Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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Escapes always seem to attract extra passengers...


第二十八話 Escape by Seaplane

電源プラグはどこに挿したらいいかスティーブから聞き出し、言われた通りに機体側面のポートを探し出して5端子のプラグを捩じ込んだ。

あとは、天井からぶら下がっている給油ホースをどうにかして取らないといけない。

聞けば給油口はこの水上機の翼の上らしいので、クレアに上に登ってもらい、その間に私がホースを動かす手立てを探すことになった。

 

「面倒くさいわねぇ」

 

「本当なら、他の人員もいる想定なんでしょうね」

 

私が悪態を吐くと、クレアがまあまあと言った感じで宥めてくる。

まぁ、いつまでもそうしていたって問題は解決しないので、機体側面から落っこちないように手を貸し、クレアを翼の上に押し上げた。

幸い、給油ホース自体は機体の直上にぶら下がっているので、真っ直ぐ降ろせば給油自体は難しくないだろう。

 

クレアを翼上に残し、格納庫の2階にあるキャットウォークまで移動しなくてはならない。

一度装置を使って戻ってから、上を見上げる。

大体6mと言ったところか…

 

ちょうど良い感じに、壁は鉄骨にトタンのような作りをしているので、重量鉄骨が剥き出しになっている。

重量鉄骨の柱として使われているH鋼は、都合の良いことにリベット打ちもされているので、ゴリラアームの握力リミッターを一時的に解除して、垂直のH鋼の縁をギュッと掴んで登攀していく。

猿とまではいかないが、どこかから階段を探して登ったり、その扉を開ける鍵を探したりなんてするよりは、直接壁を登った方が早いだろう。

 

簡単にキャットウォークまで辿り着けたので、キャットウォークの終端にあった機械まで行って操作する。

思ったよりも簡単な機械で、操作系はホースを巻き取るか降ろすかのボタン二つと燃料を流すか止めるかのボタン合計四つしかない。

あとはポンプの圧力計と電圧計みたいなメーターしかないので、とても単純な作りだ。

 

「クレア!行くわよ!」

 

「はーい!オッケー!」

 

ホース降下のボタンを押し込むと、モーターが回る音がしてゆっくりと天井から吊り下がっている給油ホースが水上機の天板に降りていく。

 

「掴んだわ!このまま給油口につける!…オッケーよ!」

 

「燃料送るわね!」

 

ガチャっと金属同士が噛み合った音がしたのを確認してから、燃料注入のボタンを押し込んだ。

ホースの中を液体が流れる音がして、聴いていると秒速でもかなりの流量がホープの中を通って機体へと入って行っているのがわかる。

風が吹いたので気付いたのだが、機械の脇に紙が貼ってあって、それを見ると給油用の機械は自動では止まらないので、自分で操作しないといけないらしい。

危ない、ここを離れてしまうところだった…

それと、最近ポンプの調子が悪いので、油送圧力計が3を超えないようにとも書いてあった。

パッと見ると、既に2.8を指していたので、慌ててストップを押して圧力を下げてから再び送ると、ボタンをポチポチと押し続けていなくてはいけないらしい。

 

どうしてオートストップ機能を付けなかったんだ。

なぜ修理をしない。

もっとこう、潜水艦なんか移動手段に使わないで、金を掛けなきゃ行けないところが他にもあるだろう…と言いたい。

 

スティーブが機体の中から顔を出して、燃料はもう良いというのでストップさせる。あとは巻き上げボタンを押して完了だ。

離陸準備は整った。

スティーブが供給されている電源から、エンジン内のモーターを回転させて始動の準備を始める。

ウィーンという音を立てさせながら、モーターによってゆっくりとプロペラが回転をしはじめる。

 

キャットウォークから下まで飛び降りて、水上機の方に駆け出そうとすると、突如シナプス加速器が自動で発動した。

咄嗟に地面に倒れ込むようにして前転をするが、背中に再び一発を貰ってしまう。

幸い、弾は拳銃弾だったようで、これも防弾繊維で止まり怪我はしなかった。

最近弛んでいるのか、被弾が多くなっている気がする。

追撃の2発目を撃ち込まれないように横に回転して、すぐに立ち上がりユニティを構える。

 

そこに居たのは、銃口から煙を立ち上らせるリボルバーを握り込んだアレクシアだった。

どういう経路を辿ってここまで来たのか、その道のりは過酷だったようで、あちこちに擦り傷をこさえて紫色のドレスは膝下でザックリと破れている。

もしかしたら、動き易いように自分で破ったのかもしれない。

 

「お兄様を傷付けたゴミムシ共め……どこにも行かさない」

 

