Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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And if you gaze long into an abyss, the abyss also gazes into you…


第二十七話 Wave of the Dead

潜水艦は小さく、船内はかなり狭かった。

空間はタラップを降りてきたこの場所しかなく。

操縦しようにも操縦席には操縦桿の姿はなく、上下にしか動かないレバー1本とStarterと書かれたスイッチしかない。

 

「えっ?これだけなの?」

 

あまりにも質素すぎて、クレアが操縦席を見て驚いている。

 

『ソ連製の打ち上げロケットかよ』

 

『そうなの?』

 

ジョニーがクレアの肩にタバコを指で挟んだ腕を置いて、横から操縦席を覗き込んでいる。

 

『ああ、アイツらは最終的に宇宙に脱出して、コミーの楽園を作る計画があったからな。誰でも操縦できるように、矢鱈に自動操縦に拘ったんだ。ロケットの操縦は、ランチボックスよりも少し大きい箱一つだったんだぜ?*1そんなもんだから、新ソ連に変わったあとも、連中の宇宙飛行士のライセンスは生涯使えるって噂だ*2

 

『へぇ、知らなかったわ。まぁ、アイツらは火星も既に開拓しているって噂があったけど、本当かもね*3

 

潜水艦の上部ハッチをしっかりと締め終わったスティーブが、タラップを降りてきてジョニーに被るようにクレアの横に立った。

 

「クレア、ここは俺に任せとけって!」

 

「大丈夫なの?」

 

「大丈夫だって!」

 

ちょっと不安だが、自信満々に胸を張って言うスティーブは、操縦席の前に立ってStarterスイッチを迷いもなく押し込む。

ディーゼル潜水艦だったらしく、セルモーターが回転する音と共にドルンと潜水艦後方からディーゼルエンジンの掛かる音がして、アイドリングする微細な振動が伝わってきた。

そのままレバーをグッと掴んで、1番下まで下げるとゆっくりと潜水艦が潜水を始めて進み始める。

スティーブの操作順序は間違っていなかったらしい。

 

「動かし方知ってたわけ?」

 

「あぁ、ここに捕まった初日に、労役?とか言って仕事をさせられたんだよ。その時に、こことは違うところだけど、同じような潜水艦に乗って連れてかれたんだ」

 

「それで覚えてたってわけね」

 

ここはスティーブのファインプレーだ。

良くそんな操作をしているところなんて見て覚えていたものだ。

 

潜水艦はゆるゆると水中を進み、5分くらい経ってから漸く止まり、ゴインと潜水艦が建物にドッキングした衝撃が伝わる。

ハッチの上から、空気の注入されるようなシューッという音が聞こえてきて、閉める時は手動だったハッチが自動的に回転して蓋が持ち上がる。

 

私が先に出て、出た先の安全を確保しに掛かった。

とは言っても、ここは完全に水の中にある通路らしく、全面ガラス張りで魚が泳いでいるのが見える。

隔壁の代わりにもなるであろう自動ドアを開けて先に進むと、何かの建物の中に出た。

地面には血溜まりやそれを引き摺ったような跡が残っており、電力が何処かで寸断でもしてしまっているのか、照明がついているところついていないところがある。

そのせいで建物の中全体が薄暗くなってしまい、場所によっては真っ暗で奥が見えにくくなっていた。

耳を澄ますと、衣擦れのような何かが蠢く音がするので、どこかに潜んでいるらしい。

 

「…いる、わよね」

 

「居る。多分あそこね」

 

F-GX フラググレネードをポイっと暗がりの奥へと放り投げた。

まさか私がいきなりそんなものを投げるとは思っていなかったのか、クレアが思わず放物線を描いて飛んでいくグレネードに手を伸ばしてしまっている。

そのまま暗がりの中に消えて行って、コロコロと転がる音が聞こえた1秒後、炸裂音と一緒に破片が人体を引き裂く水っぽい音がした。

 

「さ、これで安全になったから行きましょ」

 

 

ーーヴアァァァアアァァァァァ

 

 

思わず、一歩踏み出した足を止める。

暗がりの奥に蠢く影が幾つも見えた。

見えてしまった…

 

「な、なぁ…これってちょっと不味いんじゃね?」

 

スティーブが怖気付いたように一歩下がる。

クレアも顔面を真っ青にして、M93Rを構える手も震えていた。

私も後ろに下がろうと思ったら、背後の隔壁が閉まってしまう。

そのガチャンという音が静かな空間に響いてしまった。

 

