「それじゃあ今から点数を発表していくわね」
ペタペタとホワイトボードに大きな紙を星之宮先生が貼っていく。
やがて貼り終えると先生が振り返って笑顔で言葉を続ける。
「見たら分かる通り今回のテストで赤点を取った人はいませ〜ん。それどころか平均点がAクラスを超えて学年1位でした!拍手〜パチパチパチ」
「それに応じてクラスポイントにも変動があったから貼っておくわね」
Aクラス 940+64=1004クラスポイント
Bクラス 650+25=675クラスポイント
Cクラス490+2 =492クラスポイント
Dクラス 0+87=87クラスポイント
クラスポイントの変動にクラス中がざわつく中、私は一人点数表に目を向けた。
『早坂愛 国語92点 数学96点 理科100点 社会100点 英語97点』
(うん、予想通りの点数。過去問ありきならこのくらいでちょうどいい)
(一之瀬さんは…すごっ。数学以外満点!?)
(ホントに過去問のおかげでリラックスして挑めたみたい)
「愛ちゃーん。そろそろ行かないと授業遅れるよー」
「えっ!?」
声によって思考の海から戻された私は慌てて周りを見る。すると教室はすでにもぬけの殻になっておりドアの向こうで友達が私のことを呼んでいた。
「うっそ、ごめーん。ボーっとしてた!」
「もー何やってんの―」
「ほら急ご!」
____________
「打ち上げ?そんなの言ってたっけ?」
「言ってたよ〜。愛ちゃんほんとに何も聞いてなかったんだね」
昼休み、私はいつも一緒に食べているメンバーといっしょに学食で話しながらご飯を食べていた。
「うっ……まぁさそれは置いといてさ。どこに集合なの?」
「カラオケに集合だってよ〜」
「りょーかいありがと〜」
「てかさ、一之瀬さん凄いよね〜。過去問ていう抜け道を見つけるし、数学以外満点なんてさ」
「分かる〜私一之瀬さんについていけば大丈夫なんじゃないって思ってるぐらいだもん」
「今更〜?私は今月の初めには気づいてたよ〜」
「うっそだ〜」
(……まぁそうなるよね)
キャハハと笑い合っている友人たちを見ながら少し考える。
(やっぱり思ってる以上に一之瀬さんへの信頼が高い――もはや依存といったほうがいいかもしれないくらいには)
(どうにかしないと。このままじゃ一之瀬さんが潰れたらウチは潰れちゃう)
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「それじゃまた後でね〜」
「うんバイバーイ」
「ふぅ」
友人たちと別れ部屋に戻った私はそっと一息をつく。
(さて、集合時間までは少しあるけど何しよっかな)
そんな風に考えていると手に持っているスマホが鳴り出した。
(電話?なんか伝え忘れでもあったかな?)
画面を確認するとそこには『平田洋介』の四文字が浮かんでいた。
(平田くん?なんのよう…いや、出たら分かるか)
「もしもし、どうしたの平田くん?」
『あ、早坂さん。よかったつながって。早坂さんに伝えたいことがあるからエントランス横の102号室に来てくれないかな?』
「伝えたいこと?電話じゃ駄目な感じ?」
『うん、できれば直接がいいかな。あぁでも用事があるなら全然断ってくれていいからね』
(直接じゃないといけない?)
