Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

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We promised to meet again, but will our next encounter be in this world or the next...


第六話 Bye for Now

ジルはRPDに水道水を飲まないよう、市民達に呼び掛けをさせるために向かい。

私はその足でラクーン総合病院に向かった。

すでにかなりの市民が水道水を飲んで体調を崩したのか、総合病院の前に患者の親族のものと思われる車が沢山置いてあり、救急車の侵入を妨げている始末である。

一階の受付待合部分も混乱しており、そこまで広く無いロビーには体調不良者で溢れかえっていた。

さながら野戦病院といったような状態である。

このままでは、あっという間にゾンビで飽和するだろう。

 

必死に患者達の病状の進行を食い止めようと奮闘している医師達の会話を盗み聞くと、どうやら細胞活性剤を使用すると一時的にT-ウィルスの進行を遅らせられるらしい。

だが、医師達は原因がT-ウィルスであることを突き止めてないので、抗ウィルス剤を併用すればもっと時間を稼げるであろうことを知らない。

ジルの知り合いのリンダとか言う医師が、調べるのに手間取らなければまだ希望はあるだろう。

 

彼らの脇を通り過ぎるが、光学迷彩を起動していなくても私の存在に構っていられるほど、現場は暇ではない。

誰にも誰何されることもなく、簡単に特別病棟へ通じる廊下まで来れてしまった。

ユニティにサイレンサーを装着してから、スライド式の扉の電子錠をハックして扉を開ける。

 

むわりと死臭のような、肉が腐ったような悪臭が鼻を突く。

そこかしこから連中の呻き声と、拘束を剥ぎ取ろうと蠢いて金属の布の擦れるような音も聞こえてくる。

とても面倒だ。

奴らが廊下を自由に徘徊する前に、さっさと始末をつけよう。

 

1番近い部屋に入ると、4人が寝台に括り付けられながら暴れている。

自意識のあるものはおらず、全員顔面の肉まで腐らせて身体の彼方此方から骨を覗かせていた。

目玉も白く濁り、唇は剥がれ落ちて歯茎が剥き出しである。

割りかし早い段階でゾンビ化した連中のようだ。

決して奴らに近付かず、入り口に立ったままユニティで頭を狙って鉛玉をプレゼントしてやる。

人を食わなくても良くなる最高のプレゼントだと思ってくれると幸いだ。

きっと、ゾンビになった奴らも感謝してくれるだろう。

 

『もうこの街はおしまいだな。高い保険料を払えない連中も居るんだ。病院に来るって選択肢が無い連中は、自宅でこうなって家族や友人に襲い掛かるってわけだ。こうなっちまうと、鼠算に膨れ上がるぞ』

 

「分かってる。ハァ、ロバートも早く街から避難してくれないかしら」

 

一部屋に掛かる時間は10秒くらいなので、流れ作業のように各病室を掃除していく。

一応、混濁していても意識が残っている人は助からない事と、悪いがこのままだと他人を喰い始めるので楽になってもらう事を伝える。

大半が隣のベッドで体を腐らせながら呻き声を上げて暴れている姿を見て、そうはなりたく無いから殺してくれと言うので、なるべく痛くなくそして恐怖の無いように枕で目隠しをしてから大口径のオーバーチュアで頭ごと吹き飛ばしてトドメを刺した。

これなら、痛みや意識も一瞬で無くなるだろう。

まさに人道的と言って良いに違いない。

 

時間が経てば中身が元に戻るバウンスバックを使えば、体内のウィルスを駆逐できるのであろうが、私にそこまで奉仕する義理は無いし汚染された脳みそは完全には治らないだろう。

そもそも、私は聖人ではない。

この時代だとオーパーツのバウンスバックを渡すわけにもいかないし、全員を助けるなんてやってたら私の身が持たない。

それに、事が終わった後に自分の身をめぐって面倒な政治が巻き起こりそうなので、そんなリスクは知らない人のために背負いたくなんてない。

だから、これは仕方のないことなのだ。

 

『ようやく片付いたか。…なぁV、大丈夫か?』

 

「…ん?何が?別に平気よ」

 

『…まあいいさ、お前がこんな事くらいでへこたれるようなタマじゃないのは知ってる。だが、たまになら変わってやるぜ』

 

「それこそ、エマのギター教室の時だけで十分よ。この前、ロバートにそことなく非難されたんだから」

 

『おっと、俺はロックの魂を教えてやっただけだぜ。それを身にしたのはガキの器量が良かったからだ』

 

「全く、冗談じゃないわよ」

 

