Good Luck , Raccoon City 【第二部始動】   作:持麻呂

7 / 25
There is no God. All that exists is human malice...


第七話 Whereabouts of the Children

ロバートとエマが去ったGun Shop KENDOは、何故だか寒々しく感じてしまう。

私が彼らに、ジャッキーやミスティのような親しみを感じてしまっていたからだろうか。

もし永遠のチューマであるジャッキーが、今の私を見たらきっと笑って肩を叩いてくれるだろう。

 

今日も朝から銃を求めて市民が店を訪れるので、客を捌きつつ裏手にある下水道工事現場のことを考えていた。

先ほど見て来たのだが、どうやら組んである足場を登ってここまで来たようだ。

と言うことは、下では既にゾンビが徘徊しているような状態になっていると言うことになる。

工事現場でパンデミックが起きて、働いていた工員がゾンビ化しているのであれば、ここ以外にも這い上がって人を襲っていてもおかしくはない。

これはいよいよ大規模に感染が広がるはずだ。

 

そこで、裏手の物置の先にあるラクーン孤児院の存在を思い出した。

孤児院にもしゾンビが向かったとしたら…

普通の保母さんやらでは対応はまず出来ないだろう。

気になるので、昼に昼休憩と称して一旦店を閉めてから、物置のもう一つの扉を開いて広場へと出た。

 

道路を渡ってバスケットコートのある辺りにくると、ベンチに誰かが座っているのが見えた。

良く見ると、腕から血を流してぐったりとしたまま動かない。

あれはもうダメだな。

近付いて頸動脈に触れるが、脈が触れない。

直にゾンビ化するだろうから、後頭部から延髄目掛けてサクッとブルーファングを刺し込んで、このままでいられるようにした。

 

 

ラクーン孤児院は何人の子供を抱えているのか分からないが、門前から見る限りではそこそこに大きい。

街の紹介冊子では、ステンドグラスが有名で街の外からも態々見に来る人がいるとかどうとか…

世の中には暇人も居たものだ。

 

柵をサクッと乗り越えて、孤児院の玄関を叩く。

中からゴソゴソと物音が聞こえるが、扉が開く気配はない。

まさか、中でもうガキンチョたちがゾンビ化しているなんてことは無いだろな。

とはいえ、こうして扉の前に突っ立っていたって仕方がないので、ゴリラアームで鍵ごとドアを抉じ開ける。

内側にバリケードは張っていなかったので、蝶番ごと外れて扉が向こう側に倒れた。

 

押し入ったエントランスでは、シーンとしていて人が出て来る様子もない。

とりあえず声を掛けて、誰か居ないのかを問いかけるが誰も出てこない。

仕方ないのでPINGを放つと、1階に1つと2階に3つの反応が返って来た。

先に反応の多かった2階に上がって部屋に入り、反応が返って来ていたところの段ボールを無理矢理退かすと身体に軽い衝撃が走る。

なんだと思って腹をみると、土手っ腹にナイフが刺さっていた。

いや、正確には刺さってない。

キチン質と皮下アーマー*1に遮られ、リアルスキンを貫いたところで止まっている。

下手人はどうやら若い女のようで、その背後にはジュニアスクール低学年ほどの子供が抱き合って蹲っていた。

 

「ちょっと、そんなもの人に向けて刺しちゃダメでしょ。私はゾンビじゃ無いわよ」

 

「あっ、ご、ごめんなさい!」

 

白いワンピースのような服を着た若い女が、ナイフから手を離して謝りながら後退る。

まだ腹にはナイフが刺さっているので、ピッと引っこ抜いてそこら辺に捨てた。

 

で、なんでこんなところに隠れているのかを問うと、この若い女はラクーン市長マイケル・ウォーレンの娘でキャサリンと言うらしく、父親が異変を感じた時点でさっさと自分だけ逃げ出してしまい、院長を兼任していたアイアンズも行方不明になってしまったので、キャサリンともう1人の女性とでここに残っていた孤児2人の面倒を見ていたようだ。

だが、昨日からもう1人の女性の様子がおかしくなってしまい、出て行くにも鍵が1階の奥の部屋にあって取りにも行けず、子供たちとここに隠れていたらしい。

1階であった反応がどうやらゾンビというのが確定したので、下に降りて手早く片付けた。

それから、なんとなく机の引き出しの中に置いてあったノートとアイアンズのものらしき手紙*2を手に取って、中身を開き読んでみる。

読んでみて即座に後悔した。

 

