンダースナッチを嗾けてきたり、セントリーガンなんかまで使っちゃって」
グリグリと眉間に銃口をめり込ませてやる。
「こ、殺せ!私はアシュフォード家当主だ!辱めを受けるくらいならいっそ殺せ!!」
古のジャパンのHENTAIマンガで見たことあるような、そんなセリフを吐いて真っ直ぐとこちらを見上げてくる。
まぁ、アルフレッド自体はかなり顔が整っている方だと思うので、アルバートには需要があるかもしれない。
さて、すぐに殺しても良いのだけど、それだと水上機だかの空港やら脱出手段がどこにあるのかわからないので、それを聞き出してからの方がいいだろう。
「じゃ、そうしようかしら」
ユニティのハンマーをコッキングして、ジッと目を見つめてやると怯えた表情のままこちらを見返してくるので、引き金を引く。
トリガーに連動したシアーが、ハンマーのロックを外してファイアリングピンの尻を叩く。
カチン
と無機質な音が鳴り、弾は発射されなかった。
「ーーーーハァッハアッハアッ」
暴発して、自分のケツをぶち抜かないように初弾は装填されているわけがない。
いつも腰にさしているのは、手持ちの武器が無くなったりした時用の最後の手段だ。*1
「本当に殺すと思った?すぐに殺すわけないでしょ。アンタには、沢山聞かなきゃ行けないこともある」
本当に死の恐怖を感じてか、アルフレッドは大量に脳内で分泌されたアドレナリンによって身体が小刻みに震えている。
クレアとスティーブは、私が本当に撃つのだと思っていたらしく、こちらもホッとほしたように息を吐き出している。
この程度で安堵されても困るが…
今度はキチンと目の前でコッキングして見せて、二度目は無いのだと視覚的にわからせる。
「そうねぇ、まずはここから逃げ出すための足の在処を吐いてもらいましょうか」
私がこの島まで乗って来たゴムボートは、多分だが既に私を探しに来た捜索隊によって発見されて押収されているはずだ。
それに、岸にそのままの勢いで乗り上げたので、よしんば草むらに隠れたままになっていたとしても、底面が破れていたりささくれ立って薄くなってしまっているかもしれない。
それに私だけならいざ知らず、スティーブとクレア、そして裁判の重要な証人の1人になるであろうアルフレッドを捕縛して連れていくとなれば、乗り切れない可能性も出てくるのだ。
そこにアレクシアも追加になるかもしれないので、普通に大型の足が存在するならそちらの方がいいだろう。
「い、言うと思ってるのか?」
「言うわ。必ずね」
ブルーファングを取り出して、顔面にピタピタと押し付けてからほんの軽く二の腕を刺す。
刃の部分にコーティングされている神経毒が身体に入り、剥き出しの神経を撫でられるが如く神経系を侵す毒にもがき苦しみ出した。*2
呼吸系の神経も同時に侵されるので、激痛に呼吸が速くなるのに呼吸困難で息ができず、顔面がチアノーゼ反応で青紫色に変色していく。
UI上の時計を見て、そろそろ窒息と激痛のショックで死にそうなのを見計らい、バイオテクニカが出している解毒剤を打ち込んで中毒症状を中和する。
神経を浸潤・阻害していた神経毒が瞬時に分解されて、息が出来るようになったアルフレッド大きく肩で喘ぐように息を吸う。
呼吸が出来ずに激痛から来る叫びもあげられなかったので、一度でかなり消耗したようだ。
「ほら、もう一度行くわよ」
「ま、待て…!待ってくれ!」
「アンタ達アンブレラの実験体やオモチャにされて来た囚人達は、アンタ達に同じようなことを言って聞いてもらえたわけ?」
脳裏に、泣き叫びながらキメラにタネを植え付けられ、バケモノを孕みキメラを出産していた保護シェルターの隣人の顔が思い浮かぶ。