光学迷彩を使いながら特別病棟から出て行く時に、入れ違いで看護師達が寝台に縛り付けた新しいゾンビを運び込んできたので、すれ違い様にブルーファングを脳天に一刺しして捻る。

死んだことに気付いていないまま、看護師達が廊下の奥の方の部屋に向かって寝台を掴んだまま走り去っていった。

ドアがしまったあとに背中から悲鳴が聞こえてくるが、気にしないで病院を後にする。

 

これで、ゾンビが病院の中で大発生して特別病棟の扉をぶち破ることはしばらく無いだろう。

それまでに、病院の医師達がワクチンを開発してくれれば御の字というものだ。

 

公衆電話からRPDに連絡を入れて、ジルを呼び出してもらう。

電話機の後ろ側では、ジャンジャンと複数の電話が鳴っている音が聞こえてくるので、市内でも水道水を飲んで変異してしまった市民に襲われた人が、警察署に電話しまくっているのだろう。

まぁ、この回線の番号はジルから教えてもらった直通番号なので、優先的に繋がるらしい。

内線切り替えでスターズオフィスに繋がった。

 

『ジル、こちらの仕事は終わった。そっちはどう?』

 

『V、さっき病院から通報があったわ。上手にやってくれたみたいね。一応、警察署からはケネスを形だけ派遣する予定よ。本当の目的は、病院内で変異したゾンビから医療従事者と健康な市民を守るためよ』

 

『それなら、レベッカが置いていったM12を持って行ったほうがいい。アレなら一撃で倒せるでしょ』

 

『そうね。ハンドガンよりもよっぽど効果的に倒せる。スラッグ弾も多めに持たせて向かわせるわ』

 

『その方がいいわね。こっちは一度Jackに寄ってから、ロバートを説得して道が渋滞で通行止めになる前に、街から避難させる』

 

『分かった。ロバートとエマによろしく伝えて』

 

電話を切り、駆け足でBar Jackに向かう。

まだマスターに、水道水を飲んではいけないことを伝えてない。

店の前に着くと、まだ開店前の時間なので正面のドアにはclosedの掛け札が出ていた。

ドアノブを捻っても鍵が掛かっているので、裏手に回って合鍵で勝手口を開ける。

中に入ると、店内に灯りがついているのでマスターが来ているはずだ。

 

「マスター、いる?」

 

「…ん、あぁ…Vか」

 

店舗の入り口から呼び掛けると、どうやらカウンターに突っ伏していたようで返事をしながら起き上がった。

だいぶ顔色が悪く、肌にも赤い発疹が出来ていてカリカリと掻いている。

完全にT-ウィルスに侵されている証拠だ。

 

「すまないね…今日は、ちょっと調子が悪いんだ」

 

「マスター、水道水飲んだでしょ」

 

「…いや、今日は飲んでないよ。それよりも、キッチンの掃除をした時に、急に飛び出してきたネズミに噛まれてね。ネズミはやっつけて、傷の消毒をして手当てしたんだが…どうにも体調が悪くなってきてしまって」

 

街のネズミも感染しているらしい。

下水道が汚染されているのだから、そこら辺を根城にしているネズミも汚染されていないはずが無いか…

マスターにはお世話になったし、まだそこまで進行していないから助けられる。

 

近寄って、不意打ち気味にマスターの首筋にバウンスバックを注射する。

 

「な、なにをっ!?……急に頭が晴れるような、倦怠感が無くなった…?」

 

一気に脳の方までナノマシンが回ったようだ。

その内、体内のウィルスをナノマシンが破壊し尽くすだろう。

徐々に、顔色が良くなっていき発疹も引いて行く。

それでもスタミナが回復したわけではないので、プランターで育てているこの地方特産のハーブを摘んで、それを粉末に加工してマスターに差し出した。

 

「おお、緑赤青の3種ミックスか。…んぐ、はぁ。ありがとう助かったよ。それにしても、さっき急に注射をされてから気分が良い。なにをしたんだね」

 

粉末ハーブを口に含み、差し出したリアルウォーターで飲み下したマスターが一息吐いてから問いかけてくる。

 

「マスター、アンタゾンビになりかけてたんだよ。そのネズミに噛まれてね。私が打ったのは、まぁ…治療薬みたいなもので、数はないんだけどね」

 

嘘はついてない。

バウンスバックは、時間が経てば中身は元通りになるが数はそこまで多くはない。

 

「おお、そんな貴重なものを使ってくれたのか。それで、水道水もまさかゾンビ病に関係あるのかい?」

 

「昨日まではなんとも無かったんだけど、今日になったら水道水にゾンビにするウィルスが混入してたのよ。だから、水を飲んだ人たちはみんなゾンビになりかけてる。だからラクーン総合病院は野戦病院さながらだったわ」

