そのすべてが”平等に与えられる”場所ーーそうこれは国が運営する実力至上主義の高度育成高等学校での物語である。
春。
多くの生徒が期待と不安を胸に歩く中、一人、目を引く容姿の少女はすでに”在り方”を決めていた。
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「ねぇねぇ、あの校舎やばくない?めっちゃ広くない?」
明るい声。軽やかな足取り。
初対面のはずの生徒たちともまるで前からの知り合いのように距離を詰めていく。
「ね。同じクラスだったらよろしく〜」
笑顔に曇りはない。
自然で、柔らかくて、親しみやすい。
誰もが”いい子だ”と思うような、そんな振る舞い。
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――完璧。
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(第一印象は、これで十分)
内心と裏腹に、早坂愛は笑みを崩さない。
(距離感、反応、空気....問題なし)
視線を巡らせ、観察する。
誰が中心になりそうか。
誰が流されやすそうか。
誰が厄介そうか。
そのすべてを、機械のように”処理”していく。
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(...で、私のクラスは)
入学前に渡された資料。
そこに記された配属先は―――
一年Bクラス。
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教室に入ると、すでにいくつかのグループができ始めていた。
空気は柔らかい。
張り詰めた感じはなく、どこか穏やかで優しい。
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「あ!校門の子だ!」
声をかけてきたのは柔らかな笑みを浮かべた少女。
桃色の髪が風を受けて揺れる。
「ほんとに一緒のクラスだなんてびっくりだよ!私一之瀬帆波!よかったら一緒に話さない?」
「え!いいの?ありがと!」
即答。
一切の間を置かない。
それが最も”自然に見えるタイミング”。
(...この子が中心、か)
会話の流れ、周囲の視線、空気の寄り方。
一瞬で理解する。
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「はぁ~い席についてね〜」
その後おしゃべりを続けていたら教室前方のドアから軽い声が聞こえてきた。
「うんうん、初日から欠席とかはいなさそうだね。良かったぁ」
クラス全体を大きく見渡しながら頷くとおもむろに口を開いた。
「私は星之宮知恵。あなた達Bクラスの担任を務める事になった先生よ。これから三年間、よろしくね」
(ん?三年間?)
「先生、三年間とはどういうことでしょうか?」
クラスみんなの疑問を一之瀬が問う。
「その答えは簡単よ、単にこの学校では三年間クラス替えがないってこと」
「え!」「なんだよそれ」「どういうこと!?」
星之宮の突然の重大発表にクラス全体が騒がしくなる。
「はいはい、静かにしなさい。今からこの学校のルールについて説明するから。」
クラスが少し静かになったことを確認して再び語り始めた。
「まずこの学校では全寮制及びポイント制を用いてるわ」
(ポイント制?)
「ポイントっていうのは、毎月のはじめに配布されるもののこと。そしてこの学園ではそのポイントで買い物をしてもらうことになるわ」
「ポイントはプライベートポイントと呼び、1ポイントで一円となりこの学校の施設内にあるものは何でも買えるわ」
「そして!あなた達はこの学校に入学してきた、つまり10万ポイント分の価値があると測定されたの。」
ピロリン♪
星之宮の声をトリガーに全員のスマホが鳴る。各々が手に取り画面を見る、そこには10万プライベートポイントが振り込まれていた。
「それじゃこれでHRは終わり♪今日はこれでおしまいだからあとは好きに過ごしてね〜」
そう言って教室を去る星之宮、それからいくばくかして声を上げたのは一之瀬だった。
「これから三年間同じクラスみたいだし、仲良くなるためにみんな自己紹介しない?」
「まずは私からね。私は一之瀬帆波。仲のいいクラスを作れるように頑張るからみんなよろしくね!」
そう言い満点の笑みを浮かべる一之瀬につられクラスの空気が暖かくなる。
(…上手い)
一之瀬の空気を作る実力を認めつつ、冷静に分析をする。
(うん、確定。あの子がこのクラスのリーダーだね。)
(運が良い。偶然とはいえ関係ができた。)
「ぉ–ぃ」
(このあとは彼女とさらに仲良くなって...)
「おーい、次君の番だよ!」
「え!」
驚いて周りを見るとクラス中の視線が集まっていた。
慌てて立ち上がり自己紹介をする。
「ごめーん、ぼーっとしてた!私は早坂愛!よろしく!」
こうして新たな風をふかせ彼女たちの”実力至上主義”の学校生活が始まった。
いかがでしたでしょうか?
初めての執筆なので至らぬところも多々あるかもしれませんがぜひ感想や評価お願いします!