Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】 作:持麻呂
精神的グロ注意です。
一部性暴力表現があります。
苦手な方は、前半部分を読み終えたら、後書きまでスキップしてください。結論だけを記載しておきます。
後部格納庫は荷物コンテナのせいで狭く、縦2列に並んでいるコンテナとコンテナの間が通路のようになっている。
普通のタイラントでは、図体がデカ過ぎるので通れなかったかもしれないが、目の前のコイツは随分と貧弱そうな細身なので、余裕を持って近づいて来る。
こちら側もその細い通路を走って、タイラントの土手っ腹を蹴り付ける。
ドゴッと鈍い音がして、タイラントがもんどりうって後ろにひっくり返る。
そのまま開いているカーゴランプから落ちて行ってしまえばいいものを、荷物に長い爪を引っ掛けて体勢を立て直した。
片方の腕が無いので、残っている腕を使っている間は身動きが取れない。
エラッタ*1で荷物コンテナを固定しているラッシングベルトを切断すると、左側の縦一列が徐々に外に向かってずり落ちて行って、タイラントに激しくぶつかりながら空中に投げ出されていく。
タイラントはかなり重量のある荷物に胸部を殴打されながらも、荷物と一緒になって落ちるのだけは回避して、広くなった格納庫を走って向かって来る。
面倒くさいが、こちらもエラッタで迎え討つ。
私目掛けて刺突される長く太い爪をエラッタの峰で掬い上げ、返す刀で胸部の副心臓を切り裂くつもりだったのだが、掬い上げた時に仰け反られたせいで空を切る。
タタラを踏んで後ろに下がったところに足払いを掛けるが、細い割に体重があって踏ん張られてしまう。
ならばと思い、足の甲を思いっきり踏み付けて、強烈なレバーブローを打ち込む。
肋骨と内臓を破壊する感触があり、吐血しながらタイラントが膝を着こうとするので、そのまま顎をアッパーカットでカチ上げた。
ふっ飛んでいきそうなのを足の甲を踏んでいることで押さえつけ、サンデヴィスタンを使ってラッシュをひたすら打ち込み続けて、最後に回し蹴りを決める。
『K.O!!』
ジョニーが残っている荷物の上から両手を挙げて叫ぶ。
後部格納庫の床を転がり、そのまま滑り落ちていくかと思ったら、爪を格納庫の床に突き入れて踏み止まった。
起き上がれないくらいにはダメージを受けているらしいが、アレで死ななかったらしい。
鉄筋コンクリートを砕くくらいの力で殴り付けたから、内臓は滅茶苦茶に破裂しているだろうにかなりタフである。
前にNESTで対峙したタイラントは、心臓パンチで一発だったのにだ。
急に水上機がグラッと動いて、機体が旋回しながら上昇を始める。
私も立っていられなくなったので、床のラッシングベルトを引っ掛ける穴に捕まり、ふらつきながらも片足を立てたタイラントが、荷物コンテナに爪を突き刺して落ちないようにするので、空いている片手でエラッタを振るい、残っているラッシングベルトを切断した。
水上機が上昇しているため傾斜がキツくなり、荷物コンテナの列が徐々に加速しながら外に向かって滑り出す。
細身のタイラントは荷物コンテナにしっかりと爪を食い込ませて身体を固定していたので、爪を外す暇もなくそのまま引き摺られるようにして、空中に放り出された。
ただ、タイラントの生命力だと高空から落ちた程度では死なない可能性がある。
そこで、すぐさまL-69 ズオ BA XING CHONG*2を取り出し、暫しの空中遊泳を楽しむことになるタイラントに向けて、スマート炸裂弾を8発プレゼントした。
少し距離が空いているので、綺麗に空に散った弾が素直にブレることなくタイラントに殺到して、夜空に特大の汚い花火を咲かせた。
ガタガタと機体が衝撃で軽く振動する。
『汚ねえ花火だな』
「ま、ざっとこんなもんでしょ」
ここが機内でなければ、最初からズオを撃ち込んでいるかエラッタ振り回して膾斬りにしてしているところだ。
そうしたらもっと早かった。
後部格納庫内にあったカーゴランプの開閉ボタンを押して、カーゴランプを閉鎖する。
ここも一応与圧はされるようなので、暫く待ってコックピットと同じくらいの気圧にしてから戻る。
クレアとスティーブはまだぐっすりとお休み中で、機体が傾いたのはどうやら自動操縦が進路調整をしたせいのようだ。
まぁ、スティーブが東海岸に行くと言っていたので、放っておいてもそのうち着くだろう。
大陸が近づいて来たら、電話の電波も届くはずなので、その時になったらレオンに連絡すれば問題は解決だ。
私はクレアの横に座り込んで、アレクシアが覚醒するのを待つことにした。
大体、4時間ほどだろうか。
最初はスティーブが起きた。
私がクレアの横に座り込んでいるのに気付いていないのか、何を思ったのかスティーブがクレアにキスしようとするので、咳払いをする。
「うわっ!」
