翌日水曜日、私はいつも通り須藤くんをに勉強を教えた後、カフェに一之瀬さんと神崎くんを呼んだ。
「あ、きたきた。お〜い、こっちだよ〜」
ひと足早く来ていた私が入店してきた二人に手を振って呼ぶ。
「おつかれさま二人とも」
「そっちこそお疲れ様!」
二人は席に座ってそれぞれ飲み物を頼んでから訪ねてくる。
「それで?相談てなにかな?」
「えっとね、Dクラスに関してなんだけど……」
私は二人に説明した。Dクラスにはテスト範囲の変更があったことが伝えられていなかったこと。
そのせいで数名の生徒が退学の危機に陥っていること。
そしてその人達を助けてほしいと須藤くんから頼まれてできることはすると受けたことを。
「そんなことが…それはひどいね」
「あぁ、担任が伝え忘れていた上に元から学力が高くない生徒が多い、これは厳しいだろうな」
だが、と少し語気を強め神埼くんは続ける。
「正直に言おう、俺はその生徒たちを助ける必要は無いと思っている」
「神崎くん!?」
「驚いている所悪いが一之瀬、俺は本気だ。それに一之瀬と早坂お前たちは甘すぎる。他クラスのましてや自身の友人ですらない者をなぜ救おうとする、やつらはまがいなりにも敵なんだぞ。仮に救えたとしてもDクラスが得をするだけだ。Bクラスの利益は無いに等しい」
「いやいや、ちゃんとメリットあるって」
神崎くんの言葉に間髪入れずに私は返す。
「何だと?いったい何があるというんだ」
「同盟」
はっきりとそして端的に告げる。
「BクラスとDクラスで同盟を組むんだよ。内容はこれから先に起こるトラブルや出来事に対して2クラスで協力するというもの。」
「そして先に起こる出来事には特別試験も含まれる」
そういった私の言葉にハッとした表情になる神崎くん。
「どう?敵が一つ減り、代わりに味方が増える。これ以上ないメリットだと思うよ」
「特別試験でも協力、敵が味方になる……」
小声で呟きながら考える素振りを見せる神崎くん。やがて考えがまとまったのか顔をあげる。
「確かに悪くなさそうだ、俺も同盟を結べるなら助けることに賛成しよう。」
「だが問題はどうやって救うかだ、正攻法では無理だろう。なにか方法がないなら今の話は意味を持たないぞ」
「あるよ、方法。考えてきた」
「何だと!?」
今度こそ本当に心から驚いた様子で目を見開く神崎くん。
「方法ってそんなのあるの?」
「うん。二人はテスト範囲が変わったときに星之宮先生がなんて言ってたか覚えてる?」
「覚えていないな、なにか特別なことでも言っていたか?」
「私も特に気にしなかったかな、普通のお知らせだったと思うけど。まぁ範囲の変更自体が普通じゃないけどね」
「『私はみんなが確実に残れるって思ってる』」
そこまで言って、私はストローで氷を弄る。
理解していないように首を傾げる二人。
「……変じゃない?」
「”確実に”なんてさ」
そこまで言うとハッとした顔になる二人。
「もしかしてそういうこと?」
「気付いた?続けて」
「もしかして先生は確実にこのテストをクリアする方法があると暗に言ってたってこと?」
「正解!そして私はその方法も見つけてきた」
「私が答えに近づく一番の鍵になったのはこないだの小テストだよ」
「小テスト?確かにあの問題は一部難しいものもあったが……」
「そう、それがヒント。あの問題は高校1年生が簡単に解ける内容ではなかった。そしてそれはあのテストにあったからくりを指し示すものだったと考えるのが妥当だと思ったの」
「そして私がこのヒント達から導き出したのは―――過去問の存在」
「過去問?なんでまた」
「ここからは私の予想だけど、多分こないだの小テストは例年問題が一緒なんだよ。だからあんな難しい問題も出す。そして小テストだけがその例に漏れないならやる意味がない。つまり中間テストも一緒なんだよ。だから突然範囲を変更したりするの」
「つまりお前の考えた方法というのは」
「うん、ポイントで先輩から過去問を買うってことだよ」
だからと私は一之瀬さんを見つめる。