彼女の子供もウィルスの実験に使われて、惨たらしく死んでいるのも資料で確認されている。
アラサカに勤めていて、そこで非合法なことも沢山したし、サイバーパンクになってからも依頼で殺しや盗み、生き残るために邪魔者は平気で殺して来た私自身が、いまさら正義だなんだと言うつもりも言えた義理も無いが、腹いせにこのくらいしてもバチは当たらないだろう。
それに、今は私が頭に来ているのだから。
「そ、それは…だな」
「じゃ、2回目行くわよ」
「ま、待ってくれ!」
「待たない」
もう一 1回、さっきと同じところをブルーファングで刺す。
アルフレッドが、声にならない叫び声を上げてのたうち回る。
「神経を直接侵される痛みは、やられた本人じゃなきゃ分からない。大丈夫、私も食らったことあるから」
『何が大丈夫なのか、全然意味わかんねぇよ』
外野が煩いが、気にしてはいけない。
2回目に関しては、1回目の疲労とダメージが蓄積しているので、さっきよりも少し早く解毒してやる。
これで死なれても困るというか、なんというか…
「どう?そろそろ話す気になったんじゃない?」
「ハァッハアッ……こ、殺せ…殺してくれ…」
疲労困憊で、放っておいてもそのうち死にそうなくらい息も絶え絶えと言った様子なので、口を無理矢理開けさせてジル謹製のグリーンハーブの粉末を飲ませる。
「ほら、話したら楽になるわ」
粉を口にぶち込まれたので、激しく咽せるが関係ない。
これで少しは体調も回復するだろう。
さっきから私の尋問*3の様子を見て、クレアとスティーブが震えながらお互いに抱き合っている。
こんなもの、まだまだ序の口も序の口で、アラサカが行う尋問はもっと恐ろしく、人間のありとあらゆる尊厳を全て根刮ぎ破壊するようなことが行われているのだ。
最終的には、脳みそを身体から抜き取って直接電気信号で情報を得たりすることもある。
これくらいでビビってもらっては困るというのが正直なところ。
しかし、2人ともそんなに仲良かっただろか?
「く、空港には……潜水艦を使えばいい……ハァッハアッ…公邸の前庭から…」
「ほら、もっとキリキリ吐きなさい」
あまりやり過ぎて、廃人になってしまったら元も子もないので、3回目もあるぞと如何にも今すぐにやってしまう風に脅すのがコツだ。
消耗させ過ぎてしまったのか、それ以上口が回らなくなってしまったようで、さてお次はどうしてくれようかと思っていたところに、中心軸の下側から投げられたのかグレネードが2つ目の前に転がって来た。
固まってしまいそうになるのを無理矢理抑え込み、グレネードを向こう側の壁に蹴り飛ばしてクレアとスティーブに飛び掛かり、地面に押さえ付ける。
こんな狭い空間で2つもグレネードが爆発したら、ナチュラルの2人は破片でズタズタに引き裂かれて死んでしまう。
覆い被さって1秒後に強烈な音波が身体を襲う。
どうやらスタングレネードを閉所に2つも投げ込んで来ていたらしい。
瞬時に聴覚機器が音を抑えて、音波による聴覚や脳へのダメージを減らす。
だがクレアとスティーブはそうは行かず、私の身体がワンクッションになっているが、スタングレネードの音波を浴びて苦しそうに呻いている。
今頃、ひどい眩暈に襲われているはずだ。
覆い被さっている私の背中に、ドスドスっと弾が撃ち込まれる衝撃があり、後ろ手にだがユニティを数発お返しする。
当たった感じがしなかったので、どうやら外してしまったようだ。
立ち上がって中心軸の方を振り返ると、そこにはすでにアルフレッドの姿がなく、階下から逃げ出すような足音が2つ聞こえる。
どうやら、アレクシアだかがアルフレッドを救出しに来たらしい。
小癪な小娘だ。