面白いように飛び上がって立ち上がる。
いや、今更背伸びして誤魔化しても、もう遅いと思うのだが。
スティーブが驚いて叫んだ声と、飛び退いた事でクレアも目を擦りながら目を覚ました。
「うぅん…もうそろそろ着くの?」
「いや、まだっぽいわね。それより、スティーブがクレアにキ「わぁあぁ!!」…煩いわね」
慌てたようにスティーブがわちゃわちゃするので、いたずら心がムクムクと湧いてきたが、流石に捻くれ純情少年を弄ぶような悪い大人では無いので、黙っておいてやることにした。
それから、小腹が空いたので所持品の中からニコーラ・クラシック*3とサンドイッチを取り出して分けて食べる。
このサンドイッチは、本当ならジルのために彼女の好きな具材で作ったのだが、ロックフォード島に来る前に用事で入れ違いになってしまったので、渡せなかった物だ。
「Vって料理が上手で羨ましいわ。本当に美味しいわね。なんて言う名前のサンドイッチなの?」
クレアが、片手でモグモグとサンドイッチを頬張りながら聞いてくる。
…スティーブ、そんなにクレアの唇をチラチラ見てると余計に怪しいぞ。
「そうねぇ。強いて言うならジルサンドイッチかしらね」
「ジルサンドイッチ?変な名前」
「ジルの好物ばっかりで作ってるから」
「Vとジルって仲良いのね」
放っておいたら、1人でもアンブレラの施設に突撃して行きそうだからと言うのもある。
それに、彼女の胸はなかなか魅力的だ。
「…モゴ」
私たちの会話で覚醒したのか、アレクシアも目を覚ました。
スティーブとクレアも気付いて黙る。
アレクシアは、海老反りに縛られていることに気付いたのか、ガタガタと暴れるが力が入らないような体勢のため揺れ動くくらいしか出来ないでいる。
それに、ボールギャグを噛ませられているので、多分文句やら罵倒をしようとしているのだろうが、モゴモゴやフガフガとしか言えていない。
大変滑稽である。
身体に触ろうとすると、ボールギャグ越しに噛みつこうとしてくるので、ジョニーがニヤニヤしながらアレクシアの横でうんこ座りして、紙巻きの煙を吐き出している。
本当にイイ性格をしていると思う。
「さてさて、本日の主役もお目覚めね」
「ねえV。寝る前にすごい思わせぶりなことを言っていたけど、これから教えてくれるの?」
クレアがそう聞いてくる。
「もちろん。その前に、一旦ボールギャグを外さないと」
左手でガッチリと頭を床に押さえ込んでから、ボールギャグを口から外す。
すると出るわ出るわ罵倒の雨霰。
耳がキーンとして来るので、軽く電流を流して少し元気を奪う。
「少し黙ってなさい。…さて、仕切り直すわね。まず結論から先に言うと、コイツはアレクシアじゃない」
「えっ?」
「なにそれ」
スティーブとクレアが同時に疑問の声を出す。
言いたいことはわかる。
ホームビデオや肖像画、天才との記事が書かれた新聞や飾られている写真などに写っていたアレクシアの顔と、ここにいる仮称アレクシアの顔は一緒だからだ。
「そうよね。私も最初はそう思った。だけど、アレクシアの部屋で見つけたこの日記帳を読んでから、実際にはそうじゃ無いってことが分かった」
そう言って所持品から取り出したのは、アレクシアの部屋で叩き壊したデスクから見つかった、あのしっかりとした装丁の日記帳*4だ。
「……な、なにを」
「これよこれ。アンタが書いたんでしょ?パラノイア夢日記でなければ、随分と興味深いことが書いてあったわ」
その内容とは、私たちがアレクシアだと思っていたこの目の前の女は、実は全くの別人で、元々はヨーロッパに住んでいた街で1番の秀才少女だったと言うものだ。
彼女はちょうど本物のアレクシアと同い年で、アレクシアほどの突き抜けた天才では無かったものの、学校を飛び級で卒業したりしていたらしく、アンブレラからもスカウトの声が掛かっていたらしい。
しかし、彼女は生家の家業を継がなくてはいけなかったので、アンブレラのスカウトは断っていたらしかったのだが、ある日突然家が火事になりそのどさくさに紛れて誘拐されたと書かれていた。
「誘拐って…」
「そう、その誘拐された先がロックフォード島で、首謀者はアルフレッド」
「…お……兄様の悪口を…言うな!」
「いっそ哀れね。それも全て、植え付けられた記憶だと言うのに」
誘拐されてからは、毎日毎日拷問と倒錯的な性暴力、そして薬物投与とループ映像、暗示による洗脳が行われていたらしい。
もちろんそれを行ったのはアルフレッド本人である。
どうやら、アルフレッドは時たまおかしくなったのか女のフリをしたりすることがあったようだが、ひたすらにアレクシアの記憶と性格を刷り込んできたようだ。
その時は私物は一切持てず、日記帳は哀れに思った使用人を上手く騙くらかして調達したようで、これに自分でも徐々に失われていくのが分かる自分の人格や記憶をなるべく書き連ねて、少しでも自分という人間が居た証拠を残そうと足掻いていたらしい。