ぴたりと呻き声が止まる。

 

『Und wenn du lange in einen Abgrund blickst, blickt der Abgrund auch in dich hinein』

 

ジョニーがドイツ語で宣う。

 

『いまそんな教養見せつけないで』

 

MA70 HBを取り出して構える。

斜め向かいに照明が灯っていて明るい通路が見えるので、2人顎をしゃくってそちらの道に進むように指示して、ゆっくり動きました瞬間、爆発したように無数の叫び声が聞こえてこちらに走ってくる足音が、暗闇から真っ直ぐと向かってくる。

 

「向こうまで走って!」

 

何人いるのか分からないくらいゾンビが暗がりから走り出してきた。

MA70 HBをゾンビの大群に向かって撃ち始める。

クレアとスティーブが、ゾンビ達から逃げるように明るい方の通路に向かって全力で走り出した。

私もゾンビ達を引きつけながら、小走りでそちらに向かう。

大口径の炸裂弾を喰らっても、威力が高過ぎたのか向こう側まで突き抜けてしまって、そのままこちらに向かってくるゾンビが居るので油断出来ない。

どこからこんなワラワラと出て来ているのか分からないが、100体を軽く超えているんじゃなかろうか。

 

あっという間に100発を射耗してしまう。

片手でGASH対人グレネードを投げ入れ、レーザーが周囲のゾンビを切り刻んでいる間にMA70 HBを仕舞って、エラッタとM221 サラトガを取り出す。

左手でサラトガを構えて撃ちながら、エラッタと蹴りでゾンビを殺して回る。

 

エラッタを伸ばせば通路の幅いっぱいに広がれるので、取りこぼす心配はないがゾンビが組み付いてくるので鬱陶しい。

エラッタで切り裂きながら肘や爪先でゾンビの人体を破壊して行動不能にする。

だが、後ろからドンドン出てくるので、腕を噛まれたりするが特殊繊維を噛み切れずにゴリラアームの硬さにやって歯が折れたりしているので、そのまま頭を砕いて身体を持ち上げ、思いっきりゾンビの群れに投げ付けて数体を粉微塵にしてやった。

 

なんとかクレアとスティーブが通路のだいぶ向こうに行けたと思い、私も一気に逃げ出そうとした時にスティーブの悲鳴が聞こえた。

 

「V!!助けてくれ!!」

 

首だけ振り返ると、クレアとスティーブが通路の曲がり角を後退りながら銃を通路の向こう側に向かって撃ち続けている。

 

「くそッ、邪魔よ!」

 

こちらの通路の壁側には、分厚いアクリルガラスによって外の水中が丸見えなので、これが割れたら面倒なことになりそうだが、そんなことを気にしていられなくなったかもしれない。

F-GX フラググレネードをポイポイっと3個ほどばら撒いて、ゾンビの圧力を減らす。

爆発で、ゾンビの千切れた手足や内臓の一部がばら撒かれる。

その隙に床にエラッタを突き刺し、空いた片手にブーリャ COMRADE'S HAMMERを抜いて目の前のゾンビを殴りつけ、初弾を装填した。

また後ろを振り向いて確認すると、撃つことに集中し過ぎて通路の壁に背中をつけてしまったスティーブ達の姿が見え、通路の曲がり角からゆっくりと3ヶ月前に世話になった姿が見えた。

アイツらよりは随分とほっそりしているが、ツルッパゲの頭に普通の人間ではあり得ない高身長とくれば、間違いない。

タイラントだ。

 

前と違って防弾繊維のコートを着込んでおらず、全裸なので銃の弾が身体に食い込んでいるがあまり効いている様子がない。

両手ではないので、命中するか不安だがケレズニコフを使い片手でしっかりと狙いを付けてぶっ放した。

強烈な反動で、ゴリラアームでも上に腕が跳ね上がる。

思考加速をしながらしっかり狙いを付けられたので、真っ直ぐとビームのように直進した爆裂弾は、クレア達をロックオンしてこちらを見てすらいないタイラントの右肩に直撃した。

直後に爆発。

 

血肉が飛び散って、タイラントの右腕が肩から千切れ飛び、着弾の衝撃で左側の壁に思いっきり激突して崩れ落ちた。

普通のタイラントに比べ線が細いので、体重もかなり低いのだろう。

 

「早く先に進め!!」

 