グッと引き金に力が加わったのが見える。

私の背後には水上機があるので、エンジンやら機体に当たってもらっては困る。

パンッとリボルバーが撃たれて、刃物を取り出す隙も無かったのでゴリラアームで無理矢理弾く。

2発3発と撃たれるので、一歩一歩を踏み出しながら徒手空拳で弾丸を撃ち落とし、4発めを撃つ前にファング*1を取り出して投げつけ、それがリボルバーのシリンダー前面の金属を切り裂いてガッチリと食い込み、シリンダーが回らなくなったことで撃発出来なくなる。

その間に距離を詰めて、腹部にゴリラアームを押し当てて軽く電撃を流した。

 

「があっ!?」

 

ナチュラルでも死なないように手加減した電流を流したので、2、3時間ほどしたら起きるだろう。

もちろん高圧電流が流れた箇所は、バッチリ火傷しているはずだ。

暫くは痛みに苦しむから、起きて暴れたとしても制圧は容易くなるだろう。

 

グッタリとしているアレクシアを担いで、ターボプロップエンジンが始動した水上機に急いで乗り込む。

電源タップはスティーブの手によって既に外されていたが、1人では機内に戻れず翼上に留まっていたクレアを助けるために、装置を使って台座を動かして機体前につけて降りる補助をしてあげた。

その際、私の肩に担がれているアレクシアを見て眉を顰める。

無理もない、こんな場所で囚人達を人体実験の材料にしたり、倫理を火星の裏側まで吹っ飛ばして好き勝手研究していたヤバい女だと思われているのだから。

 

機体に乗り込むと、既にあっちこっちのスイッチを入れ終わって、いつでも発進できますと言わんばかりに準備万端のスティーブが待っていた。

 

「えっ!ソイツ、アレクシアじゃねえの?飛行機に乗せても大丈夫なのかよ」

 

「気絶させてるから大丈夫。ほら、こっちは気にせず出発しなよ」

 

「わ、分かったぜ。その代わり、しっかりと掴まっとけよな!水上機なんか飛ばすのは初めてなんだからさ!」

 

「…ん?それ大丈夫なの?」

 

だいぶ不安になるような事を言いながらも、澱みなく機体を操作してゆっくりと水上機が海面を滑り出す。

空港の格納庫から出て、海面に突き出ている誘導灯を頼りに、真っ暗で何も見えない夜の海に向かって機体を加速させる。

 

波を機体底部が切り裂いていく毎に跳ねるので、いつ機体がバラバラになるのではと恐怖心に駆られそうになる。

エンジンが唸りを上げて、十分に加速し切ったのか、揺れが収まりふわっと機体が浮き上がった。

 

「…おぉ、飛んでる」

 

「スティーブ!すごいわ!」

 

本当に操縦出来たらしい。

ガキンチョにしては、大したものだ。

クレアがスティーブの肩を後ろから掴んで、ピョンピョンと飛び跳ねている。

無事に脱出できたのがよっぽど嬉しいらしい。

 

「あっ」

 

そこで、一つ大事なことを思い出してしまった。

 

「ど、どうしたの?」

 

「クレア、クリスをあの島に呼び寄せてなかったかしら」

 

「あっ!兄さん!!」

 

あちゃーっといった感じに、クレアが頭を抱える。

あの兄にしてこの妹と言った感じかもしれない。

しかし、もう飛んで逃げてしまったので、今更引き返すことは出来ない。

私から連絡を取ろうと思っても、既に携帯電話の電波は入らなくなっているので、私から連絡を掛けることも出来ない。

 

さてどうしようかと思っていたら、突如とんでもない爆発音と共に機体が激しく揺れた。

気絶したまま後方にずり下がり始めているアレクシアを捕まえて、機体側面にしがみつく。

 

「な、なんだ!?」

 

「スティーブ!揺れが収まったら、一回旋回してみて!」

 

「分かった!」

 

振動自体はすぐに収まったので、機体を傾けてロックフォード島の方に旋回を始める。

そうして見えて来たのは、島からそこそこ大きいキノコ雲が立ち上っている光景だった。

 

「も、もしかして核爆発…?」

 

クレアが恐る恐るといった様子で私の方を見てくるので、首を振って否定する。

いや、そもそもなんで私の顔を見るのか。

私が小型熱核兵器を使用したのは、ジョニー以外誰も知らない筈なのに…

 

ガイガーカウンターが鳴っていないので、通常爆薬などでの爆発なのであろうが、あれでは島の重要施設の大半は破壊されたと見ていいだろう。

 

「親父…」

 

