「私も神崎くんと同じで1万5千ポイントのこせばいいかなって思ってるよ」
「え!愛ちゃんもなの!?」
びっくり仰天という言葉が一番似合うほどに目を丸くして、問いかけてくる一之瀬さん。
「なんで!?どうしてそう思ったの?」
「なんでって言われても、単純な理由だよ」
前置きを挟んで一之瀬さんの気持ちを少し落ち着かせてから理由を語りだす。
「正直、贅沢をし尽くさなければ、月に1万5千ポイントもあれば1ヶ月なら余裕で生活できるからだよ」
「そもそも、高校一年生に1ヶ月でほぼ7万円は高すぎるし、生活費込みで一1万弱ポイントがあれば生活できるでしょって思っただけだよ」
「なるほど、金銭感覚を崩さないようにするためということか、意見は同じでも考え方は違うようだな」
私の説明を聞いた一之瀬さんは少しの間考えた素振りを見せた後口を開いて言った。
「うん、愛ちゃんと神崎くんの言いたいこと理解したし、そのとおりだと思ったから、それで行こうか」
「じゃあ、明日の朝にみんなに一万五千ポイントを残して預けてもらえるように説明する。でいいよね?」
「あぁ、その説明は俺も手伝おう」
「じゃあ私は説明の説得力が上がるような質問をするって感じかな」
その後も明日の動きについて話し合い、まとまった頃に店を出ると、空はもう真っ暗になっていた。
「ありゃりゃ、もうこんな時間か、だいぶ遅くなっちゃったね」
「そうだな、どうやら随分と長く話し込んでしまっていたようだ」
「折角だし、三人でご飯食べない?この後買い物して料理するのめんどくさいでしょ?」
「いいね!愛ちゃんの意見にさんせーい!」
「いいな。だが、どこへ行くんだ?」
「やっぱファミレスじゃない?」
こうしてファミレスにやってきた私達はそれぞれの注文した料理を食べながら他愛もない会話に花を咲かせた。
「そういえば朝Dクラスの知り合いって櫛田さんの名前出してたけど知り合いだったんだ」
「ん?あぁ。櫛田とは入学式の帰り道に話しかけられてな、そのまま時々話すって感じの仲だ」
「ふーん、なーんだ私と須藤くんと同じ感じか」
「須藤くん?須藤くんってあのあんまり素行が良くないって噂の?」
「そうだよー、Dクラスの須藤健くん。意外といい人だったけどね」
「そうなのか?」
「うん、こないだバスケ教えてもらったりしたよー」
「へー、意外だなぁ。須藤くんてもっと乱暴な人だと思ってたから」
「まぁ確かに、すぐに怒るし、手が出るのも早いけど、うまく付き合っていければ楽しいと思うよ」
「それは良かった。俺なんて一瞬早坂が危ない目にあってるのかと思って身構えたぞ」
「アハハ、そんなことないって!」
自然な笑いが起こる楽しい時間は過ぎ去るのが速い。
ふとした時にはすでに解散のタイミングになっていた。
「じゃあねふたりとも、おやすみ〜」
「あぁ、おやすみ」「また明日ね!愛ちゃん!」
部屋に戻った私はシュシュを外し、襲ってくる睡魔を払いながらお湯を張り、湯船に浸かる準備をする。
(なんか最近、あの二人の前では自然と笑いが起こって楽しいな)
(でも、みんなの知ってる”早坂愛”は”私”じゃない)
(ホントはもっと…もっと冷たくて、利己的なまさに一之瀬さんの真逆のような存在なんだから)
(仲良くしたい、だからそのために”私”は隠す。ただそれだけのこと)
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こうして真の実力主義が始まった初日は幕を下ろす。
人々に小さく燻る火種を与えながら。