「そっか、分かったよ。ただ少しだけ待っててね?」
『本当かい?ありがとう。待ってるよ』
そこまで聞こえたと思ったら向こうが切ったらしく平田くんの声は途絶えた。
(直接がいいって何なんだろう。しかも後ろから声がうっすらと聞こえてたし)
少しして着替え終えた私は少しの荷物を持って指定された部屋の前にやってきてインターホンを鳴らす。
「よく来てくれたね。すでにみんな来ているよ」
「みんな?」
「こっちだよ」
平田くんに手を引かれ奥の部屋に入ると、
「「「中間テストお疲れ様でした――!!!」」」」
Dクラスの複数の生徒がグラスを掲げて乾杯をしていた。
「お!俺達の救世主様が来たぞ!!」
「早坂ちゃーん、ありがと〜」
「助かったぜ〜!」
「え、なにこれ?」
「今回のテストの打ち上げだよっ!!特に過去問に助けられた人達が集まってるんだ!」
「あ、櫛田さん」
私のつぶやきが聞こえたのかいつのまにか隣に立って教えてくれる櫛田さん。
「やっほー早坂さん。今日のテストでは助かったよ!ありがとう!」
「どういたしまして。でも平等な契約の上で渡したんだから恩義をそんなに感じなくていいからね?」
「そうだとしても感謝しきれないよ。あれがなかったらいったい何人が退学になったかわからないし、おかげで来月からはポイントが入ってくるんだもん」
「そうだぜ、お前のおかげで俺達助かったんだからな」
「須藤くん!テスト大丈夫だったの?」
「おうよ!バッチリだったぜ!」
笑顔でニカッと笑って親指を突き出す須藤くん。
「英語とかギリギリだっただろー」
そんな須藤くんに遠くから池くんが軽口を飛ばす。
「うるせぇ!お前も同じようなもんじゃねえか!」
そう言って須藤くんは池くんにヘッドロックをかけて頭をグリグリしている。
それを苦笑いしながら止めに行く櫛田さんを見つつ平田くんに問いかける。
「須藤くんはああ言ってたけど実際どんな感じだったの?」
「えっとね―――――」
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――朝、Dクラス
僕達のクラスは静かな緊張感が張り巡らされていた。
「おはよう、諸君」
前のドアから茶柱先生が入ってきて、より一層空気は張り詰めたものになったのを私は感じ取れた。
「さすがに今日は遅刻欠席者はいないようだな、ぜひとも明日からも続けてほしいものだ」
そう言って私達を茶化してくる先生に焦りを覚えた僕は口を開いた。
「先生、テストの返却はいつ行うのでしょうか」
「安心しろ平田。今すぐにだ」
その言葉を聞いて僕は自身の鼓動が早く打ち出したのを感じた。
「それでは今から中間テストの返却を行う」
そう言って黒板に大きな紙を貼っていく。そして続けざまに吐いた言葉は
「今回のテストで赤点を取ったものはいない、みなよくやったと言っていいだろう」
「「「やったー!!」」」
極度の緊張から一転クラス全体が安堵と歓喜に包みこむ言葉だった。
「そして今回の中間テストを経てクラスポイントにも変動があった」
そう言ってもう一つの少しこぶりなプリントをホワイトボードに貼る。
Dクラス 0+8787クラスポイント
「え!増えてる!」 「マジか!」 「やったぁ!」
クラスポイントが増え、来月からプライベートポイントの振込が行われることの決定にさらに喜びの声が起こる。
(よかった……)
僕がホッと息をついているとクラスの喧騒の中で一際目立つ声が聞こえてきた。
「これも早坂のおかげだな!」
須藤くんの声は大きく、クラス全体に聞こえるほどでついみんながその言葉に耳を傾けていた。
「早坂ってあの須藤に勉強教えてたやつか?」
「おうよ!あいつに俺が助けてくれって言ったら探し出してきてくれたんだぜ!」
「まじかよ!早坂ちゃん最高じゃん!」
そうやって騒ぐ3人に軽井沢さん達が声を掛ける。
「その話って本当なわけ?」
軽井沢さんの否定的な言い方に顔を歪ませる須藤くん。
「疑ってんのかお前ら!?本人に聞いたから間違いねぇっつーの!。」
「ふーん、あっそ」
そう言うと「行くよ」と言って離れていった。
「なんなんだよあいつ」
「自分だって助けてもらったくせにさ」
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「その後にちょっとした打ち上げをしないかって話になってね。僕もお邪魔させてもらって、せっかくなら呼ばないかってなって呼んだって感じだね」
「そっか、トラブルがなくて良かったよ」
平田くんからDクラスのテスト返しの様子を聞いて私はそっと息をついた。
「改めて言わせてほしい。今回僕達が無事にテストを乗り越えれたのは君のおかげだ。本当にありがとう」
「どういたしまして!これからは同盟相手としてよろしくね!」
感謝を受け取った私は返事をしながら右手を差し出す。
その意図を汲み取ってすかさず平田くんも右手を差し出し握手を交わす。
こうして、利害で結ばれたBクラスとDクラスの関係は、この日正式に形となった。