スティーブが爆発した島の方を見てつぶやいた。

 

「スティーブ…」

 

クレアも何故か悲しそうな顔をしている。

私と分断されてしまった後に、2人の間に何かあったようだ。

スティーブが機体を元の航路に戻して、自動操縦に切り替え座席を立った。

 

「それで、俺たちを殺そうとしたソイツを連れて来て、どうするんだ?」

 

「まぁ、それは本人が起きてからのお楽しみね」

 

起きた時に暴れないように、両の手を後ろ手にして電磁手錠を掛ける。

足も同じように電磁手錠をつけた上で、手錠同士をくっつけて海老反りにしておく。

それから、身体を弄って危険物を所持していないか確認したところ、小さいダガーナイフとバタフライナイフ、フラググレネードが2発ほどドレスに隠して持っていたので没収する。

機上で自爆でもされたりしたら大変だ。

それから、舌を噛み切ったりして自害されないように何か良いものは無いかと所持品を探した結果、ちょうどいいものが入ってた。

それをしっかりとアレクシアに咥えさせる。

 

「な、なんかエッチだなぁ」

 

「えぇ……V、なんでそんなもの持ってるの?」

 

「あー、これはねぇ…ちょーっと使う用事があったのよ。昔に…」

 

口に咥えさせるものなんて、ボールギャグ以外には無いわけなのだが…

前に、ミリテクのメレディス・スタウト*2に誘われてモーテルに行った際に、彼女に対して使ったものがそのまま入っていて、出すのをすっかり忘れていたのだ。

まぁ、こうやって使えたのだから、きっとメレディスも喜んでいる筈。

 

『そういや、俺は会ったことないな』

 

『ジョニー、アンタと会う前の話だからよ。あの夜は凄かったわ』

 

『ほぉ。お前が言うんだから、相当なんだろうな』

 

相当なんてものではない。

とんでもない性欲と性癖を溜め込んでいたモンスターマシンだ。

ワンナイトで終わってしまったことが勿体無いが、お互いに立場があるので仕方が無かった。

 

「へ、へぇ…そうなのね……ジルに使ったりは?」

 

「なんでジルの名前が?使うわけないでしょ」

 

「そ、そうよね!」

 

クレアもおかしなことを言うものだ。

 

とりあえずきっちりと拘束はしたので、航空機関士席に座らせて彼女が起きるのを待つことにする。

 

「で、この水上機はどこに向かうようにセットしたの?」

 

「アメリカの東海岸だぜ。ここからだと、ざっと5時間は掛かるかな」

 

「5時間ねぇ。その頃には彼女も起きるでしょ。私はそれまで寝てようかしら」

 

正直、逃げ出すだけでもかなり疲れたのは否めない。

私1人であればどうにでもなったし、目撃者は全員消したら良いのでクロームやインプラントを使いたい放題だった筈なのだ。

まぁ、私からしてみれば、かなり今回は抑えた方である。

 

2人も脱出まで気が張っていたのもあるだろう。

自分たちも少し仮眠しようと言う話になり、クレアとスティーブは身を寄せ合うようにして広いコックピットの床に座って、機材収納に入っていた毛布を纏いながらすぐにうつらうつらし始めた。

クレアも女子大生と若く、それよりも更に若いスティーブもウィルスパニックが起きた島でよくやった。

実際大したものである。

大抵の人間なら、パニックを起こしている間にゾンビに押し倒されて胃袋に収まるか、連中の仲間入りをしているはずだ。

きっと私がいなくても、2人なら案外脱出出来ていたかもしれない。

 

40分ほど飛行したころであろうか、コックピットのランプが点滅し始める。

スティーブとクレアは寝息を立てているので、わざわざ起こすのもかわいそうだ。

そこで点滅しているランプを見てみると、後部ハッチ解放と書いてある。

 

何故急に後部ハッチが解放された?

不思議に思い、コックピットから格納庫に通じる扉を見やる。

ターボプロップの低いプロペラ音しか聞こえないが、何かが入って来たのか?