もう胸糞だ。

子供達はみんな実験体として使われていたので、誰1人としてここを生きて出られた子供はいない。

 

『胸糞が悪い。そんなもん読むんじゃねぇよ』

 

「私もちょっと後悔してる。コイツら揃いも揃ってクソね」

 

『んの割には、取り乱さねぇな』

 

「まぁ、メガコーポで働いていたら、大なり小なりこの手のクソみたいな話は良く聞いたからね。…慣れたのよ」

 

きっと、人としては最低な部類の慣れに違いない。

 

1階は片付けたので室内は安全になったものの、扉を壊してしまったので拠点としての防御力は低下してしまった。

このままここに居ても安全とは言えないので、すぐそこのRPDに行ってはどうかと持ち掛ける。

そこで保護してもらえなくても、暫くはKENDOに居れば良い。

 

3人を連れてRPDに行き、ちょうど良いところに現れたマービンに3人を託す。

保護出来ないようなら、KENDOに連れて来てもらえれば預かる旨も伝えた。

マービンもまさかすぐそこの孤児院がそんな状態になっていたのを知らなかったので、なるべくRPDで預かってくれることを約束してくれたので安心だ。

 

ついでに、マービンを連れてスターズオフィスを訪れて、そこに居たジルとブラッド、エドワードに孤児院で見つけたアイアンズの手紙と孤児が書いたノートを見せる。

全員内容を読んで絶句した。

無理もない。

アイアンズがアンブレラの狗と言うのは、RPDだと暗黙の了解のようになっていたのだが、まさか院長をしていた孤児院がこんな実験体をプールしておくための施設と化していたなんて、誰が思っていただろうか。

 

マービンは署長代理を呼んできて、アイアンズのアンブレラ宛の手紙をその場で読ませ、孤児院のガサ入れを提案してゴーサインを出させたのだが、そこに急報が入った。

どうやら、今日はラクーンスタジアムでラクーンシャークスとオールドコートサンダースのフットボール試合をやっていたらしいのだが、そこで感染者が出て周囲の人間に噛み付いたらしい。

既にRPD内では、ゾンビ化した市民に対する無制限の武器使用が許可されており、大混乱になっているスタジアムを鎮圧してゾンビを処理するために警官隊を出動させなくてはならなくなった。

 

何人ほど噛まれたり引っ掻かれたりしたのかは不明だが、これで感染は更に拡大しただろう。

もう阻止限界点は超えてしまったはずだ。

この街は、本当のお終いへ駆け足で突き進んでいる。

 

 

 

ゾンビの対処に詳しいスターズに署長代理が指示を仰ぎながら、警察官達がRPDの要塞化を始めた。

もう感染の拡大は抑え込めないところまで来てしまったと判断して、いざとなったら警察署に立て籠もれるように窓のシャッターを降ろしたり、そう言ったものがないところは外側から窓のところに板を打ち付けて塞いで回ったりと、とにかく1階部分を容易に突破されないようにしていく。

それから、警察犬はゾンビになると大変厄介な存在になるとして、苦渋の決断ながら殺処分となった。

もちろん調教師達は猛反対していたのだが、飲み水として既に水道水が与えられていて、変異の兆候が全ての個体に出てしまっていたので、四の五の言って議論している間に私が撃ち殺す。

銃声を聞きつけて、警官達が入ってくる時には全部頭を吹き飛ばされた死体になっている。

私はその間に光学迷彩で悠々と部屋から抜け出しているので、問題はない。

今更犬如きに無駄なブッダ心を出していたら、命がいくつあっても足りないだろうに…

 

夜までにはRPDの要塞化はだいぶ完了しており、私もその間にKENDOから警察署に武器弾薬を多数運び込む。

 

KENDOから運び込む過程でも、何人かの市民が武器を欲しがったので在庫が余っているM1911を格安で譲ってやった。

ただ、使用弾薬が.45ACPなのでそこらへんで拾ったり入手するのは難しいかもしれないが、9mmルガーよりもストッピングパワーは高いから、ゾンビを戦闘不能にするまでに使用する弾の数は少なくて済むだろう。

一緒に弾も売ってやったので、なんとか生き延びて欲しい。

 

夜になり、本格的に「暴徒」と称されたゾンビが出現するようになった。

どうやらゾンビ同士はなかなか共喰いをしないようで、近くに新鮮な人間が居るとそちらに優先して食事をしに掛かるらしい。

食い殺された犠牲者もゾンビに変異し、その暴徒の列に加わるのであっという間に群れというか集団を形成する。

とにかく、連中をあっちこっちに散らばらせないことが肝心なので、RPD以外にも周囲にいた通行人達を徴用してストリートにバリケードを設置したり、区画を区切って市民の避難を開始した。

