Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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Is surviving truly a good thing? What if hell awaits us ahead...


第四話 The beginning of the End

ロバート・ケンドの娘、エマにはたくさんの友達がいるが、その中でも1番仲が良いのはメリルと言う黒人の少女だ。

メリルの父親はあのマービン警部補で、大好きな父親と一緒に帰りたい時はよくKENDOで夜になるまで預かっている。

ロバートも人が良いので、それなりの頻度で来ていてもエマの親友というだけで、毎度快く預かっているのだ。

本当に偉い。

 

類は友を呼ぶと言うべきか、メリルはエマほど腕白ではないものの行動力の化身で、母親と喧嘩すると1人でKENDOまでやって来てしまうくらいには行動力がある。

表通りは比較的人出があるので、危険は少ないとはいえ路地裏にチンピラの類いやロリコンが居ないわけではない。

基本的に、合衆国では13歳未満の子供が1人で外を出歩くのは違法だ。

これは新合衆国時代も変わらない、至って普遍的な法律である。

普通なら親がネグレクト扱いで逮捕されてしまうのだが、当の子ども本人はそんなことは知らないし、ダメと言われたって頭に血が昇っていたらそんなルールはあってないようなものだ。

メリルが1人でKENDOに来訪するその度に、ロバートは目の前のRPDに駆け込んでマービンを連れて来るという気苦労をしている。

もちろん一度や二度の話では無いので、すぐに職場のマービンに母親から電話が行き、マービンからKENDOに前以て連絡が来るという黄金パターンが確立していた。

 

メリルの母親に何度も会って話をしたりしているのだが、子供に暴力を振るったりネグレクトをするような女性では無く、別にどこにでもいるような心優しい母親で、いつも彼女からは育児の苦労話をよく聞いたりしていた。

メリルは少しでも強く叱ると、すぐに家を飛び出してしまう困ったちゃんらしい。

それでも深く子供を愛しているのだから、母親というものはすごい。

だがなんでも親に反抗したがる年頃の子供を持つ母親というものには、心から同情と哀悼の意を表する。

私も命の危機が去っていて、比較的平穏に暮らしている今現在であるが、自分の子供が欲しいかと言われたらまだちょっと分からないというのが正直なところだ。

まぁジョニーというクズ男と頭の中で同居していると、どうしても男という生き物に失望しやすいというのもあるが、私はどちらかと言うと女性の方が好きなので、ここら辺は好みの問題だろう。

 

とにかく、腕白な子供2人と仲良くなってしまったからには情だって芽生えるわけで、ヤバい実験をしているアンブレラのお膝元というのもあり、大怪我をした時に応急処置として使えるバウンスバッグランク5+を一つずつ渡してある。

無針注射器の中には治療用のナノマシンが入っているので、頭が砕けたり内臓が飛び出たり大動脈を切断してしまうような大怪我でなければ、30秒もあればほぼ全回復するだろう。

たとえ狂犬病の野犬に噛まれたとしても、ナノマシンは人体に入り込んだバイ菌やウィルスを悉く破壊除去するので、1つでも渡して有ればこちらも安心できるというものだ。

 

 

 

この判断が、後々に正しかったと証明されることになるとは、夢にも思わなかった。

 

 

 

1998年6月ーーー

最近になって、ラクーンシティ市内には変な噂が流れるようになった。

なにやら近所のアークレイ山地や郊外で、犬の化け物を見たやら襲って来たやら、それに犬だけじゃなく頭骨が剥き出しになっていても歩いているアライグマや同族の内臓を貪り食っているシカなんかも目撃されているらしい。

とにかく、そういった猟奇的で都市伝説的な噂が広まり始めたのだ。

私はピンと来た。

 

アンブレラのメインフレームやスパコンから抜いた機密情報に記載されていた、始祖V…いや始祖ウィルス。

それから発展研究されていたTと呼称されたウィルスが、なんらかの目的を持って散布されたのではないかと考えたのだ。

きっと例の夜に下水道で出会ったワニのバケモノも、Tウィルスと何かしらの関係があったに違いない。

アンブレラが一体何を考えているのか分からないが、人前にそんなヤバそうな状態の野生動物が出現しているという噂がある時点で、管理された状況ではないというのは一目瞭然だ。

 

まだこの程度では、この動物たちの裏にアンブレラが関わっていると言っても絶対に信じてもらえないので、7月に入りアークレイ山地で遭難者が多発し、遂にラクーンシティ郊外で一家が暴徒10人に襲われて無惨にも食い殺される事件が起きた段階で、マービンとロバートにすぐラクーンシティから妻子を遠ざけることを提案した。