 

寝ている2人を残し、格納庫に続くスライドドアを開けると気圧の関係でコックピット内の圧力が一気に減圧され、強い風が内から外に向けて吐き出される。

大きく息を吐き出し、肺に入っている空気を全て吐き出してから息を吸う。

今の高度は大体6000mくらいなので、寝ている間に減圧された2人は共に気絶しているだろう。

すぐにスライドドアを閉めて、コックピット内が与圧されるようにした。

 

開きっぱなしになっているカーゴランプ*3から星空が見えている。

流石に6000mだとかなり寒いが、リアルスキンの感覚設定を切れば温度は何も感じないので、行動に支障はない。

 

最初から貨物が積まれていたようで、パレットの上に積まれてパッケージ化された貨物がベルトで6個ほど固定されていた。

その奥、そこには大きい人影が立っている。

 

片腕が肩から無く、ツルッパゲで全裸。

残っている腕は巨大な爪が乱立して伸びていて、床に着きそうになっている。

そして大きな心臓が胸の真ん中から飛び出ていた。

あの酷い目にあった水中通路にいたタイラントだ。

どうやら、あの後すぐには窒息死せず水没した水路から外に出て、今の今まで機体に張り付いていたらしい。

BOWにしては見上げた根性だ。

 

暴走しており体温もかなり高いのか、全身から湯気が立ち上っている。

このままここで暴れられて、水上機が破壊されたらそれこそオシマイだ。

さて、どうして始末しようか。

*1
ブルーファングと違い、相手にヒットすると何故か動けなくなる効果がある。(シ○マルのカゲヌイ=ジツとか言ってはいけない)見た目はブルーファングのような両刃ではなく、短刀と言うか海外のペティナイフみたいな見た目をしている。本来であればDLCでアホ鳥ことソングバードを裏切り、リードルートに入ることでカート・ハンセン大佐の死体から入手することが出来る。このVはミリテクカントMK6を装備しているのでナイトシティ市民なら理解していると思うが、しかし正史とはことなる結果を歩んでいる。最初こそ本当に助けてくれるのか怪しいソングバードを裏切りリードルートに入ったはいいが、色々先に進む過程で同情したVはソングバードの最後の願いを聞かずに殺さず、土壇場でなんやかんやあって仲違いしリードをぶっ殺して、結局ミスターブルーアイズのツテを使って彼女を月に送ってから本ルートに戻り、死神なんて怖く無いルートを取っている。(もうこれ訳分かんねぇよ)

*2
ミリテクのカッコいいお姉様(ミリテクオバさんと言ってはいけない。戒め)。コーポなのでもちろんエリート。プロローグ的なミッションで関わることになる。Vの選択肢次第では死亡したり生存したりするが、生存させると後日モーテルに呼び出されてエチチな展開になる。DかEくらいはありそう。尚、PC版では生存させた後に呼び出されたモーテルで、アダム・スマッシャーをしばく為のアイコニック鈍器が手に入る。レベッカが奴に殺された後は、コイツで御礼参りするV達が沢山いたとか居なかったとか…

*3
C-130の水上機仕様っぽい航空機なので、水上機のくせにカーゴランプを有している




いつもご感想、お気に入り登録ありがとうございます!!

すみません、少し遅くなりました。
もしかしたら、更新頻度がこれくらいになっていくかもです。

アレクシアを誘拐して来ましたが、彼女の秘密は次回に持ち越しになります。
まだREベロニカが発売されていないので、作中ではやりたい放題出来ますね。

それと、ご感想でサイパンの武器や用語を調べたりするのが大変というのを頂きましたので、全て後書きですと業務連絡と被ったりするので、なるべく注釈を用いて解説や偏見に基づいた感想を差し込んでいきたいと思います。
それに付随したものは、後書きの最後の方で書くかもしれません。
よろしくお願いします!


解説
ミリテク
NUSA(新合衆国)に蔓延る巨大軍事企業(暗黒メガコーポ)。
日本のアラサカとタイマン張れるのは、サイパン世界でもコイツと何やってるか不明なナイトコープと数社くらい。(知らんけど)
軍事企業と名のつく通り、戦車やAVに留まらず、様々な武器や兵器を開発している。
もちろんサイバネティクスも同様に作っている。
基本的にNUSAを裏でコントロールしているのはミリテクで、あちこちで利益のために戦争を起こしたりするやべー会社。

アダム・スマッシャー
めっちゃ強いクソサイボーグ。
ジョニーがrelic入りしてしまった原因の1人。
身体の9割以上が機械化されており、脳みそや脊髄はバイオポッドと呼ばれる容器の中に入っていて、それごと入れ替えることで義体をすぐに乗り換えることが出来る。
アニメ、エッジランナーズでカワイイカワイイレベッカたんを踏み潰し、主人公のデイビッドを殺害してルーシーを悲しませた罪により、史上短時間で最も殺されたボスになった。
大抵、レベッカの持っていたカーネイジGUTSというショットガンか、ジョン・マラコック卿とよばれるチソチソで殴り殺すかのどちらかで御礼参りされている。
verで強さが異なり、最初の頃はチソチソで殴られるとビクンビクンスタンして何も出来なくなるクソ雑魚だった。
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