だが、アルフレッドからある程度水上機の空港への行き方を聞けたような気がするので、これでなんとかなるだろう。
とりあえず公邸の前庭辺りから、潜水艦?*4を使えば行けるらしい。
「V!V大丈夫なの!?」
私の身体の下で、クレアが私のことを心配して声を上げる。
スティーブは私の重さがそのまま掛かっていて、今にも圧死しそうだ。
2人の上から慎重に退いて、ぐっと背中を伸ばすと背面の防弾繊維を貫通出来なかった弾が、ポロポロと2発転がった。
弾の口径から見るに、45ACP辺りだろう。
それを2発も背中に撃ち込むあたり、かなりの殺意が窺える。
「このくらいじゃ怪我もしないから、安心していいわよ」
実際、20mm機関砲弾とかを撃ち込まれない限り、マックス・タックと同じ規格の防弾ジャケット+キチン質と皮下アーマーを貫通させるのは無理だろう。
そうは言っても12.7mmを撃ち込まれたら、四肢がもげたり貫通こそしないものの衝撃が凄いので、クロームや内臓にダメージは入ってしまい無傷とはとても言えないことにはなる。
大口径機関砲を片手でぶん回して、被弾しても涼しい顔で反撃してくるアダム・スマッシャーは、本当に最凶最悪な敵だったと改めて思う。
アイツとはもう二度と会うことはないだろうが、もし奴も時間と空間を超えてやってきたとして、二度目の時があるならば速攻で逃げてやるつもりだ。
あの時はオルトの援護があったから、アダム・スマッシャーも本調子を出せずにいたので勝てただけかもしれない。
現状で相手するには、命がいくつあっても足りない。
2人からスタングレネードのダメージが抜け切ってから、空港の方に移動することにした。
中心軸から階下に降りると、隔壁が降りていて行けなくなっていたアレクシアの部屋に入ることが出来た。
行き掛けの駄賃に漁ってみると、ウィルスや生物学等の科学雑誌や研究書が多数本棚に入っており、中を読んでも珍紛漢紛で何が書いてあるのかすら理解不能。
これを読んで理解しているのだから、やはりアレクシアは作られたものとは言え天才なのだろう。
本以外は、ドレスを仕舞っているドレッサーと広いデスクと天蓋付きベッドしかない。
絵画や壺のような装飾品の類は一切なく、アルフレッドの部屋と比べて殺風景と言えばその通りだ。
どちらかと言うと、使用人の部屋と言われてもパッと見なら信じてしまうかもしれないくらいには、物が少ない。
デスクの引き出しには小さな鍵が掛かっていて、どの引き出しも開けられなかったので、ゴリラアームでデスクの引き出しをデスクごと叩き壊して、無理矢理こじ開けた。
先ほどの尋問を見ていたからか、少し慣れてきたようでドン引き具合が少なくなっている気がする。
そんな感じで、こじ開けた引き出しの中身を床にひっくり返す。
万年筆やちょっとしたカメオ、ブローチのような小物類に情報保存端末なんかも出てきた。
これらはまた何かに使えるかも知れないので、全て回収する。
その中に、一冊だけだがかなりしっかりとした装丁の本が出てきた。
拾い上げて開いてみると、どうやらそれはアレクシアの日記帳のらしい。
軽く内容を流し読みしてみて、思わず唖然としそうになる。
これはまた人間の業が凝縮されたような内容だった。
そして、アレクシアと呼ばれている女に少しだけだが憐憫の情が湧いてしまう。
これは面倒なことになったかもしれない。
『事実は小説よりも奇なりとは言うが、奇妙すぎることもあるもんだな』
『正に人間の業ね。哀れなものだわ』
ジョニーも私の視覚情報を通して日記帳の内容を把握したらしく、デスクの上に腰掛けながら紙巻きを吸っている。
『アンブレラ被害者の会へようこそ。今なら3種のハーブが付いてきます。ってか?』