まぁ、そんなものは既に気休めにしかならないだろう。

心停止した瀕死の病人にCPRをひたすら続けて、脳みそに酸素を送り続けるのと一緒だ。

やめた瞬間に死ぬ。

 

もう市内のどこまで感染が拡大してしまったのか分からない。

RPDはなるべく早く市内を掃討して回りたいようだが、全警察職員を総動員したとしてもそれは不可能だろう。

1人で彷徨いていたら、普通の警察官なら4〜5人のゾンビに囲まれた時点で奴らの仲間入りだ。

なので、警察署を中心とした円心場に車両を使用したバリケードを何段にも展開して、そこを10人程の警官小隊に守らせるのである。

何段と展開するので、最終バリケード以外は乗り越えられそうな時点でさっさと放棄して後退するのだ。

それなら、時間と距離をなるべく人的損耗無しで稼げるはずである。

という理屈で作戦を決行するらしい。

 

現在はまだ警察という治安維持組織がなんとか機能しているので、比較的スムーズに避難も進んでいるらしい。

だが、主要幹線道路は渋滞や放置自動車によって既に機能しなくなっており、警察署の大型無線機から入った情報によると、州軍がラクーンシティ全域の隔離措置に向けて動いているらしい。

また、市長が勝手に脱出したせいで混乱しつつもなんとか機能していた市庁舎は、暴徒の襲撃受けたらひとたまりもないのでその機能をラクーン警察署に移したいと申し入れがあったらしく、図書室を開放して市庁舎機能をそちらに移し替えたようだ。

まぁ、いま行政機関が動いていたところで出来ることなんか殆どないが、市長に置き去りにされた副市長が前に立って、市民達の脱出のために州や政府に対してヘリコプターの要請をするなど、政治的な方面で機能し始めている。

 

ゾンビの混乱に便乗してカラーギャングなど主体となった略奪行為も発生したようだが、すでに超法規的に活動していた警官達に問答無用で蜂の巣にされてしまったらしく、そう言った行為は一瞬で鎮圧されてしまった。

しかも、射殺死体にはゾンビにならない措置として、確実に脳みそを破壊するように2、3発の鉛玉をぶち込むという念の入れようである。

非情にも、その死体は歩道の脇に集積されてすぐに回収されることはなかったが、それが生き返ることのないが新鮮な肉としてゾンビ達を誘き寄せる囮となり、そこの通りの防衛とゾンビ漸減に貢献したのは皮肉だ。

 

 

 

9月25日ーーー

 

 

副市長の必死のロビー活動により、州軍と合衆国陸軍のヘリコプターによるピストン輸送が開始されることになった。

もちろん、助け出された先で必ず防疫措置として検疫と一時的な隔離措置は取られるようだが、ここでゾンビに食い殺されるよりはマシである。

 

警察署の周辺は昨日の時点で、周囲のアパートやビルを含めて全てのゾンビは排除され安全が確保されており、街から逃げ出せなかった市民や区画放棄に伴い避難を余儀なくされた市民が集まっていた。

避難用のヘリコプターは、クルマが片付けられて広くなった警察署前の通りと、KENDO裏手のバスケットコートがある広場を使用することになったらしい。

なので、KENDOの扉を開放して物置も破壊した事で、それなりの人数が移動できるようになっている。

 

広場はもちろん他からはゾンビが入って来れないように、鋼鉄製の移動式バリケードが組まれてそれをひっくり返した車で押さえるという念の入れようだ。

ここの広場の警備は、ヘリコプターが来るときに陸軍が部隊を2個小隊ほど乗せて派遣してくれるそうなので、彼らが来次第交代するらしい。

 

昼頃に、ローターが2つもある大型のヘリコプター*3が4機も飛んできて、陸軍部隊を降ろしたところに市民を乗せて避難が開始された。

1機につき50人も乗れるらしいので、これならこの広場と警察署周辺に避難している市民は比較的早く全員を避難させられるだろう。

ここ以外では、セントミカエル時計塔や路面電車基地でもヘリコプターによる市民の避難が行われているらしい。

 

それで思い出したのだが、総合病院の方はどうなったのであろうか。

 