 

「なんということだ……それでも、病院なら治療薬を確保できるのだろう?」

 

「いや、病院はまだゾンビウィルスのワクチンを作れていない。もし作れたとしても、全市民分の数を揃えるには時間が掛かるから、どうしてもそれより前にパンデミックが発生して、街は壊滅するでしょうね」

 

「そんな…」

 

「マスター、せっかく助かった命なんだから、肩肘張らずに避難しましょう?明日には、街から逃げ出そうとする車で渋滞して、本当に逃げ出せなくなるわよ。もう今しか残された時間は無い。1週間経って、事態が終息したら帰ってくれば良い」

 

「……そうか、そうかもしれんね。分かった、命の恩人の言うことだ。すぐに荷物を纏めて街を出よう」

 

やっとマスターは店を置いて、この街から出て行く決断が出来たようだ。

せっかく助けたのに、そのあとでゾンビに貪り食われてしまったなんてことになったら、なんのためにバウンスバックまで使ったのか分からなくなる。

あとは渋滞前に街を抜け出せれば良いが…

 

「マスター、荷物は金目の物と服の最低限軽いものだけにした方がいいわ。いざとなったら、車も捨てなくちゃいけなくなるかもしれない。それと、銃は使える?」

 

「荷物は少なめだね。リュック一つ分になんとか纏める努力をしよう。銃は使えるが、本当に必要かね」

 

「もう市内にゾンビになった住民が彷徨いていても不思議じゃ無い状態よ。持っていれば、切り抜けられる可能性が高い。だから、これを持って行って」

 

本当ならパワー系ピストルでも渡せれば良いのだろうが、生憎と弾薬の規格が現行のものと違うので、渡した後に弾の補充が出来ずに鈍器になるくらいだったら、普通に現行のものを渡したほうがいいので、最近法執行関連で流行りらしいGlock 17を手渡す。

33発入りのロングマガジンも3つほど予備で渡しておけば、ゾンビ20体くらいに襲われてもなんとかなるだろう。

 

「胴体を何発撃っても死なないらしいから、必ず頭をブチ抜くのがコツらしいわよ。頭を狙っても1発で死なない事があるらしいから、2、3発決め撃ちすると良いわ」

 

「何から何まですまないね。あぁそうだ。ここの鍵を渡しておくから、食材も好きにしてくれて良いし、ギリギリまで好きに使ってくれ」

 

「ありがとう、無事に外で会えたら鍵を返すわね」

 

「頼んだよ」

 

最後にハグをして、マスターはピストルを握り締めたまま店を出て行った。

彼の奥さんは50代で亡くなっているようなので、独り身の彼は身軽だろう。

きっとまた出会えるはずだ。

彼の無事を祈りながら、店を施錠してKENDOへ急ぐ。

 

KENDOに辿り着くと、10人ほどの市民が護身用に銃を買いに来ていた。

私も手伝うためにカウンター側に周り、Gun Shop KENDOと刺繍されたエプロンを着けて接客対応をする。

私からしたら、銃を買いに来るよりも街を出た方が早くてより安全なのだが、そんなことは言っても仕方が無いので次々に言われる銃を取り出して、IDの登録を確認しながら客を捌いて行く。

みんな使い慣れていないだろうピストルばっかり買おうとするので、多少狙いが甘くても散弾で複数を巻き込めるショットガンも併せてオススメしておいた。

そして、せっかくこの店に買いに来たのだから、水道水は絶対に飲まないこととラクーン総合病院の現状を伝えて、1週間や10日だけでも良いので街を離れるようにも言い添えておく。

全員、街がそんなに危険な状態になっていることを知らなかったので、真っ青な顔をしていた。

数人は家人に水を飲まないように警告するために、店の電話を貸して欲しいと頼んできたので、ロバートの指示で使わせてやる。

もし水を飲んでから身体が痒くなっていたり、高熱が出ているようならもう助からないが、とりあえず抗ウィルス薬と細胞活性剤を使えば進行が遅れさせられるようなので、その間に総合病院がワクチンを完成させることに掛けるのも有りだとアドバイスしておく。

まぁ、その頃には街はもう死者の街に変貌しているだろうから、そこから先逃げ出せるかは不明だが…

外に感染者が拡大するよりはマシだと思い、最後に関しては黙っておく。

 

客が一旦捌けたあとに、ロバートにラクーン総合病院の現状を詳しく伝えた。

もちろん特別病棟の件は省いているが、そろそろエマを連れて逃げ出した方がいいのではと再度伝える。

でも店を開いていないとと言うので、それなら私がギリギリまで居ると伝えると、だいぶ悩んだ上で分かったと言ってきた。

 

