自己紹介も終わり各々がこの後を好きなように過ごすために動き出し始めた。
「一之瀬さんってさー」「い、一之瀬さん!」「一之瀬〜」
(凄いな、初日なのにあんな人が集まるなんて)
教室の真ん中の席に集まる集団を遠巻きに見て、思案する早坂。
(それにあんなに一度にたくさん来て嫌な顔ひとつしないなんて、)
(私があの立場だったら―――想像するだけで疲れてきた...)
一之瀬に軽い尊敬を覚えながら、思考を巡らせる。
(このあとどうしよっかなー)
(今後のことを考えるならクラスの中心の一之瀬さんと過ごすべきなんだろうけど...)
チラッと確認すると彼女の周りには6人ほども集まっていた。
(いや、やっぱやめとこう人が多すぎる)
早々に諦め、次の行動を考えながら席を立つ。
「じゃあね〜、一之瀬さん達!また明日〜!」
(それじゃあ、先生がさっき言ってたケヤキモール?ってのに行ってから寮に帰ろっかな)
そのまま物憂げに浸りながら下駄箱への道を歩いていると
ドンッと思いっきり曲がり角でぶつかって尻もちをつくように転んでしまった。
「いってぇ」そう言って手で肩を抑えながら立ち上がる赤髪の男子生徒。
「いたたたたた」頭を抑えて痛がっていると男子生徒が声を荒げる。
「てめぇ、ちゃんと前向いて歩けや!」
「ごめんごめん、大丈夫?」 慌てて立ち上がりながら軽く謝罪をする。
「ったく、怪我したらどうすんだよ」
「ごめんって、てかなんでこっちに行こうとしてたんだし?」
「あぁ?部活だよ、部活。俺はバスケ部だからな」
「へー」
(部活かぁ、あんまり考えてなかったけど体験だけでも行ってみようかなぁ)
「なんだよこっちジッと見やがって」
「うーん、実は私ね、部活に興味あるんだけどさ、中学の頃入ってなかったからあんまり詳しくなくてさ!だから教えてくんない?」
「はぁ!?なんで俺が!」
「いいでしょ、ここで会ったのももなにかの縁だし」
「はぁ!?無理だ俺にはそんな時間はねぇ」
「えー、じゃあ名前は?代わりに教えてよ」
「なんでだよ......はぁ、須藤だ」
「須藤くんね!私、早坂!また会ったらよろしくね!」
そう言って走り去っていく早坂。一人置いていかれた須藤は複雑な気持ちの中、部活の始まる時間が近いことに気づき走り出した。
(面白い人だったな、上履きの色的に一年生っぽかったけど何クラスだったんだろ?)
(なんか疲れたしもう寮に帰って少し休んでからコンビニかなんかで日用品でも買おっと)
〜コンビニ〜
部屋に戻り1,2時間ほど時間を潰したあと早坂は買い物に寮近くのコンビニに来ていた。
(化粧水、ハンドクリーム、日焼け止め、保湿剤、あとは〜)
そんな風に考えながら手頃な価格の商品を次々にカゴに放り込んでいく。
(夜ご飯は――ま、サンドイッチとかでいっか)
商品を取り終えレジに並ぶと目に付く物があった。
(無料の日用品?お一人様一つまで......使うことにあるかな?)
[1782円です] [ピッ]
[ご利用ありがとうございました]
(ちゃんとポイントで買えた。ホントに十万円分もあるんだねこれ)ガヤガヤ(ん?)
精算を終えコンビニから出ると駐車場で二年生らしき人と須藤が喧嘩をしていた。
(須藤だ、上級生と何喧嘩してんだろ)
「はぁ!ここは俺が先に使ってたんだ!お前らに変わるわけ無いだろ!」
「クク、何言ってやがるここは俺等が荷物置いてたんだろうがよぉ」
そう言いながら二年生の一人が今更荷物を置く。
「てめぇらふざけてんのか!」
「ふざけてんのはお前だろ。一年坊主」
明らかに目を尖らせイラツイている須藤を見て二年が嗤いながら言う。
「お前Dクラスだろ」
「だったら何だ!」
「クク、なんだ知らねぇのか。なら教えてやるよ。お前達Dクラスはな!不良品の集まりなんだよ!」
「誰が不良品だ!」
「お前みたいなすぐカッとなるやつのことだよ。ま、どうせ地獄をみるんだ。せいぜい足掻けよ、
一年坊主。おい、行くぞ」
そう言い捨て去ってゆく二年生。
「おい、てめぇら待ちやがれ!――っち、クソが!!」
近くにあったゴミ箱を思いっきり蹴りつけてから去っていく須藤。
それをみた早坂も足早にそこを去って行った。
〜夜、寮の自室〜
「ごちそうさまでした」
「あ〜疲れた〜」
コンビニで買ったサンドイッチを食べ終えた早坂は、スマホを手に持ちベッドに身を預ける、コンビニでの出来事を思い浮かべる。
『お前達Dクラスは不良品の集まりなんだよ!』
(先輩たちは須藤くんがDクラスだと気づいて最初よりもっと態度が大きくなった。それはなんでだろ?『Dクラスは不良品の集まり』ていうのもよくわかっていない...)
(もしかして配布されたプライベートポイントの量が違うとか?でもそうだとしたら明らかに不公平。でも確かにそれが理由なら,先輩達がDクラスって知って気を更に大きくした理由も説明つくかも...)
「...うん、ここまでにしておこう」
そう口にすると、急速に回転させていた脳を休ませるように休息モードに切り替える。
(どうせ今考えたって答えは出ないし、気になったなら星之宮先生にでも聞けばいいや)
そうして寝支度を整えた彼女は、やがて静かに意識を手放した。