確かに郊外や山岳地帯では不審で猟奇的な事件が起きているが、人口密集地帯では警察官や人目が多いので早々そんなことは起きないと笑われたが、アンブレラがだいぶ怪しいことをしていると言うと、彼らも何か心当たりが有るのか思う節があるのか笑うのをやめ、真剣に考えてくれるようだ。

 

 

 

7月22日、KENDOの常連客であり金蔓の特殊部隊スターズ、そのブラヴォーチームのリーダーであるエンリコ・マリーニが、可愛い新人のレベッカ・チェンバースを伴って店を訪れた。

詳細は教えてくれなかったが、近いうちにどこかに派遣されるため、不足している武器弾薬とレベッカ用の武器を調達しに来たらしい。

エンリコから聞いた話では、RPDにあるハンドガンの弾を根こそぎ持っていくわけにはいかず、ここで買っていくということだったので、せっかくなら同じ9mmルガー弾を使用して反動も少なく使い易い、MP5をオススメしておく。*1

なんでも高価な上に民間人が所持することができないMP5をロバートは何故か複数購入してしまったらしく、完全な不良在庫になっているという愚痴を聞いていたので、合法的に所持出来る警察特殊部隊でそれなりに予算をもらっている彼に買ってもらおうという算段だった。

特殊部隊スターズの正式武装がどんなものなのか知らないが、いつも彼らは拳銃弾やハンドガンのカスタムパーツしか買っていかないので、たいした火力を保持していないのではないかと考えて*2、スラムファイアで瞬間火力を発揮できるウィンチェスターM12のトレンチガンモデルもオススメした。

女性でも扱い易いスリング付きで腰撃ちもし易いし、弾が無くなっても長大なM1917銃剣が付けれるので、即席の槍としても使用出来る。

どうせ今起きている碌でもない猟奇的事件に関与しにいくに決まっているので、少しでも彼らに火力があったほうがいいと思ってのオススメだった。

 

少し考えたエンリコは、部隊としては短機関銃であるMP5を少数試験的採用とするとして、ブラヴォーチームリーダーの裁量権で3丁とKENDOの9mmルガー弾の在庫全てを購入した。

M12に関しては、既にショットガンを複数導入しているので部隊としては必要無いが、レベッカが個人の所有火器として使用する分には問題は無いとして、エンリコのポケットマネーでお買い上げ。

となりのレベッカちゃんが恐縮していたが、火力は有れば有るだけ良いので、練習用に私から12ゲージバックショットと12ゲージフォスター型スラッグを1BOXずつプレゼントした。

バックショットは1BOXあたり25発入っているので、そのくらい射撃したら反動特性にも慣れるだろう。

スラッグ弾はお守りだ。

 

 

それから数日の間、彼らの姿を見ることはなかった。

KENDOにもJackにも姿を現さないので、それなりに長期の作戦になっているのだろうと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。

26日にマービンがやって来て、真剣な顔でメリルと奥さんをラクーンシティから遠ざけると言って来た。

 

「Vが言っていた通り、この事件の裏にはアンブレラが関わっていたらしい。詳しいことはまだだが、ジルとクリスから23日から24日に何が起きたのか聞いたんだ」

 

「ちょっと待って、スターズは?みんな無事なの?」

 

「……いや、スターズは半壊した。帰って来たのはジル、クリス、バリー、ブラッド、ケネス、レベッカ、エドワード、リチャードだけだ」

 

マービンが沈痛な面持ちのままそう言った。

 

「本当に半分は死んじゃったわけね。まさかアルバートやエンリコも死んじゃうなんて、よっぽど酷い事件に駆り出されちゃったの?」

 

「ああ、本当に悲惨な現場だったらしい…なにやら、人喰いの化け物やデカい蛇や蜘蛛なんてのも襲って来たとか」

 

「…あー、よく半分も生きて帰って来たわね」

 

脳裏には、あの下水道で会ったワニのバケモノの姿がチラついた。

ワニであれだけ大きかったのだから、蛇なんかどれくらいまで大きくなっているか想像もつかない。

 

「ともかく、近隣のアークレイ山地でそんなことがあったんだから、ここも安全じゃ無いかもしれない。言っていた通りすぐに家内と娘を避難させるよ。妻の実家がD.C.だから、そこなら安全なはずだ」

 

「そうね。その方が絶対にいいわ」

 

「ロバートに伝えてくれ、俺は迷わなかった。次はお前の番だって」

 

「分かった。ちゃんと伝えておく」

 

「ああそれと、レベッカが感謝していたよ。スラッグ弾のおかげで助かったって」

 