クレア達が頷いて先に駆け出して行く。

私も目の前のゾンビを再びブーリャで殴りつけて、クイックリロードする。

噛みついてくるゾンビを押し除けて、思いっきりゴリラアームで殴り付けて電撃を解放する。

数万ボルトの電撃が、重なり合っているゾンビ達を伝わって感電して怯み動かなくなるので、その内に耐圧ガラスに向けてブーリャをぶち込んだ。

 

分厚いガラスを撃ち抜き、向こう側の水中で爆発する。

その圧力でデカいヒビが入り、徐々に全体に広がって行く。

床からエラッタを引き抜いて、脇目も振らずに逃げ出した。

背後で、ビシビシとガラスが割れ始める恐ろしい音が聞こえてくる。

 

『ヤベェぞ!!サンデヴィスタンでもなんでも使って逃げた方がいい!』

 

ジョニーがそう言うので、サンデヴィスタンを使ってクレア達まで追い付き、そこで彼らを両脇に抱えて長い通路の向こう側に見えるエレベーターに向かって走る。

途中でサンデヴィスタンの稼働限界が来て、加速が終わりガクンと速度が落ちた。

だが、強化足関節と強化腱を使って床を跳ねるように駆け抜ける。

気付いたら私に抱えられているスティーブとクレアが、我に返ったかのようにびっくりして暴れる。

 

「動かないの!」

 

「何これ?!」

「どうなってんだ!?」

 

「話すと舌噛むわよ!」

 

後ろから地響きのような音…いや、実際に床も揺れている。

どうやらガラスが崩壊して水が流れ込んできているようだ。

もう一刻の猶予もない。

 

「V!水がすぐそこまで!」

 

傍に抱えているクレアが叫ぶ。

エレベーターの中になんとか滑り込み、床に2人をほっぽり出して壁にある扉の閉まるボタンを連打する。

向こうから濁流が通路に流れ込み、ゾンビやタイラントを巻き込んだ状態でこちらに突っ込んでくるのが見え、ギリギリで隔壁のようなドアが閉まってエレベーターが上昇を始めた。

 

ホッとしてエレベーターの壁に凭れ掛かる。

床でクレアとスティーブも全力ダッシュと激しい振動により、肩で息をしている。

自分でやったこととはいえ、寿命が縮んだ。

失敗していたら、私は望まぬ水中遊泳でクレアとスティーブは立派な水死体に変身するところだった。

しかし、なんであんなところにあれだけのゾンビやタイラントが居たのだろうか。

謎であるが、アルフレッドやアルバート辺りがなんかしたのかもしれない。

少なくとも、ゾンビはここの兵隊や襲撃して来た部隊の隊員のような格好をしていた。

ここの建物を巡って、かなりの戦闘があったのかもしれない。

 

「い、生きてる…」

 

「もう助からないと思ったわ…」

 

2人とも腰砕けになってしまったらしく、ぐったりしたまま動かない。

エレベーターが地上階に到着したらしく、チーンとベルが鳴って扉が開いた。

完全に地上に出たらしく、水に呑まれることはなさそうだ。

いそいそと外に出ると、どうやらここが空港と呼ばれている建物らしい。

海の磯臭い香りがする。

 

格納庫らしい広い建屋の空間の奥側に、高翼機らしい翼の上面とプロペラの一部が見えた。

良かった。

少なくとも一機は残っていることが分かっただけでも安心できる。

 

空港の中は静まり返っており、下にはあれだけゾンビが居たのに対してここには居ないあたり、何かありそうな気がしないでもない。

そこら辺も警戒しながら壁際にあった装置を使い、天井の照明を入れるところから始めた。

パッと空港の水銀天井灯が点き、一気に明るくなる。

機体の方に近付いて行くと、本当に水上機だったらしく翼の左右にフロートが着いていて、胴体下部は水面下にあった。

初めて見たので、大変興味深い。

だが、その水上機のほうに渡る方法が無く、機体のハッチまではそれなりに距離がある。

だが、そのすぐ手前に六角形の穴が重なるように3つほどある機械があったので、私邸の隠し部屋で見つけたあの飛行機やら戦車やらが掘り込まれたプレートを取り出す。

 

「ここにピッタリとハマると思う?」

 

「V、やってみて」

 

「はいはい、ただいま」

 

両側の穴に入れてみると、ピッタリとはハマったので残った真ん中の穴に押し込む。

すると装置のランプが点灯し、同時にスイッチも光った。

これで先に進めそうだ。

全員で装置の周りに集まり、そのスイッチを押し込むと装置が乗っている台が動くようになっていたらしく、機械式アームで水上機のハッチ手前まで行くことが出来たので、そのまま機体側ハッチの取っ手を掴んで開けた。