なので、最初はしっかりとした文章になっていて読みやすいものだったが、徐々に自己が失われる恐怖と日々行われる性暴力による妊娠の恐怖がない混ぜになって文字がぐちゃぐちゃになっていき、内容も次第に支離滅裂なものに変わっていく。
そして最後の方になると、全身の整形によって自己を確立するアイデンティティの最大のものの一つである顔を失い、『自分が最初どのような人間でどんな顔だったかすら思い出せなくなり、居たであろう両親から貰ったはずの名前すら分からなくなってしまった。もう自分がアレクシアなのかそうではないのか分からない。いや、私はアレクシアだ。ちがう、おまえはだれだ』それを最後に日記帳への書き込みは無く、そこで元の人格は消えてしまったのだろう。
本人が読み返して自分のことを思い出すために事細かく書いてあったが、分からなくなって来た時に本人がそれを読み返さなかったのか、日記帳自体は無駄になってしまったようだ。
「そ、そんな酷い…」
「つ、つまり、そいつはアレクシアの偽者ってことかよ…」
「なぜ、アルフレッドがコイツをアレクシアに〝した〟のか、一応それも書いてあった」
アルフレッドは彼女を犯しながら、無意識中にアレクシアの名前を何度も呼んでいたらしく、ある日どうしてなのかを尋ねたらしい。
すると、暫くスイッチが切れたかのように呆然としたと思ったら、急に虚空を見つめながら口ごもりながら訥々と話始めたようだ。
その内容は、アレクシアは遂に完成したウィルスの実験のために、長い眠りについた。
だが当時子供だったアルフレッドには、自分の半身*5であるアレクシアとの長期間の別れは相当に堪えたらしく、頭がおかしくなりそうなほどに愛していて、どうしても逢いたいのに逢えない。
それならば、いっそのこと自分に応えてくれるアレクシアをもう1人作ればいいのだと思い付いたと語ったとのこと。
その後すぐに、ハッと我に返って鞭を喰らったらしい。
彼女は彼女で、生存本能として暴力から逃れ生き残る為に、本人の意思とは関係なく刷り込まれ続けるアレクシアを模倣して行ったのだろう。
元々街でも秀才と言われていたので、努力で医学雑誌などを読み漁りその内容を習得していった。
アルフレッドも段々と判断が付かなくなる程度には…
「正直、アレクシアの方がヤバいってだけで、
「ち…ちがう……お兄様は、そんな」
「本当にそう思ってるわけ?心のどこかで、疑問に思うことはない?」
「やめろ!…や、やめて!」
「偽りの記憶に縋り付く姿は滑稽ね。エイブリー」
アレクシア改めエイブリーは、頭痛でもするのか頭を抱えようとして出来ずに、絶叫しながら床の上でのたうち回る。
『洗脳はミリテクの連中が得意そうだな』
『ハックで直接相手の脳みそにアクセス出来てしまう分、やり易いでしょうね』
『あとは俺たちみたいなやつだな』
『relicは完全に別人になっちゃうじゃない。まあ、究極形ではあるけど』
ジョニーと発狂しているエイブリーを覗き込みながら話していると、遂に頭のキャパシティがオーバーフローしてしまったのか、ふっと白目を剥いて気絶してしまった。
『死んだか?』
『まさか。でも暫くは起きないわね』
洗脳を受けた人間が、再び入れられた人格を否定されたら起きる防御反応なので、問題はない。
「な、なあ。なんでVは拷問とか洗脳に詳しかったりするんだ?」
スティーブがビクビクしながら聞いてくる。
まあ、当然だろう。
別に取って食おうと思っていないのだから、そんなに怯えなくても良いのにとは思う。
「そうねぇ…私にも分からないわ」
「分からないって…」
「だって、私一応記憶喪失だし」
多分、死ぬまでこの設定は引き摺ることになりそうだ。
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今日は誕生日なので初投稿です。
スキップされた方用
アレクシアの日記の内容を説明した。
アレクシアは本当はエイブリーという名前で、狂ったアルフレッドが妹恋しさに作り上げた偽者。
真実を告げられて発狂したエイブリーは気絶←イマココ
偽エイダことカーラって居ましたよね。
あんな感じです。
ちなみに、アルフレッドも狂ってしまっているので、エイブリーのことを本物のアレクシアが帰って来たのだと錯覚しています。
一応、伏線として何箇所かに〝2人の足音〟と表記していたので、違和感を感じたり気付かれた方もいらっしゃるのではないかなと思います。
コードベロニカ編を始めるにあたり、初期から考えていた原作と1番の違う点をやっと書けたので、少しホッとしました笑
それと、せっかく頂いたご感想にお返事出来ずに申し訳ありませんでした。
少し疲れてしまっていたので、返そう返そうと思ってはいたのですが中々気力が湧かず…
ゆっくりですが、お返事出来ていないご感想も含めてお返事返していきたいと思います。