それじゃあ頼んだと言って、マービンはRPDに戻って行った。

 

『あのもやしみたいな嬢ちゃんが生き残るとはな。真っ先に死にそうな気がしたが』

 

『あら、ティーンの女子は強くてしぶといわよ?』

 

『たまたまだろ。まあ、あのショットガンが役に立ったんだから、勧めて正解だったな』

 

『本当よね。…私もクラフトで弾を増やしておこうかしら』

 

『このまま終わりそうにはねぇからな。V、お前は今のうちに逃げないのか?きっと、誰も文句言わないだろうぜ』

 

いや、この街には世話になった人が多くいる。

来たばかりの時ならいざ知らず、今の私にその選択肢は選ぶ事はできない。

 

『ジョニー、私がうんと言うわけないって、知ってて言ってるでしょ』

 

『ハッ、俺はどちらにせよお前に付き合わなきゃいけないんだ。最後まで付き合うが、俺ならさっさとトンズラしてるぜ』

 

『ハァ、恩を感じるって機能を失っているのね…』

 

『どうとでも言え』

 

 

 

マービンの話を聞いたロバートは、その場で決断に至った。

奥さんの実家はラクーンシティであったため、こちらを頼る事はできなかったが、ロバートは兄がサンフランシスコで同じようにガンショップを経営しているらしく、エマと奥さんをそちらに預けようとしたようだ。

向こうの兄は快諾してくれたようだが、エマが強固に反対して説得に失敗したので、結局奥さんの両親と身重の奥さんだけがサンフランシスコに避難することになってしまった。

ロバートはとても悲しそうな顔をしていたが、掛ける言葉が見つからない。

親の心子知らずとも言うが、エマは父親のロバートが大好きなのでどうしても離れたくなかったらしい。

何か起きた時に、彼女のことを私は守ってやれるだろうか。

 

その後、生き残ったスターズの隊員達はアイアンズ署長に洋館事件の全貌とアンブレラの悪事を片手に詰め寄ったそうだが、アンブレラの狗と化しているアイアンズは柳に風とばかり聞き流し、スターズが半壊したことを良いことにSWATを組織したり、スターズ再編成を妨害したりと、露骨に影響力を削りに来たようだ。

 

久しぶりに生き残ったスターズの面々がBar Jackにやってきた。

みんな沈痛な面持ちをしていて、何も話さずにただ静かにグラスを傾けている。

リチャードはデカい蛇に噛まれた怪我のせいで、今はラクーン総合病院に入院中でここには居ない。

 

ジル達は、決死の脱出劇で証拠を握ったまま帰還できたのに、アイアンズがまともに取り合わず新聞社も洋館事件として記事を出したものの真相のほとんどを隠して、スターズが集団の暴徒に襲われて死者が多数出たという内容を出しただけに終わってしまい、意気消沈してしまったようだ。

レベッカが、私にショットガンの御礼を言ってくる。

私がプレゼントしたバックショットとスラッグが、汚染されたアークレイ山地と黄道特急、山中にあったアンブレラの研究施設だった洋館で、絶大な威力を発揮したらしい。

とにかく虫やら爬虫類がデカくなっていて、それらに襲われて大変だったらしいが、バックショットやスラッグをぶち込めば大抵解決したようだ。

ケネスとエドワードは、前日にエンリコが買って行った3丁のMP5のお陰で、凶暴なカラスの集団や見た目がゾンビのようになった犬の集団に襲われても、なんとか返り討ちに出来たようだ。

弾薬もスターズ全員のチェストリグにマガジンを沢山挿して大量に持ち込んでいたので、景気良くぶっ放しても弾切れの心配が少なかったらしい。

 

ゾンビやハンターαと命名されているバケモノが洋館の中にウヨウヨ徘徊しており、洋館の外もゾンビ犬が群れを成していたが、大量の鉛玉の前にはひれ伏すしか無かったようだ。

見敵必殺の精神で、洋館の中を屍と弾痕で制圧して行ったようなのだが、ヘリが墜落したせいで外れて1人になってしまったところを集団で襲われてしまったり、なんとアルバート・ウェスカーが裏切っており口封じの為に射殺されたりと、弾が沢山あっても全員は生きて帰って来れなかったらしい。

 

聞き耳を立てている他のお客も、事件の当事者達から語られる悲惨な話を聞いて、流石に居心地が悪くなったのか1人また1人と店を出て行ってしまった。

本来なら文句を言っても良いマスターも、こればっかりは彼らにタダ酒を出してやるくらいしか出来ずに、静かにグラスを磨いている。

スターズの面々しかいなくなって静まり返っているBarに、2人の男女が入店して来た。

1人は無精髭に髪の毛を後頭部で纏めた長身の男で、もう1人は赤い派手なスーツ姿の金髪の女性だ。

 