「ポイントを渡してくれないかな、一之瀬さん」
「―――うん、分かった。何ポイント必要なの?」
「目安は2万で行くつもりだけど一応3万ほしいかなって感じ」
「待ってくれ」
そう言って送金をしようとしている一之瀬さんを引き止める神崎くん。
「過去問を買うことも、Dクラスにもそれを渡すことも賛成しよう。だがそれはクラスのポイントだもし目論見が外れたらどうする」
「そうだなぁ、じゃあもし空振りになったうちのクラスから退学者が出たら私も自主退学するよ。それでいい?」
「ちょ、ちょっと愛ちゃん!?」
「あぁ、それで構わない」
「神崎くん!?」
「ん、ありがと。それじゃ一之瀬さんもらえるかな?」
「ちょ、ちょっとまってよ愛ちゃん!退学なんてそんなこと……」
「大丈夫だよ、私は自信があるからこそこんな提案をしてるんだから」
「で、でも」
「一之瀬さん、いや、帆波。」
「私を信じて」
「……っ」
一瞬だけ目を見開き、私の真剣な眼差しを正面から受けた彼女は―――
「分かった、信じるよ」
私の言葉を受け入れることにしたのだった。
「それじゃあこれ」
『一之瀬帆波さんから送金要請が送信されました』
『送金要請を受け入れます』
『入金を確認しました』
「ありがとう、それじゃ明日先輩と交渉してくるよ」
「俺達も手伝った方がいいか?」
「うーん、いや大丈夫。今回の作戦を考えたのは私だしね。私が全部やるよ」
「そうか、じゃあ任せたぞ」
「うん、任せて!」
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〜翌日昼休み〜
「すいません先輩少し良いですか」
私は食堂の隅で山菜定食を食べている3年生に声を掛けた。
「なに、てかあんた誰よ」
「1−Bの早坂って言います。今回は先輩にお話があって」
「1年ね……それで?なんのようなのよ」
「担当直入に言うと私に1年生一学期の中間テストの過去問を売ってくれませんか?」
「過去問をね……。いくら払えるの?」
「5教科合計で1万5千ポイントでどうですか?」
「安い、過去問を渡すのも安全ってわけじゃないんだから1教科あたり6千の合計3万ね」
「それは高すぎます、いくら私が貰い受ける側だとしても法外な価格までは払えません」
「あっそ、でもこれ以上下げるつもりはないから」
「そうですか、では他の先輩に持っていきますので忘れてください。では……」
そう言って私が立ち去ろうとすると――。
「待ちなさい」
「何でしょう?売ってくれない方と話す時間は無いのですが」
「分かったわ、2万ポイントで手を打ちましょう」
「へぇ、下げるつもりは無いと言っていましたけど下げるんですね」
「うるさいわね、それで買うの?」
「いえ、正直まだ高いですね。やっぱりAクラスの人にでもしましょうか。それなら安く済みそうですし」
「くっ、でもコレ以上はホントに下げないわよ!」
「そうですか……なら中間テストだけではなくその前の小テストの分も含めてっていうのはどうでしょう?それで合計2万で」
「……分かったわ、それで交渉成立ね」
「ありがとうございます。それじゃあ連絡先を渡すので準備ができたら送ってください。そしたら送金するので」
「待ちなさい」
『ピコン!』
携帯が鳴ったので確認するとそこにはすでに過去問の画像が表示されていた。
「フッ、このぐらい準備してるわよ。それと今日山菜定食を食べてたのもね。ほら早く送金しなさい。」
「は、はい」
「うん、確認したわ。それじゃ頑張りなさい」
そう言って食器を持ち去っていく先輩。
「マジか……」
(交渉の主導権は取れてたと思ってたけど)
(まさか最初から負けてたなんてね)
(あれが上級生…手強いね)
『一之瀬帆波さんから送金要請が送信されました』
『送金要請を受け入れます』
『入金を確認しました』
今回、これを流れをわかりやすくするために書きましたが今後のポイントのやり取りで書くことは基本無いと思っていただいていいです。単純に店舗が悪くなるからね。