まだ計器類の電源を入れていないので、機内は真っ暗だが目の前がコックピットなのですぐに電源を入れられる。

 

ちゃっかりとだが、操縦席には既にスティーブが座り込んでおり、なにやらカチャカチャと水上機の計器類を弄っている。

 

「スティーブ、アンタ飛行機なんか飛ばせるわけ?」

 

「飛ばせるぜ!大したもんだろ?」

 

「確かに大したものね。自分で言っちゃうところは残念だけど」

 

「ぷっ」

 

胸を逸らして誇らしげにしているスティーブを見て、クレアが面白おかしいものでも見たように少し吹き出した。

私はやれやれと肩をすくめながら、スティーブが水上機の離陸前準備として計器類の設定をしているのを後ろから眺める。

あっ、と不安なことをスティーブが言うので、横から何を見てそう言ったのかを聞く。

 

「やめてよ。そんな声を出したら心配になるでしょ」

 

「いや、問題がいくつかあるんだ。まずは燃料があんまり入ってない。だから給油しないといけないのと、機体側のバッテリー残量が少なくて発動機を回せないんだ。空港側から電源を引っ張って来ないと、フライホイールを回せないからエンジンを始動出来ないぜ」

 

なるほど、それは確かに大問題だ。

 

「分かったわ。外でそれっぽい物ないか探してみる」

 

そうスティーブに返答すると、手持ち無沙汰のクレアも私も一緒に探すと手を挙げた。

それを見たスティーブは、クレアが側から離れてしまうのが寂しいのか、少し悲しげな表情をしてこちらを見ている。

残念だが、私は2人いた方が早くことを終えらせれられると思っているので、援護射撃はしてあげない。

 

開いたままのハッチから、乗り込み台に戻って装置のスイッチをもう一度押すと、自動的に空港の方に戻った。

まずは燃料を入れることから始めようと辺りを見回すと、機体の真上に航空燃料を入れる口径が15cmくらいはありそうなホースが、可動式のワイヤー装置を使って天井からぶら下げられているのが目に入る。

次はどうやってあれを機体まで下ろせば良いのかとホースを辿って視線を送って行くと、空港兼格納庫になっているこの建屋の2階にキャットウォークがあり、そちらの方に制御出来そうな装置が置いてあるのが見えた。

 

次に、水上機に付けるような電源ケーブルの類が無いか探すが、ぶっちゃけどんなものか分からない。

なんかそれっぽいものを探してみると、ここの照明を入れたコンソールの傍に、かなり大きいドラムコードが置いてあるの気づいた。

その根本の方は、そのコンソールに繋がっており、ドラムコードに巻かれている太いコードの先端には金属端子が五個程突き出ている。

見ればわかる。

多分コレだろう。

 

「クレア!発動機を回すために使う電源って、このケーブルを使うんじゃない?」

 

「こんなに大っきいのね。ここまで大きいケーブルは初めて見たわ。でも、どこに差し込むのかしら」

 

「スティーブに聞いてみましょ」

 

こういう時、ネットに接続出来ないのは不便だ。

電源ケーブルの端子を掴んで機体側に引っ張っていきながら、スティーブに聞くべく再び装置を起動させた。

*1
これは概ね本当。スプートニク1号から自動操縦。一応手動操縦席も存在するが、自動操縦装置は弁当箱より少し大きい箱に、スイッチがちょこちょこついているようなものだった。

*2
これは流石に嘘

*3
アイアンスカイ2と言ってはいけない




いつもご感想、お気に入り登録ありがとうございます!!

いやー、遂にREベロニカの発表来ましたね!!
ベロニカ編書く前に来てくれよ…とは思いましたが笑
ハンクみたいたやつ出て来たし、捕まるところがパリ支部からゴリラのアパートの部屋の中ですし、ロドリゴのオッサン出てくるのかも分からないので、凄い内容に変化がありそうですね…
楽しみです。

ご感想からも質問を頂きましたが、どれだけ内容が変化してしまっているか不明ですが、その内容次第ではコードベロニカ編を丸々編集し直す可能性はあります。
その時に別の作品を投稿していたりしないかという問題はありますが…
改編する場合は、コードベロニカ編を丸々削除して、編集し直したものを差し込み投稿するような形になると思います。
発売は来年らしいですが、よろしくお願いします。
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