彼らは迷わずにこちらに歩いて近づいてくる。

そして、空いていたジルの隣の席に腰掛けた。

スターズの面々は何も言わないが、警戒レベルを上げたようで少し空気がピリつく。

 

「オススメのカクテルを頂けるかしら」

 

「俺はビールを頼む」

 

マスターが冷蔵庫から冷えたザパタビール*3の瓶を取り出して、栓を開けたものを男の前にグラスと一緒に出す。

私はカクテルを用意する。

ウォッカのロックに、ライムジュースとジンジャービア。そして忘れちゃいけない愛情。

それらを注ぐグラスは、オールドファッション。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう。これはなんて言う名前のカクテルなの?」

 

「…ジャッキー・ウェルズです」

 

「聞いたことのない名前ね」

 

「ある街の伝説の1人ですよ」

 

ジャッキー・ウェルズは、ジョニー・シルヴァーハンドと並んで私の大好きなカクテルの一つだ。

目を瞑れば、アフターライフで一緒に酒を飲んだ日々を昨日のように思い出せる。

 

静かにカクテルを傾ける赤いスーツの女性が、グラスをカウンターの上に置いてから懐から名刺を取り出し、目線こそ向けないものの意識をそちらに集中させて警戒しているジルに横から差し出した。

 

「ラクーンプレス社のアリッサ・アシュクロフトです。隣はフリーライターのベン・ベルトリッチ」

 

「……ラクーンプレスの記者が、今更私たちに何の用なの?証拠だってきちんと添えたのに、まともな記事にしなかったくせに」

 

ジルが目線すら合わせずに、吐き捨てるようにそう言った。

スターズの面々は、ジルと同じように顔すら上げない。

 

「私はアンブレラに忖度するような社の方針なんて知りません!私がここに来たのは、真実を知りたいんです」

 

アリッサの隣でビールを飲んでいるベンという男は、意志の強そうな目でジルの横顔を見ながらそう言ったアリッサを面白そうなものを見る目で見ていた。

進んで彼女を援護しないところを見るに、少し性格は悪そうな男だ。

 

「それを知って、貴女はどうするつもりな訳?」

 

「記者として、この街で何が起きているのかをアメリカ全土に公表します。アンブレラが人々を騙して、その生活を脅かしているのであれば、それを人々に伝える義務が我々記者にはあるんです!あるはずなんです!!」

 

燃えるような瞳で、振り向いたジルの目を真っ直ぐと見つめるアリッサ。

 

「……その嬢ちゃんの言う通りさ。オレは他所から来たフリーライターだから、この街の住民からしたら余所者だ。だがアンブレラが悪事を働いていてそれを隠しているのであれば、アメリカ国民全員に対する罪だぜ。オレたち記者は、そういった巨悪に対抗するのが仕事なんだ」

 

ベンがビールを飲み干したグラスを置きながら、アリッサの言ったことを肯定する。

 

「……はぁ、分かったわ。私の負けね。ここにいるのは全員スターズの隊員で、洋館事件の関係者よ。何でも答えてあげる」

 

深く息を吐き出したジルが、両手を挙げて降参のポーズを取った。

 

「ありがとうございます!!…では初めにお聞きしますがーーー」

 

ラクーンシティの夜はまだ始まったばかりである。

*1
この頃には、だいぶこの時代の銃に慣れて来ていたので、私でもお客の要望にマッチする銃を紹介出来るくらいにはなっていたのだ。

*2
この時は知る由もなかったが、彼らは拳銃の他に散弾銃とグレネードランチャーを配備されていたらしい

*3
Zapata Beerは、ラクーンシティで広く嗜まれているビールである




持ち込まれた銃火器と弾薬の数が多かったので、洋館の中のBOWは一掃されてしまったとさ…カワイソウ
スーパータイラントも、ロケットランチャーはレッドチェックのために使われたくらいで、殆ど鉛玉で足りてしまったとかなんとか…
リチャード、ケネス、エドワードは、MP5とレベッカのスラッグ弾のおかげで助かりました。
ヨーンも12ゲージの一発玉には勝てなかったよ。

そしてレクイエムで初登場(名前だけ)したマービンの娘メリルは、一話で退場してもらいました。
幼女が死ぬのはちょっとね…

高評価、ご感想お待ちしてます!

前書きのセーブロード時のストーリーテキスト風怪英文書は

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