ちょうど良い時にジルと警察署内で会ったので聞いてみると、どうやら私が特別病棟を一掃した後も、そこに感染した患者を隔離し続けていたらしい。

ラクーン総合病院の隣に位置するセントミカエル時計塔が脱出地点の一つとなり、ヘリコプターが離発着するようになると、ローターの爆音でゾンビ達が活性化して拘束を次々に破り、数の暴力に任せて特別病棟の扉をぶち破って1階に雪崩れ込んできたようだ。

ジルが追加で、スターズのエドワードと武装警官数人を増援として派遣していたので、銃声を聞いた陸軍部隊も加わってなんとか病院が壊滅することは防げたらしい。

ただ、警察官と医療従事者にも多少死者が発生したようだ。

ワクチンの研究も進んでいるらしく、何事もなければ26日あたりには完成するのではないかとの話である。

 

夕方、一本の凶報が入った。

地下鉄と路面電車の車内でゾンビに変異した感染者が発生し、脱線事故や前方衝突事故が起きたようだ。

それによって路面電車はラクーンシティ南側、地下鉄は北側の路線が寸断されてしまったらしい。

これによって避難計画に著しい支障が出てしまった。

また、市内には戒厳令が合衆国政府から発令され、計画的避難誘導により区画ごと順番に避難誘導を行っていたため、まだ避難誘導が行われていない地区の人々は避難経路の一部が寸断されたことによって避難することができず、自宅から出ることが出来なくなってしまう。

一部の人々は、避難誘導を無視して徒歩やもう一方の移動手段で避難区域へと移動を開始したのだが、路面電車は車体サイズと2両編成というキャパシティ問題によって中々乗れず、徒歩移動した方はバリケードによって保護されている区域外が多いので、すでにかなり路上を徘徊しているゾンビ達に捕まって、運良く捕まらなかった市民以外のその多くは、新しい彼らの仲間になってしまった。

 

そして25日の夜、なるべく事前に検査していたものの、体調不良や咬傷を隠してヘリコプターに乗り込んだ市民が機上でゾンビへと変異したせいで、ピストン輸送に参加していたヘリコプターの内の1機が墜落したとの連絡が入る。

それによって、州軍はともかく陸軍はこれ以上のリスクは負えないとヘリコプターの派遣を今日一杯で終了すると告げてきたらしい。

州軍はギリギリまでピストン輸送を請け負ってくれたものの、陸軍ほどヘリコプターを保有していないので、3箇所にあるヘリコプター脱出地点はここ警察署前の1箇所に変更になってしまう。

民間のヘリコプターをチャーターして代用しようとも検討されたのだが、既に空域制限が掛けられており許可のないヘリコプターの侵入は禁止されているようで、その計画は計画段階で頓挫してしまうことに。

この出来事によって、ラクーン総合病院は放棄が決定された。

幸い、T-ウィルス由来以外の病気で入院していた患者は優先的に避難できたことと、ギリギリでワクチンの完成が間に合ったので総合病院を維持する必要が無くなったのだ。

 

後から判明したことだが、この時に陸軍へと引き渡されていたワクチンは行方不明になっており、政府機関へと届くことはなく、脱出した先で防疫措置により隔離されていた人々もそれによって変異するまでに治療出来なかった人が多く、残念ながらそれなりの人数が処理されてしまったようだ。

 

最後まで残った少数の医師は、ギリギリまで増産されたワクチンを持ってケネス、エドワードのスターズ隊員と武装警察官によって護衛されつつ、警察署に合流している。

ただし、彼らが合流した頃には最後のヘリコプターが出発した後であった。

*1
肌の下に装備する防御系クローム。基本的には全身を覆っており、弾や刃物の貫通を防ぐ。

*2
ラクーンシティ 孤児院で検索をかけると内容を読めます

*3
CH-47チヌークのこと




たくさんの高評価、お気に入り登録、ご感想ありがとうございます!!
励みになります!

ラクーン孤児院はクソ!!
ハッキリわかんだね!!
本当なら、グレースの遺伝学的本人(なんだそれは)というか、クローンというか、儚げ白髪幼女をお救いしたいのですが、彼女らが居たのはもっと前なのですでにこの世にいない模様…
ラクーン孤児院関連の研究報告書やアイアンズの手紙を見ると、マジで胸糞過ぎてヤバいです。

警察署が機能していて、RPDが治安維持機能を維持していたので、ヘリコプターによる大避難が実現しました。
生還者は数千人を超えそうです。

前書きのセーブロード時のストーリーテキスト風怪英文書は

  • 読んでるしいる
  • 読んでるけどいらない
  • 読んでないけどいる
  • 読んでないけどいらない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。