だがもう夕方なので、今から準備してもどうしても明日になりそうとのことだ。

仕方ないので、閉店時間までは私が店番をしておくから早く身支度をするように伝えて上に行かせる。

 

『全く、人が良過ぎんだろ。他人よりも自分の身の回りの方を優先しやがれよ』

 

「あら、自己中極まるジョニー様にしては、珍しい意見が飛び出したことで…まさか、エマのことが心配なの?」

 

『どうだかな。だが、アイツは筋がいい』

 

「あらあらあら、素直じゃないんだから」

 

『うっせえ』

 

その日は、営業時間いっぱいまで店を開いて来る客毎に避難を勧めつつ、銃を売り続けた。

 

 

 

9月24日ーーー

 

 

今日は朝にロバート達が街を出ることになっているので、それの見送りにKENDOへ向かった。

だが、何やら様子がおかしい。

エマの叫び声とロバートの怒声が聞こえてきたのだ。

サンデヴィスタンを使い一気に店舗内に駆け込むと、どこから入って来たのかゾンビが3体もおり、その内1体は地面に倒れて死んでいるようだがその前には肩を噛まれて座り込んでいるエマの姿があった。

他の2体はロバートに掴み掛かっており、ショットガンを盾に抵抗しているが今にも地面に押し倒されそうである。

オーバーチュアで正確にゾンビ2体の脳天を吹き飛ばしてからサンデヴィスタンを終了させると、急に顔面に血飛沫を浴びたロバートが驚いてゾンビの死体と共に倒れ込む。

 

そんなことよりもエマだ。

振り向くと、エマが自分の肩を押さえて泣いている。

だが、地面には中身の空になったエアハイポが転がっていた。

どうやら、前に渡したバウンスバックをきちんと使ったらしい。

賢い子だ。

 

ゾンビ2体分の死体にのし掛かられてもがいているロバートを助け起こし、入り口を一旦施錠する。

それから、エマの肩を消毒して粉末にしたハーブを飲ませる。

傷口はナノマシンによってゆっくりと塞がって行くので、暫くしたら跡も残らないだろう。

しかし、どのくらい前からロバートは格闘していたのだろうか。

 

息も絶え絶えなロバートから、抱き付かれながら感謝される。

 

「はぁはぁ、もうダメかと思った。V、本当に助かった」

 

「2人とも食い殺される前で良かった。ロバートも念の為に、これを打っておくわね」

 

顔にゾンビの体液を浴びたので、目や口、小さい傷口からウィルスが侵入するかもしれない。

なってからでは遅いので、念の為にロバートにもバウンスバックを投与する。

息の落ち着いたところで一体何があったかを聞くと、どうやら10分前くらいに裏手の下水道工事現場からゾンビが這い登ってきていたらしく、店舗で避難するための作業をしていた音を聞きつけて、開いていた裏口から店内に入って来たようだ。

エマの悲鳴を聞いて侵入に気付き、咄嗟に手近にあったショットガンで1体を射殺できたそうだが、その時にはエマは既に噛まれていて、ロバート自身も硬直した隙に組み付かれて身動きが取れなくなってしまったらしい。

腕や足も限界でもうダメだと思った時に、ゾンビの頭が急に弾け飛んで私が来たと悟ったようだ。

 

「ほら、意地なんて張らずにもっと早く避難しておけば良かったでしょう?貴方とエマが食い殺されてたら、流石の私も落ち込むわ」

 

「ああ、本当に助かった」

 

「どうもいたしまして。…そうだ、ロバートよく聞いて。昨日ネットで調べた情報によると、今日中にも主要街道が封鎖される可能性あるらしいわ。陸軍で防疫措置を検討されているようだから、捕まったら殺される可能性もある。本当に逃げるなら今のうちよ」

 

「分かった、急いでこの街を出るよ。あとは頼んだ」

 

「ええ、レジのお金と全部忘れずに持っていってね。…それとエマ、痛かったでしょうけど良く頑張ったわ。また外で会いましょう」

 

「うん!Vも絶対に帰って来て!」

 

最後にエマともハグを交わし、ピックアップトラックで去って行く2人の姿を見えなくなるまで見送った。




高評価、ご感想、お気に入り登録ありがとうございます!!
誤字訂正報告も大変ありがたいです!!

ひとまず仲の良い一般人は逃げてくれました。
だけど、本当に街から逃げ出すことができたのかは…

前書きのセーブロード時のストーリーテキスト風怪英文書は

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