『今なら、もれなくアンブレラから賠償金をもぎ取れるチャンスっていう風にした方がいいんじゃない?』
『そいつも良いな。笑える』
「V、それに何が書いてあったんだ?」
2人には姿を見ることが出来ないジョニーと、日記帳を見ながら脳内で会話を交わしているので、側から見たらジッと日記帳を集中して読んでいるように見えたらしい。
スティーブに内容を見られても良いが、それはそれで騒いだり躊躇ったりされそうなので横から覗き見られる前にパタンと閉じる。
「大した事は書かれていないわ。ただ、裁判の証拠品の一つになりそうだと思っていただけ」
「へぇ〜、そうかい。俺も無事に脱出出来たら、連中を訴える手伝いをするぜ!」
ここに収監される事になった原因もさることながら、中々に彼も酷い目に遭っているのかもしれないので、裁判をする事に対してはかなり前向きのようだ。
メガコーポに裁判で殴り掛かるのであれば、原告は1人でも多いほうがいい。
メガコーポ、みんなで殴れば怖くない、とは誰が言った言葉だったろうか。
さしものアンブレラも、各地に散ったラクーンシティ避難民数千人を殺すことなんて不可能だろう。
必ずケツの毛までむしり取ってやる。
日記帳も所持品の中に仕舞ってから、私邸を脱出する。
道中、遂にここまで崖や山林を上がって来たらしいゾンビ犬やバンダースナッチと遭遇するが、しっかりと銃を構えるようになったスティーブも戦力として数えられるようになったので、難なく殺戮して先に進んだ。
少し前にアルバートと戦った前庭まで出ると、戦闘で死亡し並べられていた死体達が、私たちの足音だか匂いを嗅いでゾロゾロと立ち上がり始めた。
「多分だけど、入って来たところとは逆の扉にありそうね!行きましょ!」
30体くらいのゾンビが一気に発生したので、全部倒すのは面倒くさい上に掴まれたりしても面倒だ。
2箇所あったらしい扉の入っていない方に走って向かい、鉄柵の扉を開いて急いで中に入る。
石の階段を降りた先には、底が深そうな水路とそこに出っ張るような足場に謎の装置があり、八角形の棒が突き出ている。
ここでピンと来たので、所持品に入れて持って来た操舵輪をその棒に嵌め込むようにすると、ピッタリと噛み合った。
思いっきり操舵輪を回すと、水路に突き出ていたところがさらに水路側に伸びて、暗い水面から小型の潜水艦がゆっくりと浮上して来た。
「まさか、本当に潜水艦があったわけ?もうこれで逃げ出したほうがいいんじゃ無いかしら」
そう思ったのだが、水路は一方方向にしか行けないようになっているらしく、逆側は潜水艦が通れるほどの広さが確保されていなかった。
その頃、ゾンビがバンバンと鉄柵を叩きまくっていていつ壊れてこちらにくるか分からないので、2人を急かして潜水艦のハッチを開けて、艦内に滑り込んだ。
いつもご感想、お気に入り登録ありがとうございます!!
誤字訂正も本当にありがとうございます!!
引き摺り倒したアルフレッドの上でウンコ座りしながら、ブルーファングでチクチクするVの図…あると思います
ブルーファングの神経毒の作用は、独自設定ですので悪しからず…
そしてついでに投下されるアレクシアの日記帳。どういうこと…
なんでコードベロニカ編は、ラクーン編に比べて書きづらいのかなぁと考えた時に、ラクーンシティに比べて同じようなところを行ったり来たりしていて、そもそものマップ自体が狭いって事に気づきました。
当初は10万文字くらい書けるかなぁと思っていたのですが、生活環境のこともあって、まともに執筆時間も取れず、ちょっと厳しいかもしれないので、少し巻きで行きたいと思います。
ご迷惑をお掛け致します。